機動戦姫ガンダムSG   作:鍋の中の白い奴シラタキ

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試験起動

 その日のシドニーで生きる人々の生活はいつものように変わらず送られるはずであった。

 

「ママ、流れ星!」

「流れ星?」

 

幼子が空を指さし示すと赤い光が宇宙より飛来すると都市の周囲を囲む。

降り立ったそれは流れ星などではなくキャロルの廃棄躯体を利用した無人モビルスーツであるガンヴォルヴァであった。

与えられた命令に従いガンヴォルヴァ達が都市を包み込むと錬金術を用い外界と都市を切り離し大勢の人々を密室化した都市へと封じ込める。

遮断結界に触れた生き物や車が分解されさらにアルカノイズが壁より発生すると周辺でそれを見ていた者達からパニックが発生し都市の中心部へと押し合いへし合い逃げていく。

 

「な、なんでガンダムが・・・。」

 

そしてこの事件にはGPDの非公式大会の入賞賞金を求めてオーストラリアまで来ていた立花洸も巻き込まれていた。

 

「パパーーー!!」

「っ!?」

 

とりあえず目に見えない全てを分解する壁より逃げようとした洸の耳に逃げ惑う人に押され父親が目の前でアルカノイズに分解された少女の悲鳴が耳に入る。

 

「こっちに来なさい!」

「パパがぁ・・・。」

「今は逃げるんだ!」

 

思わず身体が動き少女をアルカノイズの前から抱えて逃げたその行動は昔家族から逃げたことに対する罪滅ぼしなのかどうかは彼自身にも分からない。

 

(なんで、俺がこんな事をっ!)

 

アルカノイズに追い立てられるように洸は少女を抱えて都市の中心部へと避難していった。

 そして都市部の中心地では空気の屈折による光学迷彩を施したガラッゾが高層ビルの上で佇む。

 

「フェルト、今回は上手くやれよ。」

『了解、マスター。』

「そればっかりか。」

 

パターンのない返答にソネットはつまらなそうに吐き捨てた。

宇宙ではキャロルが世界を分解するために利用するための試作モビルアーマーマルガムが蕾のような姿を晒しながら衛星軌道上から降下させる準備を整えていた。

 

「耐熱装甲、標準クリア。」

 

コックピット内ではフェルトが着々と作業を進めていた。

 

 

 

 

 

 

 異変が起こる数刻前、ソット・ヴォーチェではキャロルとの戦いで破壊されたイガリマとシュルシャガナそしてセレナから受け継いだマリアのアガートラームも修復が終っていた。

 

「壊されたイガリマとシュルシャガナの改修の完了デス。」

「改修に伴ってイグナイトモジュールの搭載によってギアそのものの出力も増しているはずです。」

 

以前までは固い表情を浮かべるばかりだったエルフナインはプロジェクトイグナイトが無事成功したことで柔らかい顔をするようになっていた。

 

「そしてマリアさん。」

「復活のアガートラームね。」

「神経パスを一度通しているので問題なく纏える筈です。」

 

損壊していたギアペンダントを皆と同じく修復しイグナイトモジュールの搭載を終えた物をマリアがエルフナインから受け取る。

 

(見ていてセレナ、貴女の分まで私は歌ってみせる。)

「風鳴司令、アガートラームの修復が終った今セレナーデの試験起動を行っても問題ないかと。」

 

自らに割り当てられたガンダムをシミュレーションだけでなく実際に一度動かして問題がないかを確認したいというマリアに弦十朗はしばし考え込む。

 

「確かにマリア君はリンカーを必要としなくなったからな、では三時間後にセレナーデの起動試験を行おう。」

「ありがとうございます。」

 

予定が決まったところでエルフナインは弦十朗を自身の部屋へと大事な話があると言い連れて行った。

 戦いの後のメディカルチェックに置いて響から採血した血液の検査結果が記された書類をエルフナインが弦十朗に渡す。

 

「それは響さんの血液検査の結果です。」

「今までは問題が無かったが何か異常でもあったのか?」

「いえ、異常はありましたが異常ではありませんでした。」

「どういうことだ?」

 

