特異体質・『魅了の黒子』 作:底なしの呪力って無限ってこと?
感想ありがとうございます!
私は返信が下手っぴなのでほぼ返しませんが、感想が来るとニヤニヤするぐらい嬉しいです!
「避けろよ」
「ひろ゛とぉ゛!!」
結城の前に『かあさん』が躍り出る。
すると、目の前には何もないにも関わらず、その身体に幾筋の刀傷のようなものがついた。
「『解』を察知された……? 術式か?」
「愛ぃぃ゛!」
「
助けられた結城は、漏瑚と共に宿儺に近接戦を仕掛ける。それに応じる宿儺。
特級レベルの戦闘。
それはただの余波だけで渋谷の街を壊していく。
「ケヒヒッ、良いぞ! もっと踊れ!」
「これが呪いの王……! 2対1でも押しきれん!」
「……弱音を吐くな、あっちは一時的に肉体の主導権を握っているだけだ。消耗させれば自動的に虎杖が戻ってくるだろ」
「そうだな、俺を消耗させられるならなッ!」
未だ余裕を崩さない呪いの王。
漏瑚の炎は当たらず、結城の拳も空を切る。呪いの王は二人で遊んでいる。
そこに、『
「オマエは硬そうだな……『解』」
「い゛たぁ゛ーい!」
宿儺の術式で斬られようとも、即座に呪力で再生される程度の浅傷。『かあさん』の呪力出力は、宿儺をも上回っている。
そのまま突貫し、右腕の振り下ろしで宿儺が吹き飛ぶ。
戦いが始まって、初めて宿儺にダメージを与えられた。
「……漏瑚、俺とお前で『かあさん』のサポートだ」
「分かっておる。儂らでは、宿儺に大したダメージを与えられんからな」
陣形は前から漏瑚、『かあさん』、結城の順だ。漏瑚が前衛を受け持ち、『かあさん』が主力で攻撃と結城の盾、そして結城は宿儺の錯乱を受け持つ。
「良いぞ! ここまで楽しめるのは久しぶりだ!」
宿儺は反転術式で即座に治癒し、戦線に復帰した。
(――あの呪術師は式神使いなのか? 小僧の記憶では、複数の術式を持っているらしいが……さて、どういうカラクリがあるか)
宿儺に突貫する結城たち。
宿儺はまず、先頭の漏瑚から潰すことに決めた。
「オマエが俺を相手にできるはずがないだろう?」
そう言って、漏瑚を術式で縦に真っ二つにする。
次の標的に狙いを定める宿儺だが―――
「隙だらけだぞ!」
「なんだと……?」
瞬間、漏瑚の拳を頬に受ける。
(式神ならばさっきので死んで当然だが……なるほど、そういう術式か)
「ククッ、良い術式だな! 呪術師!」
「……どうも」
結城の術式――『二ツ星』。
術者の血を媒体に式神を一体召喚する、ここまでは割とポピュラーな術式。
しかし、その真価は別にある。まず最初、呪霊を調伏し式神化しなければならない。その調伏にも面倒な手順がいくつも存在する。そして、数多の条件をクリアしたその式神は術者と
だから、漏瑚をどれだけ攻撃しても意味はない。自己補完の範疇で治癒することができるからだ。
「だが、弱点はあるのだろう? 例えば、術者が死ねば式神も消えるのではないか? いや、術者であるオマエに傷をつければ式神も傷つくのか?」
「……お喋りが好きなんだな、お前は」
「オマエは嫌いか?」
「……“呪い”と喋るのは疲れる」
「ケヒッ、そうか」
会話もそこそこに、戦闘は激化していく。
不死身の漏瑚は術式を使って攻撃し、『かあさん』は純粋なアタッカーとして機能し、そして結城は二人を隠れ蓑にしながらチクチクと攻撃をする。
宿儺といえど鬱陶しいことこの上ないが、彼には奥の手がある。この状況を打破してしまう、最強の奥の手が。
無論、それは結城も理解している。だから、それを発動させないために3対1の状況を作り出したのだ。
「ぐはッ」
「どれだけ立ち上がってこようが、貴様では力不足だぞ? 式神」
「舐めるなぁ!」
しかし、奥の手など出さなくとも流石は呪いの王。
元・特級呪霊の漏瑚を圧倒。
「オマエのソレも飽きてきたな」
「………」
結城は判断に迷っていた。
この宿儺を退けるために、さらにもう一個、術式を解禁すべきか否かを。
この後にも厄介な敵との戦闘が控えている。だから、こんな突発的な
しかしその考えは、宿儺と戦い変わった。
「……『かあさん』、アレが欲しい」
「いい゛よぉ」
「……漏瑚、数秒時間を稼げ」
「やるならさっさとしろ!」
