暗い宇宙を一条の光が走りザクが爆散する。
光が放たれた元に居るカスタマイズが施されたレギンレイズがスナイパーライフルをリロードし彼方にて的となっているザクを撃ち抜き二機目を撃破する。
「ターゲット2、撃破。次弾装填、ロック。」
指揮官機であろう角付きに狙いを定めたレギンレイズが引き金を引き撃ち抜く。
「目の良さはモビルスーツでも変わらないのは良いな。」
「マスター、次の指示を。」
「次は動いているのを倒せ。」
「オーダー、受諾。」
後方に佇むイナクトのパイロットからの指示を受けたフェルトが新たに出現した五機のザクへとレギンレイズの銃口を向けた。
巧みな動きで連携を取るザクと戦闘を行っているレギンレイズを観察しているイナクトのコックピットの内に通信が入る。
『想定より早くミカが破壊された。』
「つまりは俺に仕事が回ってきたか。」
『働いて貰うぞ。その身体とホムンクルスの代金分はな。』
「前払いされてんだしっかりやらせて貰うさ。」
『既に譜面を刻んだ機体は用意してある。』
「大盤振る舞いじゃねぇか。」
『評価していると言うことだゲイリー・ビアッジいや今はソネットだったか。』
銀髪を掻き上げたソネットがなんともなしに答える。
「名前なんてのは唯の記号で立場で変わるもんだ。その点で言えば今の俺はソネットって所か。まぁ好きに呼んでくれ。ところでだアンタまで宇宙に居るのはどういう了見だ?」
『計画の進行に必要な物の様子を見に来たまでだ。お前が気にする必要はない。』
「確かにそりゃそうだ。」
『オレの用事はすんだお前達もモビルスーツのならしが終わり次第シャトーへと向かえ。』
「了解。」
宇宙よりキャロルが拠点へと帰還した後に接近戦を許したがザクを撃破したフェルトが状況の終了を告げるとソネット共にシャトーへと向かった。
◎
怨嗟の声が響くひたすらに殺せ殺してくれと。
「殺したくない・・・私は、誰も。」
――――喰われるのだ世界が
――――白紙となるぞ世界が
九つの首を持つ蛇と共に現われる黒いノイズが人々を狂乱させ殺し合わせる。
――――蛇は来る
虹を放つ赤い鉄の巨人が全てを白紙へと戻していく文明のみならず命ですらも白紙の状態へと戻っていく。
――――傲慢な神により我らは波打ち際の砂の城のように消されるのだ
「どうして・・・どうしてこんなものを私にっ!!」
どこから聞こえてくるのか分からない声に響は叫ぶ。
風が吹き一面の荒野が響の視界に入る。
「どこ、此処・・・。」
荒野の果てで空が割れ暗雲が立ちこめると共に蛇が現われる。
「蛇・・・。」
だが現われた一機のガンダムにより割れた空の向こうへと押し戻されると空が元に戻る。
そして蛇を撃退したガンダムが響の元に近づいてくる。
「デビル・・・ガンダム・・・。」
目の前に来たデビルガンダムのコックピットが開くと触手が放たれ響に巻き付く。
「うわっ!?」
――――人の未来
――――神よりの解放
――――故に殺せ
――――殺してくれ
「殺さない!私は誰も殺さない!!」
踏ん張る響に巻き付く触手の量が増えていくとついに身体が宙に浮きコックピットへと吸い込まれていく。
――――我らの希望
――――アルティメットガンダムよ!
