地獄は変わらない
闇夜の大空をバルベルデ政権に革命活動を行っている反政府軍のフラッグが翔るがモビルスーツ相手への戦闘に最適化されたアルカノイズによってプリママテリアへと分解され存在した証さえ残さずに大気へと溶ける。
「クソっ!いくら国連からの支援とは言えどノイズ相手では無力なのか!?」
アルカノイズを召喚し反政府軍の殲滅を行っている政府軍のゲライガが物量によってフラッグを次々と撃墜していく。
「されども我らが退くわけには行かない!」
アルカノイズには敵わぬとしても彼らは政府による不当な弾圧により苦しめられている自らの愛する者達を思い浮かべると一気呵成に攻勢に転じる。
そしていつものように反政府軍がプリママテリアとして散るだろうと政府軍の誰もが思っていたがこの時は違った。
「よく言ったそれでこそのフラッグファイター!!!だけど生きることを諦めるのは許容できない!!!」
「な、なんだ!?」
遙か上空から放たれた無数のビームがアルカノイズを全て撃ち抜く。
「故にこそここからは私たちが!!ガンダムが引き受ける!!!」
紫色の剣閃がはしるとゲライガ達のメインカメラと武装を構えた両腕が破壊される。
「ガ、ガンダム・・・。」
指揮官機のフラッグのメインカメラが自身達の目の前に舞い降りたエレクライトガンダムを映すと赤と青のガンダム、レラジェとムーンセイバーも捉える。
「自国民に対しての不当な弾圧など防人たる者が行うものではないとしれ。」
「・・・なぁんにも変わんねぇな此処は。」
ウィングビットを背部に戻したことにより翼を広げている烏のようなイメージを抱かせるエレクライトガンダムが剣を構える。
「異端技術そのもののアルカノイズを使ったから貴方達は負ける。」
近接武装によりゲライガに突撃していったエレクライトとムーンセイバーをサポートするためにレラジェがライフルを構える。
「背中はあたしに任せろ!」
「「任せた!」」
先ほどまで自分達が苦戦していたゲライガを赤子の手をひねるように倒していくA.B.E.L.のガンダムに反政府軍の部隊長は頼もしさを感じると共に悔しさを感じる。
「これが話しには聞いていたシンフォギアシステム採用のモビルスーツ・・・。子どもに戦わせてしまうなど己が情けない。」
だがしかしとフラッグ達もビームサーベルを抜くとアルカノイズがガンダムによって倒されている事もあり純モビルスーツ戦闘が行えるようになったことでゲライガへと攻撃を仕掛ける。
「ノイズなければ貴様等程度ぉぉぉおおお!!!」
「反逆者風情がぁぁああ!!」
対応するようにビームサーベルを抜いたゲライガであるが反政府軍と異なりアルカノイズという便利道具に頼りっぱなしだったこともあってか機体性能では勝っているにも関わらずに圧倒されコックピットを切り裂かれ次々と撃墜されていっていた。
一気に壊滅していく自軍の有様を見ていた政府軍の指揮官は怒りを込めてコンソールに拳を叩きつける。
「これがガンダムっ!魔法少女事変を解決したA.B.E.L.のモビルスーツッッ!!!」
練度の低すぎる自軍に憤っていたが指揮官にはまだ心理的余裕が存在した。なぜならばバルベルデ政権はパヴァリア光明結社と内通しており自国軍にモビルスーツゲライガを秘密裏に導入しただけではなくモビルアーマーおも導入していたからである。
そして今指揮官が居る場所は指揮官機たるモビルアーマーである。
「行くぞシドラ!うるさい小バエをたたき落とす!」
東京でチフォージュ・シャトーが降臨したときのように空が割れるとそこからシドラが全身を現わした。
巨大な龍の如き異様を示すシドラが顎を開くとメガ粒子砲を放ち眼下のモビルスーツを全て光の中へと呑み込む。
