機動戦姫ガンダムSG   作:鍋の中の白い奴シラタキ

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可能性はゼロじゃない

 ゲームマスター直々にバグの源であるイブの妹サラを削除すると宣言され一晩が明けた。

 

「・・・呆けておるな。」

「え?・・・すいません。」

「責めてはおらん。」

 

明鏡止水の為の精神修行においてサラの事を考えていた響は訃堂にそれを見抜かれる。

 

「何に気を取られる。」

「・・・世界の為に一つの命を消す事についてどう思いますか?」

「儂であれば一つの犠牲で救われるのならば許容しよう。それが上に立つ者の責務よ。」

「私はどちらも救いたいです。犠牲の上に成り立つ世界なんて嫌です。」

 

竹刀が投げられ響はそれをキャッチする。

 

「果敢無き哉。」

「師匠。」

「どちらも救いたい素晴らしき事よ。だが、力なき者の語る理想ほど空しく悲しき物はない。」

 

竹刀同士がぶつかり合う音が響く。

 

「雑念を払え、貴様が守るべくは個人ではなく国よ。剣となるのだ響。」

「それでもと言い続けるって誰かは言ってました。だから私はそれでも両方救いたいです!GBNもサラちゃんも!」

「・・・あれか。あの男も自らの世界を守ろうとしているまでよ。」

「ゲームマスターと知り合いなんですか?」

 

道場に竹刀のぶつかる音が響くと響の持つ竹刀が根元から砕ける。

 

「受け流せておらんぞ。」

「すいません!でもまだ拳があります!」

「意気は良し。」

 

少しの間は打ち合えてはいたがやはり敵わず響は関節技を決められ動きを止められる。

 

「思いだけは十分よ、だが貴様には決定的なまでに力が足りぬ。」

「分かっています。」

「理想を叶えたくば力をつけよ。でなければ貴様は全てを取りこぼすことになる。」

「全てを・・・。」

「貴様は既にあの世界を一度は救っている。」

「あれはみんなが手を取り合えたからです。」

 

訃堂は自分個人の力ではマスダイバー達からGBNを救えなかったと言う響を見てかかと笑う。

 

「だが結果は救っている。誇れ。一度救った世界二度救うのは容易かろう。」

「師匠!」

「この世界では貴様には力が足りん。だが、あの世界の貴様には思いと力の二つがある。故に取りこぼすなよ。」

 

不器用ながらも両方救ってこいと激励した訃堂は道場から出て行く。

 

「事が終るまではあちらに集中すれば良い。」

「・・・!ありがとうございます!」

 

背に響からの礼を受けながら自室へと戻っていく訃堂は少しおかしそうに笑う。

 

「あやつめとんでもない拾い物をしてくれおった。あの娘、武の才に溢れておるわ。なにより、叶わぬ理想に燃えていた儂を思い起こさせる。」

 

この男もまた変わったのか変えられたのか。

 

 

 

 

 

 

 しばらくの修行の休みを言い渡された響は道場の片付けを済ませると早速GBNへとログインするとサラの捜索を開始した。

 

「早く見つけないと、サラちゃんが!」

 

飛行形態のライトニングフラッグを駆りヒビキはサラと行ったことのある場所を回ったがやはり今までと同じように見つからない。

 

(アナウンスがないって事はまだ無事なんだ。)

『前方!前方!』

「前?」

 

前を見ろというハロの言葉に従いモニターに映る機影を拡大すると運営のガードフレームが少し滞空した後に飛び去っていくのが見える。

 

「もしかして!」

 

念を押しガードフレームが完全に飛び去ったのを確認してからヒビキはライトニングフラッグをガードフレームが居た空のしたにある森に降ろす。

 

「行こうハロ。」

『了解!了解!』

 

暗雲が立ち雨が降り始め冷えていく森の中をヒビキとハロがサラを探していると茂みの向こう側から微かに嗚咽混じりの声が聞こえる。

 

「・・・会いたいよ、リク、みんな。」

 

声が聞こえた方に駆けていくヒビキを別方向に行こうとしていたハロが慌てて追いかける。

そして茂みを抜けると底には大木の洞の中で雨宿りをしているサラが居た。

 

「サラちゃん、良かった無事で。」

『見つけた!見つけた!』

「なんで来たの?」

「生きてて欲しいからじゃ、駄目かな?だから、ビルドダイバーズの人達の所に行こう。」

 

手を伸ばすヒビキを見てサラは首を横に振る。

 

「私は生きてちゃいけないから。私が居たらみんなが困るから。」

「そんなことないよ!生きてて迷惑な命なんてない!」

「でも私のせいでバグが!」

「諦めなかったら方法が見つかる筈なんだ!」

 

サラをビルドダイバーズの元へ連れて行こうと説得しているとヒビキがやって来た方とは別の方向の茂みが揺れる。

 

「キョウヤさん。」

「先を越されるとはね。」

「見つかりましたかサラちゃんを助ける方法。」

「それはまだ分からない。だけど僕は何とかしたいと思っている。」

 

