激戦を終えて二課本部へと帰還したクリス達は負傷の処置を終えた後に司令室へと集まっていた。
「風鳴司令、あの子。立花響について貴方達二課が把握していることを教えて貰えるかしら。」
「そうだな、俺には君たちに説明する義務がある。」
あまりにも様子の違い過ぎるこの世界の響に対して危機感を覚えたマリアが弦十朗に後悔に満ちた表情で響に関して分かっていることを説明し始める。
「彼女がああなってしまったのは過去に我々が起こしたある事件が原因なのだ。」
「そのある事件と言うのは、翼と天羽奏のライブにおける惨劇。」
「ああ、彼女はその生き残りだ。奏は行方不明となりツヴァイウィングは実質的な解散状態。更に多くの人名が失われた。」
「行方不明?絶唱を歌い殉職したのではなく?」
奏は絶唱を歌ったのではないのかと言うマリアの疑問に翼が答える。
「絶唱を歌ったのは私だ。」
「翼が。では何故天羽奏が行方不明に。」
「連れ去られたのだ巨大な顔を模した何かに。」
「巨大な顔?」
「ああ、私が絶唱を解き放ちノイズを一掃した直後に現われたデビルノイズに追従して現われた。」
巨大な顔とは何かと疑問を覚えるクリスとマリアの為に弦十朗がモニターに当時偶然であるが観客の持ち込んでいたビデオカメラに残されていた映像を短いながら映す。
「これだ。」
「こいつは確かに巨大な顔だな。」
空間の亀裂から現われたガンダムヘッドが奏の右腕を噛み千切り亀裂の向こうへと連れ去る瞬間を映した物だった。
「これに関しては響くんについて関係は無い故に今はこれ以上話を逸らさないためにまた説明する。」
映像を消した弦十朗が改めて響についての説明を始める。
「先ほども述べたように響くんは惨劇の生き残りだ。それ故に彼女も他の生存者のように謂われのない誹謗中傷を始めとした迫害に晒されてしまった。」
「だから人は所詮一人なんてことを・・・待って。立花響の側にはあの子が居たはずよ。」
「あの子?」
「小日向未来よ、立花響の親友で心の拠り所である。」
「いや、そのような人物の報告は上がっていないが。分かった、小日向未来という者について調べさせよう。」
「なぁ、おっさん。あいつの陽だまりが居なくてもよ家族はどうなんだよ。」
未来は居なくとも流石に家族は居るはずだと言うクリスに弦十朗は言いづらそうであるが告げる。
「亡くなっている。」
「は?」
「デビルノイズに襲われゾンビとなってしまった事が検死の結果明らかになっている。」
「なんだよそれは!どうして世界は此処まで残酷なんだ!」
あまりにも残酷すぎる世界からの仕打ちにクリスが拳を振るわせていると翼が言葉を溢す。
「私の不徳だ・・・立花を奏に託されていたのに守り切れなかった。あの時私の腕の中に居た立花を守れと奏は最後にそう言っていたのに、私は果たせなかった。」
「・・・。泣くにはまだ早いわ、立花響はまだ生きている。ならばあの子を守ることはまだできるのよ。」
「だが、私は弱いっ!」
嘆く翼をマリアが叱咤する。
「ならば強くなれば良い!貴女は風鳴翼なのだろう?託された想いくらい成し遂げて見せろ!」
「なれるのか?私は強く!」
「成れる!風鳴翼であるならば!」
お前が風鳴翼であるならばどこまでも強くなれるとマリアが言うと司令室に警報が響く。
「ノイズの出現を確認!」
「いけるか三人とも。」
「万事が戦場、いつ何時でも出撃できます!」
翼がそう言うと残りの二人も頷くとノイズを倒すために出撃していった。
「司令、永田町より先日搬入した完全聖遺物についての見解が求められています。」
「今はカルマノイズと出現頻度を増しているデビルノイズの対処が優先だ。専門家である俺達を頼るのは分かる。だが、悪いが後回しにして貰おう。」
「了解です。」
活性化と不活性化を繰り返す完全聖遺物の調査を弦十朗は今は特殊なノイズを相手取るのが先だと後回しにした。
◎
プログラムの設定を終えた響がコンソールから腕輪を外し奏に返すとギアを纏いエレクライトガンダムを起動する。
「さぁ奏さん行きましょう!!」
「ああって何処に行くんだ?」
「何処って奏さんの世界ですよ!きっと翼さんは奏さんの事をずっと待ってます。」
即答で奏の世界に行くと言った響に対して奏は少し呆ける。
「あたしは構わないんだけどよ。響、アンタの世界の仲間も帰ってくるのを待ってるんじゃないのか?」
「きっと待ってくれてると思います。」
「だったら。」
「だけど、私はもう何年も大好きな人に会えてない奏さんを帰らせてあげたいんです!」
