特異体質・『魅了の黒子』   作:底なしの呪力って無限ってこと?

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 祈本里香の名前を今まで間違えておりました。

 × 折
 ⚪︎ 祈

 時間のある時に全て修正させていただきます。感想で教えて下さった方、ありがとうございます。



渋谷事変 前

 

 

「………」

「ど、どうされました? 結城術師」

「……渋谷、大丈夫でしょうか?」

「あぁ、なるほど……気になるなら向かいましょうか? 本日の任務は既に消化済みですし」

「………」

 

 

 結城は嫌な予感がした。

 

 つい先ほど、渋谷で呪術を用いたテロがあった。一般人を多く巻き込んだ大規模なものなので、術師側も多く輩出されたのだが五条悟が出動するということで、結城はいつも通り自分の任務を消化していた。

 

 車に揺られながら、結城は思う。

 自分は行かなくても良いはずだ、なぜなら最強である五条悟が行っているのだから。

 

 しかし、そう考えてもどこかで燻る違和感。

 

 

『僕になにかあったら、生徒達をよろしくね』

 

 

 普段ならば絶対に五条が言わない言葉を言われたせいだろうか?

 

 分からない。結城には今、自分の感情が理解できない。

 

 

「着きました、けど……『帳』が降りたままということは、まだ問題が解決できていないんでしょうか?」

「……そうみたいですね」

 

 

 目の前には渋谷をすっぽり覆うほど大きい『帳』。それはまだ、事件が解決されていないことを結城に伝えていた。

 

 結城は補助監督を置き去りに疾駆する。

 

 周りの呪霊のような改造人間達を殺しながら、渋谷を回る。

 

 何処かに知り合いの術師がいれば、事情を聞くことができるだろう。

 

 

「……! 日下部先生」

「ん、お? 結城じゃねぇか!」

 

 

 よくきた、とでも言うかのように近づいてくる日下部とパンダ。

 

 

(よっし! なんでここにいるのか知らねぇが、コイツがいれば俺は安心だ!)

 

 

「一体どうした? お前は違う任務の筈だっただろ?」

「……そうなんですが、少し気になることがあったので来ました。状況を聞いてもいいですか?」

「驚くなよ? ………五条悟が封印された」

 

 

 結城は目を見開き、そしてなるほどと思った。

 

 嫌な予感の正体が分かり、取り乱さずすぐに納得できた。

 

 

「……五条先生は、今何処に?」

「渋谷駅の地下にいる。詳しい事は俺も知らん」

「……分かりました。じゃあ俺が行って、五条先生の封印を解きます」

「え!? それはこまゲフンゲフン! ……そうだな、それが最良だ。俺はここで見張っておくから、いってこい」

 

 

 日下部はここにいて欲しい(本音)を隠して結城を鼓舞した。

 

 結城はそれを察せずに、パンダに視線を送る。

 

 

「俺はあんまりお前と話したことないけど……死ぬなよ、後輩」

「……どうも」

 

 

 

 

 

 

 

 漏瑚は走っていた。

 

 七海、真希、直毘人を即座に一蹴し、殺そうとした所で宿儺――正確には宿儺の指――の気配を感じ一転。

 

 

(――早く虎杖悠仁を宿儺にせねば、真人・脹相(アヤツら)に殺されるッ!!)

 

 

 駅の角を曲がり、漏瑚は二人の女が虎杖に宿儺の指を飲ませている場面に遭遇した。

 

 

「ちっ! 邪魔だ!!」

「「きゃああああッ」」

 

 

 それを漏瑚は雑に火炎で処理する。

 

 

(息は……ある。さっさと宿儺にするか)

 

 

 懐からあるものを出す。袋ですらないそれが収納しているものは―――宿儺の指、計10本。

 

 これを全て虎杖に飲ませた時、虎杖の許容を超えて宿儺が出てくる。

 

 そして宿儺が虎杖との間に何らかの“縛り”を結び、肉体の主導権を握らせれば漏瑚の目的は達成される。

 

 呪いが“ヒト”として闊歩する世界……それが漏瑚たち呪霊の目的。

 

 宿儺の指を全て持つ。

 

 

「さぁ、起きろ……宿儺」

 

 