ヒビキの意識がキョウヤに向いた隙を突き逃げだそうとしたサラをキョウヤが呼び止める。

 

「待ってくれ!僕たちは君を害する気はない!だから着いてきて欲しい!」

「・・・リク達には私の事を内緒にしてください。」

「サラちゃん・・・。」

 

逃げられないことを悟ったサラが条件を一つ提示するとキョウヤはそれを受け入れる。

 

「分かったビルドダイバーズには君の事を内緒にしよう。」

「でも、サラちゃんはさっきビルドダイバーズの人達に会いたいって!」

「私のせいで迷惑をかけたから。」

「ヒビキ君、此処は僕の顔を立ててくれ。」

「・・・分かりました。」

 

そうしてヒビキ達はキョウヤに連れられてアヴァロンのフォースネストへと向かっていった。

 フォースネストの城その中の客室で出された紅茶を誰も口をつけることなく時間が過ぎていく。

 

「サラ君、聞かせて欲しい。君はどうしたい。」

「・・・。」

 

幾度目の同じ質問にサラはカーバンクルを抱きしめるのみである。

 

「僕はELダイバーと共存できないかと考えている。GBNも君もどちらも助かる道があるはずなんだ。」

 

サラに希望を持たせようと言葉を尽くすキョウヤがエミリアに呼ばれる。

 

「隊長。ゲームマスターとロンメル隊長がお見えです。」

「分かった直ぐに行こう。ヒビキ君、サラ君を頼む。」

「分かりました。」

 

サラをヒビキに任せたキョウヤは応接室にて待っていたゲームマスターとロンメルの前に出る。

 

「なんのようだ。」

「しないで欲しいね、馬鹿に。ELダイバーが居るはずさ、此処に。」

「なにを根拠に。」

「ログの管理をしているのは、僕さ。お見通しなんだよ、全てね。」

「キョウヤ、いやチャンピオン。君にはこのGBNの頂点に立って居るという責任があるのだ。」

「ロンメル。」

 

奥の扉を見てロンメルが視線をキョウヤに戻す。

 

「まさかELダイバーに接して情でも湧いたと言うのか?彼女は人ではない。ただのデータだ。」

「だがロンメル君も彼女と接した筈だ!彼女は此処で生きている!僕にはとてもデータだけの存在とは思えない!」

「君が彼女の身を案じることには納得しよう!だがこれだけは忘れないで欲しい!このGBNには此処でしか生きていけない人が数多く居る!その人達からこの世界を奪わないでくれたまえ!」

 

ロンメルの訴えが聞こえていたのだろう隣の部屋に居るはずのサラがヒビキの制止を振り切って部屋から出てくる。

 

「私が居なくなればみんなが幸せで笑っていられるの?」

「サラちゃんが居なくなったら私は悲しいよ!」

「ヒビキ君、何故此処に。」

「ロンメルさん・・・。」

 

気まずそうに目を逸らすヒビキの腕から抜け出しサラがゲームマスターの前へと出る。

 

「・・・キョウヤ、私から一つ提案がある。」

「提案?」

「君はGBNを守りたいかい?」

「当然だとも。」

「なら、ゲームマスター。」

「なんだい?」

「修正パッチは完成しているのですか。」

「まだだね。ないからね、ELダイバーのデータが。作るのさ、これから。」

「完成にはどれだけの時間が?」

「十分だね、六時間もあれば。レイドバトルの日だね、実行は。」

 

ゲームマスターの答えを聞いたロンメルがキョウヤにアイコンタクトを送る。

 

「であればその間ロンメル隊とアヴァロンを中心とした有志連合を君に再び結成して貰いたい。できるなキョウヤ。」

「なに?」

 

まさかのロンメルのサラを助命するような行為にゲームマスターが低い声で呟く。

 

「結成自体はできる。まさかその猶予期間でどちらも助かる方法を見つけるのか?」

「そのまさかだ。奇跡が一度起きたこの世界二度目の奇跡だって起こらなければおかしい。」

「ロンメル、やはり君は。」

「だが勘違いをしないでくれたまへこれは最大限の譲歩案だ。方法が見つからなければ私は容赦なく良心の呵責なくサラ君を消す選択肢をとらせて貰う。」

 

ゲームマスターはキョウヤとロンメルの折衷案を受け入れるとキョウヤに言う。

 

「キョウヤ、知らせるのさ。捕獲を、ELダイバーのね。」

「分かりました。ですがそうなると彼らは必ず来ます。」

「構わないさ。できないからね、なにも。彼女だからね、奇跡を起こしたのは。」

 

そして有志連合の再結成と共にサラの捕獲がGBN全体に緊急ニュースで知らされた夜アヴァロンのフォースネストでヒビキとヒロトと会っていた。

 

「ごめん、サラちゃんを守れなかった。」

「謝らなくて良い、時間はまだあるんだ。きっと助ける方法がある。」

「そうだね、きっと見つかる。」

「ああ。」

 

