機動戦姫ガンダムSG   作:鍋の中の白い奴シラタキ

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君のため私は行く

 ネフィリムの心臓を懐に抱え残された右手にソロモンの杖を持つウェルは疲弊した状態でカディンギル跡地より脱し街を彷徨う。

 

(渡すものか!これは僕が英雄になるために必要な物だ!)

 

昏い炎を瞳に宿すウェルは疑似GN粒子の毒性による細胞異常がもたらす激痛と身体機能の機能不全に陥りながらもF.I.Sの誰がしかが自分を探しに来ることを疑っていない。

 

(あいつらには僕が必要なはず。なにせマリアがフィーネなのだというデマカセを使ってまで僕を引き込んだのだから!)

 

これまでの観察した得た情報からマリアがフィーネではないと確信しているウェルは背後から迫ってきた二課の人員にノイズを召喚し塵にする。

 

「いつまで待たせるんだ・・・。僕は英雄になる男だぞっ!」

 

英雄願望は強まってゆく燃え盛る命の灯しに比例しそれはドンドンと強まってゆくのであった。

 

 

 

 

 

 

 その日クリスと未来は現在顔を見ることすらできない状況で絶対安静となっている響の事で気が気ではなかった。

二人だけでリディアンから帰り道にて未来はクリスに問いかける。

 

「クリスは、響がどうなってるのか分かるの?」

「いや、あたしもなにも聞かされてねぇ。だけど、先輩は絶対に何か知ってる。」

「翼さんが。」

 

いつもは居て居るだけで場の空気を明るくする響が居ないだけで世界はこんなにも冷たかったのだろうかと二人はまだ残暑の日々が続いているにも関わらず肌寒さを覚える。

きっとこの寒さは身体が生理的に脳に伝える寒さなんて物ではなく心を照らす太陽が沈んでしまったから明けない夜が続いているせいなのだ。

 

(この子に言えるわけないだろ。アイツがあんな事になっちまっただなんて。大丈夫なら先輩なら直ぐに言ってくれるはずだなのに言わないって事は・・・。)

「あぁ、もう!」

「クリス?」

「なんでもねぇよ、なんでもないからさ。そんなに暗い顔してんなよな。アイツはお前にそんな顔して欲しくないと思う。」

「そうだよね、こんな時だから笑ってないと響に心配かけちゃうよね。」

 

互いに拙くも気が沈み込まないように会話を続ける二人から少し離れた場所で爆発音が立て続けに起こると微かに歌が聞こえてくる。

 

「先輩?」

 

聞こえてくる歌の主が誰かに気づいたクリスは荷物を放り捨てると歌声の元へと走って行く。

 

「待ってクリス!」

 

未来もその後を慌てて追いかける。

 

「危ないからついて来んな!」

「何もできないのは嫌だから!逃げ遅れた人を助けるくらい私にだって!」

 

言っても聞かないと判断したクリスは仕方なく着いてくる事を了承すると条件を一つだけ付ける。

 

「自分の命を一番に守れよ!」

「・・・分かった。」

 

 剣戟の音が響き渡る中を二つの刃と丸鋸が踊る。

 

「その男を!こちらに引き渡して貰おうか!!!!」

「できない相談デス!」

「残念だけど私たちには立花響よりもマムの命の方が大事。」

 

既にSEEDを発動させた翼が切歌と調を徐々に圧倒しながらウェルの手で溢れるノイズを出る端から殲滅していく。

 

「二課の装者には化け物しかいないのか!?」

「貴様さえいなければ立花はあのようなことにならずとも済んだのだ!」

「はっ!おかしな事を言う!それを言うならばあの日ツヴァイウィングのライブに見せかけたネフシュタンの鎧の起動実験なぞしなければ僕は立花響など殺そうとも思わなかったさ!」

「だからとて!だからとてっ!!友の命が消えかけている今!過去を振り返る暇など今の私にはない!」

「消えるぅ?だったら好都合だ!そのまま砕けてしまえば良い!」

 

