機動戦姫ガンダムSG   作:鍋の中の白い奴シラタキ

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撃槍、砕くことあたわず

 無重力空間によってでしか精製することのできない合金が用いられているために優先的に建造されていた二機のモビルスーツがソット・ヴォーチェへと搬入される。

 

「あれが私のガンダム。」

「となりますが、現在アガートラームが使用不可であることから実戦へと投入されるのはまだ先となるでしょう。我々が運用するガンダムタイプのモビルスーツには共通してシンフォギアから発生する各種能力を伝播させパイロットである貴女方装者を保護する必要がありますので。」

「仕方のないことよ。それにしても機体の完成が随分と早かったわね。」

「ナスターシャ教授の残したプロメテウスの火があってのことです。」

「マムの残した灯り。明日を照らす炎。」

 

自らに割り当てられることになるガンダムセレナーデをモビルスーツの格納庫を見渡せる部屋にてマリアが整備士長と眺めているとアラートが響く。

 

「不味いなっ!」

「マリアさん!?」

「翼とクリスが出ることのできないならばガングニールとも適合している私であれば万が一であっても動ける!車両を一つ借りるぞ!」

 

特有の直感で響のみならず未来の危機を察知したマリアは部屋を飛び出すと丁度目に付いた翼のバイクを拝借するとモビルスーツ搬入の為に停泊していたソット・ヴォーチェから飛び出して行った。

 

 

 

 

 

 

 響の目の前でゾンビ兵が未来を同胞に変貌させようとDG細胞を感染させようと迫る。

 

「駄目だぁ!!!」

 

悲鳴に近い叫びを上げる響と心の底から面白そうに笑うガリィの前でゾンビ兵の牙がとうとう未来に振るわれるとなった瞬間に銃声が響きゾンビ兵が影縫いを施され動きを止められると緒川が近くのオブジェから溶けるように現われると未来を拘束する氷を砕き彼女を解放する。

 

「なんとか間に合いましたかっ!」

「緒川さん響も!」

「来たのは僕だけではありません。」

「それって。」

 

自らが描いた面白い未来が突然現われた緒川によって台無しにされ苛立つガリィは安堵する響を踏みつける。

 

「良かったわね愛しのあの子は無事よ。」

「・・・許せない。」

「あ?」

「守りたい人を守れない私がっ!!」

 

踏みつけてくる足を掴んだ響が掴む手に力を込めるとガリィの足に罅が入る。

 

「嘘でしょ?」

 

生身の人間では傷つけることさえ叶わないオートスコアラーたる自分の足を砕こうとする響にガリィが軽く恐怖を覚えていると後方より歌が響く。

 

「Granzizel bilfen gungnir zizzl.」

 

群がるゾンビ兵が放たれたガントレットにより吹き飛ばされ宙を舞うと槍となったガントレットを握りしめたマリアにより貫き裂かれただの骸となる。

 

「あらぁ、随分容赦のないこと。」

「その子から足をどけろ!」

 

加速からの刺突を行い響の上からガリィを吹き飛ばしたマリアが響を助け起こす。

 

「無事?」

「殺したんですか?」

「あの程度でオートスコアラーが倒せないのは貴女も――。」

「違います!あの人達をなんで!」

「分かっているはずだ!もはや彼らの心は食い尽くされていることが貴女にも!」

「でも、それでもなにか方法が!」

「無いわ、現実はアニメのように優しくはない。」

「・・・!ごめんなさい冷静じゃなかったです。」

 

実際マリアの言っていることは正しいと理解していた響はおとなしくマリアの後ろに下がる。

 

「もったいぶるな、あの程度で壊れるはずはない!」

 

二人の視線の先で土煙が晴れるとガリィがアルカノイズを召喚しながらゾンビ兵を吸収し先ほど響によって与えられた罅を修復する。

 

「お薬便りの駄目装者って聞いていたけど。思ったよりやるじゃない。」

 

襲い掛かるアルカノイズに槍を投擲し槍を軸に円状に蹴りを放つマリアは響達が退避したのを確認すると穂先を展開し広範囲にエネルギーを放つ。

 

(やはりガングニールは私をあまり好まないか!)

 

アガートラーム程適合係数が上昇していないためにギアからのバックファイアに襲われるマリアに氷の剣を手に纏わせたガリィが地面を凍らせ滑りながら迫る。

 

「決めたわぁ、私の相手は貴女!!」

「あいにくいだが共に歌う者は既に決まっている!」

 

正確にマイクユニットを狙う一撃を腕で防ぎ先ほど再生されたばかりの足に槍を振るい砕く。

 

「ちっ。量不足か。」

「トドメェ!!!」

 

追撃で放たれる突きをガリィはバリアを発生させると防ぎ突きの威力で後退するとテレポートジェムを砕く。

 

「また今度遊びましょう?」

 

撤退したガリィを見届けたマリアが膝を突くとシンフォギアのセーフティが起動しギアが強制解除される。

 

