深淵の竜宮に到達したクリス達は潜水艦より降りると伝えられたヤントラ・サラヴァスパの安置場所へと向かっていく。
「クリス先輩ヤントラ・サラヴァスパってなんデス?」
「阿頼耶識みたいなもんらしいぞ。」
「なるほどデス!」
「分かったなら行くぞ!先回りでぶっ潰す!」
簡単に教えたクリスは切歌と調を連れヤントラ・サラヴァスパのある場所にキャロル達より先に行き待ち受けようとした。
向かう途中で出くわした際に先制攻撃されやられてしまわないように三人はギアを纏って深淵の竜宮を駆け抜けヤントラ・サラヴァスパの元へと辿り着くがそこでは既にキャロルがその手にヤントラ・サラヴァスパを確保していた。
「遅かったか!」
「レイア、フェルト。」
ノータイムで攻撃を仕掛けたクリスにより銃撃をバリアで防いだキャロルは控えさせていたレイアとフェルトに迎撃命令をくだす。
「しゃらくせぇ!!」
「地味に苛烈っ!」
「同じ筈なのにっ!・・・同じ?違うっ!」
放たれ続けるガトリングの嵐に小さくしか反撃できない二人に切歌と調の刃が迫る。
「あたし達を忘れて貰っちゃ!」
「困る。」
やまない鉛の雨に混ざって舞うザババの刃がレイアとフェルトを的確に追い詰めていく。
そして持続的にガトリングから放たれる鉛玉に晒され続けていた為にバリアを張り続けざるを得なかったキャロルを拒絶反応が遅いバリアが解除されるとそれを見ていたクリスがボウガンに切り替えキャロルの手からヤントラ・サラヴァスパを弾き飛ばす。
「持ってかれて使われるくらいならなぁ!」
「壊すのが得策!」
丸鋸が宙を走りヤントラ・サラヴァスパを真っ二つにし使うことができないようにする。
「ヤントラ・サラヴァスパがっ!」
「もう一回閻魔様んとこに行ってきやがれぇ!!!」
そしてミサイル二発をクリスがキャロルめがけて放ち一発は外れて背後の壁を破壊するに終ったがもう一発が的確にキャロルへと飛んでいく。
「マスター!!!」
「やらせはしない!」
「通せんぼデス!」
救援に向かおうとしたレイアとフェルトの前に大鎌を構える切歌が立ちはだかり妨害する。
飛来したミサイルが爆発しキャロルをあの世に送り返すかと思われたがミサイルは爆発せずにその場に留まり続ける。
「どういうわけだか知らないがっ!駄目じゃぁないか!英雄たる君達がこんな幼子を虐めちゃぁ!!!」
なんと崩れた壁の向こう側かわ現われたウェルがネフィリムの左腕でミサイルを捕食していた。
「あぁ、身に染みる。久方ぶりの聖遺物だ、なんていう甘露ぉ・・・。」
「お、お前は・・・。」
ミサイルを食べ終わったウェルが乱れていた髪を手櫛で整えるとクリス達を指さす。
「そうさぁ!僕こそはドクターウェル!!世界に英雄ではなく魔王を求められてなお英雄になろうとする男!!」
「全然反省してない・・・。」
「今はすっこんでろデス!!」
吼える調と切歌を見てウェルは天を仰ぐ。
「不憫が過ぎるなぁ。僕が作った優しいリンカーではなく全世代の粗悪品を使っているなんて。」
「こんなところに閉じ込められてた不憫の一等賞が何言ってるデスか!」
「だまらっしゃい!お子様に分かるのか!?人ではなくネフィリムの一部である物としてこぉんな暗くてじめっとした場所に幽閉されていた僕の気持ちが!」
「分かってたまるもんデスか!」
「あぁそうかい。」
彼の登場により場の空気がすっかり彼中心になってしまっているなかレイアがキャロルに小声で問いかける。
「この男、どうしますか?」
「捨て置け。」
「承知。」
ウェルと切歌がぎゃいぎゃいと言い合っている中でクリスがキャロルの元へと駆ける。
「此処で全部終らせてやる!」
「行かせるか!」
「お前は邪魔だぁ!」
立ちはだかってきたフェルトに対してクリスは自身の遺伝子が利用されたホムンクルスであると言うことも加味しての容赦のない攻撃を仕掛ける。
「銃ばっか使ってるからお前は近距離がお粗末なんだよ!」
「なっ!?あ!」
