機動戦姫ガンダムSG   作:鍋の中の白い奴シラタキ

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歌は流れて刻まれて
されど怪物に立ち向かった貴女は消えて
残された私はどう生きれば良いのでしょう



黒いガングニール

 激しい嵐とノイズに襲われたソロモンの杖護送任務を終らせた響達が帰路に着こうとしたところで背後の米軍基地が大爆発を起こすと大型ノイズが出現する。

 

「やっぱり獅子身中・・・。行こうクリスちゃん!」

「わかってるての!」

 

歌を歌いギアを纏った二人はノイズ溢れる米軍基地へと突入するとノイズを撃破していく。

 

「なるほどな、こういうことか!」

 

声がした方をクリスが見るとそこには赤毛の兵士がノイズをカウンターで銃で倒しているところだった。

 

「お前、死にたがりか!?」

「違うな、これが俺の仕事だ。」

 

二人の視線が交差する。

 

「お前はっ!」

「あ?」

 

忌まわしいバルベルデの記憶がクリスの脳裏に去来すると赤毛の兵士がクリスに向けて発砲する。

 

「お前が誰かなんて知らないが、お前らの妨害が俺の仕事なんでな!」

「くっ!」

 

その男は驚異的なことに生身で有りながら拳銃とナイフのみでシンフォギアと互角に戦ってみせる。

 

(なんだ?このガキの戦い方・・・そう言うことか!)

「ゲイリぃぃいぃぃぃいいぃぃいい!!!」

 

鏡あわせのように放たれた弾丸がぶつかると射角がずれ互いの顔の横をかすめて後方に飛んでいく。

 

「思い出したぜ!お前バルベルデのガキか!」

「ゲイリー・ビアッジ!!お前だけは!!!」

「変わってねぇなぁ!!俺の教えたまんまじゃねぇか!!見え見えなんだよ!」

「ギアもないくせに!」

 

アームドギアがクリスの手から蹴り飛ばされるとゲイリーがナイフを振り下ろす。

 

「身体能力の差が勝敗を決めるんじゃないって教えただろうが!!」

 

だがそのナイフはクリスに刺さらずにゲイリーの手から銃撃によって弾き飛ばされる。

 

「クリスちゃん!」

 

先ほど蹴り飛ばされたクリスのアームドギアを持った響が二人の間に降り立つ。

 

「大丈夫?」

「どけ、アイツはアイツだけは!!!」

 

新しいナイフを抜いたゲイリーは響に向かって襲い掛かる。

 

「融合症例!お前は殺せるときに殺せってな!」

「何のために!」

「英雄は一人で十分なんだとよ!」

「英雄!?」

 

殺気を感じた響が飛び上がると真下をクリスの放ったガトリングの弾が通過していく。

 

「クリスちゃん!?」

 

近くの壁を蹴りつけクリスの近くに着地した響はクリスの瞳孔が開ききっているの見る。

 

「うぉらぁぁぁぁああ!!!」

「これだ!唯の戦いじゃ手に入らない刺激!やっぱり聖遺物は最高だなぁ!オイ!!!」

 

放たれた弾丸の全てをゲイリーは二本のナイフを巧み使い自身に致命傷を与える物だけを弾いていく。

 

「そらよ!」

「ぐぁ!」

 

そして持っていたナイフを一本正確にガトリングに投擲し爆発を起こさせると爆煙が辺りを包む中をゲイリーが走る。

 

「死ねよや!」

「邪気!!」

 

気配を読み取った響が見えぬナイフを砕き続けざまに振るわれた拳に拳で応酬するとゲイリーの懐から電子音が鳴るとゲイリーは先ほどまでの猛攻が嘘かのように身を翻すと逃走を開始する。

 

「逃げんな!」

「今度また遊んでやるよ!」

 

銃撃したクリスであったが弾丸の軌跡にゲイリーが閃光弾を投げ置くと辺りが高音と閃光に包まれる。

そして視界が元に戻る頃にはゲイリーは姿を消していた。

 

「クリスちゃん・・・。」

「なんでもねぇ。お前には関係ない事だ。」

 

火の手が上がる米軍基地の中で二人を気まずい沈黙が包んだ。

まだ居るノイズに二人は目を一瞬合わせると向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 新たに本部を潜水艦として新設した二課の司令室にて弦十朗はクリスの叫んでいた名についての簡単なデータに唸っていた。

 

