稲妻の如く駆けだした二人に対して槍が振るわれるが奏がそれを容易く防ぎ響が腹部を殴り抜く。
「DG細胞で構成された人形・・・それはマリアさんに対しての侮辱だ!!」
「人形?違うな、不和なき人のあるべき姿だ。一つの意思の元に社会は構築される。そこに苦しみなど存在しない!」
「だけどそれはつまんないな!あたしは心の底からごめんだね!」
奏の振るう槍がもう一人のマリアを吹っ飛ばす。
「ぐぅっ!」
しかしそれによって解放された暴走状態のヒビキが巨腕を振るい二人に攻撃を行うが響に受け止められる。
拳にGN粒子を集めると暴走しているヒビキに叩きつけその身を侵しているDG細胞をある程度吹き飛ばす。
「ごめん、今はこれくらいしかできない。」
ギアが解除され倒れかかってきたヒビキを抱き留めると任せられそうな者を探すとクリスに向けて投げ渡す。
「頼んだ!」
「は!?ちょっ!?」
宙を舞うヒビキを受け止めたクリスがホっとしていると閉じていなかった空間の亀裂からデビルノイズと共に黒いガンダムキマリスが現われる。
「状況を把握しろ同胞、蛇がそこに居るのだぞ!?」
「同じ事やってんのに良く言うぜ。」
「ノイズは任せた。モビルスーツは私がやる。」
「ああ、任せな。」
戦う相手を決めた二人が走りだし奏が槍でデビルノイズを撃砕し、響の拳がマリアの振るう槍と衝突する。
「貴女は、貴女達はガンダムじゃない!」
「いいや私はガンダムだ。人類を支配より解放するために生み出されたな!」
「そのために支配してなんになる!」
「言語を超えた相互理解だ!」
DG細胞によって行われる人には不可能な軌道によって放たれる槍捌きを響は防護術式を攻撃が当たる箇所に瞬間的に部分展開することで防ぐ。
「だらぁ!!」
「あぐぁ!」
「本物のマリアさんはもっと強い!」
殴りぶっ飛ばされたマリアはキマリスの元へと着地するとコックピット内に入り込むと槍を響へと叩きつけるが響はそれを蹴り返すと槍の上を走りキマリスの頭部を蹴り飛ばし宙に身を躍らせる。
「空では身動きは取れないな!」
「モビルスーツがあるのが自分だけだとは思わない事だ!」
槍でもって響を貫く態勢を取ったキマリスの前で響は指を鳴らし高らかに叫ぶ。
「出ろぉぉぉおぉおおお!!!ガァンダァァァァァァァム!!!」
次の瞬間上空に座していたカルマノイズが細切れとなり爆散するとエレクライトガンダムが降り立ち響をコックピットへと収めると構えを取る。
「なんだそれは!?エクシアか!?」
「進化したエレクライトガンダムだ!」
ぶれて見えるレベルの早さで振るわれた拳がナノラミネートアーマーが施された装甲を砕き殴り飛ばす。
「トランザム!!」
「速いっ!」
さらにトランザムを発動したエレクライトガンダムが変速軌道を行い全方位からキマリスへと拳撃を放つ。
高機動型であるはずのキマリスであるがそれを超える動きを見せるエレクライトガンダムに翻弄される。
「そう来るのならば!」
槍を大地に突き刺したキマリスの周囲が隆起しガンダムヘッドが飛び出しエレクライトガンダムに襲い掛かる。
「ガンダムヘッド!」
それに気づいた響は即座にエレクライトソードを構えガンダムヘッドを切り裂くが次々と現われる事で切りがない。
「多いが、多いだけだ!」
しかし手数はエレクライトガンダムにもある。
背部のウィングビットを全て解き放ち合計七十二門もある砲塔によってガンダムヘッドが次々と撃破されていく。
そしてキマリスのコックピットめがけてエレクライトソードが突き刺さる。
「あぁ・・・私は今まで・・・セレナ・・・ごめんなさい・・・。」
「・・・どこまでも踏みにじるのか、デビルガンダム。」
キマリスと共にマリアが灰となり崩れていくのを感じ取った響がマリアが居た世界を喰らい彼女を縛っていたデビルガンダムに思わず悪態をつく。
響がキマリスを撃破したのと時を同じくして奏も地上のデビルノイズを倒し終えたのか翼の側に居るのを確認し響がエレクライトガンダムより降りようとするとどこからかビームが放たれる。
「なっ!?」
反射で展開したビットのビームバリアによって事なきを得たがそれを施した下手人を見て警戒を強める。
「モビルアーマー・・・。」
そこには夕陽を背に二足歩行のモビルアーマーらしきなにかが立っていたが日が沈んでいくと空間の亀裂の中へと消えていった。
何のために現われたのか分からないと思いながらも響はエレクライトガンダムから降りて皆の元へと向かっていった。
奏以外ボロボロの皆の前に響は出る。
「初めまして?いやぁ、知ってる人と初対面って不思議だよね。」
「初めましてって感じがしないからな。」
「不思議だよね。」
「お前は、また別の並行世界から来たって事なんだよな?」
「そうだよ。」
肯定それは自分達の世界の響はまだ伏せったままだということであった。
◎
戦闘が終ったことで二課本部へと帰還した皆は翼とマリアは絶唱を唄ったことでメディカルルームへクリスと未来は司令室へと来ていた。
「A.B.E.L.所属、立花響です。よろしくお願いします。」
「また別の並行世界ということか、つまり君もギャラルホルンでこちらに来たのか?」
「ギャラルホルン?いえ、私はガンダムで来ました。」
「それはあの人型のロボットの事か?」
「はい。」
聞けば聞く程に技術者として気になる事が溢れているためとりあえず響の事を後回しにした弦十朗は奏へと目を向ける。