敵も味方もなく光へと呑まれこの世かから消え去ったと確信した指揮官が呵々大笑する。
「やったぜ!狂い咲きぃぃぃいぃいいいい!!!」
「彼岸花など何処にも咲いてない!」
「なぁ!?」
GNドライヴを最大稼働させることにより発生させたGNフィールドでメガ粒子砲を防いだエレクライトがレラジェの放つガトリングの雨と共にシドラに斬りかかり機体中心に取り付けてあるモビルスーツの上半身を破壊するとソット・ヴォーチェよりのサテライトシステムを利用しデュランダルのエネルギーをチャージしハイパービームサーベルを上段に構えたムーンセイバーがそれを振り下ろすと共にシドラからコックピットブロックごと指揮官を抉り取ったエレクライトが飛び立つとシドラが刃に呑み込まれ文字通り蒸発することでこの世から完全に消失した。
「な、なんて強さ・・・。」
「降伏を勧めます。」
「くっ、従おう。」
上空でコックピットの入り口を響にこじ開けられた指揮官が素直に従ったことで残っていたゲライガも武装を解除し降伏した。
◎
捕縛したバルベルデ政府軍の部隊を現在共同作戦を行っている国連軍へと引き渡した後に響達は一度ソット・ヴォーチェへの帰還命令が出された事で戻ってきており簡易メディカルチェックの後にシャワーを浴びていた。
「今聞くことではないような気もするが今聞かねばタイミングがないので聞くが、立花は私の祖父風鳴訃堂についてはどう思っている。」
「えと、もの凄く強いお爺さんで教えるのも上手な人だなと。」
「それだけか?」
「そのくらいですね。」
翼はひとまずは響が訃堂により剣術を仕込まれたこと以外は何もないと判断すると内心ほっと息をつく。
「訃堂さんよりもですね。私並行世界から帰ってきた直後に今じゃないですか。」
「確かに立花にとってはかなりのハードスケジュールだな。」
「未来とカナデは日本に居るから良いんですけど。私今夏休みの宿題が一切手に付いてないんですよ・・・。」
戦慄きながらそう言う響に黙って話しを聞いていたクリスが突っ込む。
「お前地頭は良いんだから直ぐに終るだろ。」
「夏休みの宿題だけじゃないんだよ!?定期テストも私やってないんだよ!?」
「お前、来年はあの二人と同じ学年か・・・。」
「冗談じゃないよ!?ワンモア二年生は嫌だよ!?」
早く任務を終らせねば留年が迫り調と切歌と同じ学年になってしまうと響が恐怖していると丁度シャワーを浴びに来た調と切歌が話を聞いていたのか切歌が手始めに泣き真似をしながら調に寄りかかる。
「調ぇ・・・響さんはあたし達と同じクラスが嫌らしいデス・・・。」
「可哀想な切ちゃん。」
切歌の頭を撫で慰める仕草をし始めた調。
それを見て慌てたのか響が脳をフル回転させ言い訳を始める。
「二人と同じクラスが嫌なんじゃなくて留年するのが嫌なんだよ!?二人の事が嫌いなんかじゃないよ!?」
「知ってるデス!」
「冗談。」
「なんだ良かったぁ~。」
安堵する響を見て翼はやはり響が何かを懸念していることを見抜いていた。
それはパヴァリア光明結社が今回のバルベルデの事態の裏に居ると知らされた時からの事であった。
(もしや立花がパヴァリア光明結社の某かと知己であるか?立花は錬金術を使える。自らと親しき者が悪事に手を染めている可能性があるのは堪えるか。・・・その時は私が立花の憂いを斬る。)
一人静かに翼は決意を固めていた。
◎
夜が明け再び帳が降りると国連軍と反政府軍からの情報提供により政府の隠し化学工場の存在が露わになる。
そして今現在響、クリス、翼の三人は緒川の忍術によりボートで川を爆走しながら遡上していた。
