シャトー周辺に展開されていた大型のアルカノイズを蹴散らしたセレナーデとツインエッジが内部へと侵入していく。
侵入して少しの間はモビルスーツが通れる程の広さの通路であったが直ぐに狭くなり降りることを余儀なくされる。
「調、切歌。機体は此処において行くわよ。」
「了解。」
「了解デス!!」
機体から降りたマリア、調、切歌の三人がシャトーの中枢部へと向かうために回廊を駆けていると侵入者への防衛機構が作動しアルカノイズが湧き出してくる。アルカノイズの出現を確認した三人はアームドギアを振るいアルカノイズを倒しながら回廊を突き進んでいくがアルカノイズの影よりナスターシャが現われる。
「マムっ!?」
土の下にて眠っているはずのナスターシャが現われた事にマリアは驚きのあまりに足を止めてしまうとナスターシャが車椅子の戦闘機能を用い三人を纏めて吹き飛ばす。
「どうして此処にマムが・・・。」
「あれもシャトーの防衛機能なの?」
マリアの問いかけに調がアルカノイズが現われた事も含めての予測で答える。
「マリア、目を覚ましなさい。」
「マムっ!」
「貴女が他者を救うのはただの罪滅ぼし。貴女は善意で他者を救っているのではありません。自らの手が血で汚れているのを否定したいが為に救うという自己愛。」
「それは・・・!」
自身が戦う中で心の片隅では思っていたことを偽りとは言えナスターシャに指摘され動揺するマリアに切歌が叫ぶ。
「惑わされちゃいけないデスよマリア!!!あたし達は今マムが何処で眠っているのかを知っているはずデスから!!!」
「分かってはいる!だが、語られる言葉は真実だ!」
目の前に居るのは偽物だと分かっては居るがその口から語られる言葉を否定できずに剣先を震わせるマリアの手を調べが掴み引っ張る。
「マリアこっち!」
「何を!私は・・・戦える!」
「これは戦略的撤退デス!!」
大丈夫だ私は戦えると宣うマリアを連れて二人は回廊を逆走し途中で目に付いた細い通路へと入っていく。
「まさかあんな罠が仕掛けられていたなんて。」
「お盆にはまだ早いデスよ!!」
「ごめんなさい二人とも。でももう大丈夫よ。中枢を目指しましょう。」
調から手を離したマリアは再び先頭に立ち通路を進んでいくと血痕を発見する。
「血痕?なぜ此処に。」
「もしかしてドクター?」
マリアは知らないがウェルがキャロルと深淵の竜宮にて行動を共にし始めた事を知っている調がそう呟くと切歌が物陰を覗き声を漏らす。
「うぇっ!?」
「どうしたの切ちゃん。」
「これは!こいつは!」
三人の視線の先では肘から先のない左腕を押さえたウェルが荒い息づかいで眠りについていた。
「おい、起きろウェル。」
それを見たマリアはウェルの頬を軽く叩き目覚めを促すと呻き声をあげながらウェルが瞼を開ける。
「おやぁ?最新の英雄と成る僕の眠りを妨げる不遜な奴がいるのかと思えば君か・・・。」
「何故ここに居る、そして何があった。」
「随分とまぁお急ぎのようだ。」
「さっさと答えろ。」
「それにしても辛辣だ。いやそれも仕方がないか・・・。」
自身がDG細胞によって侵されている数年間に置いて彼女たちにした仕打ちを覚えているウェルはそれも仕方無しと納得するとふらつきながらも立ち上がる。
「僕自身などこの際においてはもはやどうでも良いだろう?今は何よりも世界がバラバラになってしまうのを防がなければならない。そうだろう?」
「そうには違いないが・・・貴方何があったの?」
「ただ、初心に帰っただけですよ。まぁ、そのお陰でこの有様だ。」
「なるほど、ならば信じよう。ウェル、お前は何の役に立つ。」
邪気がすっかりと消えているウェルを見て信じることにしたマリアが今の状況で何ができるのかを問いかける。
「奪われたネフィリムの左腕さえあれば世界を救えるとすれば?」
「上等。」
「決まりだ。」
当然のように三人の先頭に立ち歩き始めたウェルに切歌がツッコム。
「あたしはお前を信じるマリアを信じるデスけど。なにリーダー面してやがるんデスか。」
「斬り離されてなお、僕の身体はネフィリムを感じている。故にあの迷い子は此処を起動した後に僕の腕を捨てた。ならばそこが中枢部ってわけだ。分かったなら黙って着いてきなさい。あぁそうだ今の僕に戦うだけの体力はないので戦闘は任せましたよ。」
