「前に月が落ちるか落ちないかの騒ぎがあったろ?その時にテレビに映ってた女の子がお前に似ててなあれ以降お前の事が気になってな。それにお父さんこの前のアルスレイドにも参戦してたんだぞ。」
都内のファミレスでまともに顔を合わせた立花親子であったが父親である洸だけが喋り続ける。
「ソルブライトガンダムだっけか?あれのシャイニングフィンガーみたいな必殺技でフィニッシュ決めた瞬間の響はなかなかにかっこよかったな。」
「・・・ようがあるから翼さんに連絡先を渡すように言ったんだよね。」
しばらく前に起こったアルスとの戦いの最終局面におけるGBNでの大規模戦闘の事を話し続ける洸に響が本題を話すようにと促す。
「あー、そうだな。また家族みんなで一緒に暮らさないか?だから響から母さんに伝えてくれないか?」
「無理だよ、だって壊したのはお父さんじゃない。」
そう言われ一瞬ぽかんとした洸だったがヘラヘラと笑うと自身が注文しておいたサンドウィッチを頬張る。
「だよなぁ、無理だよなぁ。でもしょうがないじゃないかあの状況で過ごすなんて俺には無理だったんだよ。そうだ響小さい頃お父さんが教えたどんな時でもどうしようもないことをどうにかする魔法の言葉を覚えているか?お父さんはな今でもその言葉を胸に――。」
「覚えてないよっ!!!」
だらだらと喋る洸をテーブルを叩きつけることで遮った響は彼の元から走り去ろうとする。
「待ってくれ響!」
真剣な声音で呼び止める洸に一縷の望みをかけ足を止める響に彼は伝票を掲げながら片手で謝罪のポーズを取る。
「今手持ちが少なくてな?」
「GPDの大会で稼いでるんじゃないの?」
「ほらこの前機体が消し飛んだから改めて作り直したら財布が寒くなっちゃってな。」
もはやなにも言う気がなくなったのだろう響は伝票をひったくるようにして受け取ると今度こそ洸の元から去って行った。
響の姿が見えなくなると洸は残っているサンドウィッチに手を伸ばす。
「いい加減時間が経っているからいけると思ったんだけどなぁ。」
◎
ガリィの居た円形の土台が青い光を立ち上らせている中でファラが筑波から回収したフォトスフィアをチフォージュ・シャトーにインストールする。
「筑波で地味に入手したらしいな。」
「強奪でも良かったのですが防衛の為に破壊されては元も子もありませんから。」
本来のサイズに戻ったフォトスフィアを見上げながらファラは言葉を続ける。
「この線の一つ一つが星の血管のようなもの。かつてナスターシャ教授はこれに沿わせることによってフォニックゲインをフロンティアに収束させました。」
「フォトスフィア、世界解剖に必要なメスは地味ながら此処チフォージュ・シャトーに集まってきている。いや、そうでなければ私も妹も暴れたりない。」
◎
他のガンダムと異なり調と切歌の二人で操縦する必要のあるツインエッジの操縦訓練と並列して行われた適合係数を調べる為にギアを纏った際に思いのほか結果が良かった事で切歌はご機嫌だった。
「この調子でいけばイグナイトモジュールも扱えるデスよ。」
自販機でりんごジュースを買った調が一口飲む。
「後はダインスレイブの呪いに抗う強さがあれば。ねえ切ちゃん、強さってなんだろう。」
「うげっ、ブラック買っちゃったデス・・・。」
ボタンを二個同時押しで飲み物を買った切歌であったがよりにもよってブラックコーヒーが選択されてしまう。
それでも自分が買ったのだからと我慢して一口飲むが苦さに舌がやられる。
「足手まといにならないようにするにはどうすれば良いんだろう。」
「きっと、自分が選択したことに後悔しないように強い意思を持つことデス。」