「待てよ。」
振るわれた槍の一閃がデビルガンダムの触手を切断し響が解放される。
「この子には帰るべき場所がある。お前等のくだらない恨み言に巻き込むな。」
「奏さん!」
「よ、また会ったな。ま、此処は夢みたいな場所だあれにとっ捕まる前にとっとと起きな。」
槍をぶん回しながら響を狙うデビルガンダムを牽制しながらそう言った奏は響をトンと押す。
「そう頻繁にこっち側に来るもんじゃないぜ。」
力が抜け倒れていく響はぼやけていく視界の中で困ったように笑う奏を捕らえていた。
◎
オートスコアラー最強と目されていたミカを響が初戦にて撃破したが彼女がギアのコンバーターを破壊されたにも関わらずに纏ったシンフォギアのような物は疑問として残っていた。
「立花の纏ったあれは一体・・・。」
「まるであたしやフィーネが使ってたネフシュタンみたいだ。」
「だがガングニールは欠片。完全聖遺物ではない。」
「答えはおねんね中のあの馬鹿だけが知るって事か。」
身体的外傷は不思議なことに一切無く唯の疲労と目されている響は現在メディカルルームにて寝かされていた。
ミカによって破壊されたガングニールのギアペンダントにも天羽々斬やイチイバルと同じくダインスレイブの組み込みと共に強化修復を行おうとしたエルフナインはゆっくりとではあるが自己修復を行っているガングニールのギアペンダントを見て目を細める。
「これは、一体。」
持ち上げた拍子にギアペンダントより黄金の粉がこぼれ落ちる。
「もしかして。」
自己修復という現象にここ最近知ったDG細胞の持つ三大理論に共通点を見いだしたエルフナインが採取した粉を顕微鏡で診ると息を呑む。
「DG細胞・・・いえ酷似していますがこれは全くの別物。これが響さんの驚異的な回復力やフロンティアショックに置いてのガングニールへの適合の正体とするなら。」
人体に有害ではない三大理論を持った物質として辺りをつけたエルフナインはダインスレイブの欠片をギアペンダントに近づけると彼女が組み込み作業をするまでもなくギアペンダントの方から欠片を取り込む。
「つまりデュランダルに適合したのもこの物質の持つ自己進化の力。」
ダインスレイブの欠片を取り込んだことで自己修復を終らせたギアペンダントにエルフナインが機能に問題が無いかを調べ異常無しと出たことに感嘆する。
「凄い・・・。」
これを使えばと考えたエルフナインであったが既に粉が採取できなくなったギアペンダントを分解することは今の切羽詰まった状況ではできないと考えると天羽々斬とイチイバルのギアペンダントの修復作業に再度取りかかった。
(どのように繋げば良いのかの答えは今示されました。なら後はそれを速く済ませるだけです!)
模範解答は偶然にも今用意されたことでエルフナインはやる気をみなぎらせると尋常ではないスピードで作業を進め始めた。
◎
一足早くチフォージュ・シャトーへと帰還したキャロルはガンダムダウルダブラをハンガーに納めると横に並ぶガラッゾに目を向ける。
「立花響、お前も俺も所詮は悪魔の手の内だ。」
「ポエミーな事を仰る。」
「来たか。」
自動操縦で格納されていくイナクトとレギンレイズを後ろにキャロルはフェルトを伴ってやって来たソネットを見る。
「あれに乗り呪いの旋律を譜面に刻まれてこいそれがお前の仕事だ。」
「俺はまだ死ぬ気はないぜ?」
「ぬかす、その身に俺が与えたファウストローブでそう死にはせんくせに。」
そう言われ面白くないと言わんばかりに肩をすくめるソネットを一瞥しキャロルは立ち去っていく。
「機体が死ぬ瞬間にテレポートジェムを使えば良いだろう。」
「最初からそうするつもりだよクライアントさんよ。」
ガラッゾを前にしたソネットが身を震わせる。
「ガンダムの借りは返させて貰うぜバルベルデのガキ。」
あの日折角手に入れたガンダムという魔性の力を自身から奪ったクリスに対して歪んだ感情を向けるが故に完全な肉体を得る際に彼女の母親の姿となったゲイリー・ビアッジはこれから起きる戦いへの高揚を抑えることができずにいた。
◎
キャロルに居場所を捕捉されぬように潜水しているソット・ヴォーチェは現在主砲として運用しているデュランダルのエネルギーを電気に変換し強化型シンフォギア作成に当てていた。
「先ほどエルフナイン君からこのペースで行けば後少しで強化型シンフォギアが完成すると報告が入った。」
