機動戦姫ガンダムSG   作:鍋の中の白い奴シラタキ

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流派・東方不敗

 午前五時に普段であればまだ寝ている時間帯に目覚まし時計のベルが鳴る。

 

「もう、そんな時間?五時じゃん・・・。」

 

ベルを止め二度寝に入ろうした響であったが布団を引っぺがされる。

 

「おはよう響。走りに行こう!」

「えぇ・・・まだ五時だよ?」

「人が居ない時間からならしていかなくちゃ私と一緒にリディアンに行くんでしょ?」

「そうだけど・・・眠い。」

 

寝ぼける響を抱き起こし自身と同じく運動用のジャージに着替えさせながら未来は以前と比べて痩せた響の身体に罪悪感を抱く。

 

「ご飯ももっとたくさん食べないとね。」

「・・・喉を通らないんだ。」

「運動すればお腹も空くよ。」

「そうかなぁ。」

 

着替えを終らせ響は未来に手を引かれながら玄関へと向かう。

 

「やっぱり明日からにしようよ。」

「思い立ったが吉日だよ。それに運動するのはこの町じゃないから大丈夫。だれも響を責めたりしない所だから。」

「私は未来を信じるよ。」

 

およそ数ヶ月ぶりに外へと出た響は身を刺す外気の冷たさに震える。

 

「寒い。」

「まだ日も出てないからね。」

 

二人はリディアンがある街へと向けて始発の電車を利用して向かっていった。

 リディアン周辺の街をウォーミングアップとして走りその後にマギーから渡されたメニューに従い運動し続けることおよそ一ヶ月で響は最初の頃のへなちょこ具合が嘘のように体力と食欲を取り戻していた。

 

「こうして運動してるおかげかライトニングフラッグの動きのキレも良くなった気がするんだ!」

「やっぱり凄いよ響は、もう私より体力ついたんじゃない?」

「まだまだだよ!」

 

こうして運動を行う時間帯は以前早朝や深夜などの人気の少ない時間帯であるが着実に響は以前の明るさを取り戻していっていたが。

 

「やっぱりまだ学校はいけないの?勉強は私と一緒にしてるから大丈夫だと思うけど。」

「・・・みんな私が居ない方が良いみたいだから。」

 

そんなことはないと未来は言うことができなかった。

彼女の胸の中では未だにあの日ライブに誘わなければせめて自分も一緒に行っていればと言う思いが残っているからである。

 

「ごめんね、響。私のせいでこんなことに・・・。」

「未来のせいじゃないよ、あんなこと誰にも予想できないんだから。予想できるならそれこそニュータイプだよ。」

「でもごめんね。」

「そんな顔をしないで。私は未来には笑ってて欲しいから。」

「私も響には笑ってて欲しい。」

「なら、二人でどんな時でも笑っていられるように生きようよ。」

 

自分は自然災害に巻き込まれただけであり未来がそれを気にすることはないと言う響に未来は少しだけ救われていた。

 

 

 

 

 

 

 響が外への恐怖を克服しつつある間にGBNではキョウヤとロンメルが立てたブレイクデカールを撲滅する作戦の第一段階が行われようとしていた。

 

「君には危険な役回りをさせてしまい申し訳ない。」

「気にしないでください大佐。これは俺がGBNを守りたいからやっているのであって大佐が気に病む必要はありません。」

「そう言ってくれると気持ちが軽くなるよ。」

 

初心者風に変装した自身のフォースメンバーを見送ったロンメルは天井を仰ぐ。

 

「掛かってくれたまえよ黒幕。」

 

メッセージ欄が通知を知らせるの見たロンメルは姿勢を正し送られて来たメールを見る。

 

「総力戦をかけるか。乗るよその作戦に十分に勝機はある。」

 

キョウヤから送られてきた『信用できる精鋭ダイバーを集めた有志連合を結成する』というメッセージにロンメルは乗ることにした。

 

「データに証拠が残らなくともリアルさえ突き止めれさえすれば問題は無い。」

 

 

 

 

 

 

 響はその日一人で外出していた行き先は勿論リディアンのある街である。

ジャージ姿の響の後ろを危ない雰囲気を放つ少女が追っていることに彼女は気がついていない。

一通りのメニューを終えた響が日が昇ってくるの見ながら自販機で飲み物を買いそれを口に含み火照った身体をクールダウンさせる。

 

