機動戦姫ガンダムSG   作:鍋の中の白い奴シラタキ

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フロンティアの大地

 薄暗いフロンティアの回廊をウェルを先頭にしてマリア達は進みジェネレータールームへと到達する。

 

「此処がフロンティアの心臓ですよ。」

 

持ってきていたケースの中からネフィリムの心臓を取りだしウェルはフロンティアのジェネレーターへとそれを押しつける。

 

「いやはやとんでもない食欲だ。心臓だけになっても聖遺物を喰らい取り込む習性は据え置きとは。」

 

ネフィリムの心臓により起動するフロンティアに呼応してフロンティアと繋がっている大地に木々が生え生態系が構築されていく。

 

「それで大将こっからどうすんだ?」

「そうですね・・・。」

 

ウェルはデータベースとメインルームにそれぞれ向かっていったナスターシャとマリアが見えなくなるとゲイリーに言う。

 

「まずはナスターシャを始末してくださいもうあれは必要ないですからね。後はお客さんが来てからです。」

「あいよ。」

 

銃にウェルが解析し作った疑似GN粒子入りの弾丸を込めたゲイリーはナスターシャを追っていった。

 

「さてと僕も始めますか。僕の英雄譚を。」

 

メインルームではマリアが月の落下を食い止める為の方法を検索していたがその方法は一向に出てこずにフロンティアに格納されていたらしきモビルスーツやモビルドール等のデータがずらずらと現われる。

 

「今必要な物はこんな物ではない。」

「良い景色ですね。」

「ウェル!」

「そういきり立たないでくださいよ。」

 

メインルームに現われたウェルは操作盤の前に立つマリアをどかせると自身の左腕にリンカーを打ち込む。

 

「リンカー?何故貴方が。」

「これは僕とネフィリムの細胞から作りだした特別製なんですよ。」

 

再生し更にネフィリムの力を得たのか黒くなり赤く脈動する左腕を見せながらそう言うウェルはその手を操作盤に押し当てる。

 

「ワクワクするなぁ。これだけのエネルギーがあれば何でもできるようだ。」

「待てウェル!まだ早いはずだ!」

「事今回に関しては早すぎるなんてないんですよ!」

 

ネフィリムの力によりフロンティアと直接ウェルがフロンティアに命令を与えるとフロンティアの中心の塔から光の柱が宇宙に向かって屹立するとそれは月へと到達し手の形になると月を掴み地球へと引っ張る。

海から浮き上がり空へと浮かぶフロンティアの中でウェルは哄笑をあげる。

 

「やっちゃったなぁ!行きがけの駄賃に月を落としちゃいましたよ!!」

「月を!?ウェル貴様!世界を救うために此処に来たのではなかったの!?」

「救いますとも、英雄として僕が崇められる世界をね。」

 

先ほどよりもなお焦り操作盤を使いデータを調べていたマリアであったが操作盤が突如として光りを失う。

 

「どうして!?」

「ネフィリムによって動くフロンティアはネフィリムの腕を持つ僕の意のまま!つまり僕こそがこの星のラストアクションヒーロー!!」

「落とすことができるのなら元の軌道に戻せるはずだウェル!」

「うるさぁい!!!そんな都合の良い物有るはずがないだろぅ!?」

 

肩を掴み月を元に戻すよう言うマリアをウェルは平手で数度ぶつとマリアを地に伏せさせる。

 

「・・・セレナ、マム。私は何のために何のために悪を・・・。」

「そこで思い出にでも浸ってなさい。あぁそうだ月の落下で減った人類の増やし方でも考えておきなよ。態度を改めるのであれば英雄たる僕の横にでも置いてあげますよ。」

 

笑いながら去って行くウェルの後ろでマリアは今までの事が無駄だと突きつけられたことで心折られ涙を流していた。

 サブコントロールに居るナスターシャは聖遺物の権威とまで言われるその頭脳を活用し月を公転軌道に押し戻す方法を発見していた。

 

「方法はこれしか無いのですか。ですが今のマリアでは。」

『そんな悠長にしてて良いんですかねぇ。』

「ドクター!先ほどの揺れは貴方の仕業ですか。」

『そんなことよりも貴女は貴女自身の身を心配した方法が良いんじゃないですかね。』

「まさか、ドクター。」

 

銃声が響きナスターシャの左胸から血が溢れる。

 

「お役御免って奴だ。」

「ゲイリー・・・ビアッジ・・・。」

 

倒れ血の海を広げるナスターシャを見下ろすゲイリーの前にあるモニターにフロンティア内部の地図が表示されると道しるべが現われる。

 

「6番格納庫か。」

 