あっとういう間に寝技を仕掛けたクリスは最初に腕を折ると次に動けなくするために両脚を砕く。
「う、ぐっぁあああ。」
「あたしならそれでも立つけどな。」
即座に起き上がったクリスがライフルを構えるとキャロルへと向けて砲口を向けるとライフルをウェルがむんずと掴む。
「だぁからそれは英雄のすることではないと何度いえば。」
「あれは見てくれはガキだがフィーネの同類だ!」
「だとしても進むべき道の分からない子どもを痛めつけるのは違うと僕は思いますがねぇ。今君がズタボロにした子どもだってそうだ。」
「今更いい人ぶってなんのつもりだ!?」
「わからないかなぁ・・・。」
言いながらライフルを食い尽くしたウェルに逆の手でクリスがボウガンを向ける。
「ルナアタックも僕の起こしたフロンティアショックもその裏には全て――。」
「聞く耳持たねぇな!」
「駄目!」
引き金を引こうとしたクリスを調が止める。
「なんでだ!」
「ドクターが居ないとリンカーが!」
「そうだ、フィーネ。いい加減傍観者気取りはやめて身内のケツは身内の君が拭くんだな。良くもまぁ僕に世界を殺させようとしてくれた。」
調を指さしそう言ったウェルはキャロル達の元へと向かっていく。
「さて迷い子達よ、この歴史に名を刻むことになる英雄が光へと導いてあげよう。」
「好きにしろ。」
逃げようとするキャロル達がアルカノイズを召喚し逃走の補助とする。
「待ちやがれ!」
「待てと言われて待てば死ぬだけだろう!」
そう吐き捨てるとウェルはキャロル達と共に下階層へと逃走していった。
「ちくしょぉぉぉお!!!」
「落ち着くデスよ。諸共に沈む気デスか?」
「っ!悪い。」
やたらめったらにアルカノイズにガトリングを乱射していたクリスを切歌が止める。
「・・・あたしは例えリンカーが無くなっても平気デス。きっとA.B.E.L.のみんなが新しいリンカーを作ってくれるデスから。」
「ごめんなさい。でも私ももう平気。」
「後輩の力は借りねぇあたし一人で十分だ。お前等はそこのお荷物さんを抱えててくれ。」
痛みで気を失っているフェルトを顎で指し示したクリスに切歌が言いつのる。
「でも一人じゃ限界があるデスよ!」
「100に1を足しても微々たる差だ!」
「あたし達は1なんデスか!?」
「クリス、少々自信過剰が過ぎるわよ。」
「お前、フィーネか。」
「お久しぶりの登場デスか。」
調に許可をとり表に上がってきたフィーネが切歌と調に対して突き放す言い方をするクリスを注意する。
「守るべき後輩に頼りがあるという所を見せたいのでしょうけど。それで貴女が死んでは元も子もないわよ。」
「今更出てきてなんのつもりだ!」
「状況を読みなさいと言っているの。親の皮を被った仇、自身のクローンに対してストレスを感じているのでしょうけれども。冷静にならなければ全てを失うことになる。」
「ああ、そうかよ。」
後は調と切歌に任せればなんとかなると判断したフィーネがウェルに言われたことに対して言及する。
「私の身内が起こしたことというのならそこには必ずデビルガンダムの影がある。」
「は?なんだよそれ。」
「必要になったらこの子に起こさせなさい。」
言うだけ言ったフィーネは裏に戻ると調の意識が表に帰ってくる。
「おはよう切ちゃん。」
「およ、寝てる感じなんデスね。」
「だぁクソ、ざわざわしやがる。」
キャロルの行方を探るためにも三人は指示に従いフェルトを潜水艦に連れて行くと応急手当を施して備え付けのベッドに拘束して司令室からの指示を待つことにした。
◎
どういう意図かは分からないが着いてくるウェルにキャロルは牽制をかける。
「知っているぞドクターウェル。フロンティアショックの首謀者にして世界を殺しかけた大悪党。」
「訂正を願うな。あれは僕であって僕でない言わば僕の中に居た卑屈な存在がDG細胞のせいで僕を乗っ取った存在だ!」
「DG細胞に感染していたにしてはゾンビ兵になっていないな。」