エルフナインはそこで詳しく説明を始める。

響の体内にはいつ頃に感染したのかは分からないがDG細胞が元と思われるガングニールと似た波形を示す物質であるガングニールシャードセル通称GS細胞が存在すると言うことを。

 

「なるほど、長年響君の体内でガングニールの欠片と共にあったことでDG細胞が変質し響君の身体はそのGS細胞を通常の理と認識していると言うことか。」

「そうなります、予兆はあったはずなんです。デュランダルへの適合や融合症例でなくなったにも関わらずにガングニールへ適合して見せた自己進化。怪我などの損傷の治りが早すぎる自己修復。そしてフロンティアショックにて見せた結晶体となったシンフォギアあれは自己増殖。GS細胞は間違いなく三大理論を持っています。」

 

確かに言われてみればと唸る弦十朗が加速度的に強くなっていった響の姿を思い浮かべるとあることに気づく。

 

「待て、ガングニールの欠片が神獣鏡の光で消えたのならばなぜGS細胞は消えなかった。」

「恐らくですがガングニールの欠片は聖遺物として響さんの身体も異物として認識していましたがGS細胞は身体の一部という認識だったからだと僕は思います。」

「響君の身体や他者に害を及ぼす可能性は?」

「現状ないでしょう。無意識下ではありますが響さんはGS細胞を支配下においています。意図的にでも悪意を持って使用しない限りあり得ません。」

 

ならばひとまず安心できると弦十朗は一息つくとエルフナインに何かあればいつでも言うように告げ退室する。

 洋上にソット・ヴォーチェよりターゲットドローンが射出されると弦十朗らが見守る中でガンダムセレナーデが白銀の身体を輝かせながら大空に飛び上がる。

 

「おお!あれがマリアのガンダムデスか!ピッカピカデース!!」

「アガートラームみたい。」

 

ザババコンビが機体を見た所感を告げる中弦十朗がマリアに指示を出す。

 

「その機体に備わっているセレナーデシステムは後日試験を行う故に今回は使用しない。」

『改めて了解よ。』

 

試験前にも伝えられた重要事項にマリアが重々承知と頷く。

 

「ではまずは頭部バルカン砲による射撃だ。」

『了解。』

 

動き回るドローンにセレナーデがターゲットを定め一機二機と墜としていき正確な狙いで全機墜とす。

 

「流石と言ったところか。」

『このくらい当然ね。』

「ならば次はシールド内蔵のビームソードだ。」

『了解よ。』

 

追加で射出されたドローンがモビルスーツのホログラムを投影するとシールドより実体剣が抜かれると刀身からビームソードが発生するとホログラムの弱点箇所を切り裂く。

 

「なかなかの太刀筋だな。私には及ばないがな。」

『相変わらず可愛くない剣。』

「常在戦場故にな。」

 

クリスとの訓練を終らせた翼がシャワー上がり故にタオルで水気を取りながら試験起動の見学に加わる。

 

「良し、ビームサーベルを解除してヒートロッドへと変形させろ。」

『了解。』

 

ビームソードが解除されると実体剣の部分が蛇腹状になるとヒートロッドへと変化し熱を帯び赤熱する。

そして追加で投影されたホログラムへと的確に攻撃を加える。

 

「モビルスーツ形態での問題は無いな。ではモビルアーマー形態へと変形し脚部ビーム砲並びに高速飛行の試験へと移る。」

『了解っ!』

 

バーニヤを噴かせながらセレナーデがワイバーン形態へと変形すると高速飛行を行う。

 

『流石のシンフォギアね、これだけのGが掛かっているのになんともないわ。』

「機体への多少のダメージはバリアコーティングが防ぐとは言え油断はするなよ。」

『分かっているわ。』

 

ターゲットドローンにセレナーデが竜の顎を開きビーム砲を放ち破壊すると旋回しながらモビルスーツ形態へと再変形する。

 

『どうだったかしら。』

「観測上以上は見られなかった。この後は念の為のメディカルチェックだ。」

『了解、セレナーデ艦へ帰還するわ。』

 