「おまっ!結構ストレートに恥ずかしい事を・・・。」
「誰かを大好きって想いは恥ずかしくなんかないですよ、その想いがあるならきっと奏さんの世界に帰れます!」
「いやそれならなんであたしは帰れなかったんだ?」
響の理論で言えば速攻帰還できたはずだと言う奏に響は言いにくそうに伝える。
「それが、腕輪の行き先設定が完全ランダムになってました。」
「マジか・・・。」
「でも今から帰れますから!」
「そうだな!」
落ち込んでいても仕方ないと二人は気を取り直す。
「そうだ、さん付けは要らないし敬語も要らねぇ。」
「え?」
「なんせあたしらは同じガングニールの装者だろ?」
「はい!!!」
テンションが爆上がりした響がエレクライトガンダムを飛行形態にすると機体前方に並行世界を繋ぐゲートが開きそこにエレクライトガンダムが飛び込むとゲートは閉じた。
不思議な様相を見せるゲート内部を突き進むエレクライトガンダムのセンサーが前方に戦闘が行われているのを察知する。
「こんなところで戦闘?」
「どうした?」
「前の方で何かが戦ってる。」
「此処でか?今までんなことなかったぞ。」
そして進んでいくと戦艦とデスアーミーの軍団が戦闘を行っている様子がモニターに映る。
「デスアーミー!」
デビルノイズと共に戦艦を襲っているデスアーミーに気づいた響がウィングビットを飛ばしながらモビルアーマー形態に変形しエレクライトソードを構える。
「ファンネル!!」
「あたしにできることあるか!?」
「艦の上に降ろすからノイズを!」
「あいよ!」
戦艦に集るデスアーミーをウィングビットで散らすと甲板にギアを纏った奏を降ろす。
「あたしは時限式だ!リンカーが無いからそう長くは持たないからな!」
「了解!」
奏がデビルノイズを響がデスアーミーの相手をしに向かった。
◎
市街地でノイズを倒し終えたクリス達はやはり現われていた響に近づくが彼女は人間不信になっているのか警戒して距離を取る。
「待ってくれ立花!」
「・・・なに。」
対話の意思を示してくれたことに翼の表情が僅かに明るくなる。
「共に、二課へと来て欲しい。」
「なんで私が・・・。」
「私は、お前を助けたい。」
「たす、ける?私を、お前が?」
「そうだ。」
間合いを詰めた響が翼に掴みかかり叫ぶ。
「本当に助けて欲しいときに来てくれなかった癖に!!!」
そう叫ばれ動揺する翼を響は突き飛ばす。
「アンタはあの時みたいに地獄から連れ出してくれるって信じてたのに。それをアンタは裏切った癖に、そのせいでお父さんもお母さんもお婆ちゃんもみんな苦しんで死んだんだ!」
「立花・・・。」
「今更、血塗れた私が救われるものかよぉ!!!」
最後にそうやって吐き捨てた響は八つ当たりか近くの電柱を殴り壊すと何処かへと去って行った。
「貴女、さっき言わなかったことがあるわね。」
「ああ。」
「それはなに?」
マリアに見抜かれた翼は悔し涙を流しながら答える。
「まだ立花がリハビリに励んでいる頃だ。私は彼女の元に定期的に見舞いに行っていたそれこそ退院するまでだ。」
「そんなことが。」
「それだけであいつがあんなことにはならねぇだろ。」
続きをクリスに促された翼が続きを語る。
「だがある日の事だ。私は立花の家へと様子を見に行った。怪我の具合はどうなのだろうかとな。」
当時の立花家に行われていた迫害のさまを翼は響の様子を見に行ったその日に初めて思い知る。
「玄関扉が不自然に開いていた。そして中にはゾンビと思われる三人の遺体とその中に血塗れで頽れガングニールを纏った立花が居た。」
「じゃあ、あいつは自分の親を。」
「世界の全てを憎む訳だ。」
「その日からだった立花が変わったのは以前までの明るさは消え。常に何かに怯え始めていたのは、私はそんな立花から逃げたんだ。今更救いたいなどととんと笑わせるよ。」
デビルノイズ文字通り悪魔の名を冠する者がこの世界に与え続ける災いの爪痕はでかすぎるものだった。
「私は、私は一体何がしたいんだ。託された想いも果たせず、守るべきには傷を与えるしかできない。」
「それでも立つのよ。貴女のその立花響を助けたいという思いをもういちど最速で最短で真っ直ぐに一直線に届けるの。受け売りだけどね。」
なんとか励まそうとするマリアであったが翼は立ち上がる事ができなかった。
◎
もう自分以外誰も帰ってこない自宅へと帰宅した響は軽くシャワーを浴びた後に自室へと行き布団に包まる。
「・・・居なくなるくせにどうせ。みんな、みんな。」