「当たり前だ僕は本来高潔な男だからな。だが、あの時の立花響とマリアの拳がDG細胞を僕から除去したと見るのが一般的か。全くとんだお人好しだ。」
歩みを止めたキャロルがウェルの左腕へと視線を送る。
「まぁ気になるだろうな。僕の左腕はネフィリムの左腕。あらゆる聖遺物と同化し操作することができる。さっきのイチイバルの一撃とて捕食したんじゃぁない。同化し制御して推進力を操作したのさ。」
「お前は先ほどオレを光に導くと言ったな。ならばオレに着いてこい。」
「まぁ良いだろう。行くなら早く行かなくても良いのかい?」
「構わん奴らの動きは把握している。」
ウェルと握手をしたキャロルは不適に笑った。
◎
クリス達が潜水艦で指示を待っている中司令室ではキャロル達の行方を探っていた。
「司令、キャロル達の動きあまりにも正確に過ぎませんか?」
「ああそれは俺も思っていたまるでこちらに内通者がいるかのごとく。内通者?まさか毒が盛られていたのか!?」
内通者の存在を仄めかされた事で一番この中では怪しい存在であるエルフナインが自分は違うと即座に否定する。
「違います!僕は敵なんかじゃありません!」
『いいやお前だとエルフナイン。』
エルフナインが否定した瞬間司令室にキャロルの声が響くとエルフナインから半透明のキャロルが浮き出す。
「な、どうなって。」
驚きに包まれる司令室を睥睨するようにキャロルが宙に浮く。
『まぁエルフナイン自体には内通者の自覚はなかったようだがな。オレがエルフナインの目、耳、全ての感覚器官をジャックしていたに過ぎんのだからな。』
「ぼ、僕自身が・・・!!そんな・・・。僕を拘束してください!誰とも関われないように何も知ることもできないように!いえキャロルの目的が果たされているのならいっそ僕を殺してください!」
自責の念に駆られそう言うエルフナインの頭を弦十朗が撫でる。
「え?」
「なら良かったよ。」
「だってエルフナインちゃんが悪い子じゃないって分かったんだから。」
「藤尭さん、友里さん・・・!」
目尻に涙を浮かべるエルフナインの頭をくしゃくしゃと弦十朗が撫でる。
「此処に居ろ誰に覗かれようと気にするな。子どもの一人受け入れられない俺達じゃないからな。」
不和は生じず誰もエルフナインを責めない状況にキャロルは舌打ちをする。
『ならば此処で藻屑と消えろ。』
『マスター!指示を!マスター!』
『おとなしくしてろ!』
潜水艦で会話を聞いていたのだろうフェルトがキャロルへと呼びかける。
『フェルトか、お前はオレにとってもあまり重要ではない。好きにしていろ。』
『あ、あぁそんな・・・。』
切り捨てられたと悟ったフェルトは押し黙る。
「それが自分の部下に対する仕打ちか。」
『あれは人ではない物だ。』
『ふざけんなよ!だったらあたしがこいつを貰うぞ!』
『好きにしろ。』
弦十朗からの問の答えに思わず言い返したクリスにキャロルはそう言うと姿を消した。
◎
深淵の竜宮の通路でキャロルはテレポートジェムを取り出す。
「レイア、オートスコアラーの務めを果たしてこい。」
「まもなく妹も来る確かに果たして見せますマスター。」
そうしてキャロルはテレポートジェムを砕くとウェルと共にチフォージュ・シャトーへと帰って行く。
「慈しみの心を持つのも大事だと僕は思うがね。」
「少しは黙れ。」
「お先は暗いな。」
軽い態度のウェルにキャロルは苛立ちを隠せないでいた。
◎
そして深淵の竜宮の上にレイアの妹が現われると深淵の竜宮をたたき壊しその手の中にレイアを収める。
「謎の人型存在が深淵の竜宮を破壊!」
「クリス君達に退避命令だ!」
「もうやっています!」
圧壊していく深淵の竜宮から潜水艦が脱出しソット・ヴォーチェへと着艦する。
「潜水艦の着艦を確認!」
「減圧の後の急速浮上だ!」
海面へと向けて上昇していくソット・ヴォーチェをグランドガンダムとなったレイアとその妹がソット・ヴォーチェを掴み挙げると海底へと引きずり込んでいく。
『おっさん!レラジェを出すぞ!』
『ツインエッジも!』