(そろそろ帰らないとな。)

 

帰ろうとして駅のある方向へと向かおうとした瞬間に背後から頭部に衝撃に襲われる。

 

「あぐっ。」

 

いきなりの事に倒れ込んだ響を殴ってきたであろう犯人が近くの路地裏に足を掴んで引っ張っていく。

 

「ようやく見つけた、あの人を殺しておいてよくものうのうと・・・。」

「っ!」

 

痛む頭を抑えながら見上げた場所には暗い路地裏でバールを振り上げるクラスメイトであった。

 

「あ・・・。」

(やっぱり私は死んでた方が・・・。)

「あの人が死んだのになんでお前なんかが!立花ぁ!!!」

 

リハビリを終え復学した響を最初に人殺しと糾弾したクラスメイトの少女が力一杯に響にバールを叩きつけるとそれが胸に当たり嫌な音が聞こえる。

 

「うっ、あぁ・・・。」

「死ね!人殺し!死んであの人を返して!!!」

 

血が口から溢れ始めに殴られた場所から出血していたのだろう視界が赤く染まる。

 

(ごめん未来・・・もう会えないや・・・。)

「うぁぁぁぁあ!!!」

 

トドメの一撃が振り下ろされんとしたとき少女の背後から現われた何者かが少女の腕を掴む。

 

「何をしておる。」

「誰!?」

 

紫色の中華服を着た初老の男が万力の如き力で少女の腕を握りしめる。

 

「何をしておると聞いておるのだ!この馬鹿タレがぁ!!!」

 

怒りを滲ませる声を上げた男が少女に手のひらを押し当て吹き飛ばすと響に近寄る。

 

「安心せいあの女子は殺しておらなんだ。峰打ちよ。」

 

殴られていた響の身体を触り痛みに呻く響を見て意識があるのを確認すると男は響を優しく抱き上げる。

 

「うぁ・・・。」

「喋らずともよい。だが眠ってはならん。待っておれ安全な場所に連れて行ってやろう。」

 

朦朧とする意識の中で響は男に抱えられてどこかへ連れて行かれる。

そして彼女は気がつくとどこかの屋敷の畳に敷かれた布団の上に寝かせられており誰かが話す声が聞こえる。

 

「お主の子の不始末を儂が一つ拭いてやろうというのだ。友の頼みくらい聞いてくれて構わんだろうよ。」

「好きにすると良い。儂は既に表からは身を引いておる。この屋敷もただいたずらに広いだけだ。国を離れるまで好きに使うと良い。」

「素直に礼も言えんとは、すっかり頑固爺になりおって。」

「貴様よりはまだ若い。」

 

気配が一つ離れていくと響を此処に連れてきた男が近づいてくると血で汚れた彼女のジャージを脱がせる。

 

「この程度であれば。」

 

そして男は懐から何やら銀色の粉末を取り出すとそれを傷口に振りかける。

 

「調べた通りならお主は耐え生きるはずよ。」

「あぐっ!」

 

尋常ではない熱が傷から響を襲い思わず呻き声が漏れるがその代わりとして傷がみるみる塞がっていく。折れていたはずの骨すらも逆再生の如く治っていったのだ。

やがて傷が治り熱が引くと響は深い眠りにつく。

 

「やはりな、この者が求められる者か。だが弱すぎる。」

 

数瞬の間男は何かを考えると不適に笑う。

 

「決めたぞ、儂が一つ鍛えるとするか。」

 

近くの木に止まっていた鳥が男の放つオーラに気圧され飛び立っていった。

 

 

 

 

 

 

 朝を過ぎて昼になろうとしても帰ってこない響を案じて外を探していた未来だったがいつも行っているリディアンの周辺にもこの町にもおらずにどうしようもなくなり一旦響の家に帰ってくるも彼女は何をすれば良いのか分からなくなっていった。

 

(私が一人で行かせちゃったからだ。)

 

まだ早かった一人にするには早すぎたのだと帰ってくる頃に再び貼られていた誹謗中傷の貼り紙を見てそう思っているとインターホンがなる。

 

(誰?)

 

何も考えずにインターホンに応じて彼女は早速後悔した。

 

「お父さん!?」

「やっぱり此処に居たんだな!未来今すぐ帰るぞ!」

「嫌だ!私が居ないと響は一人になっちゃう!」

 

玄関が叩かれる。

 

(閉めてなかった!)