「傷は深いの?」
「死ぬ以外は掠り傷、なぜなら僕は英雄になりますからね。」
「強がりを・・・。」
見て分かるレベルで深い傷を負っているウェルを案じてそう聞くマリアにウェルが気丈にもそう振る舞うとシャトーが揺れる。
「揺れている!?」
「世界がバラバラに分解されるのが始まってしまった・・・急ぎますよ。案内するから誰か僕を背負ってください。」
「仕方ない私が背負おう。調、切歌アルカノイズが出たときは頼むわよ。」
「分かった。」
「任せるデス。」
マリアがウェルを背負うと三人はウェルの案内に従いシャトーの中枢部へと向かっていった。
◎
レラジェの援護を受けてダウルダブラと近接戦闘を繰り広げるエクシアとムーンセイバーそれぞれがダウルダブラが振るうビームサーベルと魔弦の斬撃に翻弄される。
そしてカメラでは捉えることのできない魔弦によって拘束されたムーンセイバーがビームマグナムにて狙われるが引き金が引かれる前にエクシアがダウルダブラの腕を蹴り上げることでビームマグナムは天に向けて放たれる。
「翼さん今のうちに!!」
「ああ!」
腕部と脚部に仕込まれているビームエッジを展開したムーンセイバーが魔弦を断ち切るのと同じくしてチフォージュ・シャトーが輝きを放ち始める。
「シャトーが光って!?」
「オレの勝ちだ!これより万象黙示は記されオレは世界を識るだろう!!」
オープンチャンネルにて高らかに勝利を宣言するキャロルに三人が焦りを浮かべた瞬間にシャトー下部より光が放たれるとそれがレイラインに沿って世界の分解を始める。
「ハハハハハハ!!!見ろ立花響!貴様がどれだけの奇跡を起こしたとてな!悪魔に侵されつくしたその身体ではなにも救えんさ!!!」
「それがなんだ!!!諦めるにはまだ早い!!!」
GNソードを振るったエクシアに黄金のイグナイトが伝播し防御の為に掲げられたシールドを切り裂く。
「盾を裂くか!!!」
お返しとばかりに出力を増したビームサーベルによってGNソードが切り裂かれる。
「GNソードが!」
「貴様とオレでは錬金術の練度も何もかもが違う!!」
「それでも!」
歩んできた時の重さが違うと叫ぶキャロルであったが関係など有るものかと響はエクシアにGNビームサーベルを抜かせると斬り合えるレベルまで出力を高めるとダウルダブラと鍔迫り合いに持ち込んだ。
◎
ウェルの案内によりチフォージュ・シャトー中枢部へと到達したマリア達の前にシャトー全体を制御していると思われるコントロール装置が現われる。
「あれさえどうにかすれば!」
「さっき何を聞いていたんだ!馬鹿か君は!あれを壊せば此処が暴走するのは明白!分解を止めるどころかレイラインを通して並行世界さえも巻き込んでバラバラだ!じゃあどうするかってそのためにこそのネフィリムの左腕!」
アームドギアを構えコントロール装置を破壊しようとする調制止したウェルがマリアから降りると予想通りキャロルによって捨てられていた左腕を拾い上げるとくっつける。
「錬金術とは分解、解析、構築!それらによって構成される異端技術!!!そしてこれは分解、解析を行うのみ!」
「となれば構築することで!」
「そうさ!世界は救える!そして僕は!」
その時ウェルの言葉を遮るように四人の周りにアルカノイズが次々と現われる。
「世界を救う大任は任せたぞウェル!」
「任されたとも!そうだ僕はこういうことをするために産まれてきた!!!」
戦いを始めようとしたマリアにエルフナインが司令室から話しかける。
『マリアさん通信機をウェル博士に!』
「エルフナイン?」
『自分らしい戦い方をします!』
その言葉を聞いた瞬間にマリアがウェルに通信機を投げ渡す。
「心意気は抜群だが君にできるのかい?」
『この端末をコントロール装置に接続してください!』
「その返答はできると見た!」
通信機がコントロール装置に接続されるとフォトスフィアのデータが送信される。
「なるほどこれはナスターシャの遺した物。」
『フォトスフィア。キャロルがこれで世界の分解を果たすのならその逆も!』
「これならより効率的だ!」
コントロール装置に接続してA.B.E.L.からのバックアップを受け世界の分解を止めようとするウェルを中心にアームドギアでアルカノイズを倒していく三人であったが再び現われたナスターシャに吹き飛ばされる。