(この力があれば私は戦える・・・。いやガングニールはあの子の力だ。未練を持つべきではない。)

「マリアさん!」

 

目や口から血を流しガングニールのギアペンダントを見つめていたマリアに響が駆け寄る。

 

「心配はいらないわ。貴女達が無事でさえあるならばそれに越したことはない。」

「私、自分が不甲斐ないです。誰かを救いたいと手にした力でなにも救えなくて。切歌ちゃんと調ちゃんの想いも預かっていたのに。」

「取りこぼした物だけに目を取られるなとは言わない。だけど貴女に救われた者が居ると言うことも覚えておきなさい。」

「マリアさん・・・。」

 

多少ふらつきながらもマリアは響にギアペンダントを握らせる。

 

「過去は変わらない。だがこれからどうするかは貴女次第よ。そのためのガングニール(ガンダム)なんでしょう?」

「はい、そのためのガングニール(ガンダム)です。」

 

その手で救われた者の一人として響を励ますマリアであった。

 

 

 

 

 

 

 チフォージュ・シャトーで身体の修復を行うガリィが不機嫌そうなキャロルに泣きつく。

 

「怒らないでくださいよマスター!あんなのは流石に想定外ですよ。」

「もう想定外ではないな。ならば次は仕事をこなしてこい。」

「またあいつの相手ですか~?そんなにご執心ならマスターが相手をすれば良いじゃないですか。」

「修正が必要か?」

「冗談ですよ、冗談。や~んガリィこっわぁい。」

「相変わらず性根が腐っている。」

「そう作ったのはマスターの癖に。」

「認めたくないが過去のオレの過ちだな。」

「そこまで言います?」

 

そこまで言われては流石のガリィも本心から傷ついていた。

 

(東方不敗め。厄介な事をしてくれたか。)

 

此処には居ない男にキャロルは心の中で悪態をついていた。

 

 

 

 

 

 

 エルフナインによってA.B.E.L.に持ち込まれた希望である魔剣ダインスレイブの欠片。

それをシンフォギアの修復に当たり組み込む計画『プロジェクトイグナイト』が現在ソット・ヴォーチェ内に居る装者である翼とクリスに告げられた。

二つの聖遺物を同時に運用することが可能なのかと意図を込め翼がエルフナインに問う。

 

「そのような事が可能なのか?」

「可能不可能ではなく僕はしなければなりません。オートスコアラーの詳細なスペックは僕には与えられていませんが実際に戦ったお二人ならばその脅威はご理解しているものと思います。」

「ですが、オートスコアラーはDG細胞によりモビルスーツへと変身するよう進化しています。」

「その点に関しても問題はありません此処A.B.E.L.で運用される装者の搭乗するガンダムタイプのモビルスーツにはシンフォギアの能力であるバリアコーティングなどをギアを纏った状態で操縦するときに限り機体に展開する機能を保有しているのはご存じの筈です。」

 

ダインスレイブの力をモビルスーツ搭乗時に使用する際の予想図をモニターに表示しながらエルフナインは続ける。

 

「ですがダインスレイブとは一度抜けば血を啜るまでは鞘に収まらないという伝承を持つ魔剣。」

「なにが言いてぇんだ。」

「シンフォギアには決戦機能があります。一つ目は過去二回観測されたエクスドライブ。そしてもう一つが響さんが過去一度だけ発動させた暴走。」

「あれが決戦機能だと!?ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ!?」

「リスクを超えなければキャロルには勝てません。」

 

カディンギル跡地におけるネフィリムとの戦いでウェルにより暴走を引き起こされ尋常ではない様相を見せた響を思い出したクリスが淡々と説明を続けるエルフナインに声を荒げるが翼はデュランダルとガングニールの同時使用を行っていた響を思い出していた。

 

「立花はデュランダルを制御して見せていたならば欠片程度であれば私たちに使えぬ道理はない。そうだろう雪音。」

「確かにあの馬鹿がやれたんだ。あたしらにもできるか。怒鳴って悪かったな。」

「いえ僕が不躾でした。それではプロジェクトイグナイトを組み込んだ強化型シンフォギアの作成に僕は取りかからせて頂きます。」

 

断りを入れ与えられたラボにエルフナインが向かって少し立つとアルカノイズの出現を知らせるアラートが響く。

 

「アルカノイズっ!何処に出た藤尭!」

「リディアン市街です!映像でます!」

 

映像が映し出されるとそこではアルカノイズの猛攻を掻い潜り未来を庇う響が映っていた。

 

「付近で援護にいける者は!」

「それが誰も応答しません!」

「先手を打たれたかっ!」

 

付近に居たA.B.E.L.の人員はアルカノイズによって既に分解されていた。

 

 

 

 

 

 

 雨に打たれながら響は未来にアルカノイズが触れないように攻撃を躱し続けるが脅威はアルカノイズだけではなかった。

 

「がぁぁああぁああ!!!」

「この人もっ!ごめんなさい!」

 

