機動戦姫ガンダムSG   作:鍋の中の白い奴シラタキ

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トロハチって可愛いよね


彼の日の奇跡、その代償

 エアキャリアにてカディンギル跡地での戦闘を映すモニターにマリアは釘付けになる。

 

「何故だ・・・。」

 

呆然とそう呟くマリアと同じく釘付けになっていた切歌は顔を青ざめさせ調は口を押さえる。

 

「ドクターの作戦って。これのこと?」

「あまりにもあんまりデス・・・。」

 

部屋から出て行こうとするマリアに気づいたナスターシャが制止する。

 

「何処へ行こうと言うのですか。」

「あのような凶行。見過ごす訳にはいかない!」

「私たちは既に悪なのです。この程度の犠牲など許容しなさい!」

「この程度?本気で言っているのマム!?あの子はあのような目にあって良い人間ではない!」

「何を言っているのです。貴女は立花響の何を知っていると言うのですか。」

「それは・・・。」

 

答えることができないマリアは黙って部屋から出て行こうとする。

 

「マリア!」

「行きはしないわ。ただ見ていられないだけよ。」

 

出て行ったマリアを調はじっと見つめていた。

 

(マリア、やっぱりあの日から変。)

 

獣の雄叫びに室内の全員の意識がモニターに再び向けられた。

 

 

 

 

 

 

 クローが迫るネフィリムの顔面を捕らえ一撃で破砕する。

 

「ネフィリムが一撃で!?」

「うわぁああああぁああ!!!」

 

まさかの結果に動揺するウェルをよそに意味のない音を奏でながら響は動かなくなったネフィリムにマウントを取ると徹底的に破壊を開始する。

決勝が左腕に槍のような形状で形成されるとそれがネフィリムに突き刺さりネフィリムから無数の結晶を生やさせると爆散させ肉を飛び散らせる。

 

「あぁ?」

 

そして残ったネフィリムの心臓を掴むと興味がないのか放り捨てるとターゲットをウェルへと変更する。

 

「あぁぁああぁぁ!!!」

「ひぃ!」

 

GN粒子が描く赤い軌跡が怯んだウェルの左腕の肘から先を消し飛ばす。

 

「僕の腕ぇ!?」

「るぁぁああぁあ!!」

「この、化け物がぁ!!!」

 

痛みにこらえながらノイズを召喚し抵抗するウェルであったが暴走している響の前には無力に等しく容易くねじ伏せられクローで頭を掴まれる。

 

「い、嫌だぁ!僕は英雄になるんだぁ!!」

 

明確な死のビジョンに支配され完全に戦意を喪失するウェルの目にこちらに向かってくるゲイリーが映る。

 

「助けろ!」

「人使いが荒い英雄さんだなぁ!!」

 

ナイフを振るい響からウェルを引き剥がしたゲイリーはたった一振りで駄目になったナイフを捨てると新しい物を抜刀する。

 

「とっととトンズラしな大将!」

「言われずともそうするつもりですよ!」

 

背後でウェルが逃げていくのを見たゲイリーは銃とナイフを構える。

 

(こいつはやべぇな。どうにか隙をつくらねぇと。)

 

暴走している響が暴れる様を見ながら翼は拘束されている状況から抜け出し今だ意識の戻らないクリスを地面に寝かせる。

 

「駄目だ立花。お前の手は誰かと繋がるための手だ。」

 

刀を握り翼が響の元へと走る。

 

「止まれ立花!その手は何のためにあるかを思い出せ!」

 

種が割れ世界がクリアになると翼は暴走状態の響が振るうクローを刀で受け止める。

 

「失せろ!ゲイリー・ビアッジ!今は貴様の相手をしている暇などない!」

「お優しいこって!」

 

捨て台詞を残し逃走したゲイリーを意識から切り捨てた翼は暴れる響を抑えようとする。

 

「奏から受け継いだガングニールを!ただ命を奪うことだけに使わないでくれ!」

「あぁぁぁあ!!!」

 

翼の顔に滴が当たる。

 

「泣いているのか立花。ならば友として貴女を止めるためにこの剣を振るおう!」

 

クローに刀を噛ませ機能不全を一時的に起こさせると翼は響の影に小刀を投擲する。

 

(これでどうにかこうにかならないものか!)

