機動戦姫ガンダムSG   作:鍋の中の白い奴シラタキ

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届け届け、何処までも

 響がキャロルを追って宇宙へと向かう少し前のチフォージュ・シャトー内部ではキャロルによって撃ち込まれたビームマグナムのせいで崩落していく中でウェルがマリアを降ってきた瓦礫より庇い下半身を押しつぶされていた。

 

「何故こんなことを!ギアを纏っている私なら平気だったのに!」

「だからといって見ているだけなんて僕にできるものか。それに君たちにしたことを考えればこんなこと安い。」

「貴方・・・。」

 

満足そうにしながらウェルは懐から一つのチップをマリアに差し出す。

 

「これを・・・。」

「これは?」

 

チップを受け取りこれは何かと聞くマリアにウェルは少し溜めてから精一杯に声を張り上げる。

 

「愛!!・・・ですよ。」

「何故そこで愛!」

「世界を殺すも救うもそれはいつだって愛故に。ならば僕は愛で世界を救いたい。そして僕は君たちに言いたい、今君たちが纏っているシンフォギアそれの適合者に選ばれたのは何も神が定めた運命なんて言う安っぽい奇跡ではありません。唯ひたすらに誰かを思いやることのできる愛ですよ。」

「貴方の愛、確かに受け取った。」

 

遺言とも取れるウェルの言葉を聞き終えたマリアが調と切歌を促しシャトー外部へと向かっていこうとするウェルがか細い声で問いかける。

 

「マリア、僕は英雄に成れるかな?」

「既に貴方は英雄よ。今の貴方はその資格を十分に満たしていた。」

「ははは、やったぁ・・・。」

 

轟音を立て崩れていく中枢部よりマリア達が駆けだしていく。

 

(さようなら、私の英雄。帰ってきたかつての貴方。)

 

悪魔の手中より解き放たれた世界を救った英雄を残して。

 ガンダムに乗り込んだ三人がシャトー外部へと飛び出した時、宇宙より光が降り立ち天と地のレイラインを駆け巡ると世界を封じていたグレイプニルを分解する。

 

「光が鎖を!?」

「どうなってるの?キャロルどころか響さんも居ない。」

「翼さん!クリス先輩!二人は何処に行ったんデスか!?」

 

転移陣の向こうへと響が消えた後に降ったきた光を見て予測を立てた翼が答える。

 

「宇宙だ、立花はキャロルを追い単身宇宙へと向かった。」

「乗り遅れちまったんだよあたしらは。」

 

悔しそうにそう言うクリスにマリアは頭を横に振る。

 

「遅れてなんかいないわ。シャトーに真っ直ぐ降りた光、つまりそこには宇宙と地球を繋ぐラインがある!ならばそれを利用して私たちの想いをあの子に送る!」

「だがどうやって・・・いやそうかそういうことかマリア!」

「ええ、歌うわよ。絶唱を!!!」

 

そして響の元へ五人の力が送られていった。

 

 

 

 

 

 

 宇宙でアルニムと戦うエレクライトガンダムの元にソット・ヴォーチェより通信が入る。

 

『響!今此処には泣いている子が居る!』

 

抱きかかえるエルフナインが涙を流している様を見て叫ぶ洸に響は静かに頷く。

 

「だったら手を差し伸べてあげなきゃね。」

 

響もまた目の前のダウルダブラの中で泣いているキャロルを感じ取りそう言う。

 

「これより成すは復讐だ!オレから父を奪った衆愚への!!!」

 

アルカヘストによる分解作用が込められたビームがアルニムの放つファンネルより放たれるがオルタネーター・フルドライブ状態となり残像を発生させるレベルで加速したエレクライトガンダムにはビームが当たらずに逆にファンネルが切り裂かれていく。

 

「なぜ当たらない!?それもくだらない奇跡だとでも言うのか!?」

「奇跡じゃぁない!!私だ!」

「なにっ!?」

 

剣を手放し拳を握ったエレクライトガンダムがアルニムよりダウルダブラを殴り飛ばす。

 

「当たると痛いこの拳!!!だから今!!」

「もはやどうでもよい・・・。」

 

拳を開き手を差し伸べる響をキャロルはどうでも良いと切って捨てるがその身を拒絶反応が襲う。

 

「またしても拒絶反応!?いや違うこれは!!!」

『世界を識るんだ。』

「オレを止めるパパとの想い出!?」

 

キャロルと共にダウルダブラも身を捩りサイコフレームを緑色に輝かせていく。

 

「サイコフレームの覚醒!?」

「オレの否定するのならそんな想い出など!!!燃え尽きてしまえば良い!!!」

「駄目だぁ!!!」

 

