特異体質・『魅了の黒子』 作:底なしの呪力って無限ってこと?
「蓋棺鉄囲山」
領域が展開され、結城と『かあさん』は閉じ込められた。
結城は凄まじい熱を感じ、即座に領域対策を講じる。
「……シン・陰流『簡易領域』」
簡易領域。
それは弱者が編み出した、領域に対応するための術。
簡易領域の発動中は、領域の必中効果である術式を中和し、領域でも戦えるようになるのだが……
―――!? 身体を焦がす程の熱が消えない! これは必中の攻撃じゃないのか?
漏瑚の領域は常時高熱に晒されている。並の術師ならば入っただけで焼け死ぬ程だが、あくまでこれは領域に付随する効果であり必中ではない。だからこそ、例え簡易領域だろうと貫通してしまう。
「認めよう、結城大翔。貴様は強い……だがどうやら、領域展開は出来ないようだな?」
「………」
「呪術を学び始めてまだ一年も経っていないならば当然だが、その期間でここまでのポテンシャルを有する……恐ろしい才能だ。今、ここで確実に摘んでおく」
漏瑚が結城に迫る。再びの近接格闘戦、有利なのは間違いなく漏瑚だ。
領域を展開し、術式だけではなく呪力出力も上がり、既に漏瑚のスピードは結城では着いていけない程だ。
―――くッ、簡易領域中は『
「どうやら、
「ぐはッ」
簡易領域もガリガリと削れていき、いずれは結城にも術式が
戦況は漏瑚にドンドン軍配が上がり始める。
―――そこに、
「ひろ゛とをぉぉ゛、いじめ゛るなぁ゛あ!」
「くッ……貴様ぁ!」
結城に憑いている“呪い”、『かあさん』は結城と違い簡易領域を使用していない。だから漏瑚の術式が常に当たっているのだが………
(ただの呪力強化で耐えているッ! 馬鹿げた出力だとは思っていたが、ここまでか!)
「しね゛ぇぇ゛ぇ!」
漏瑚が『かあさん』に注意が向く事によって、余裕ができた結城は削られていた簡易領域を強く張り直し、領域の必中効果を中和する。
2対1。
漏瑚と結城の戦闘はお互い決め手がなく、膠着した。
しかし、結城とは違い漏瑚は焦っていた。領域展開にはメリットが多い反面、大きいデメリットも存在する。
それは領域展開後は術式が焼き切れる事と、呪力消費が多すぎる事だ。
現在、漏瑚の豊富な呪力は彼にも経験がないほどドンドンと減っている。
(――このままでは呪力切れで儂が負ける!)
漏瑚は隠し持っていた奥の手を出す事にした。
「獄ノ番・“隕”!」
漏瑚としては結城にこれを当て、トドメを刺したかったのだが、あまりにも規格外過ぎた『かあさん』を殺すために使用した。
簡易領域で必中効果を中和している結城には術式が当たらない。
「……ッ! 全力で呪力を放出しろ!」
「わか゛ったあ゛」
しかし、簡易領域を発動出来ない『かあさん』には当たる。それを正しく理解していた結城は命令を出した。結城の命令に、『かあさん』は逆らわない。
その膨大な呪力放出で、漏瑚の獄ノ番を迎え撃つ。
漏瑚でさえ思わず震えてしまうほどの呪力放出、当たれば死ぬだろう攻撃。
もしかすれば、領域を展開していない状態の獄ノ番なら
しかし、それはもしもの話。
現実では、威力が減衰された獄ノ番が『かあさん』に直撃した。
「アアアアアァァァァァァッ!?」
“呪い”の悲鳴が領域に響き渡る。
規格外の出力と硬さを持ち、漏瑚の攻撃に何度も耐えていた『かあさん』といえども、流石に獄ノ番は大ダメージだった。
そう、大ダメージではあったが死んではいないし、致命傷というわけでもなかった。だから、傷を修復すればすぐに戦線復帰するだろう。
漏瑚はそのタフネスに驚きながらも、冷静に俯瞰し、理解していた。
1分。
漏瑚が結城を殺すか、漏瑚が『かあさん』に殺されるかの分水嶺。
勝負は、ここで決まる。
「ここで確実に貴様を殺す!」
