機動戦姫ガンダムSG   作:鍋の中の白い奴シラタキ

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抜剣

 互いに放たれる質の違うフォニックゲインの衝突により急激に悪化していく天候の中でファウストローブとシンフォギアが激突する。

改修されたことに加えて今までシンフォギアのオーバーホールを行える者が居なかったが為にギア自体に蓄積していた疲労がエルフナインの手により取り除かれたことにより性能を最大値で発揮できるようになったことでこれまで以上に機敏な動きを装者達にもたらしていた。

 

(あのシンフォギアみたいなのを私は知っている!)

「知っていると言いたげだな立花響!当然だろうさ、東方不敗の教えを受けた貴様が使えない筈がないからなファウストローブを!!おかげでミカは粉微塵だ!!」

 

旋律を奏でるキャロルの斬撃を殴り破った響がキャロルの鳩尾に追撃で殴り込む。

 

「悪いとは思っている!」

「良く言う!」

 

直撃の寸前で張られたバリアを砕くだけで終った拳が弦に絡め取られると竜巻が響を襲う。

 

「立花一人にかまけて私達を忘れたか!」

「忘れてなど居ないさ。」

 

背後から斬り掛かってくる翼に弦に絡め取っている響を投げつけるとキャロルは炎と水を錬成し二人に放つと水蒸気爆発を起こさせる。

 

「「うわぁぁあぁあ!!」」

「クソっ!くらいやがれぇ!!」

 

爆発の中に消えた二人を見てそれを行ったキャロルに向けてクリスは散弾を放つがそれらはキャロルに達する前に弦によって砕かれる。

散弾を防いだキャロルは弦をドリルのように腕に巻き付けるとそこに暴風を起こしクリスへと向けて放ち彼女を空へと克ち上げる地にたたき落とす。

 

「その程度の歌でオレを止められると思っているのか!!」

「だったらもっと高めて行く!私のフォニックゲインをぉぉぉおお!!」

「やはり立つか立花響!」

 

ダメージを受け膝を突く二人とは対照的に響は更に声高に歌い上げながらキャロルへと殴りかかる。

 歌いもせずに驚異的な戦闘力を誇るキャロルに司令室に緊張が走る。

 

「歌わずにしてどうして此処までの力を。」

「想い出の焼却です。」

「想い出?」

 

想い出という戦いには無縁そうな言葉を発したエルフナインに聞き返した藤尭に彼女はキャロルの使う錬金術の力の源を語る。

 

「キャロルやオートスコアラーの力は脳内の想い出と言われる電気信号。作られて日の浅いオートスコアラーは他者から奪うことにより想い出を補給する必要があります。ですが数百年の時を生きるキャロルは。」

「それだけ強い力を発揮すると言うことか。」

 

エルフナインの言わんとすることを察したマリアが続きを自らの口から続ける。

 

「想い出の焼却と言ったが燃やした想い出はどうなる。」

「尽きて消えます。キャロルは此処で全てを決するつもりです。」

「消えるってそれじゃ響はあの時。」

 

想い出の行く末を聞いた弦十朗に応え燃やした想い出がどうなるかを語ったエルフナインの言葉を聞いた未来が先日ガングニールのファウストローブを纏ってみせた響も想い出を燃やしたのかと考えてしまう。

 

「安心してください。何処で学んだのかは分かりませんが響さんの錬金術の流派は東方不敗。想い出ではなく身の内で爆発させた余剰感情を燃やす物。想い出が消えることはありません。」

 

脳内にインストールされていた流派・東方不敗の行使する錬金術についてエルフナインが未来に言うとイグナイトモジュールが起動した証である音がモニターより響く。

 

「翼ちゃんとクリスちゃん、イグナイトモジュールを起動!」

 

モニターには剣のようになったマイクユニットに貫かれた翼とクリスが映っていた。

 先ほどまでメディカルルームで眠っていたにも関わらずキャロルと戦い続ける響を見た翼が横で自らと同じく立ち上がったクリスに告げる。

 

「雪音、イグナイトモジュールを使うぞ。覚悟は良いか?」

「誰に言ってやがる。覚悟なんざ常にしてるさ。」

「ならば。」

「ああ。」

 

二人が同時にマイクユニットを掴み掲げる。

 

「「イグナイトモジュール、抜剣!!」」

 

手から離れたマイクユニットが宙に浮かぶと剣のようになりその切っ先を胸元に定める。

 

『Dáinsleif』

 

機械音声が鳴ると剣が二人を貫き赤黒いオーラを放ち始める。

 

「か、はっぐっ!!」

「う、ぐぅっあぁ!!」

 

心の底から湧き上がってくる破壊衝動に二人が揃って呻き声を漏らす。

 

(まるで腑をかき混ぜられるようなっ!!)