「開けなさい!私たちは未来が心配なんだ!」

 

リビングから玄関に飛び出し玄関扉を開かないように鍵を閉めようとするが未来の目の前で玄関が開き空ぶった腕を父親に掴まれる。

 

「帰るぞ!此処にいちゃいけない!」

「なんで!?私のせいで響はこんなことになってるのに!だから私がせめて!」

「居て何ができるんだ!これ以上心配をかけさせないでくれ!」

「いや!離して!」

 

大人の男と少女その力の差は歴然であり未来は無理矢理車に乗せられると彼女の父親は直ぐにエンジンをかけ車を発進させる。

 

「どうして!?ただ親友の側に居ることも許してくれないの!?」

「何度も言っただろう!未来一人居たところで響ちゃんや彼女の家族の現状は何も変わらないって!」

「だって私がライブになんか誘わなかったら!」

「もうこの数ヶ月で果たしただろう!?響ちゃんに関わるのをやめろとは言わない、だが世間のほとぼりが冷めるまではおとなしくしててくれ。」

「お父さんなんて大嫌い!!!」

 

父親のハンドルを握る手に力が入る。

 

「未来が無事ならそれで構わない。」

 

後部座席で嗚咽を漏らす未来を父親は敢えて気にしないようにした。

 

 

 

 

 

 

 三日程の日が経ち響はようやく目を覚ます。

 

「あれ?私、生きてる。」

 

布団から身を起こし知らない部屋に何故かある自身の着替えやGBN関連の物に目を白黒させていると自分が襦袢を着せられている事に気がつく。

 

「なにこれ・・・。」

 

状況を飲み込めずに困惑している響であったが部屋の入り口らしき障子戸が開くと男が入ってくる。

 

「目を覚ましたか。うむ、良く耐え生き延びた。」

「だ、誰ですか。」

「儂か、なにただの耄碌爺よ。とこれまでなら言っておったが弟子には答えるとしよう。」

「弟子!?」

「そうだ!お主は弱い、故にあのような小物に襲われるのだ!」

「でもそれは、私が悪いから。」

「ならば、お主は死にたいのか?」

「それは・・・。」

 

死を望むのかそう問われた響は何故かあのライブの日に見た光景を思い出す。

 

『生きるのを諦めるな!』

 

天羽奏から送られた言葉とその直後に見た光その中の。

 

「・・・ガンダム。」

 

エクシアを。

 

「私は、死ねないです。私は生きるの諦めちゃいけないから。」

「その意気よ。よってお主はこれよりこの流派・東方不敗!マスターパヴァリアの弟子となるのだ!儂の持つ全てをたたき込んでやろう!」

「は、はい!・・・パヴァリア?アジアじゃないんですか?」

「アジアには此処日本に儂と同等の男がおる。」

「あ・・・。」

「どうした?」

 

寝起きからようやく覚醒した響が家に居るだろう未来の事を思い出すと響の顔を見て察した東方不敗が言う。

 

「お主の友なら父親に連れ帰られたよ。本人にとっては不本意だったろうがな。」

「私、多分しばらく帰れないですよね。だったらその方が良かったです。未来、誰にも言わないで来たって言ってて私はそんな未来に甘えてたから。」

「そうか。」

 

東方不敗は庭の枯山水を見ながら言う。

 

「お主はこれより力を得る。あの日生き残ったことに罪を感じるのならば、得た力で善を為すが良い。良き行いには良き物が返る。」

「はい。」

「名は?」

「立花響です。」

「では響よ、1週間後より修行を始める。それまでの間に受けた傷を治せ。見たところ食って寝れば治る段階だ。」

「分かりました。」

 

戸を閉め去って行く東方不敗の気配を感じながら響は当然のごとくあるダイバーギアを起動すると未来からメッセージが来ていることに気づく。

 

『絶対また会いに行くから。』

「私も絶対また会うよ。・・・だから私は成るんだ、ガンダムに。奏さんみたいに。」

 

リアルで再会できるのはリディアンに入学する時期付近になることをこの時の両者には知るよしもなかった。






響「・・・ガンダムだ。」
奏「ん?」
響「私がガンダムだ!」
奏「なに言ってんだお前!?」
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