「あ・・・。」

 

響の瞳に理性の光が戻る。

 

「つば・・さ・・・さん。」

「戻ってくれたか立花。」

「あぐっ!」

 

だが投与されたリンカーと一時は失った右腕の影響で暴走したガングニールが響を襲う。

その結果として響は全身から結晶を生やし意識を失うとデュランダルが地面に落ちる音だけが辺りに響く。

 

「立花ぁぁぁあぁああ!!!」

 

安心した瞬間に尋常ではない状態に陥った響を見た翼が悲鳴をあげる。

 

「なにが起こってやがんだよ・・・。」

 

ようやく意識を取り戻したクリスの目にも響の姿が映る。

 

「嘘だろ・・・?」

 

既に待機していた二課の救護班により運ばれる響を見ながらクリスは呆然と呟いた。

 

 

 

 

 

 

 二課の本部にて響の緊急手術が行われた後にメディカルチェックを終らせた翼は一人弦十朗に呼び出されていた。

 

「来たか、翼。」

「立花の事ですか。」

「ああ。」

 

身体を覆う結晶の大部分を除去されてなお意識を取り戻さず眠り続ける響の検査結果を弦十朗は翼に渡すと言う。

 

「結果的に言えば響君は近いうちに死ぬだろう。」

「叔父様それは!」

「例え生きていたとしてもそれが今までの響君であるかは分からない。だが人ではなくなることは確かだ。」

「覚悟をしておけと言うのですか。」

 

壁に映される海の景色を眺めながら弦十朗はそれを肯定する。

 

「そうだ。医師の判断では目を覚ますことはまずないと言うことだ。」

「この事は小日向や雪音には。」

「俺の方から伝えておく。」

 

そう言い翼を退室させた弦十朗は近くの椅子に座るとため息をつく。

 

「情けがないな。大人としてなにもできないとは。」

 

いつもの彼らしくもなくその姿には覇気が無かった。

 

 

 

 

 

 

 カディンギル跡地からゲイリーを回収した私設武装組織フィーネは移動していた。

しかし次の拠点を探しているときにトラブルが起こる。ナスターシャが血を吐いたのだ。

 

「マム!?どうして今まで黙って!」

「言ったところでどうにもならないからです。うっ!」

 

再び吐血したナスターシャをマリアが応急処置をしながら切歌と調を呼び出す。

 

「マリアどうしたの?」

「何かあったんデスか!?」

 

直ぐにやって来た二人にマリアは言う。

 

「貴女達はドクターを今すぐ連れ戻して来てちょうだい!マムの治療ができるのは悔しいけどアイツだけ。」

「分かったデス!直ぐにでも連れて来るデス!」

「待っててマム!」

 

ウェルを探しに行った二人と自身に応急処置を施すマリアを見ながらナスターシャは思う。

 

(私はこんなにも優しい子達に一体なにをさせていたのか。この身を襲う病魔はその罰に違いない。)

 

 自室にて身体を休めるゲイリーは道具のメンテナンスをしながら考える。

 

(力が要るな。俺が楽しむためによぉ。そういやパヴァリアの奴らが言ってたな。完全な肉体だったか。)

 

狂人は自らが死ぬなどと考えもせずにこれからに思いを馳せていた。

 

 

 

 

 

 

 リディアンにてクリスは翼を呼び出すと姿を見せない響について聞いていた。

 

「なぁ先輩。アイツ大丈夫なんだよな。」

「案ずるな雪音。立花は必ず戻ってくる。必ずだ。」

「信じて良いんだよな。」

 