先ほどの調からの問いかけに答える切歌の手からブラックコーヒーを取った調が自身のりんごジュースを渡す。
「私ブラックも平気だから。」
「ごっつぁんデス。」
飲み物を交換し一口飲んだ二人の通信機に着信が入る。
『イチイバルのアウフヴァッヘン波形とアルカノイズの反応を検知した!場所は地下六十八メートルの共同溝内と見られる!』
「きょうどうこう?」
「何デスかそれ。」
『電線を始めとしたエネルギー経路が埋設された地下講だ。直ぐ近くにエントランスが見えるだろう。』
弦十朗に説明を受けながら二人は共同溝の入り口へと向かう。
『イチイバルってことはそこに居るのはこの前出てきたあたしのクローンだ!癪だが腕は立つ戦うのはあの馬鹿と合流してからだ。』
『雪音の言うとおり現在立花も向かわせている。本部もまた速急で向かっている。』
最後にクリスと翼からの注意を受けた二人は言われた通りに響の到着を待つ。
「へいきへっちゃら・・・へいきへっちゃら・・・へいきへっちゃら・・・。」
涙をこぼしながら響が自身を奮い立たせるときに使う言葉を繰り返し唱えながら二人を追い抜く。
「なにかあったデスか?」
「なんでもない。」
しかし流れる涙を見てしまっているからか二人にはとても大丈夫そうには見えない。
「とてもそうには見えないから。」
「二人には関係のない事だから!」
感情を剥き出しに怒鳴ってくる響に少し臆してしまうも調は言葉を紡ぐ。
「例え力になれなくても、私はそれでも響さんの力になりたい。」
「ごめん・・・どうかしてた。」
言い過ぎだったと謝罪した響はギアペンダントを取り出しながら共同溝内へと進む。
「拳で解決することは意外と少ないのかもしれない。だから行くよ二人とも!Balwisyall nescell gungnir tron.」
突入の合図を送った響を皮切りに二人もギアを纏うと地下へと降りていく。
地下の目的地へと三人が降り立つと周りをアルカノイズが囲む。
少し離れた所にある高台の上からソネットが三人に声をかける。
「よぉ、これで会うのは初めてだなシンフォなんたらさん達よぉ。」
「此処で何をしてるんだゲイリー・ビアッジ。」
「お仕事だ。」
背後で何やら作業を行っているフェルトの前に紫色の水晶で出来た銃を構えたソネットが響からの質問に簡単に答える。
「貴女の仕事は人を殺す!」
「いきなりだなぁオイ!!」
殴りかかってきた響を銃身で防いだソネットがフェルトから離れるように響と共に下へと落ちる。
「そう言えばだ、今の俺はソネットって事になってるんだぜ?」
「それはクリスちゃんのお母さんの名前だ!」
「だからだよ!俺のガンダムをぶっ壊したからな!」
「壊されたくらいで!」
蹴りがぶつかり互いに弾かれた二人が床の上を滑る。
「生身でシンフォギアと・・・。」
「一人で行かないで三人で手を合わせましょう。」
「百万パワーデスよ!」
アルカノイズを処理した二人が一人でソネットへと突撃した響の横に並ぶ。
「お前等に面白いのを見せてやるぜ。」
ソネットはそう言うと頭上に銃口を向けると引き金を引くと銃が彼女に纏われていく。
『この波形はっ!?嘘だろ!?』
『ネフシュタンだとぉ!?』
「それって了子さんが使ってたっ!」
インカム越しにソネットが使用するファウストローブの聖遺物を知った響が息を呑む。
「杖を偶然見つけたからなちょっと加工してこの通りよ。」
ネフシュタンのファウストローブを纏ったソネットがファングを両サイドに浮かべる。
「行けよファングゥ!!」
「だからどうしたぁ!!」
言われたばかりの協力して行こうと言う言葉が聞こえていなかったのか響はまたもや一人で突貫する。
「聞こえてなかったんデスか!?」