独楽のように逆立ちの状態で回転した翼は切歌と調を弾くと脚部のスラスターに光の翼を展開しウェルへと迫る。

 

「捕った!」

「此処でジエンドを迎えるほど!僕は潔くはない!!」

 

こちらを殺す気は無くただ無力し連行しようとする翼をウェルは合気の応用で投げ飛ばす。

 

「なんだと!?」

「私たちを。」

「忘れて貰っちゃ困るデスよ!!」

 

空中でコンビネーションアタックを受けた翼がアスファルトに叩きつけられそのまま地を砕きながら近くの建物へとぶつかる。

 

「溢しはしないっ!立花の命を!」

「しつこい。」

「これだけやってまだ立つデスか。」

 

顔色の悪いウェルを背に庇う二人に向け鉛の雨が降る。

 

「鉛玉の大バーゲンだ!たっぷり喰らいやがれ!!」

「増援!」

「たかだか銃弾!屁でもないデス!」

 

鎌を回転させ切歌は銃弾を殆ど弾き飛ばす。

 

「先輩、命がどうとかこうとか詳しく聞かせて貰うからな。」

「聞いていたのか・・・。」

「聞こえたんだよ、あたしにもあの子にも。」

「あの子?」

 

クリスの視線を追い翼がそちらに目を向けるとそこには今にも泣きそうな顔でこちらを見ている未来が居た。

 

「小日向、どうして此処に。」

「嘘ですよね響が死んじゃうって。嘘ですよね翼さん!」

「悪趣味ではないつもりだ・・・。」

 

それが答えであったつまり未来はこのまま響に会うことができずに永遠の別れを迎えてしまうと言うことであった。

 

(あれは小日向未来。確かフィーネのデータでは神獣鏡への適合率はかなりのもの。)

「どうやら、女神は僕に祝福を与え続けるようだ。」

「ドクター?」

「あの少女を連れて行きます。二課の装者は切歌君に任せれば良い。」

「どういうつもり。」

「フロンティアへの道、彼女が最後の鍵だからですよ。」

「そう。」

 

愕然としている未来に向けてウェルは叫ぶ。

 

「小日向未来!立花響を救いたいならば!君は僕の手を取るしかない!」

「響を・・・。」

「耳を貸すな小日向!」

「おい行くなって!」

 

ふらふらとウェルの元へ行こうとした未来を止める翼とクリスにウェルから指示を受けた切歌が斬りかかる。

 

「悪く思うなデス!あたし達には失敗なんて許されないんデス!」

 

切歌の鎌を各々のアームドギアで受け止めた二人の前で未来の前に調が来る。

 

「貴女達に着いて行けば響は助かるの?」

「ドクターを信じるなら。私たちだって命を好きで奪ってるわけじゃない。」

 

鎌をたたき切った翼が調から未来を取り返そうとする。

 

「待て!小日向行くな!」

「私は響が助かるなら少しでも可能性のある方に賭けたいんです。だから、ごめんなさい。」

「小日向!」

 

あと少しで未来に手が届くその瞬か上空から槍が舞い降りると翼を吹き飛ばす。

 

「どうやら、私と貴女は幾度も交わる運命にあるようね。」

「マリア!そこをどけ!」

「悪いがそれは聞けない願いね。調、切歌!ドクターを連れて撤退しなさい!」

 

上空に突如としてエアキャリアが現われる。

 

「何処に隠してやがったあんなデカ物!」

「行くデスとドクター!」

「!逃がすと思ってんのか!」

 

エアキャリアに撤退していく切歌達をクリスは撃ち落とそうとするがそこに未来が居るのを見ると引き金を引くことができない。

 

「それではばっはは~い!」

 

煽るように別れを告げるウェルにクリスは神経を逆なでされるとウェル目がけて躊躇いなく引き金を引いてしまう。

 

「顔めがけて!?」

「しまったっ!」

 

だがそれは調に防がれマリア以外がエアキャリア内に入っていく。

 