「ゲイリー・ビアッジ、傭兵か・・・。」

「司令、この男記録上ではバルベルデにて戦死扱いになっていますね。」

「だが現に生きている。それに加えノイズの位相差障壁が無効になるタイミングでのカウンター、シンフォギアと同等の戦闘力。先の交戦記録での発言からしてこの男を雇った某かもしくは組織、そいつらが今回のノイズ襲撃を招きソロモンの杖を強奪したと見て間違い無いだろう。」

 

友里にクリスのケアをするように伝えた弦十朗は緒川に一連の出来事を伝える。

 

『このことは翼さんには?』

「今は伝えるな、翼にはライブに集中して欲しいからな。」

『了解しました。』

 

米軍基地のノイズが殲滅され太陽が沈み行く中ヘリに乗り響達がライブ会場に向かっている頃弦十朗はモニターに映るライブ会場を見る。

 

「どうにも胸騒ぎがするな。」

「まさか、ライブ会場にもノイズが?」

「漢の勘だ。当たって欲しくないがな。」

 

月が昇り遂にライブが始まる。

 

 

 

 

 

 

 ライブ会場がマリアコールで包まれる中、未来は腕時計を見る。

 

「ビッキーまだ来ないの?」

「うん・・・。」

「大丈夫だってなんだかんだ間に合うよ。」

 

口を開けたハロの上でメイと並んでステージを見ているカナデがこともなげに響を心配する未来達にそう言う。

 

「お前はそう楽観的だからこの前も撃墜されるんだ。」

「あれは油断しただけだ。ザクレロからあんなのが出てくるなんて予想できるか。」

「万が一を考えておけと言っているんだ。」

 

肩を竦めるカナデにメイはため息をつくとステージへと視線を戻す。

 

「でもあの子が遅れるなんて珍しいわね。」

「マギーさん。」

「だけどあの子は約束は破らない子よ。初心者の頃から付き合いのある私が保障するわ。」

「それは知ってます。私響が小さい頃からの付き合いですから。」

「あらら、一本取られたわね。」

 

 そして遂に翼とマリアのデュエットが始まる。

幻想的な演出に加え世界レベルの二人の今宵限りの限定ユニットであるという相乗効果で会場のボルテージが高まり続けるなかで一曲目が終る。

 

「みんな今日は私たちの歌を聴きに来てくれてありがとう!私はいつもみんなから勇気を貰っている!だから今日は私たちの歌でみんなに少しでも勇気をあげたい!」

「私の歌を世界中にくれてあげる!全力疾走だ!着いてこれる奴だけ着いてこい!!!」

 

翼とマリアの決意に会場どころか中継されている先の世界中が沸き立つ。

 

「今日この日、私は日本のトップアーティスト風鳴翼と共に歌えた事を誇りに思う!」

「私も貴女のようなアーティストと出会えた事に感謝を。」

 

マリアから差し出された握手に翼が応じることで更に歓声があがる。

 

「伝えて行かなければな。」

「ええ、歌には力があるって事をね。」

 

そう言ったマリアは翼から離れると続ける。

 

「そして、もう一つ・・・。」

 

台本に書かれていないマリアの行動に翼が眉をひそめた瞬間ライブ会場にノイズが現われる。

 

「ノイズっ!」

 

突如として現われたノイズにライブ会場がパニックに陥りそうになる。

 

「狼狽えるな・・・。」

 

小さな声でそう言った後マリアは観客に向け声を張り上げる。

 

「狼狽えるな!!!」

 

マリアのその声に観客が気圧され静かになる。

 

「私たちはご覧のようにノイズを操る力を持っている!」

「マリア貴様!何のつもりだ!」

「牙を剥かないの、まだ見せる物があるのよ?」

「なに?」

 

見せる物があるそう言ったマリアはマイクスタンドを天に放ると歌う。

 

「Granzizel bilfen gungnir zizzl.」

「それは!」

 

ガングニール、それも漆黒のガングニールを纏ったマリアがマイクスタンドをキャッチするとその先端を翼に向ける。

 

「そう、これこそが私の無双の一振り!烈槍ガングニール!」

 

マントを翻しマリアはカメラに視線を向ける。

 

「我々はフィーネ!シンフォギアとノイズを有する私設武装組織だ!我々の最初の要求は一つ!全世界の閣僚各位に通達する!国土を我々に割譲して貰おう!期限は一週間!求めに応じなければ首都機能がノイズにより破壊されるものと思いなさい!」