地図に従い向かったゲイリーが格納庫に入ると明かりが灯り彼の目の前に一機の緋色のモビルスーツが現われる。

 

「こいつぁ本物のガンダムじゃねぇか。」

 

異形のガンダムが目覚めの時を迎える。

 

 

 

 

 

 

 二課のメディカルルームにて意識が戻った未来は友里から軽く説明を受けていた。

 

「ギアを纏っていた時間が少なかったおかげで未来ちゃんの身体には異常は見られないわ。」

「私には?響は無事なんですか!?私のせいで響が!」

「響ちゃんは――」

 

未来に聞かれ響について説明しようとした時友里の言葉を遮るように響が入ってくる。

 

「未来!目が覚めたってホント!?」

「落ち着け!お前もまだ寝てなきゃ駄目だろうが!」

「でもクリスちゃん!」

「でももなにもないんだ!」

 

患者衣のまま部屋に駆け込んで来た響と寝ておくよう説得するクリスに加えて怒るべきか喜ぶべきか複雑な表情を浮かべる翼がやって来る。

 

「響!」

「未来!」

 

互いの無事に喜び抱き合う二人を見て顔を赤くして逸らすクリスの横で翼は医師から受け取った響のレントゲンを近くのモニターに映す。

 

「二人とも無事で一安心だな。立花の身体を蝕んでいたガングニールの欠片も小日向のおかげで無事除去されたからな。」

「そうね、二人の身体にはなんの異常も見られないわ。だけど安心をとって今は安静にしておいて。」

「わかったなら行くぞこの馬鹿。」

 

友里の言うように響をベッドに戻す為にクリスが抱え上げると未来の目に響の肩の傷が目に入る。

 

「その傷もしかして私のせいで。」

「違うよ、これは私の決意の証。未来のせいなんかじゃない。」

 

安心させるようにそう言う響であったがクリスの抱きかかえられる形で退室する形になりなんとも締まらなかった。

 

「見ての通り立花は驚くほど元気だ。むしろ体力が有り余っている。」

「そうみたいです。あの翼さんあの時はごめんなさい。」

「気を病むな小日向。私も蜘蛛の糸を垂らされた者の気持ちが分からぬ程浅慮ではない。だが私たちが貴女の身を案じていたことは忘れないで欲しい。」

「はい。」

 

 切歌と調は二課の潜水艦にて捕虜という名目で保護された後ギアペンダントを回収され二人部屋に入れられていた。

 

「私たちにできる事ってないのかな。」

「今は座して待つんデス。」

 

調にそう言いながら切歌は独りごちる。

 

「さっきの揺れはきっとドクターの仕業デス。やっぱりあたし達とドクターの目的は違ってたんデスよ。」

 

ベッドに寝転がりながらそう言う切歌は天井に向けて手のひらを向けると拳を握る。

 

「嫌な予感がするデス。」

 

内に居るフィーネに調は語りかけるも返事が返ってくることはない。

 

「・・・フィーネは本当に見てるだけみたい。なにも教えてくれない。」

「調、時代を作っていくのはあたし達デス。これからの世界はあたし達が歩いて行かなきゃいけないんデス。」

「そうだね切ちゃん。」

 

二人は手を合わせてベッドに沈んだ。

 司令室では先ほどのフロンティアの飛翔の後に放たれたメガ粒子砲を米国の戦艦が全滅する傍らGNフィールドで防いだ後にGN粒子の増幅炉を利用し潜水艦を浮かばせることによりフロンティアへ上陸しようとしていた。

 

「粒子残量は気にしなくて良い!今は最短経路でフロンティアに上陸するんだ!あの砲撃は躱せよ!」

「無茶言ってくれますよ本当に!やりますけど!」

 

そして天に座すフロンティアの大地に潜水艦が上陸すると少しして翼とクリスが司令室に入ってくる。

 

「来たな二人とも。響君と未来君は安静にしているな?」

「部屋に連れ戻すだけで一苦労だ。」

「二人は今身を休めています司令。」

「ならば良し。」

 

二人の様子を聞いた弦十朗は翼とクリスに命令を出す。

 

「現在此処フロンティアでは既にノイズの反応が検知されている。そしてそれらは真っ直ぐこちらに向かってきている上にノイズと異なる熱源反応も確認されている。」

「ノイズとは別の?」

 

翼が疑問を溢すとその正体がモニターに映される。

 

「あれは、ザク。」

「そうだどうやら此処には先史文明期のモビルスーツも保管されていたらしい。そこでだ二人にはこいつを使って欲しい。」

 

弦十朗がそう言うとモニターにプルーマのような何かが映される。

 

「これは試作型のモビルアーマーですか。」

「つまりだこれでやり合えって事か。」

「ああ、本当は俺も出たい所だが此処の指揮をしなければならないからな。頼んだぞ二人とも。」

 