 それをいま、虎杖に飲ませ―――

 

 

 

 

 

「……ギリギリだな」

 

 

 

 

 

 突如、身に覚えがありすぎる気配がした事で漏瑚はその場を離れる。

 

 ボンッ! 漏瑚がいた位置に、呪力放出が放たれた。

 

 その威力にボロボロと崩れる駅の床。

 

 

「なぜ……なぜ生きている!? 貴様ぁ!」

「……どうでもいいけど、再戦(リベンジ)いいか?」

「っち!」

 

 

 漏瑚は恐るべきスピードで結城の眼前に迫り、掌から炎を吹き出す。

 

 それを紙一重で結城は躱し、逆にカウンターを叩き込もうと腕を振るうが、それをはたき落とした漏瑚は蹴りを叩き込む。

 

 それを後ろに下がることで結城は避ける。

 

 

(――なぜ透過(術式)を使わない? いや、今は使えないのか? ……得体が知れん、不気味な奴め)

 

 

「……やっぱり、お前を相手に術式を温存するのは無理か。とは言ってもこの異常事態、簡単に手札を切るのも早計……仕方ない―――『かあさん』、俺に纏え」

「わ゛かったぁ゛」

 

 

 虚空に『扉』が開く。すると底なしの呪力と圧倒的な存在感を伴って出でる、呪術界の異常存在(イレギュラー)

 

 漏瑚は、今度こそ油断も慢心もしない。

 

 結城を弱者ではなく、対等な『敵』として処理するため思考を巡らせる。

 

 だからこそ、思考を停止させる事なく、ありのままを受け入れられた。

 

 

「随分洒落た姿になったな、光過ぎて眩しいぞ?」

「……そうか」

 

 

 突如、結城の全身に『かあさん』が巻きつき、そのまま鎧のようになった。

 その鎧は鉄のように光り輝いており、まるで某なんとかライダーのように変身していた。

 

 漏瑚は牽制代わりに結城の背後から火口を顕現し、炎を直撃させた。

 

 

(当たった……が、無傷か。あの呪力出力と、おそらくは術式によって更に硬くなっているはず。直に叩くしかあるまい)

 

 

 漏瑚は近接戦に移行した。

 

 右足で踏み込み、ジグザグにして結城に近づく。幾重にも重ねたフェイントを利用し、結城に掌底を当てる。

 

 

(――なんだ! 儂は今何を殴ったのだ!? まるでビクともせんッ!!)

 

 

「がはッ」

「……近接は、俺の得意分野だ」

 

 

 漏瑚の攻撃を腹に受けたまま、結城は反撃(カウンター)を喰らわせる。その威力は今までの比ではあらず、地下を貫通し、上空まで漏瑚は吹き飛ばされる。

 

 

「なんだなんだ!?」

 

 

 地上にいた日下部とパンダが轟音が鳴る場所へ、視線を寄せる。

 

 そこに、まるで瞬間移動でもしたかのような速度で結城が近づいた。

 

 

「……日下部先生、渋谷駅に負傷した七海たち(術師)がいました。反転術式で動ける程度には治しましたが、一応日下部先生もその術師の救援に行ってください」

「なにそれさいこゲフン! わかった、この場は任せたぞ!」

 

 

 日下部たちを見送ることせず、結城は再び戦地に舞い戻る。

 

 漏瑚は思案する。

 

 

(恐らく今、奴は透過も転移の術式も使えない状態にある。それは恐らく“縛り”によるものだ。しかし、奴は『術式を温存する』とも言っていた。ならば不利になれば儂がまだ知らん術式を使ってくる可能性もある……やはり、儂の勝ち筋は―――)

 

 

「……さて、そろそろ仕掛けてくる頃だと思ってたよ」

「領域展開」

 

 

「蓋棺鉄囲山」

 

 

 漏瑚の領域が展開される。

 

 それよりも少し早く、結城は簡易領域を展開する。

 

 

「同じ人間に二度、領域展開するのは初めてだな」

「……それは良いことなのか?」

「それは……貴様が確かめてみろぉ!」

 

 

 先ほどよりも速度の上がった漏瑚が迫る。またもや始まる、近接戦。

 

 それを制したのは―――漏瑚。

 

 