キャロルが想い出を全て燃やし始めると共に響もまた感情を対価として更なるエネルギーを引き出していく。

 

「消えろ消えろ!!!何もかも!!!」

「消させやしない!何も!もう何も!」

 

黄金に輝き出したエレクライトガンダムと覚醒したダウルダブラが殴り合う。

 

『キャロル、もうやめよう僕たちのパパはこんなことを望んでいない。』

「ならば何だという!パパは命題は与えても答えは教えてくれなかった!!!」

『だったら僕が解答する、命題の答えそれは赦し。パパは不条理を与える世界を赦し愛せとそう言っていたんだ。』

 

キャロルがエルフナインに行っていた感覚器官のジャックを利用しキャロルに語りかけたエルフナインが述べた命題の答えにキャロルは憤る。

 

「赦しだと!?ならばオレのこの想いは何処に行く!?」

「満足するまで私にぶつけて来い!!!全部受け止めてあげる!!!」

「お前如きに受け止めきれるものかぁ!!!」

 

魔弦がエレクライトガンダムを怒りのままに襲うが絡みつく端から電撃によって焼け落ちていく。

 

「消えろ!壊れろ!お前なぞ!!!」

 

放たれたアームドアーマーによる一撃によりエレクライトガンダムがアルニムへと叩きつけられる。

 

「否定してやる!奇跡なんて!!!」

 

レイラインと接続したダウルダブラが機体を崩壊させながらも世界を分解しようとする。

 

「負けない愛が、私の拳にはある。だからこそその憎しみごと包み込む!」

『このままでは放たれるエネルギーでアジア圏が消失します!』

『なんだとぉ!?』

 

繋ぎっぱなしにしていた通信から聞こえた音声に響はダウルダブラを見つめる。

 

「行こうガンダム。泣いて道に迷ってる迷子にはちゃんと手を繋がなきゃいけないからね。」

 

ビームバリアでファンネルからの攻撃を防いでいるエレクライトガンダムにアームドアーマーが襲い掛かる。

 

「七つ揃わぬ、シンフォギアなど!敵ではない!」

「だったら七つ目がこれだぁ!!!」

 

七つ目のアームドギアとして響は飛来してきたアームドアーマーをエレクライトガンダムに引っ掴ませると右腕に巨大な拳を形成する。

 

「なんだ・・・それは!?」

「繋ぐこの手が私のアームドギアだ!!!」

 

そして巨大な拳がダウルダブラを殴りつけると拳が砕けていくと共にダウルダブラのエネルギーが宇宙に霧散し黒い穴を形成し二機のガンダムを吸い込んでいく。

 

「引っ張られる!?」

「そうか・・・世界はオレを要らぬとそう言うか・・・。」

「せめてっ!」

 

自身よりも先に吸い込まれていくキャロルに向けて響が手を伸ばす。

 

「エルフナインちゃんがくれたこの力!呪いなんかじゃ決してない!!!抜剣!!」

『Dáinsleif』

 

イグナイトエクスドライブとなった響の影響を受け加速したエレクライトガンダムがダウルダブラに手を伸ばす。

 

「手を!!!」

「そんな呪われた手で誰も救えるものかよ!」

「それでも救う!」

 

コックピットで響を否定するキャロルの目にエルフナインそして父イザークの姿が映ると思わずコックピットの中ではあるが手を伸ばすとキャロルの思考を感じ取ったサイコフレームがダウルダブラに手を伸ばさせるとエレクライトガンダムが掴む。

 

『キャロル!』

『キャロル。』

「あ・・・。」

 

キャロルの手を掴んだイザークが彼女に語りかける。

 

『世界を識るんだ。いつか人と人がわかり合うことこそが僕たちに与えられた命題なんだ。賢いキャロルには良いのか分かるよね。』

「パパァ!!!」

 

ダウルダブラを宇宙に投げたエレクライトガンダムが穴に吸い込まれ消えると穴は閉じた。

 

 

 

 

 

 

 宇宙にて決戦が行われてより三日後、A.B.E.L.による必死の捜索もむなしく響は発見されず。

回収されたアルニム及びダウルダブラにはキャロルの姿は発見されなかった。

 

「戦いの行われたポイントのモビルスーツによる探索は行われましたが響さんどころかガンダムも発見されませんでした。」

「やはりあの時に観測された穴。その向こう側か・・・。」

 

緒川からの報告を聞いた弦十朗が唸っていると調ではなく表に出てきたフィーネがやって来る。

 