命令を受けた二人が試作型モビルアーマーホワイトスコアに乗り込み出撃していく様子がモニターに映されていた。

 シンフォギアと同調しホワイトスコアにアームドギアが装着されると二人はノイズを撃滅し単調な動きをするザクを容易く撃破していく。

 

「こいつら無人機か!」

『さしずめモビルドールと言った所か。』

「まだGBNのリーオーの方が良い動きしやがる!」

『違いない!』

 

建造物にあと少しで到着するときに上空から高機動型ザクが降り立つとザクバズーカをホワイトスコアめがけて放つ。

 

『僕の世界にシンフォギアは必要ないんですよ!だから僕が直接廃盤にしてやろうじゃないか!』

「ウェルか!」

『貴様いつの間にモビルスーツの動かし方を!』

『このフロンティアの全てが僕自身だ!』

「傲慢がすぎるぞ!」

『英雄という者は須く傲慢さぁ!なぜならば自らの正義を疑わないのだから!故に僕の道こそが正義!』

 

サブアームから放たれるザクマシンガンを躱しながらクリスは応戦するようにガトリングを放ち翼は剣の雨をフルアーマーザクへと降らせる。

だがウェルの言葉通りフロンティアそのものとなったウェルの思うがまま動くフルアーマーザクは人のように滑らかに動くとクリスのホワイトスコアを鷲づかみにする。

 

『雪音!』

「いいやこれで良い!!」

 

コックピットハッチから飛び出したクリスが飛び出すとホワイトスコアが自爆しフルアーマーザクの腕を巻き添えにする。

 

「先輩!」

『心得た!!』

 

そしてクリスは背後から来たホワイトスコアの飛び乗ると足をホワイトスコアに固定するとロケットランチャーを連続して放ちフルアーマーの上からザクのコックピットを剥き出しにする。

 

「のこのこ来たのが運の尽きだ!」

「クソ!だが、忘れたモノは忘れた頃にやって来るぅ!!」

 

アンチリンカーが放たれそれを吸い込んでしまったクリスの適合係数が加速度的に下降していくが無理矢理にバックファイアに耐えたクリスがホワイトスコアからコックピットに乗り込むとウェルの顔を全力で殴りウェルが怯んでいる隙にソロモンの杖を奪い取るとコックピットから脱出する。

 

「返して貰った!ソロモンの杖を!」

「顔は駄目だろうがぁ!」

 

フルアーマーザクから放たれるミサイルであったが翼のホワイトスコアがそれからクリスを守ると大剣をフルアーマーザクの動力部に突き刺しクリスをコックピットに収容し退避する。

 

「慣れない事はするもんじゃない!」

 

フルアーマーザクの爆発の寸前に逃げ出したウェルがフロンティアの機能を使いメインルームにテレポートした直後フルアーマーザクは爆散した。

 

「無事か雪音!」

「なんてことはねぇ。下げられんなら上げりゃ良い。」

 

クリスはそう言うとどさくさに紛れ奪った普通のリンカーを打つ。

 

「ゲホッ。」

「雪音!」

「大丈夫だ。」

「帰ったらベッド行きだ。」

「分かってらぁ。」

 

ホワイトスコアはモビルドール達を倒しながら突き進む。

 

 

 

 

 

 

 血を吐きながらもなおナスターシャは操作盤を操りメインルームに居るマリアに語りかける。

 

「マリア、聞こえますか?」

『マム?えぇ聞こえるわ・・・。』

「そう、今は貴女一人ですね。」

『そうね、私一人よ。もう私一人・・・。』

 

モニターの向こうで暗い表情をするマリアをナスターシャは叱咤する。

 

「しっかりしなさいマリア・カデンツァヴナ・イヴ!貴女は一人ではありません!」

『でもマム!』

「貴女には私や切歌に調そしてセレナがついてます。だから前を向きなさい!貴女は最後の希望なのだから。」

『私が?』

「うっゲホッゴホッ!」

『マム!?』

「歌いなさいマリア、貴女の歌が世界を救うのです。歌には力があると世界に示すのです。」

 

ナスターシャは伝えるべき事を伝えるとマリアの居るメインルームの様子を世界中に中継するための操作を始める。

 

『・・・OKマム。貴女に捧げる世界最高のステージを始めるわ!』

「それで良いのです・・・。」

 

操作を終らせたナスターシャは今度こそ血の海へと沈んでいく。

 

『ありがとうマム。姉さんの事、後は私に任せて。』

「あぁ、セレナ。そこに居たのですね・・・。」

 

マリアの元へ向かう少女の背をナスターシャは最期まで見続けていた。

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