「泣いてる・・・。やっぱり響さんは今泣いてる。」
「だとしたらなんで・・・。」
作業が終ったフェルトがアルカノイズを召喚すると二人へと襲い掛かる。
「適合係数の低い、シュルシャガナの排除任務。再開。」
「させるかデス!調を殺させたりなんて!」
攻撃を防いだ切歌の後ろから丸鋸を放ちながら調が問いかける。
「貴女はそれで良いの?ただ従うだけなのが貴女なの?」
「うるさい、私はマスターにそうあれと望まれた事を成すだけだ!フィーネの言付けをまともに果たせなかった無能の雪音クリスとは違う!全て果たしてこそのフェルトだ!私だ!」
「そこに貴女は居るの?」
「黙れぇ!!」
何やら核心を突かれたのかフェルトはミサイルランチャーを構えると即座に引き金を引き放つが上手い具合に鎌を使った切歌に打ち返され自身が爆撃される。
「ツーベースヒットデース!!」
「うぁああぁ!!」
「動きの癖がクリス先輩そっくりデス。」
「だけど見えやすい。」
戦闘経験の浅さを突かれたフェルトが敗北しているころ響は無限の回復力を誇るソネットに苦戦していた。
「再生するときに鎧が喰う筈なのにっ!」
「戦場で痛みは付きものなんだよ!」
壁を破壊しながら襲い来るファングに追い立てられた響の前方から鞭を刃状にしたソネットが迫り彼女を斬り付け吹き飛ばす。
「うわぁあぁあああ!!」
散々に壊れた共同溝内を見た響は家族を捨てた洸の事を思い出す。
(自分で壊しておいてなんで簡単にやり直したいなんて言えるんだ!)
「壊したのは、お父さんの癖にぃ!!!」
溢れる悲しみをエネルギーへと変換した響がソネットに殴りかかり胴体に風穴を開け鮮血を浴びる。
(違う・・・壊したのは私もだ。)
「おお怖え、ネフシュタン様々だ。」
「しまっ!?」
再生した胴体に腕を埋め込まれた響が蹴りの連撃を受けるとファングによってお返しとばかりに腹を攻撃され吹き飛ばされ頭を打ち気を失う。
「もう治るのか、面白いなこいつは。」
腕が抜けた事で空いた穴が既に塞がった事にソネットは満足げに腹を撫でる。
「響さん!しっかりするデス!」
気を失った響の近くに駆け寄った二人であったがそこにファングが重なり巨大な光球を放つ。
「やっべぇデス。」
「任せて!」
「調!?」
だが調がそれをアームドギアを使用しギリギリの状態で防ぐ。
「マスター、目標データの採取は完了。」
「お遊びはここら辺か。生きてたらまた会おうぜ。」
ソネットとフェルトが退却したことで光球も消え調が膝を突く。
「大丈夫だった?」
「なわけないデス・・・。」
「え?」
「平気なわけないデスよ!」
あの日レイアからクリスを助けた後に彼女に言われた「守るべき後輩に守られて平気なもんか!」の意味を切歌は理解すると同時に今彼女はあの日のクリスと同じ気持ちを抱いていた。
戦闘が収束した後に駆けつけた残りの装者は既にやることがなく案山子でしかなかったが何かに気づいたマリアが緒川を高台へと呼び寄せる。
「緒川さん、此処だけ綺麗すぎないかしら。」
「確かに残された戦闘痕の殆どは響さんによるものが殆どですが、いえこれは!」
「そう、これは電力の行き先を示すものよ。」
「となるとキャロル残党の狙いは。これは直ぐに司令に報告しなければ。ありがとうございますマリアさん。」
「できることをしたまでよ。」
敵の狙いに気づいた緒川が弦十朗に報告をするために場を離れたのを見たマリアは響の残した破壊痕へと目を向ける。
(よほど大きかったようね立花響の中での父親は。そうか、だからELダイバーである彼女の母親足らんとしているのか。)
悲しみが込められた破壊痕を見ていたマリアはどうやって響を慰めれば良いかと考え始めた。