『出るデース!』
「了解した!海中用の発進カタパルトを用意だ!」
二機のガンダムがソット・ヴォーチェより発進するとグランドホーンが船体を貫く。
「危ない!!」
貫かれた衝撃で艦内の空気圧が急速変動したことにより天井の一部が友里へと降りかかるがエルフナインが咄嗟に彼女を突き飛ばして庇う。
「エルフナインちゃん!」
「僕は誰にも操られてなんて・・・。」
「しっかりしてエルフナインちゃん!」
深い傷を負いエルフナインが意識を失う。
「今医療スタッフを呼んだ!俺達は迎撃に集中だ!」
「了解!」
弦十朗の言葉通りに直ぐに駆けつけた医療スタッフにより治療室へと運ばれるエルフナインを見て友里は意識を戦闘へと戻した。
海底に降り立った二機のガンダムはソット・ヴォーチェを掴むマニピュレーターをまず破壊するとグランドガンダム本体へと向かう。
「おおぉぉおおお!!!」
基本は遠距離主体である筈のレラジェがライフルを構えグランドガンダムに突撃する。
「前ので水中はだいたい把握してんだよ!」
そしてライフルでぶん殴るがグランドガンダムはびくともせずに逆に砲撃をくらい吹き飛びそこにグランドホーンを伸ばされる。
「しまったっ!?」
「あぁっ!」
「ぐぅっ!」
しかしグランドホーンが到達する寸前にツインエッジが割り込み攻撃を代わりに受け止める。
「お前等、クソっ!あたしのせいだ。フィーネの言うとおりじゃねぇかあたしのせいでこいつらが、あたしは後輩なんて求めちゃいけなかったんだ・・・!」
「そんなこと言わないで。」
「あたし達が後輩で居られるのはクリス先輩が居てくれるからデス!」
「先輩として頼りにしてるのに後輩を求めちゃいけないなんて言われたら悲しい!」
「お前等・・・!そうか、あたしみたいななのでも先輩やれるのはお前達みたいな後輩が居てくれるからなんだな!」
二人の後輩の言葉で奮い立ったクリスがレラジェを起こすとソット・ヴォーチェよりGNミサイルが放たれグランドホーンを破壊しツインエッジを解放する。
貫かれこれ以上の水中戦が不可能になったツインエッジからビームサイズを借りたレラジェがグランドガンダムへと向かっていく。
「お前達は先に帰ってな。」
「それじゃクリス先輩は!」
「あたしはもう一人じゃないってのがようやくわかった!だからもう大丈夫だ!」
芯の通った声でそう言うクリスに二人は安心すると機体をソット・ヴォーチェへと退避させる。
「行くぞ!イグナイトモジュール抜剣!」
イグナイトモジュールの稼働と共にレラジェのリミッターが解除されたことに今まで以上の機体性能を発揮しグランドガンダムを翻弄すると海面へと打ち上げると飛行ユニットを展開したレラジェがグランドガンダムを更に上空に押し上げるとビームサイズで機体を細かくするとライフルを突きつける。
「こいつでしまいだぁ!!」
そして放たれた弾丸がグランドガンダムにトドメを与えた。
機体をモビルスーツハンガーに戻したクリスは既にパーツ交換を終え応急修理が終りつつあるツインエッジを見ると二人の様子を見るべく医務室へと向かっていった。
「お前等無事か?」
「あたし達はなんともないデスけど。」
「エルフナインが。」
「マジかよ。」
処置は済んだのか寝かされているエルフナインは心配はすることはないと言わんばかりに軽く微笑む。
「貴女が、お前が私の新しいマスター?」
「は?」
そして包帯を巻かれエルフナインの横のベッドに寝かされているフェルトにクリスが気づく。
「ああ、そうだ。これからはあたしの言うことを聞け。」
「了解。」
「じゃあ最初の命令だ。そのマスターってのと堅苦しのをやめろ。あたしと同じ顔でそれされたら気味が悪い。」
「分かった、マスターでないなら。同じ遺伝子を持って先に産まれたのが貴女なら姉さん?」
「ああもうそれでいい。」
ただ下された命令に従っているフェルトにクリスは確かにこいつは子どもだと思った。
やったー フェルト が なかま に なった !!