憎らしい程に澄み渡る星空に城の入口方面から声が響く。

 

「サラぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁああ!!!」

「この声リク君の。」

 

声の主がリクであることにヒビキが気づく。

 

「君とGBNの二つを助ける方法が見つかったんだ!だから待っててくれ!絶対に迎えに行くから!!!」

「凄いなあの人は、もう方法を見つけたのか。」

 

羨ましそうにヒロトはそう呟く。

 

「ヒビキさん、修正パッチが当てられる三日後のレイドバトルの日。きっとビルドダイバーズとのフォースバトルがある。キョウヤさんならそうする。」

「そこでリク君達を勝利させて意見を通せば。」

「ああ、イブの妹は救える。」

「助けよう、サラちゃんを。」

 

星空の元に二人は絶対に助けると言う意思を固めた。

 

 

 

 

 

 

 三日後レイドバトルの日。

 キョウヤによるELダイバーの削除が行われると宣言がなされた直後にビルドダイバーズよりなされた宣戦布告により始まった変則フラッグ戦のフォースバトルにおいてヒビキは未だに出撃せずにアヴァロンのフォースネストに居た。

AGEマグナムⅡが出撃し無双しているのを窓の奥に見ながらヒビキはサラの元に行く。

 

「サラちゃん。」

「ヒビキ。」

「私はサラちゃんに明日を生きて欲しい。だから生きるのを諦めないで。」

「酷だよ、希望を持たせると。」

 

ビルドダイバーズが追い詰められていく様子をサラに見せていたゲームマスターをヒビキは一瞥すると第七機甲師団の隊服からあの日のライブ会場で見た歌い戦う奏が纏っていたバトルコスチュームに着替える。

 

「なんのつもりだい、それは。」

「ガンダムです。」

「わからないな、訳が。」

「私がガンダムです。」

 

格納庫に向かいながらヒビキはサラに告げる。

 

「可能性は零じゃないなら、私は百パーセントにしてみせる。だから何度でも言うよ。生きるのを諦めないで。」

「信じて良いの?」

「信じて。」

 

そしてヒビキはアヴァロンの格納庫に納まっているガンダムエクシアウィングビートに乗り込む。

 

「ハロ、歌おう。」

『了解!ミュージックスタート!ミュージックスタート!』

「何故 どうして? 広い世界の中で♪」

 

ウィングが展開しGN粒子の光と共にウィングビートが空に舞い上がる。

 

「運命は この場所に 私を導いたの?繋ぐ手と手 戸惑う私のため受け取った優しさきっと忘れない♪」

 

遠くでラブファントム達を囲む第七機甲師団の皆がウィングビートに気づく。

 

「ようやく出たかヒビキ君。」

「ロンメルさん!最初に謝ります!私は今から!有志連合を裏切ります!」

「なに!?」

 

わざわざ通信を繋いでそう言ったヒビキにロンメルが驚くと彼の周囲のガンプラがGNツインバスターライフルに一掃される。

 

「なんのつもりだヒビキ君!!」

「私は命を諦めない!!!」

 

高らかな宣言に続くようにアースリィガンダムが周囲のガンプラを襲う。

 

「ヒロト!?どうして!?」

「すいません、でも俺には守らなきゃいけない約束がある!」

「抑えろ!所詮は一機だ!」

「コアチェンジ!アーストゥマーズ!」

 

マーズフォーガンダムにコアチェンジしたヒロトもイブとの約束の為に奮戦をはじめた。

ウィングビートはGNツインバスターライフルの冷却が終ると二発目をダブルオースカイを囲む有志連合に放つが半ばまで進んだところでAGEマグナムⅡに防がれる。

 

「歌が聞こえると思ったら君か!」

「そうだ!歌が聞こえたら私が来た合図だ!」

 

独特な形状のGNランスを振るいダブルオースカイに接近するガンプラを両断する。

 

「無事か少年!」

「ヒビキさん!はい、無事です!」

 

並ぶ二機のガンプラの上空からさらにもう一機ガンプラがAGEマグナムⅡの不意を打ち吹き飛ばしながら降り立つ。

 

「あれも援軍?」

「はい、来てくれたんですね!オーガさん!」

 

赤い鬼のような機体ガンダムGP-羅刹がAGEマグナムⅡに対して構えながらダブルオースカイとウィングビートに通信を入れる。

 

「リクお前との決着はまだ着いていない。こんなところで他の奴に倒されるな。それとお前、不味いバトルをして足を引っ張るなよ。」

「逆に牽引しますよ。」

「言うじゃねぇか。」

 

逆行を浴びながらAGEマグナムⅡが三機の前に降り立つ。

 

「三対一か。丁度良いくらいだ!」

「チャンピオン!俺達はサラを絶対に助けます!」

「ならば証明して見せろ!リク君!」

 

雄叫びを上げながら四機のガンダムが激突した。




次辺りで過去編は最後なワケだ
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