(あの馬鹿は今までこんなものを抱えて!)

 

ダインスレイブの呪いが二人をじわじわと蝕みシンフォギアを暴走へと導いていく。

 

「翼さん!クリスちゃん!」

「見ていろ!希望を手にできずに砕け散る様を!!」

「ぐぅっ!」

 

異変に気づき二人の元へ駆け寄ろうとした響であったがキャロルに阻まれる。

 

 

 

 

 

 

 胸を突き上げる破壊衝動に襲われていた翼は気がつけばステージの上で眠っていたが自然と目が覚める。

 

「此処はステージ?そうだ、私は大好きな歌をこのステージでっ!夢を諦めることなどっ!」

 

大好きな歌を歌うんだと立ち上がった翼の目には観客席一杯に犇めくノイズが映る。

 

「敵しか居ないのか?私の歌を聴いてくれるのは・・・。」

 

これから夢に向かって海の向こう世界で歌っていけると思っていた矢先のキャロル一派の起こした事変により戦いの場に引き戻された翼が敵しか自らの歌を聴いてくれる者は居ないと嘆きうずくまる。

 

「お前が娘であるものか。何処までも穢れた風鳴の道具に過ぎん。」

「お父様!!」

 

うずくまっていた翼に父親である八紘が冷たく言い捨てると立ち去っていく。

 

(認められたかった。だから鍛えたのだ剣として。)

「そう、私は剣だ。」

 

そう自分に言い聞かせ奮い立たせようとした翼の前にELダイバーではない奏が現われる。

 

(剣、ならば私は一体・・・。)

 

もう会えないと思っていた片翼に再会できたことでかつてのように抱きしめて欲しかった翼が奏に駆け寄り抱きすくめる。

 

「奏!」

 

だが抱きついた翼の腕の中で奏がバラバラになりこぼれ落ちていく。

 

「剣たるこの身では誰も抱きしめられないと言うの?」

 

暗く狭まっていく世界の中で翼の慟哭が響いた。

 

 

 

 

 

 

 破壊衝動に襲われていたクリスも翼と同じように戦場ではない別の場所に居た。

 

(教室?)

 

気がつけば授業中でいつものように友達の居る日常をクリスは送る。

 

(あたしが欲しかったあたしの居ても良い場所。暖かい日常。だけどここに居ても良いのかって疑問がずっと胸の中にある。)

 

暖かい日々を送る中でクリスにはこの春に紆余曲折はあったものの新しい後輩である調と切歌ができた。

 

(だけど、あたし自身の不甲斐なさであの二人をボロッカスにしちまった。)

 

レイアと戦い良いようにやられて時に助けられたことそして先ほど二人が皆を守るために命の危機に陥った事を思い出し後悔していると景色が廃墟の街に変わりクリスの前に変わり果てた二人が横たわる。

 

「いつもだ、いつもあたしのせいで!あたしが居るから大切な奴を世界が殺しやがる!」

 

涙を零し嘆いたクリスが現実に耐えきれないと言うように逃げだそうとすると誰かがその手を掴んで引き留めた。

 

 

 

 

 

 

 キャロルを殴り飛ばし隙を突いた響が苦しむ二人の手を握りしめる。

 

「二人とも自分を見失わないで。」

「悪い立花、底なしの沼に吸われるところだった。」

「だけど、お前の手があたし達を夢から引き戻してくれた。」

 

二人のシンフォギアの放つオーラが安定していくとギアが攻撃的な形状へと変化していく。

 

「誰も砕けない、砕かせない!」

『響さんマイクユニットを押してください!それでイグナイトモジュールが起動します!』

「分かった!イグナイトモジュール抜剣!」

 