「……ッ」

「これは貴様のおかげだッ!」

 

 

 足裏から術式(爆発)を生み出すことによる推進力で、距離を無視した不可避の一撃を放つ漏瑚。

 

 その速さは最速の術師(※五条悟を除く)と言われる禪院直毘人を凌駕する。

 

 機先を制した漏瑚は、更なる連撃(ラッシュ)を敢行する。しかし―――

 

 

「……いい速さだが、軽すぎる」

「くッ、ふざけた頑強さだ!」

 

 

 鎧を纏った結城には、それでも大したダメージは与えられない。『かあさん』の呪力出力という鉄壁の護りがある以上、漏瑚がどれだけ近接戦を挑んでも勝てない。

 

 漏瑚にとっては、前に戦った時よりも厄介な状態だった。

 

 しかし、それは結城にとっても同じこと。

 

 ―――膂力では圧倒的に勝っているはずなのに、速さで負けているから当たらない。五条先生を封印した奴とも戦うことを考えると、ここで持ち札を出しすぎるのはナシ。このまま呪力切れまで粘る。

 

 

 

 お互いが膠着状態。

 

 しかし、前回の戦いと同じようにドンドン不利になっていくのは漏瑚だ。時間が経てば経つほど、呪力が少なくなっていく。

 

 

 

 ―――そう、結城が考えていることを漏瑚は察していた。

 

 

「……?」

 

 

 結城はふと、体に力が入りづらくなった。

 

 気のせい?

 

 

「……いや、これは――酸欠ッ?!」

「やっと気づいたか阿呆め!」

 

 

 そう、漏瑚のこの領域には現在、“縛り”で必中効果が消えている。

 その代わり、領域の副次的な効果が増幅されている。熱量や漏瑚へのバフ、そして人間が生きていく上で重要な()()()()()()()

 

 漏瑚は正しく結城の弱点を見抜いていた。それは人間であるということ。

 

 呪霊である漏瑚や『かあさん』には必要のない、酸素濃度の低下。それによって起きる、酸素欠乏症。

 

 

「……ぐっ」

「はははッ! 被弾が増えておるぞ、もっと踊れ!」

 

 

 今、結城が身体を動かせているのは『かあさん』のおかげだ。

 

『かあさん』は今、自身の術式で準呪具化しており、結城が身体を動かさずとも、無理やり動いて攻撃や防御を行うことができる。

 

 しかし、そこまで頭がいいわけではないので―――

 

 

「あぐッ」

 

 

 漏瑚の攻撃を避ける時に、結城の上半身と下半身を捻り過ぎて腰にダメージがいく。『かあさん』に出来ることは、あくまで戦闘のサポートであり、人間の身体を自由に、結城にダメージがいかないよう動かすのは難しい。

 

 結城は混濁する思考の中で、冷静に頭を回し―――

 

 

 

 術式を解き、『かあさん』を自由にさせて2対1の状況を作った。

 

 同時に、必中効果がないと理解した結城は、簡易領域も解いて少しでも呪力操作、及び反転術式に集中する。

 

 

「ひろ゛とを゛ぉ、い゛じめるな゛ぁあ゛!!」

「来たか! だが貴様に用はない!」

 

 

 漏瑚はこちらに突っ込んでくる『かあさん』を、自身の術式で足止めし、漏瑚はニヤリと笑い結城に迫る。

 

 

「休憩はできたか、結城ぃぃ!!」

「……うるせぇ」

 

 

 そのまま二人は近接戦に移行する。

 

 しかし、それは戦いというには一方的過ぎた。

 

 結城のふらふらの攻撃は全て空を切り、反して漏瑚の攻撃は全てが人体へ相当なダメージを与えるもの。

 術式こそ『かあさん』を足止めするために、結城へは使用できない状態だが、今の結城にはそれでも無理ゲーだった。

 

 

(今ならば出来る気がする……あの黒い光を! あれが放てれば、儂は更に先へ進める!)