「やはり来るか・・・幻影!」
剣を構えナスターシャを幻影と否定し猛るマリアの目の前でナスターシャが黒いマントに包まれるとガングニールを纏ったマリアとなる。
「幻影・・・違う。私はフィーネ、終わりの名を持つ者。」
「そうか、お前は過ちの果ての私か。」
槍からレーザー砲を撃つ偽マリアであるがアガートラームの剣を振るうマリアがそれをかき消し迫る。
「お前は過去!ならば超えられない道理は無い!」
「そうデス!黒歴史がなんぼのもんデスか!」
「マリアだけじゃない!これは私たちの罪の形!今罪を精算して明日に行こう!」
三人の歌が重なりフォニックゲインが高まっていくのに併せてギアの出力も増していく。
外部にて不自然な放電を始めたシャトーに気づいたキャロルが中枢部を覗き見ると赫怒する。
『ウェル貴様!生きていたか!』
「言っただろう!英雄が君を止めるとね!」
『まさかシャトーの機能を逆転させる気か貴様!』
「ご名答!過去の汚名をそそぐ時は此処と見た僕だ!」
『ふざけるな!シャトーに構築機能など存在しない!耐えきれずに崩壊するぞ!』
焦り叫ぶキャロルを見てウェルは笑う。
「悪事は上手くいかないのさ。いつの世も、僕は悪党同じく君もだ。命の使いどきは此処だろう。」
二人の会話を聞いていた三人はそれぞれ最も伝えたいことがある相手に通信をつなげる。
「翼、貴女と歌ったステージはとても楽しかった。今度があるのならその時は朝まで歌い明かしたいわ。」
『マリア、なにを!?』
「命を懸けて戦った相手の為に命を懸けられるクリス先輩の事尊敬してるデス。あたしもそんな先輩みたいになりたかったデスよ。」
『もう成れてる!だからそんな終わりみたいな事言うな!』
「本当はずっと直接謝らなきゃいけないと思ってた。あのとき、響さんの事をなにも知らないのに偽善と切って捨ててごめんなさい。」
『気にしてない!だから諦めないで!』
言うべきことを言った三人が高まったフォニックゲインをアームドギアに込め偽マリアに攻撃を仕掛ける。
切歌と調によりアームドギアたる槍を吹き飛ばされた偽マリアに肘から剣を生やしたマリアが迫る。
マリアの精神的動揺を誘うために偽マリアはセレナとなるがそれがより一層にマリアの歌を激しくする。
「セレナァァァァァァアアア!!!」
真っ二つに両断されたセレナは一瞬だけマリアに微笑むと砕けステンドグラスの雨を降らせる。
「これで世界は元通りぃぃぃいい!!!」
ステンドグラスの雨が降る中ウェルが叫ぶとシャトーの機能が逆転し世界が再構築されていく。
『やめて!私とパパの邪魔をしないで!やめてぇ!!』
慟哭するキャロルに呼応したダウルダブラがビームマグナムをシャトーへと向けると予備カートリッジを含めた残弾を全て彼女にとっての邪魔者であるウェルが居る中枢部へと向けて放つ。
そして放たれたビームマグナムによってど真ん中を撃ち抜かれたシャトーは真下の都庁へと沈み込んだ。
◎
キャロル自身が自らの手でシャトーを撃墜してしまった事を理解するまでの間に響達三人は大切な仲間が一気に三人も居なくなったことを理解し声にもならない悲鳴をあげる。
「どうして、こうなるっ!」
コックピット内にて自らの力不足をクリスが投げていると翼がムーンセイバーの肩のビーム砲をダウルダブラに定めながら投降を促す。
「キャロル・マールス・ディーンハイム!貴様の目論見は潰えた!っおとなしく投降しろ!これは要請ではない!命令だ!」
「終わり?オレが?ふふふ、終わりか・・・。」
壊れたようにそう言うキャロルであったがダウルダブラの背後に転移陣を出現させる。
「終わりではない!ただ分解するのがこの世界だけから周辺の並行世界ごとになるだけだ!」
「止まれ!」
転移陣の向こうへと消えていくダウルダブラにビーム砲が放たれるがヘルメス・トリスメギストスによって防がれる。
「お前等にはなにも救わせん!奇跡など起こさせない!」
「キャロルちゃん!」
陣の向こうにダウルダブラが消えた直後にエクシアも陣の向こうへと消えていく。
「立花!」
「あんっの馬鹿!」
直ぐに追おうとした二人であったが目の前で陣が消失してしまった。
◎
陣を抜けるとそこは宇宙であった。