キャロルに啖呵を切った響がエルフナインの指示に従いイグナイトモジュールを起動する。

 

『Dáinsleif』

 

剣に貫かれた響の身を一瞬だけ破壊衝動が襲うが以前暴走より戻ってきた感覚に頼り制御しイグナイトモジュールの起動を成功させる。

 

 

 

 

 

 

 「装者三名モジュールを制御!」

 

安定したバイタルを見せる三人にエルフナインはプロジェクトイグナイトが成功したことに安堵する。

そしてマリアは心の闇を乗り越え暴走という負の力を自らの物とした三人に憧憬を込めた視線を送る。

 

(あれが本当の正義を貫くための悪。)

 

 

 

 

 

 

 イグナイトモジュールの起動を成功させた三人を見てキャロルは笑みを浮かべると大量のアルカノイズを召喚する。

 

『計測数三千!!』

「たかだか三千!!」

 

アルカノイズの出現数が報告されるもイグナイトにより出力が大幅に上昇した事で数などどれだけ居たところで無意味と言わんばかりに三人がアルカノイズを殲滅していく。

 

「ははは!臍下辺りがむず痒いぞ!!」

 

放たれるキャロルの斬撃を躱した響に躱した弦が絡みつくも逆に弦を掴まれたキャロルが響の元に引っ張られると炎を纏った響の拳に殴り飛ばされる。

 

「ならば、ガンダム!!」

 

吹き飛ぶキャロルの背後に現われたガンダムダウルダブラが彼女をコックピットへと納めると響へと殴りかかり先ほどとは逆に響を殴り飛ばす。

 

「カナデ!エクシアを!」

 

そして響もエクシアを呼び出し乗り込む。

イグナイトのオーラを纏ったエクシアが拳を握りしめるとガンダムダウルダブラの放つビームマグナムを躱しながら接近し殴りかかるがエスカッシャンに防がれる。

 

「貴様の脳量子波でオレのガンダムは目覚めるぞ!」

「私の!?」

 

ガンダムダウルダブラに秘められていたNTDがイノベイターをニュータイプとして認識したのか発動しガンダムダウルダブラがデストロイモードへと以降しフレームを赤く輝かせるとビームサーベルを抜き放つとエクシアもそれに合わせるようにGNビームサーベルを抜き鍔迫り合いに持ち込む。

 

「ガンドフォーマットの上にNTD搭載のフルサイコフレーム機!?そんなの乗っていたら死んでじゃうよキャロルちゃん!」

「他人の心配をしている暇はあるのか!?」

 

エクシアを蹴り飛ばしたガンダムダウルダブラがビームマグナムにエスカッシャンを纏わり付かせると銃口を街へと向ける。

 

「撃っちゃ駄目だぁ!!!」

「撃たないでどうする!」

 

無情にも引かれた引き金により街が一つ消し飛び赤い粉となり空に舞う。

 

「あああぁぁぁぁあああ!!!」

「これでもオレを救うとほざくか!」

「どうしてそこまで世界を憎むんだぁ!!!」

 

もう一振りのGNビームサーベルを抜いたエクシアがビームマグナムを持つ腕を切り飛ばす。

 

「もはや忘れたさ!!だが消えないんだよオレの中の炎が!!世界を壊せと叫ぶ!!」

 

ビームサーベルを振るったガンダムダウルダブラの手が持つビームサーベルの柄を貫き爆発させたエクシアがガンダムダウルダブラを地面にたたき落とすとGNビームサーベルを納刀するとガンダムダウルダブラの上に降り立ちコックピットをこじ開ける。

 

「キャロルちゃん・・・。」

「お前には誰も救えない、呪いにまみれたお前には・・・。」

 

響を睨み付けながらそう言ったキャロルはガンダムダウルダブラに自爆コードを撃ち込むと奥歯に仕込んでいた毒を噛み身体を炎上させる。

 

「くっ!」

 

響はガンダムダウルダブラが自爆する前にアルカノイズを殲滅した翼とクリスの元にエクシアを着地させるとGNフィールドを展開させ爆発から守った。




やるからには派手にやらないとなぁ!!
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