不安そうに信じて良いとそう言って欲しいと自身を見つめてくるクリスに翼は少し言いよどむとクリスの望む答えを出す。

 

「・・・ああ、信じて良いとも。」

「そうだよな、信じて良いんだよな。アイツは強いんだ。きっと今頃さぐーすか寝てんだよ。」

「そうだな。」

 

そうであって欲しい。クリスの言葉にはただそれだけの願いが込められていた。

クリスもとっくに気づいている唯の人間があんな事になって生きているはずがないのだと。

 

 

 

 

 

 

 医師に呼び出された弦十朗は渡された響の検査結果を見ながら唸る。

 

「見て分かるとおり立花さんの脳波は異常なまでの反応を示しています。」

「響君の身に一体何が。」

「恐らくですが、心臓付近のガングニールの破片それ自体が彼女の身体に何かしらの不可逆の変化を与えているものかと。これは櫻井了子のデータにあった融合症例のデータからも導き出せることなのです。」

「治す方法は。」

「現在模索中です。」

 

喪失へのカウントダウンは既に始まっている。

 

 

 

 

 

 

 風が顔を打つ感覚に響は目を開けるとそこは彼の日のライブ会場であった。

 

「此処って。でもどうして此処に。」

「ごめんな。」

 

突然背後から投げかけられた謝罪に響が振り返るとそこには奏が申し訳なさそうな顔をして立っていた。

 

「奏さん。」

「あたしのせいでアンタは今とんでもないことになっちまってるだろ?」

「そんな、奏さんは悪くないです!私が弱いから。」

「それでもさ、あの日ただ歌を聴きに来てくれた響をあたしのせいで戦士にしちまった。」

 

目を伏せると奏はその姿を薄れさせていく。

 

「私は!きっとあの日ツヴァイウィングのライブに行かなくても今と同じようにシンフォギア装者(ガンダムマイスター)になってたんだってそう思います!」

 

奏が消えると共にライブ会場も消えると今度は色とりどりの花が咲き乱れる丘に響は立っていた。

 

「来てしまったか少女よ。」

「グラハムさん・・・。」

「もっとフレンドリーで構わないさ。私たちは同じガンダムマイスターなのだからな。」

 

顔の一部が金属質な男グラハム・エーカーが現われると響の前に立つ。

 

「今君は選択を迫られている。」

「選択を。」

「そうだ。だがその時はまだ遠い。故に君の戦う理由それを思い返して見るのはどうだろうか?」

 

グラハムがそう言うとホログラムモニターが現われるとそこに荒らしの密林が映し出されると一筋の稲妻が走り紫色のオーラをハンムラビを両断する。

 

「あれって私のライトニングフラッグ。」

「いかにもと言っておこうか。フラッグとは好意を抱くよ。」

「いやぁ、あははは。」

「さて今から見る物を走馬灯とするかこれから待ち受ける運命を打破する剣とするかは君次第だ。」

 

モニターの中でライトニングフラッグは雨に打たれておりそれは泣いているようにも見えていた。そうまるで操るダイバーの心情を反映しているかのように。

 

 

 

 

 

 

 響が帰って来ないことで不安になっている未来の耳に何かが割れる音が聞こえる。

 

「どうして・・・。」

 

それは二人とカナデの三人で撮った写真が入った写真立てであったが響の部分だけが綺麗に割れていた。

 

「響・・・大丈夫だよね。」

 

漠然と未来は響がどこか遠くへ行ってしまうような気がした。

 

 

 

 

 

 

 割れた地面の隙間にウェルが落ちていく。

 

「ひぃあぁぁぁぁああ!!!」

 

運悪く応急処置を施した左腕を打ち付け悶えていると暗がりの中で赤く光る何かを見つけるとそれを手に取る。

 

「凄まじい生命力だぁ、これさえあれば僕はまだ英雄にぃ!!」

 

今だ生きるネフィリムの心臓がウェルの手の中で脈動する。




敢えて言おう!グラハム・エーカー(本人)であると!!

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