「皆さん司令もおっしゃっていましたが今から向かう場所は化学工場に見せかけた新型アルカノイズとモビルスーツの生産プラントです。細心の注意をお願いします。」
「心得ています。」
「分かってるよ・・・。」
「昔を思い出しているのか?」
「ああ、此処には昔のあたしみたいな子どもがたくさん居る。しかも今も増えてやがる、此処は昔からそう言う地獄だ・・・。」
「その地獄を変えに私たちはここにいる。言い方は悪いがアルカノイズとモビルスーツが投入されたことで私たちは此処に武力介入を行えたからな。」
翼の言うとおりバルベルデ政府が異端技術を使用したことでA.B.E.L.の全面的な武力が認められていた。
クリスが過去を追想しこの地獄を変えたいと思っていると目的地へと到着する。
「ここからは頼みます。」
「任せてください、万象斬り伏せて見せます。」
ギアを纏った三人が化学工場へと襲撃をかけるがそこでは確かにアルカノイズとモビルスーツが製造されていたがどれも既存のものであった。
それらは破壊した後に他に何かはないかと探っていると響がステファンと名乗る少年と遭遇すると彼からの情報でつい一時間ほど前に新型のアルカノイズが工場長により持ち出された後だと知らされる。
「てことは新型はまだ使われてないんだね!」
「ああ!使われてたらここら辺が消えるって工場に居た奴らが言ってたんだ!」
「だったら使われる前に捕まえる!」
響がステファンを背負い彼の案内に従い工場長が向かったという村に向けて三人が疾駆し村へと到着するとそこでは工場長が少女を人質に先に到着していた国連軍の兵士に対して脅しをかけていた。
「死にたくなければ今すぐに俺を見逃せ!撃っても良いがその瞬間にここら一体はノイズの腹の中だ!」
「ぐっ・・・!」
工場長の手の中に見えるアルカノイズの召喚結晶によりその言葉を嘘と断定できないでいた。
その現場にステファンを背から降ろした響が立ち入る。
「その子を離してください。」
「ならば俺を海の向こうに連れて行け。」
平行線になると察した響が一歩を踏み出し語気を強める。
「離せっ!」
「くっ・・・。」
その気迫に工場長が怯んだ隙にクリスが肩を撃ち抜こうとしたが引き金を引かれる前にステファンがサッカーボールを見事な角度で蹴り込み工場長の頭にクリーンヒットさせる。
「今だ!」
「お前何を勝手に!?」
突然の行動に驚くクリスであったがバランスを崩して倒れる工場長から少女を奪還した響が国連軍の兵士に向け少女を投げ渡した瞬間に憤怒の形相の工場長が新型のアルカノイズを解き放った。
「終るなら諸共だぁ!!!」
解き放たれた新型である高速分裂増殖型が一気に増殖を始めその場に居る者達を分解しようとすると近くの建物の上から気迫の籠もった声が轟く。
「詰めが甘いわこのたわけめ!」
声と共に降り立った男が工場長の襟首を掴むと国連軍の兵士へとぶん投げると初期状態のアルカノイズを拳を振るうことで生じた風圧で押し飛ばすと響に拳を向ける。
「答えよ響!!流派東方不敗はぁ!!」
「!王者の風よ!!」
即座に呼応した響が拳を向け直し定められた型と共に言葉が応酬される。
「全新!!」
「系裂!!」
やがて二人の拳がぶつかる。
「「天破侠乱!!」」
拳と共にぶつかりあった気により炎が巻き起こり男の正体が東方不敗が炎によって照らし出される。
「「見よ!東方は紅く燃えている!!!!」」
「あれを使うぞ!」
「はい!」
「儂が練り上げた力を貴様が束ね放つが良い!」
「はい!!!」
東方不敗の練り上げた炎の錬金術が響に注ぎ込まれるとそれをS2CAの応用で自身が練り上げた風の錬金術と束ね放つことで炎の竜巻を発生させることで増殖を開始していたアルカノイズをコンマ一秒にも満たない速度で撃滅してのけたのだった。