問題なく試験起動を終えたマリアがセレナーデをソット・ヴォーチェへと戻すとメディカルルームへと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 試験起動が終って一時間弱後、エクシアもようやくセブンソードの修復が終り万全の状態となっていた。

先ほど試験起動を行ったセレナーデもメンテナンスが行われ万全の状態であった。

通常状態にてA.B.E.L.が活動を再開していると国連より緊急連絡が入る。

それはシドニーが錬金術師の物とみられる所属不明モビルスーツにより占拠され外界と隔絶された上に内部の住人がアルカノイズに襲われているというものであった。

 

「現在ソット・ヴォーチェがオーストラリアへ着くにはおよそ五時間を有します。」

「五時間か、長いな。」

 

それだけあればアルカノイズが殺し尽くすには十分だと弦十朗が考えていると響が良い考えがあると言わんばかりに手を挙げる。

 

「エクシアならその半分以下の時間で着けますよ!」

「単騎でどうにかできるものではないぞ。」

「なら私がついて行くわ。モビルアーマー形態のセレナーデならば最大速度のエクシアに十分ついて行ける。」

「だが二人で持ちこたえられるか・・・。」

 

案じる弦十朗に何を言ってるんだとばかりに響が笑みを浮かべる。

 

「この程度の危機、いつものことです。それに私とマリアさんなら数時間程度持たせて見せます!」

「そうね、私とこの子ならば問題はないわ。」

「そうか、ならば響君とマリア君はモビルスーツで出撃の後にシドニーのアルカノイズの殲滅。俺達は全力で二人に追いつくぞ!」

 

作戦が決まりカタパルトデッキからエクシアとワイバーン形態のセレナーデが出撃すると全速でシドニーへと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 何故か外周部付近にのみ現われたアルカノイズは人々を中心部に押しやると不気味な程の沈黙を保っていた。

いつアルカノイズとガンヴォルヴァが動き出すか分からない恐怖によって人々が晒されている中誰かがふと海方面の空を見る。

 

「光?」

 

その一声に人々に視線が集中すると海より飛翔してきたエクシアがGNソードでもってガンヴォルヴァを躊躇なく撃破し壁の一部に穴を穿ち都市内へとセレナーデと共に侵入する。

 

「ようやくおいでなすったかガンダムゥ!!!」

 

ガンヴォルヴァの爆発音を合図にステルスを解除したガラッゾがエクシアへと襲い掛かる。

 

「ガラッゾっ!私が抑えます!マリアさんは結界を!」

「分かったわ!破壊しだいアルカノイズの殲滅に移る!」

「了解!」

 

自らを素通りしガンヴォルヴァへと向かうセレナーデを無視したガラッゾがエクシアへとGNビームクローを束ね斬りかかる。

 

「楽しませてくれよ!オイ!!シンフォギアさんよぉ!!!」

「声は違うけどその口調!この感じ!ゲイリー・ビアッジ!!」

 

GNシールドでGNビームクローを防ごうとしたエクシアであったがあえなく切裂かれ蹴り飛ばされると近くのビルに叩きつけられる。

 

「悔しいけど、性能はあっちが上だ・・・。」

 

そしてエクシアを起き上がらせようとした響がコックピットのモニターに映る此処には居るはずのない父親を見つける。

 

「お父さん・・・。」

 

怯える少女を抱きかかえ戦いの場から逃げ出そうとする洸がガラッゾの放ったGNバルカンがエクシア付近の地面に着弾した影響で宙を舞う。

 

「っ!う、ぐぅあぁあああ!!!」

 

マニピュレーターで少女と洸をキャッチした響はコックピットハッチを開くと叫ぶ。

 

「乗って早く!!」

「響!?いや待てなんで此処に!?」

「早く!」

「あ、ああ・・・。」

 

有無を言わさない様子の響に洸は大人しく従い少女と共にコックピットに入るとハッチが閉まる。

 

「喋らないで、舌を噛むから。」

「え?」

 

疑問を投げかける前にエクシアがガラッゾの一撃を躱すために飛び上がった事で洸は黙らざるを得なかった。

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