「……やってみろ、呪霊」
二人だけの激闘が始まった。
漏瑚は徒手空拳で、結城は刀を使ったスタイルで戦う。
有利なのは―――漏瑚だ。
「はぁッ」
「う゛っ」
腹に漏瑚の拳が突き刺さる。
「まだァッ!」
「ぐがッ」
掴んで放り投げられ、空中で腰を殴られ、地面に落とされる。
そうしている間に、遂に『かあさん』が漏瑚の予想よりも早く治癒を終えて戻ってきた。
「殺すぅ゛うう゛!!」
結城の元へ来るのに、約10秒ほどかかるだろうか。
その間に、漏瑚が結城を殺さなければ
「
「くッ!」
残り9秒。
漏瑚は結城の反撃を喰らい、足を斬られる。
「キェアア!」
7秒。
結城が『かあさん』と合流しようとしたところに、漏瑚は蹴りを入れて動きを阻止する。
「くそッ」
5秒。
遂に、結城の簡易領域が破れる。
あと残り数秒にして、漏瑚に絶好の
漏瑚は時が遅くなるほどの
死をすぐそこに実感し、
この土壇場で覚醒したのは―――漏瑚だった。
黒い火花は 嶽の呪いに微笑んだ
「――がはッッ!?」
血反吐を吐く結城。
ダメージの大きさに身体が停止した結城に、次の漏瑚の攻撃を避けられない。
「はァッ!」
黒閃を放った事で、通常よりも早い呪力操作から放たれる高出力指向性の
ソレを受けた結城の腹には―――焼けた大きな穴が空いた。
勝ちを確信し、黒閃でハイになっている漏瑚に『かあさん』が迫る。
接敵を避けるため、漏瑚は領域を解除しすぐに逃亡する。
「結城大翔……貴様には感謝せねばなるまい。貴様と戦えたおかげで、儂は一段と強くなれたのだからな」
そう言って、漏瑚は帳を抜け出した。
「ひろ゛とぉ、ひろ゛とぉ゛おお゛!」
「………」
結城は臓器のほぼ全てが焼かれ、死の淵に立っていた。『かあさん』は結城を抱き上げるが、反応はない。
結城は死ぬのだろうか。
ここにもし、結城以外の人間がいれば『かあさん』には結城を治す術がある。
しかし、周辺は森で人など何処にもいない。『かあさん』には現段階で、結城を治す術はない。
冷たくなっていく……
身体から温もりが無くなっていく……
肌色が白を通り越して士気色になる……
その魂が、身体から離れていく……
結城という存在が、天へと昇っていく……
それを眺めるだけしか出来ない『かあさん』は涙がこぼれ落ちていた。
自分の無能を呪っていた、無力を嘆いていた。
結城と一緒に死のうと思っていた。
「……やっと掴んだ、呪力の核心」
突如、結城が声を上げた。
自殺を試みようとしていた『かあさん』は驚き、結城を地面に置いてしまう。
すると、淡い光が結城を包み込む。
「……これが、反転術式か」
呪術師は呪霊のように、呪力で身体を治すことはできない。しかし、回復手段は存在する。
それが反転術式。
負のエネルギーである呪力を反転させ、正のエネルギーを生み出し、その力で肉体を治癒する高度な術。
現在の呪術師で反転術式を使える者は片手の指の本数にも満たない。
それを、結城は土壇場で初めて成功させた。
呪術師として、また一歩成長した。
漏瑚は結城を殺したと考えているだろうが、現実では、結城は生き残った。
新たな力を手に入れた彼は、今までとは別次元の存在となった。
次戦う時、勝敗は分からない。
此度は結城の負けかもしれない。
しかし、生き残った結城と漏瑚ならまた何処かで巡り合うかもしれない。
彼らが望む望まざるに限らず、その時は近い。
―――再戦を。
特に書くことないので主人公のプロフィール
年齢:15歳
誕生日:10月1日
身長:178cm
体重:70kg
高専入学方法:スカウト
等級:特級呪術師
出身地:静岡県
趣味:鍛錬?
好きな食べ物:枝豆
嫌いな食べ物:火が通っていない焼肉
ストレス:女性
生得術式:なし