 

 

 漏瑚にもそれほど余裕があるわけではない。

 

 もし、『かあさん』が漏瑚の術式による足止めを突破してきたら漏瑚は負ける。領域が維持出来なくなっても負ける。

 

 だからこそ、漏瑚は黒閃に集中する。もはや、結城をサンドバック程度にしか見ていない。

 

 しかしそれは―――

 

 

「ッ!? なんだ!」

「……ありがとう、『かあさん』」

 

 

 油断大敵。

 

 結城は時が経てば経つほど集中が乱される環境で追い詰められる、死地の中で研ぎ澄まされた集中状態(ゾーン)に入っていた。

 

 そして『かあさん』の援護。術式で腕を伸ばし、離れた位置にいる漏瑚の胴体を掴む。

 

 漏瑚は不意を突かれ、思うように動けない。

 

 

 

 ―――好機(チャンス)だ。

 

 

 

 結城の集中が更に研ぎ澄まされる。そのまま何も考えずに、ただ一撃入れる事のみに集中し―――

 

 

 黒い火花は 死地にこそ眩く光る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒 閃
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がはッッ」

 

 

 ―――領域が崩れる。

 

 漏瑚に致命傷を叩き込んだ証だ。

 

 

「……俺の勝ち、だな」

「あぁ、そうだな……儂の負けだ」

 

 

 既に術式が焼き切れ、呪力も僅かとなっている漏瑚に逆転の芽は残されていない。

 

 だからこそ、漏瑚はこの敗北に満足していた。

 

 

(完膚なきまでの敗北……許せ真人、陀艮。先に逝く)

 

 

 結城は今まで感じたことのない、自分でも理解できない謎の充足感を感じていた。

 

 その感情の名前は達成感。一度は敗れた相手に勝ったことで得られる自尊心(プライド)の回復。

 

 だから、いつもならば言わない言葉が出た。

 

 

「……お前は大勢の人間を殺した、俺が忌むべき“呪い”だ。だけど―――お前、強かったな」

 

 

(――なんだ、感情(これ)は?)

 

 

「……『かあさん』、アレをくれ」

「はぁ゛ーい」

 

 

 結城の呪力が増えていき、その呪力で反転術式を使い全快する。

 

 ―――今まで使う事は無いと思っていたが、コイツになら……

 

 そして、術式を漏瑚に使用する。

 

 

「……成功、か」

 

 

 漏瑚は突如、その場から消えてしまった。結城が何をしたのか、それは本人にしかわからないだろう。

 

 

「……術式を使ってしまったが、まぁいい。後は五条先生を封印した奴を」

「なんだ、もう行くのか? 呪術師」

 

 

 結城は驚くべき反射速度で、すぐさま自分のいた位置から飛び退いた。その額には、冷や汗が垂れている。

 

 ―――なんで気づかなかった!? この気配に!

 

 

「せっかく外に出れたのだ。遊びに付き合え」

「……断る、と言ったら?」

「別に断ってもよいぞ? 勝手に始めるからな」

「……面倒だ」

 

 

 結城は掌印を結ぶ。

 

 そして『かあさん』から大量の呪力を供給してもらい、術式を発動する。

 

 

「―――何故、儂は生きている?」

「……お前は死んだ。ただし、今は俺の術式で生き返った、式神としてな」

「……一体いくつ術式を持っている、貴様」

 

 

 漏瑚の意識は、死んでからそう時間を経たずに生き返ったため状況を上手く理解できていない。

 

 ただ今は、結城大翔(この男)の命令に従わねば、従いたいという意識だけがあった。

 

 

「ケヒッ、中々面白そうな奴だな」

「……誰か知らないが、3対1を卑怯とは言うなよ?」

「アイツは宿儺だ、間違いない」

「ひろ゛とぉ、殺すぅ゛?」

 

 

 

 

 

「……そうだな、手早く片付けて五条先生の所へ行こう」

 

 





 情報


 術式・『纏鉄呪法』
 術者自身を鉄に形態変化させる術式。肉体もある程度変化させることができることから、人間よりも呪霊が使った方が応用が効く。これを『かあさん』が使い、結城の鎧となれば近距離戦闘ではまず負けない。仮面ライダーみたいなもの。
 とある少女は悩んでいた。幼稚園の時おままごとをするのが苦手だった、小学生の時魔法少女を見るのが苦手だった。本当は男の子が好きなものが好きで、中でも変身して戦うヒーローが好きだった。その少女の願いが死後、術式となったもの。
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