「奏、なんだな?」
「ああ。」
「先ほど現われたマリアくんの偽物のようではなく本物の。」
「ああ、あたしはようやく帰って来たさ。あたしの世界に。」
「お帰り、よく生きていてくれた。」
「残してくれててありがとな、あたしの帰ってくる場所を。」
感慨深そうに帰還を嬉しがる弦十朗を見て響が良かったと思っていると未来が話しかけてくる。
「響?」
「どうしたの。」
「ガンダムって何?」
「そっちにはガンダムはないの?」
「うん。」
そう言われたことで響はガンダムについて軽く説明する。
先史文明期以前に用いられていたものを現在は自分達A.B.E.L.のみが運用しており、それを用いてモビルスーツを操る錬金術師やテロリストに対抗していると。
「世界が違えば、だいぶ違うんだな。A.B.E.L.ってことはそっちにはおっさんは居ないのか?」
「居るよ、クリスちゃんの世界の師匠がどうかは分からないけど私の所の師匠は武闘派だよ。」
「そこは同じなんだな。」
組織の名前は変わっていてもあり方はS.O.N.G.とさほど変わらないことにクリスは弦十朗の存在の大きさを感じていた。
弦十朗と奏の話が一段落したのを見計らって響は弦十朗に話しかける。
「こっちの私は今どんな感じですか?」
「DG細胞だったか、例の金属皮膜は君のおかげもあって除去できたのだが・・・。」
戦闘の最中において響がDG細胞の浸食を軽減させたおかげで了子が生みだした治療法により除去はできたという弦十朗であったが少し言いずらそうにすると奏が気づいたのか確信をもって予測を言う。
「あたしのガングニールの欠片か・・・。」
「ああ、ガングニールの欠片がヒビキ君の心臓付近に食い込んでおり無理に除去しようとすれば命に関わる状況だ。」
「まずいな、それじゃ悪魔共はまだあいつを狙うぞ。」
「どういうことだ。」
まだヒビキは狙われるという発言に弦十朗は疑問を呈し未来は瞳を揺らす。
スクルドより提供された世界蛇の情報を交えて響が説明する。
「あれらは、カルマノイズと言われる世界蛇の尖兵もですがそれの大元である世界蛇。そして神を倒すために作られたデビルガンダムから生み出されてるんです。」
「蛇と神?そうかあのマリア君が言っていた蛇とはカルマノイズの事だったのか。」
「だけど私はデビルガンダムをガンダムとは認めない。あれのあり方はガンダムじゃない。」
「ま、落ち着きな説明中に突っ走るんじゃないよ。」
奏になだめられた事で響は心を落ち着かせると響は説明を再開する。
「きっとまだこの世界に印となっているデビルガンダムの子機が居るはずです。」
「まさか、あのマリア君はそうではないと?」
「あれはあの時こちらの精神的動揺を誘うために送り込まれていただけです。印じゃないです。」
「カルマノイズにデビルノイズ、まさかどちらも尖兵にすぎなかったとは。」
敵の残存戦力はまだまだあると告げられた事で弦十朗が唸っているとメディカルルームより通信が入る。
「どうした。」
『司令、ヒビキさんが目を離した隙に意識を取り戻したのか抜け出してしまいました。』
「なんだと!?彼女は狙われているんだぞ!?」
『了解!捜索を開始します!』
それを聞いた未来は一も二もなく司令室を飛び出していった。
◎
気がつくと二課本部のメディカルルームに居たヒビキはDG細胞が身体から取り除かれていることに安堵するも今までの人生によって人を特に大人を信じることが駄目になっているために彼女は二課のスタッフが目を離した隙に身体に取り付けられていた機器を外し抜け出した。
DG細胞が身体が取り除かれた最大のメリットであるデビルガンダムの傀儡となる未来が消えると言う成果はあったが逆にデメリットとして今までDG細胞によってもたらされていた超人的な体力はなくなっており既に若干息がきれていた。
「どうしてっ。もう、息が・・・。」
見えてきた公園に入りスポーツドリンクを買いベンチで息を整えているとヒビキを追いかけて来たのか未来が視界に入ると咄嗟にベンチの後ろに隠れる。
「どうして、私に構うんだ。私は未来の響じゃないのに。」
自分でそう言ってヒビキは落ち込む。
「そうだよ・・・翼さんも結局は来てくれたのに手を払いのけたのは私だ・・・。当然か・・・こんな私に陽だまりがないのは・・・。」
自らの名を呼び探していた未来が立ち去ったのを確認するとヒビキはベンチの後ろから出て飲み干したスポーツドリンクの容器をゴミ箱に捨てて公園から出て道を進んでいると後ろから手を掴まれる。
「追いついたっ!」
「・・・未来。」
先ほど別の方向へと向かっていった筈の未来が何故自分の後ろから現われたのかという疑問は持ったが二人の周囲をデビルノイズが空間を割り現われた事で些細な疑問が吹き飛ぶ。
「後ろに居て、私がヒビキを守るから!」
「馬鹿にしないで、私は戦える。戦うんだ!」
未来はギアペンダントを握り、ヒビキは胸に手を当てる。
「Rei shen shou jing rei zizzl.」
「Balwisyall nescell gungnir tron.」
ギアを纏った二人であったがヒビキの身体がDG細胞が取り除かれたことで今度は逆に進行が強まったガングニールの欠片の浸食によって熱を放つ。
「熱い・・・だけど、力が湧く。歌が止まらない!」
「待ってヒビキ!」
何もせずとも拳に炎を宿したヒビキの一撃が開戦の狼煙となった。