「世界中と戦争をする気!?」

「だとしたらば?」

 

肯定とも取れる返答をされた翼は胸元のギアペンダントを晒す。

 

「あら、良いのかしら?日本政府は櫻井理論を開示したとは言えどシンフォギア装者は秘匿したまま。今此処で歌うと言うことは即ち貴女はその正体を晒すと言うこと。それに貴女が歌った瞬間にノイズが観客を塵に変えるかもしれないわよ?」

「そこまで挑発されて私が鞘走らないと思ったか!」

「ふふ、怖い子。」

 

翼に近づき顎を手に取るとマリアは耳元で囁く。

 

「貴女みたいに誰かの為に戦える子。嫌いじゃないわ。」

「何が言いたい?」

 

疑問には答えずマリアは翼から離れる。

 

「だけれども人質は私の趣味じゃないわ。オーディエンス諸君にはご退場願おうか!」

「何が狙いだ!」

「あら、観客がいては歌えないのでしょう?」

 

捕らわれていた観客達が解放されるのを見ながら翼はマリアの一連の行動にズレを感じていた。

 

 

 

 

 

 

 ライブ会場へ向かうヘリの中で響は観客が解放されたことを聞いて未来やマギー達が無事で有ることを知り安堵するとモニターのマリアを見る。

 

「私と同じガングニール・・・。好意を抱くね。」

「どこがだよ。」

「興味以上の対象って事だよクリスちゃん!」

 

響はそう言うとライブ会場が見え始めてきたことで拳を握りしめた。

 

 

 

 

 

 

 聖詠を歌おうとして緒川に止められた翼はギアを纏わずマイクスタンドを武器にマリアと死合うもやはりそこはシンフォギアである。マイクスタンドを容易く破壊されるとそれを放り捨てた翼はカメラの目のないステージ裏に飛び込もうとするがヒールが折れることでバランスを崩してしまう。

 

「貴女は、ステージを降りちゃいけないの。」

「ぐぅ!」

 

回し蹴りをくらった翼がステージ下のノイズの群れへと落ちていく。

 

(決別か・・・歌女としての私と。)

「さあ歌いなさい!」

 

そして翼が聖詠を歌う。だがその直前に中継が遮断される。

 

「Imyuteus amenohabakiri tron.」

「中継が!」

 

ノイズを細切れにしあっという間に殲滅した翼がステージに再び舞い戻る。

 

「貴様の考えその全て続きはベッドは聞かせて貰おうか!」

「情熱的ね!だけどもお断りだ!」

 

マントと刃がぶつかり火花があがる。

 

「この感触!この感覚!」

「そうだ!紛れもなくこれはガングニール!」

「したらば何故このようなことを!」

「いずれ知ることになる真実!今は知らず唯踊っていなさい!」

 

互いに衝撃が走りステージの端に追いやられた所にマリアに通信が入る。

 

『マリア、フォニックゲインは現在22%付近をマークしています。』

「あと78%も・・・!」

「私相手に余所見とは!」

 

燃え盛る刃でマリアに斬りかかる翼であったが飛来した丸鋸と斬撃により吹き飛ばされる。

 

「シュルシャガナと。」

「イガリマ推参デース!!」

 

ステージ下に落下した翼をマリアは見下ろす。

 

「装者が三人か!」

「調と切歌の助けがなくとも貴女程度私一人で十分なんだがな。」

「貴様達はそうやって他人を見下してばかりいるから、大事な事を見落とす。」

「まさか!」

 

余裕を取り戻した翼を見てマリアが視線をあげるとそこにはガトリングを既に放っているクリスと拳を引き絞る響が居た。

 

「遠慮すんな!全部持ってけ!」

 

マントで弾丸を防いだマリアは迫る響の拳に拳で応酬するとぶつかった拳を中心に響とマリアが光り輝く空間に誘われる。

 

(なにここ?)

(声が聞こえる?)

 

響の目には研究所での壮絶な日々と燃え盛る屋内で瓦礫に押しつぶされる少女が。

マリアの目にはライブ会場で奏の絶唱を聞き届けてからの響の壮絶な日々が。

直感的に内面を見られていることを悟った二人の視線が交差する。

 

「「そこだけは見るな(見ないで)!」」

 

それは同じ聖遺物を纏う二人に起こった刹那の出来事だった。




この世界のサーシェスはゲイリーがモデルです。

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