響には今でも思い出せる階下で大きな音がしあわやまた石でも投げ込まれたのかと思い下へと降りるとそこでは一体のデビルノイズに襲われゾンビ兵となった洸が母と祖母にDG細胞を感染させて自らと同じゾンビ兵へと仕立て上げてしまった瞬間をそしてその後気がつけば血溜まりの中でガングニールを纏っていたあの日を。
思い出したくなかったのに思い出してしまった響が吐き気を催してしまいゴミ箱に空の胃袋から出てくる胃液を吐き出していると階下に気配を感じ取る。
「誰?」
耳を澄ますとそれはカツーンカツーンと金属質な足音を放っていることが嫌でも分かる。
「人じゃない・・・。」
やがてそれが二階に上ってきているのを察した響は裸足ではあるが部屋のベランダから外に飛び出し道路に降り立つと家の玄関から響を追うようにプルーマが飛び出してくる。
「蟲?違う、あいつらだ!」
自らに潜んでいるDG細胞と同種の気配を悟った響は聖詠を歌いギアを纏うとDG細胞によって構成されたプルーマ。デスプルーマに向けて拳を構える。
「何処までも・・・何処までも私から奪うのか!お前らはぁ!!!」
一対一であったことか融合症例故の高火力によりデスプルーマを短時間で無力化した響はギアを解除しスニーカーを履くとこれ以上自宅を荒らされては堪らないと考えある程度の纏まった現金を財布に入れると自然と人が少ない方向へと歩み出していった。
◎
デスアーミーとデビルノイズを殲滅した響と奏はひとまずエレクライトガンダムを甲板に置くと戦艦の人員だろう者に案内され艦内へと入っていく。
「何も考えずに助けたけどさアンタら一体何者なんだ?」
「それについては我々の司令から説明がございます。」
案内された先の司令室と思わしき場所に通された二人の前に一人の女性が出てくる。
「この度に助力に感謝します。私は此処スクルドの司令ミーナ。」
「あたしは天羽奏だ。」
「立花響です。」
互いに簡単な自己紹介を終えるとミーナが二人に問いかける。
「貴女達はあれが何か知っているの?あれは私たちが戦っているウロボロスが操るガンドとは全くの別物だった。」
「あれはデビルガンダムの尖兵です。」
「デビルガンダム?」
オウム返しに問い返したミーナに響が簡単に説明する。
「前に夢で見ました。デビルガンダムは神と蛇を殺すために作られたって。」
「神と蛇・・・。蛇はきっと世界蛇のことね。」
「待てよ二人揃ってあたしにも分かるように言ってくれ。」
「分かったわそれじゃ私たちスクルドが倒すために戦っている世界蛇とそれを崇める組織ウロボロスについて説明してあげる。」
ミーナからなされた説明されたウロボロスが世界蛇を使い数多くの並行世界を滅ぼしていると説明された二人はそんな組織がいたことに驚くが響は魔法少女事変の真っ最中に見た夢。奏は空間を割って現われたガンダムヘッドの存在があったことから居ても不思議ではないと納得する。
「それでその世界蛇を倒すために作られたデビルガンダムが世界蛇を倒すために戦っている私たちを襲ったのは一体何故だか分かる?」
「きっとデビルガンダムは神か蛇を殺しうる何かを常に探しているんだと思います。」
「ミョルニルを狙ってきたのね。」
ミーナがデビルガンダムに襲われた原因と思わしき聖遺物の名前を呟いていると響は先ほどの自分の発言に覚えていた引っかかりの謎が分かり呟く。
「・・・てことはガングニールを?」
「どうした響?」
「私と奏の共通点はガングニールの装者!てことはデビルガンダムが欲しいのは私たちじゃなくてガングニールなんだ!きっとガングニールには神か蛇を倒す力があるから!」
「そう言うことか!」
自分達がどうしてデビルガンダムに狙われて居たのか分かった二人はすっきりした。
「ところで貴女達はどうしてこの空間に?ギャラルホルンをましてやデュプリケイターを使ったわけでもないのに。」
「私のガンダムです。」
「後はこの腕輪だな。このどっちかで並行世界を渡れる。」
「そんな技術があっただなんて。教えて貰うことは可能かしら?ただでとは言わない。」
そう聞かれた響は少し考えると答える。
「それなら奏の世界の場所は分かりますか?より確実に元の世界に返してあげたいから。」
「ならなにかその世界に貴女に縁深い物はある?」
「あたしの右腕なんてそれこそだろ。」
「だったら直ぐに分かるわと言っても艦の修理にもそれなりの時間が要るから二日貰える?」
「そんくらいなら構わないさ。何年も待つよりましだ。」
戦艦の修理と共に奏が始めに居た世界の座標の特定が開始された。
デビルガンダム「生体ユニットは強くないとね。故の試練よ。」