「今の響ちゃんは恐らくこの世界の外よ。」

「調くんいや了子くんか。何故そう思う。」

「あの子がデビルガンダムに狙われているのはエルフナインが記した物を見る限り明白。」

「まさか連れて行かれたと?」

「そう見ても良いでしょうね。ただ私達が自力で追いかけることは難しい。この世界にあった世界を移動する聖遺物はデビルガンダムを世界より追放する際に失われているのだから。」

「響君が自力で蹴ってきてくれるのを信じるしかないか。どうにも、歯がゆいな。」

「それとエルフナインは今夜辺りが峠よ。覚悟はしていなさい。」

「俺達は対価無しには平和を手に入れることができないのか・・・。」

 

戦いには勝ったが失うものもまたあることに弦十朗は諸手を勝利を喜ぶことができなかった。

 

 

 

 

 

 

 そして夜、エルフナインが眠る病室へと傷だらけのキャロルがふらふらと向かっていた。

やがて病室へと辿り着き入るとそれに気づいたエルフナインが入り口を見やる。

 

「キャロル・・・。」

「それはオレの名前なのか?全てが断片的で霞がかかっている。オレは一体何者なんだ・・・。瞳を閉じ瞼の裏に現われるお前ならばと思いここに来た。」

「そっか、記憶障害。君はもう一人の僕。」

 

なにもかもがあやふやだというキャロルにエルフナインはそう答える。

 

「オレはもう一人のお前。」

「僕たちは二人でパパの遺した言葉の為に走っていたんです。」

「パパの遺した・・・そんな大切な物までオレは。今こうしている間にも消えて言っているんだ!頼む教えてくれ!」

 

手を合わせエルフナインの側に近寄ったキャロルがそう言うとエルフナインは咳き込み血を吐く。

 

「順を追うと一言では伝えられません。僕の身体もこんなだから・・・。」

「お前も消えようとしているのか・・・。」

「以前の僕なら世界を救えれば消えても良いと思ってた。だけど今は、消えたくない。もっと此処の人達と一緒に生きていたいっ。」

 

涙ながらにそう言うエルフナインを見てキャロルは彼女の唇に自身の唇を近づける。

 

「ならばオレとお前、もう一度二人でっ!」

 

唇があわさり二人は手を繋ぐとエルフナインの身体が緑色に燃え上がり消えた。

計器が脈拍を計測できなくなり警報を鳴らしたことでエルフナインの病室に駆け込んできた響を除いた装者達の目に佇むキャロルの姿が目に入る。

 

「キャロル・・・何故此処に。エルフナインに何をした。」

 

静かにそう問いかける翼にキャロルはゆっくりと頭を横に振ると振り向く。

 

「僕は、僕は。」

「エルフナイン・・・なのか。」

「はい。」

 

それはキャロルより肉体を受け継いだエルフナインであった。

 

「そうか、ならば今は貴女の無事を。ただ喜ぼう。」

 

翼はゆっくりとエルフナインを抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

 かつて自身の自宅があった街へと洸は歩みを進める。

 

「響がいつでも帰ってきて良い場所を俺が壊したんだ。だから俺が直さなきゃな。」

 

家族をやり直すため立花洸は逃げ出した家族の元へと歩みを進めていった。

 

 

 

 

 

 

 砕けた鎖の破片を東方不敗が手に取る。

 

「小娘よ良くやってくれた。これで後は儀式を終らせるのみよ。」

 

並行世界との繫がりが回復したことに東方不敗は純粋に喜んだ。

 

 

 

 

 

 

 イギリスへと向かう翼とマリアが乗った飛行機が飛び立っていくのを弦十朗と八紘は空港の駐車場より見送る。

 

「見送りもろくにできんとは父親失格だな。」

「私たちはこれでいい。」

 

今はこれ良いのだと言う八紘は収束した事変について弦十朗に問いかける。

 

「弦、お前は今回の魔法少女事変。どう考える。」

「米国の失墜に伴った欧州の胎動。」

「あるいは・・・か。」

 

二人はルナアタックより裏に潜む何者かの意思を集められた情報から読み取っていた。

 

 

 

 

 

 

 遠く離れたどこかの並行世界の雪山にて不時着したエレクライトガンダムの中で響はお腹を空かせていた。

 

「何処だろう・・・此処。お腹すいたぁ。」

 

先ほど吹雪いていた外がどうなっているのか気になった響がコックピットから出ると誰かが真っ直ぐエレクライトガンダムへと向かってくる。

 

「誰?」

 

相手も響に気づいたのか一気に駆け出すと槍を構え飛び上がり響を押し倒すと槍の穂先を顔の直ぐ横の地面に突き刺す。

 

「お前はあいつらの仲間か?」

「か、奏さん?」

「お前、なんであたしの名前を。いや、アンタどこかで?」

 

それは並行世界の天羽奏であった。

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