脚部ビーム砲を使用し遠距離のガンヴォルヴァを撃墜し結界の強度を弱めるとマリアはセレナーデを操り次の機体へと飛び立つ。
(アルカノイズが動いていない?いや、都市の外へ逃げようとする者達だけを狙っているのか。)
不気味な程に動きを見せないアルカノイズとガンヴォルヴァに疑念を抱きながらもマリアは都市を開放するためにセレナーデを飛ばす。
「そしてなによりこのガンダムもどきからは意思というものが感じられない。」
ヒートロッドで切断されたガンヴォルヴァが地上へと落ちるとコックピットからキャロルの廃棄躯体がこぼれ落ちる。
「キャロル!?」
まさかキャロルが生きていたのかとセレナーデを近くに寄せたマリアがモニターを拡大表示するとそれはコックピットと身体を繋ぐチューブがちぎれ事切れていた。
「いや、エルフナインと同じホムンクルスか・・・。だとしても惨い事をする。」
外周部をぐるりと囲むガンヴォルヴァを逐次撃墜しているとセンサーから上空に熱源反応を感知する。
雲を割り現われたマルガムに都市上空で戦闘を行っていたエクシアとガラッゾも動きを止める。
雲を抜けた辺りで滞空を始めたマルガムの蕾が花開くと砲口のようなものが露出しエネルギーのチャージを開始すると先ほどまで動きを見せなかったガンヴォルヴァがセレナーデにビームサーベルを抜刀し襲い掛かる。
シールドで防ぎカウンターで斬り捨てるとセレナーデはヒートロッドを展開し回転すると襲い掛かるガンヴォルヴァを一掃する。
「倒しても切りがないが、結界は確かに綻んでいる。」
ビームソードを最大出力にすると地上に居るアルカノイズごと結界を破壊し都市からの脱出口を開くとそこから都市の住民が逃げ出していく。
「これじゃきっと間に合わない。もっと多く倒さなければ全員が避難できる確率は低い。」
しかし遮断結界の起点となっているガンヴォルヴァを地道に倒していては都市上空のマルガムが攻撃を行うまでの時間を稼がせることになってしまう。
「となれば自ずと勝利条件は一つ。モビルアーマーを墜とすこと!!」
そうと決まれば話しが早くセレナーデをワイバーン形態に変形させたマリアがマルガムへと飛翔する。
上空のマルガムへと向かうセレナーデを見てソネットが笑う。
「単騎で墜とそうなんざ随分な奴だ。」
GNソードを振るってくるエクシアの相手をしながらソネットはマルガムのチャージが終りつつあるのを確認する。
「もうそろそろだな。」
「何が!」
「見てのお楽しみって奴だ!」
聞こえていたのか問いかけてくる響にそう返すとGNバルカンをコックピットめがけ放つがGNソードの刀身に防がれる。
「気にせず俺達は楽しもうや!ガンダム!!」
「戦いは楽しくなんかない!」
「見解の相違って奴だな!」
互いの剣がぶつかり合い都市の上空が火花が散る。
戦闘の映像がモビルスーツのカメラによりリアルタイム送信されているソット・ヴォーチェにてクリスはこの短い期間で何度目かの精神的ダメージを受けていた。
(あの野郎は何処まであたしを踏みにじりやがるんだっ!)
「雪音・・・。」
「大丈夫だ先輩。あのガワだけの化け物はあたしが絶対に仕留める。」
「そういうことでは。」
覚悟を決めたと言うよりも決意を新たにしたように呟くクリスに翼は自分が何かを今言っても無駄だと察してしまい口を噤むしかなかった。
「マリアっ!」
「一旦引くデスよ!」
「下がれマリア君!単騎では敵モビルアーマーを墜とせない!逆に墜とされるぞ!」
『されど此処でやらねば!多くの人命が消え失せることになる!』
マルガムより放たれたファンネルに行く手を阻まれ徐々に被弾しているセレナーデを見て弦十朗が退却指示を出すもマリアはシドニーの人間に住む多くの人間を助けるために引く気はないと宣言するとコンソールを操作する。
『小言なら後で受ける。セレナーデのシステムを使う!以降通信は戦闘終了後にお願いするわ!』
「待て!」
「駄目です!通信遮断並びにセレナーデシステム起動しました!」
「クソ、呑まれるなよ。」
せめてもの祈りとして弦十朗はそう言葉をこぼした。
セレナーデシステムが起動しマリアの脳内にこれからシドニーが迎えるだろう様々な可能性が流れ込んでくる。
「違う、駄目だ。それも違う、セレナ!」
ファンネルと共に飛来する飛行型のアルカノイズを倒しながらマリアはシステムが提示する作戦をより人名が救われる可能性を取捨選択をしていく。
「これしかないのね。分かったわセレナ。」
システムが見せる妹の幻覚に従いマリアはイグナイトモジュールを起動する。
「抜剣!!起きろガンダム!!」
イグナイトのオーラにセレナーデが包まれると機体の性能が向上するがコックピットの中のマリアはダインスレイブの魔力に呑まれていく。
そしてパイロットの意思を反映したセレナーデが機体へのダメージを無視しマルガムへと敵を撃墜しながら急速接近すると機体上部に降り立ち武器を抜かずに殴りつけようとするが上部に潜んでいたウォルターガンダムの放ったビームに防がれる。
「墜とさせないっての。」
どす黒いオーラを放ち始めたセレナーデは思い出したかのようにビームソードを構えるとウォルターガンダムへと向け走り出す。
「お前が敵かぁ!!」