DG細胞に感染させられ凶暴化した市民がDG細胞を通して与えられる響を襲えと言う命令に従い襲い掛かるが意識を刈り取る技を放った響により身体に傷をつけられることなく無力化される。

 

「でも分解しちゃうゾ!!」

「零れてくっ!みんな、みんな!!」

 

追い立てて来るミカによって命令されたアルカノイズが市民を分解する。

 

「響、戦うことを恐れないで!」

「未来?」

「私はあの時響と戦って響の拳と歌に救われた。それは翼さんもクリスもそれだけじゃないマリアさんや調ちゃんに切歌ちゃん。みんな響に救われてる。」

「戦うことを怖がってなんて。」

「怖がってるよ。私は響の事ならなんでも分かるから。響は誰かを傷つけたいからガンダムになるの?」

 

急ブレーキをかけた響は未来を下ろすと自分に向かってくるミカに向き直る。

 

「誰かを助けたいから私はガンダムになる。ありがとう初心を思い出させてくれて。もうこの拳を振るうことを恐れない。最速で、最短で、まっすぐに、一直線に届けてみせるよ。キャロルちゃんに私の想いを。」

「やっとまともに歌う気になったのか?」

「もう、迷わない。」

 

雨があがるとどこからともなく口笛が吹くと響が歌を唄い拳を握りしめミカに向けて駆け出し道中のアルカノイズを物ともせずに直線で駆け抜けミカを殴りつける。

 

「あっは♪」

 

ツインテールから火を噴かせたミカが加速するとカーボンロッドを取り出すと響を思いっきり殴りつけ吹き飛ばすが脚部ジャッキを展開し跳ね戻ってきた響に勢いのままに殴りつけられ宙を舞うとそこに響がトドメの蹴りを入れようとする。

 

「あじゃばっ!?」

「もう何も零さないっ!!」

 

人形であるにも関わらず苦痛に顔を歪めるミカに罪悪感を抱くも破壊するために蹴りを叩き込むがミカの身体が突如として水になり崩れ去る。

 

「っ!?」

「ざぁんねん、それは水に映った偽物よ。」

「でもいい線行ってたゾ!」

 

街灯の影に隠れていたガリィが種明かしをすると響の真下に陣取っていたミカがカーボンロッドを響に射出しマイクユニットを破壊する。

 

「あっがぁぁあぁあああ!!」

「響ぃいぃぃい!!!」

 

克ち上げられた響がギアを粉々にされながら地面に落下するとシンフォギアが解除され罅の入ったギアペンダントが彼女の目の前に落下する。

悲痛な声をあげながら駆け寄る未来を見てガリィがミカに帰るよう言おうとすると響は未来を自分の後ろにやりながらギアペンダントを握りしめながら立ち上がる。

 

「まだ・・・終ってない!立っている限り私は負けていないっ!!」

「なに言ってんのよ。もう唄えないくせに。」

「まだやるのか!?良いゾ!もっとやるゾ!!」

「ちょっとミカちゃんお仕事は終ったんだから。」

 

もう帰ろうというガリィ前で響の握るギアペンダントの中で無意識的に行使された響の錬金術を受けガングニールが聖詠なく励起すると一時的にかつての槍としての姿を取り戻し宙に躍り出る。

 

「私がガングニール(ガンダム)だ!!!」

 

槍が響の裸体にシンフォギアのようでありながら異なるプロセスを持って纏われる。

 

「確かに砕いた筈だゾ。でももう一回遊べるなら何度でも砕いてやるゾ!!」

 

持ち前の巨大なかぎ爪を振るってくるミカを片腕で受け止めた響は空いている手を握りしめ拳を作るとガントレットが槍に変化し腕を覆う。

 

「でやぁ!!」

「ざんばらぁ!?」

 

殴り貫かれ腕を破壊されたミカが地を砕きながら吹き飛ぶと響はゆらりと舞いながらミカに迫る。

 

「ね、狙いが定まらないんだゾ・・・。」

「酔舞・再現江湖・・・。」

 

舞を舞うごとにフォニックゲインが高まると残像を発生させながミカに連撃を入れると共にフォニックゲインを流し込む。

 

「デッドリーウェイブ!!」

 

耐久限界を超えたミカが全力をついぞ出すことなく全身に亀裂を入れながら立ち尽くす。

 

「ばぁぁあくはつっ!!!」

「ぞなもしっっ!!!」

 

流し込まれたフォニックゲインがミカを爆散させた。

 

「とんでもない化け物を起こしちまった・・・。」

 

狙いが自身に向く前にガリィはテレポートジェムを砕くと撤退した。

ミカを撃破した響からガングニールがほどけると元の罅の入ったギアペンダントとなり地に転がる。

 

「響!!」

 

ふらつく響が倒れる前に未来は支える。

 

「ごめん未来、ちょっと眠いや。」

「響!?」

 

全体重を未来に預け寝息を立て始めた響であった。

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