「宇宙か!」
「そうだとも。」
驚きを口にする響をキャロルが肯定しつつ高火力のビーム砲をエクシアへと放つが察知した響によって躱される。
「躱すか・・・。」
「それは、シドニーの!」
「試作機とは違う、見せてやるアルニムの力を!研鑽を奇跡などというくだらない物にすり替えられたパパのそしてオレの怒りを!」
花型のモビルアーマーたるアルニムの中心に収まったダウルダブラのコックピットでキャロルが叫ぶ。
「これよりアルニムより放たれる錬金術でもって全てを破壊する!既に万物万象はオレの手の中だ!」
「・・・・・・立花響、ガンダムエクシア。目標を停止させる!」
「温いぞ!奇跡の体現者!」
夥しいファンネルが放たれるも虎の子のトランザムを解放したエクシアは容易く回避しGNビームサーベルでアルニムを斬り付けていくがヘルメス・トリスメギストスが施されているが為に表面装甲にさえ僅かにしか届かない。
「消えろぉ!!!」
「早すぎる!」
そして僅かなチャージ時間でアルニムでエネルギーを溜めると地球へと向けて錬金術を放つ。
地球のチフォージュ・シャトーへと到達した錬金術が天と地二つのレイラインを駆け巡り分解を始める。
「世界が!」
「万象黙示は今此処に!」
だがキャロルの目論見は外れた。
彼女の錬金術は確かに分解を行っただがそれはチフォージュ・シャトー単体にて行われていた単一世界の分解ではなくアルニムをも用いた並行世界を含んだ多重分解によってこの世界を他の平行世界より隔離していた完全聖遺物グレイプニルの分解にエネルギーが用いられ世界の分解は行われなかった。
「鎖・・・だと?ならばもう一度だ!アルニム!」
「もうやらせはしない!私とエクシアが居る限り!やらせはしない!」
方向の真下に陣取ったエクシアがGNフィールドを展開すると同時に再び錬金術が放たれしばしそれはエクシアと響の分解に全力が注がれる。
「しまった。トランザムが!」
「オレは
「それはガンダムじゃない!」
放たれたエネルギーをエクシアがプリママテリアに分解されていく中で響がガングニールを用いて強引に束ねようとすると先ほどの一撃で繋がったラインを通して地球から歌が更には装者達のシンフォギアの装甲が響の元へと飛来する。
「これは、絶唱?マリアさん、調ちゃん、切歌ちゃん。それに翼さんにクリスちゃんも!みんな此処に居る!」
とうとう機体の前面が分解されコックピットが剥き出しになるが響は叫ぶ。
「ガァンダァァァァァァァァム!!!!」
そして響は天と地の二つより放たれたフォニックゲインを束ね自身はエクスドライブへと至りエクシアをGS細胞による自己進化そして自らの錬金術による構築でもって新生する。
「消えたか、立花響。」
眼下で舞うプリママテリアを見てそうキャロルが呟いたが彼女は背後に気配を察知しファンネルにビームバリアを展開させた瞬間稲妻のように鋭い一撃がビームバリアを破壊する。
それに伴い機体を反転させたキャロルは驚愕する。
「紫色のガンダム!何者だ貴様!」
「ガンダムだ。」
「なんだと?」
紫色のガンダム、エレクライトガンダムがGNドライヴより光を放ちながら腕を組んでいた。
そしてその中のコックピット再構築によりモビルトレースシステムへと変化した物の中で響は腕を組みながら答える。
「私がガンダムだ!!!繋がれたこの想い!これは奇跡じゃない!明日を望む祈りだ!」
腕部よりエレクライトソードを構えたエレクライトガンダムはフェイスマスクを展開する。
「オルタネーター・・・フルドライブ!」
「ふざけるなシンフォギア!なにするものぞ貴様などぉ!!!」
先ほどのようにファンネルを放つアルニムであったが同じようにウィングビットを放ったエレクライトガンダムによって撃墜されていく。
「届かせる!この手はぁ!」
「呪われた貴様に何も救えるものかよ!」
アルニム中心部にて二機のガンダムが激突した。
◎
宇宙にて行われる最終決戦をエルフナインは息を呑んで見つめていたが戦いの影響で開いた傷口のせいでだんだんと意識が薄れていく。
「君、酷い怪我じゃないか!」
「大丈夫です。これが僕の戦いですから。今は皆さんの祈りが形を成した奇跡を見届けたいんです。」
洸の腕の中でエルフナインは朦朧としながらも毅然とそう言いきった。