「こいつ何も見えてないな。面白くねぇ。」
水分身によりセレナーデを翻弄しながらウォルターガンダムはマルガムが砲撃体勢に移ったのをフェルトからの通信で知らされるとセレナーデのスラスターを凍てつかせるとコックピット付近に噛みつき揺さぶり内部のマリアを氷付けにして気絶させる。
「これで死ぬなら所詮はそこまでってこと。」
活動を停止したのを見届けるとウォルターガンダムはガリィへと戻るとテレポートジェムで撤退していった。
マルガム上部より落下するセレナーデを視認した響がエクシアにガラッゾを蹴飛ばさせるとセレナーデへと向け飛翔させる。
「トンズラか!」
『マスター、十秒後に撃ちます。』
「ちっ、ああ分かった。俺は先に撤退する。」
去り行くエクシアの背に攻撃しようとしたソネットはフェルトからの報告に舌打ちすると機体ごとテレポートジェムを用い撤退した。
マルガムの砲口に魔法陣が形成され輝きを強めているのを見た響はフェルトの考えを読み取る。
「シドニーを消す!?」
「は?何言ってるんだ響!?」
「駄目だ、間に合わない!殺すしかないけどできるわけがっ!」
今シドニーを救うにはマルガムのコックピット内のフェルトが引き金を引く前に殺すしかないと理解した響が悲鳴をあげる。
「どっちも、助けるには!にはぁ!!!」
叫びながらもセレナーデを受け止めた瞬間それが選択だったと言わんばかりにマルガムが砲撃を放ちシドニーを分解していく。
『直ぐに離脱するんだ響君!!』
「届く範囲が狭すぎるっ!」
自らの手が届く範囲の狭さに嘆きながら響はセレナーデを抱えたエクシアを洋上へと飛翔させる。
撤退する二機のガンダムの背後ではシドニーとその近辺までもが錬金術で分解されていく。
シドニーと自らの放った攻撃に巻き込まれマルガムまでもが赤い粉となり光の中に消えていく。
それをようやく到着したソット・ヴォーチェのモビルスーツハンガーへと収まりながら響は見ていた。
「あれが、キャロルちゃんの錬金術。でもキャロルちゃんはもう居ない筈なのに。」
消え去り巨大なクレーターとなったシドニー後に大量の海水が流れ込み轟音を立てていた。
◎
ウォルターガンダムによって戦闘不能にされたマリアは氷の中から救出された後直ぐに治療室へと搬送されていった。
それを見届けた響が担当のスタッフに洸と少女を救助したことを告げる。
「要救助者を二名、私の判断で救助しました。身元の確認の後に事後処理をお願いします。」
「了解しました。」
ギアを解除し去って行こうとする響に洸が声をかける。
「待ってくれ響、どういう状況なんだこれ!?」
「お知り合いですか?」
そう聞かれた響は数瞬悩み答える。
「・・・知らない人です。」
「ひ、響・・・。」
言ってしまったいう顔をし背を向けてメディカルチェックを受けにいく響の背を自分の過去の行いのせいとはいえ少なからぬショックを受けた洸はスタッフに促されるままに部外者用の部屋へと少女と共に案内されていった。
◎
先のシドニーにおける戦闘で観測された錬金術と活動を続けるガリィによってA.B.E.L.はキャロルの死で今回の事件はまだ終っていないと確信する。
「緒川、オートスコアラー達の行方は分かったか?」
「シドニーへの大規模襲撃と時を同じくして東京周辺の送電設備が二体のオートスコアラーが変じた二機のガンダムによる襲撃を受け破壊されています。」
「何故送電設備などを。」
「現在、設備襲撃後の行方と共に狙いを探っています。」
「次はこちらから仕掛けたいものだが、そう上手くいかんだろうな。」
「司令が弱きでは皆さんも気落ちしてしまいますよ。」
「それもそうだな。」
勝てたかと思えば伸ばした鼻を折るようにより強い力を振るってくる敵にA.B.E.L.の誰もが鬱屈としていた。
「クリス君のメンタルケアを重点的に行いたいが、あいつが素直に従うとは思えんからな。どうしたもんか。」
「それなら筑波にて先ほどナスターシャ教授が残したデータの解析が終ったと報告がありました。」
「なるほどな、近くの浜辺は確か国の所有地だったな。掛け合ってみるか。」
「適度な休息も大事ですからね。」
プロメテウスの火よりも後に回されていたデータの解析が終ったことで近々発生するだろう受領任務に合わせて弦十朗は装者達に特訓と言うなの休息を与えてみるかと考えるのであった。
◎
本命のモビルアーマーアルニムの試作機であるマルガムがキャロルの設計通りに一部とはいえ世界を分解して見せた事で計画が無事に進んでいる事が証明された。
「さて、俺はタスクを一つこなしたアンタらはどうする?」
攻撃の瞬間にテレポートジェムで退避してきたフェルトを横にソネットがオートスコアラーに問いかける。
「一番に旋律を刻まれるのは私。」
「地味にギアを砕けなかった事を気にしているみたいだな。」
「うっせぇ!!これは譲らねぇからな!」
「では私も任務を果たすとしますわ。」
三者三様の答えを返すオートスコアラーにソネットは肩を竦める。
「姦しいこって。」
「貴女もモビルスーツに旋律を刻ませることをお忘れなく。」
「与えられた仕事はやらせて頂きますよ。」
やるべき事は分かっていると言ったソネットはフェルトを連れて去って行った。