「ようやくこの手で再び天羽々斬を振るうことができる。」
喜ばしい報告が入った瞬間にまるであざ笑うが如くに艦内をとてもない衝撃が襲う。
「なんだぁ!?底でも擦ったか!?」
「いえ衝撃は横からです!映像間もなく!」
宣言通りに直後に出された映像にはソット・ヴォーチェに向けてアタックモードで攻撃を仕掛けるウォルターガンダムの姿であった。
「敵のガンダムか!GN魚雷用意!」
「撃ちます!!」
放たれたGN魚雷は命中コースであったがビームによって爆破されウォルターガンダムがソット・ヴォーチェを海上に押し上げるように体当たりを行う。
「浸水確認!」
「思うつぼだがやむを得ん!浮上しろ!」
その様子を司令室の端で見ていた切歌と調が気づかれないように部屋を出ると響の眠るメディカルルームへと調の先導で向かっていく。
「突然飛び出して何するつもりデスか調?」
「時間稼ぎ、今必要なのは強化型シンフォギア完成までのあと少しを稼ぐこと。」
「でも無策だとどうにもならないデス。」
メディカルルームの前に到着した調が切歌に言う。
「無策じゃないよ。メディカルルームになら天羽奏が使っていたリンカーが保管されてる筈。」
「そんなに都合良く残ってるもんデスかね。」
「それに今戦えるのは私たちだけこのまま攻撃を受け続ければメディカルルームも水没しちゃう。」
ベッドの上で安静をとって寝かされている響を見て切歌がにやける。
「守りたい人が居るって言えば良いじゃないデスか。」
「嫌だ。切ちゃん以外にはそんなところ見せたくないから。」
「調~!」
感激した切歌が抱きつくのと同じタイミングで調がしゃがみ込み下部の冷蔵庫のロックを解除する。
「あった。」
「うぅ~。」
「何やってるの切ちゃん、行くよ私たちのガンダムの所に。」
「了解デス!シミュレーションの成果の見せ時デス!!」
最後に魘されているように見える響の手を調は少しだけ握るとモビルスーツハンガーへと切歌と共に向かっていった。
◎
モビルスーツハンガーにて二人はこっそりと自分達に割り当てられたガンダムツインエッジに乗り込む。
「ギアを纏うのは出撃してから。」
「合点デス!それじゃ行くデス!」
操縦を担う切歌がツインエッジを発進カタパルトに移動させるとそれに気づいた整備員達が必死に止まるよう叫ぶがそれを敢えて無視して開いていないハッチにビームライフルを向けると意図に気づいた整備員が第一隔壁を開くとツインエッジがそこに進み第一隔壁が閉じ出撃口が開き海水が流れ込んでくる。
ソット・ヴォーチェが沈まないようにツインエッジは迅速に出撃する。
「Various shul shagana tron.」
「Zeios igalima raizen tron.」
二人がリンカーを打ちギアを纏うことでツインエッジにシンフォギアの機能が反映される。
ビームサイズを構えたツインエッジが船体に噛みつくウォルターガンダムを引き剥がす。
『お前達何をやったか分かっているのか!』
「百も承知デス!!」
「今のうちに退避と強化型シンフォギアを完成させてください!」
それだけを言うと切歌はツインエッジを操作しウォルターガンダムを海底に押しやり調の操るソービットがウォルターガンダムを襲う。
「私一人にかまけてて良いのかしら?」
目論見どおりソット・ヴォーチェが近くの港に退避したと知らされたガリィがツインエッジ内の二人にそう言うと撤退する。
「まさか、上にも居るんデスか!?」
海上に飛び出したツインエッジがソット・ヴォーチェの居る自衛隊の港に着くとそこでは多数のアルカノイズとそれと応戦しソット・ヴォーチェを守る自衛隊の戦いが行われていた。
「今のガンダムじゃアルカノイズに分解される。」
「だったら直接叩く!」
ソット・ヴォーチェの甲板に機体を置いた二人がコックピットから飛び出しアルカノイズへと攻撃を仕掛ける。
「当たらなければどうということはないデス!!」
解剖器官を躱しながらアルカノイズを撃破する切歌を銃撃が襲う。
「何デスか!?」
咄嗟に躱した切歌の視線の先にて片手でスナイパーライフルを撃ったフェルトが銃を捨てるとどこからか弓を取り出す。
「クリス先輩?」
「違うデス、あの人この前のそっくりさんデス!」
弓の弦をフェルトが弾くとそれがプロテクターとなり彼女に纏われる。
「あれは、まさか・・・。」
イチイバルに酷似した赤い装甲に身を包んだフェルトを見て二人は戦慄した。