「私には!フィーネを背負う責務がある!そして悪と誹られようとも為すべき正義がある!」

「!騙りかフィーネの名は!貴女自身はそうではないと言うのか!」

「そうだと言っておこう!あの日あの時立花響と拳を交えあの子を知り!そして祝福されて生きるべきあの子の命を奪う責務は全て私にある!」

「ならばウェルを渡せ!そうすればまだ立花は!」

「断る!戦いの罪を全て背負い私は月の落下を阻止する!」

「マリアぁぁぁぁぁああぁああ!!!ならば今此処で私は貴女を討つ!」

 

殺気が乗った刃がマリアへと迫るがその尽くが防がれ逆に翼が反撃を喰らう。

 

「そんな物で私を討つ事はできない!」

 

さらに背後から放たれたミサイルをマリアは見もせずに槍を投擲し破壊する。

 

「嘘だろ!?」

「殺気で丸わかりね。貴方たちの動きは。」

『マリア、早く。』

「分かってるわ調。」

 

短く答えたマリアは槍を分裂させ投擲することで翼とクリスを牽制しエアキャリア内に戻るとエアキャリアは姿を消しながら何処かへ飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 騒動が終り二課本部へと招集された翼とクリスは簡易メディカルチェックを終らせた後に司令室へと来ていた。

 

「来たか二人とも。」

「おい、おっさんなんでアイツの事を黙ってた!」

「そのことについてはすまないと思っている。だが、先のF.I.Sとの交戦の際に現われた奴らの拠点たるエアキャリアの尋常ならざるステルス性能から響君が助かる可能性が出てきた。」

「司令、それは一体。何故奴らの拠点のステルス性能と立花の命に関係が。」

 

翼の疑問にモニターに鏡の聖遺物が映されると資料を持つ緒川が弦十朗の代わりに答える。

 

「それについては僕の方から答えましょう。今映されている聖遺物は神獣鏡。これは了子さんが残したデータの中に記録されていた聖遺物です。この聖遺物は鏡にまつわる能力に加えた最大の特徴を持っています。」

「もったいぶんな早く言えよ。」

「すいません、ではその能力。それは凶祓いすなわち聖遺物殺し。この力を使えば響さんの身を蝕むガングニールの欠片を完全に除去することが理論上可能です。」

「てことはF.I.Sの奴らからそれをぶんどれば良いって事か。」

 

響が助かると聞いて喜びを隠しきれないクリスの横で翼が冷静に言う。

 

「だが、それを扱う者は。」

「了子君は既に神獣鏡の装者候補を絞り込んでいたんだ翼。」

「まさか、だとすればウェルが小日向を拐かしたのは!」

 

弦十朗はそれを頷いて肯定すると続ける。

 

「そうだ故に俺達のこれからの作戦目的はF.I.Sから未来君と神獣鏡のシンフォギアの奪取だ。適合者をさらったと言うことそれ即ち奴らは既にシンフォギアとなった神獣鏡を持っていると言うことだ。」

 

一度言葉を切ると弦十朗は翼とクリスを見る。

 

「未来君の救出と響君の救命なんとしてでも成し遂げるぞ!」

「はい!」

「ああ!」

 

威勢の良い返事を返す二人に頼もしさを覚える弦十朗は二課のメンバーに指令を出す。

 

「了子君の残したデータから奴らの狙う物は判明している!鳥之石楠船神コードネームフロンティアに向かう!GNドライヴを最大稼働にして行くぞ!」

 

二課の潜水艦が光を放ち決戦の海へと突き進む。

 

 

 

 

 

 

 ナスターシャの処置を終らせたウェルは未来が神獣鏡を纏う為の調整を施しながらマリアに言う。

 

「フィーネ、いえもうただのマリアで良いでしょう。」

「なにが言いたいドクター。」

「いえ、文句はありませんよ。急ぎフロンティアを浮上させますよ。」

「言われずとも既に向かっている。」

 

マリアとウェル目指す物は同じな筈なのにそこに致命的な違いがあることにマリアは気づかない。

それでも歌女と英雄になろうとする者は人類の救済へ向け突き進む。




スカイタワー「助かった~。」

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