陣形が変わる。宿儺に対し、漏瑚だけを当てる1 on 1 。たったの数秒、その時間稼ぎ。
相手が宿儺でなければ、漏瑚にとっては容易だっただろう。
「本当に壊せないか確かめてやる、式神」
「……全く、呆れるほど貴様は“呪いの王”なのだな」
次の瞬間、漏瑚は横に真っ二つになる。更に半分に、そのまた半分に………
最終的に賽の目上ほどの肉の塊になりーーー漏瑚は復活した。
「ふん、本当に仮初の『不死』は持っているようだな」
「……よくやった、戻れ漏瑚」
漏瑚は消え、結城が歩いてくる。
「ククッ、秘策あり……と言う顔だな」
「……正直、お前を相手するのは面倒なんだが――仕方ない。お前を殴って、虎杖と代わってもらうぞ」
「出来るものならやってみろ」
「……『かあさん』、いけ」
「はぁ゛ーい」
(――ふむ、本当にただ突撃するつもりか? いや、既に術式を使っている素ぶりがある。ならばここは様子見を兼ねて背中で受けるか……)
「なにッ」
「……間抜け、隙だらけだぞ呪いの王」
結城に対していきなり背中を向けるという珍妙な動きをした宿儺は、そのまま結城に背中を前蹴りされる。
(俺は先ほど手で弾いて攻撃を受けようとした、だが実際には背を見せた……術式だな。とりあえず、目の前の呪霊には呪力放出だな)
「い゛たくなぁ゛ーい」
「そういうことか」
宿儺の恐るべき威力の呪力放出を受けても、足止め程度にしかならなかった『かあさん』はその剛腕を宿儺にぶつけ、結城の方向へ吹き飛ばす。
「貴様の術式、行動……いや、意思決定を出鱈目にするものだな?」
「……正解だ」
結城の術式――『
人間の認知→思考→意思決定というプロセスのうち、意思決定を出鱈目にする術式。効果人数は3人だが、今は即席の“縛り”で宿儺のみに発動することにより、効果範囲が増大している。
たった2回、術式を受けただけでその性能を見破る宿儺の天才性は、今更だろうか。
(だがどうやら、思考は正常に機能する。その後の行動も、ある一定の法則はあるな。例えば俺が最初、術師の攻撃を受けようとした際はきちんと防御の姿勢はとれた。呪霊にも『解』で攻撃しようとすれば、呪力放出で攻撃できた。そしてこの術式の攻略法は……)
思考している間も、宿儺は肉体を呪力で強化しているだけで滅多打ちにあっている。今は虎杖の事を考えて結城は拳で対応しているが、刀であれば心臓を貫いていただろう。
結城に容赦はないが、知人に対する加減はあった。
「はッ」
結城が何度目かの拳を振るう。さっきまでならば被弾し、吹っ飛んだ宿儺が『かあさん』に殴られるのだが……
結城の腕を、宿儺が掴んだ。
「……なに?」
そのまま拳の
「なんでッ」
宿儺は答えない。まるで表情が抜け落ちた脳面のように、あるいは戦闘するだけの機械のように淡々と結城に攻撃を加える。
堪らず結城は掴まれた腕を捻って解き、バックステップで宿儺から離れる。
「……なんで、まともな攻撃ができる?」
「お? やはりできたか」
宿儺はまるで今、攻撃を当てていたことに気付いたように振る舞う。そこに嘘くささは微塵もない。
「簡単な話だ。俺は何も考えずに戦っていた、俗にいう無我の境地というやつだな」
「……お前は剣の達人か何かだったのか?」
「いや? ただ真似ただけだ、
「……あるに決まっているだろう、努力を何だと思っている」
「凡夫の理屈など知らん。そんなもので俺を測ろうと思うな、呪術師」
―――想像以上に、全てが強い……! 呪力量と出力で『かあさん』が勝っていても、奴の技量はそのアドバンテージを簡単に踏み倒してくる……!
呪いの王、両面宿儺。
その強みは術式や膨大な呪力量、呪力出力と多くある。しかし、真価はその驚異的な学習能力にある。
彼の前で技を見せれば、すぐに模倣され、更なる改良を施されるだろう。
「ちっ、そろそろ時間切れか」
「……やっとか」
だが、宿儺の
しかし、外に出て十分に楽しんだとはいえ、宿儺は虎杖に嫌がらせをしたかった。
―――だから、掌印を結ぶ。
「領域展開」
「……シン・陰流『簡易領域』ッ!」
「伏魔御厨子」
渋谷は、宿儺の領域により斬り刻まれた。
情報
術式・『二ツ星』
術者の血を媒体に式神を一体召喚する割とポピュラー術式。まず最初、呪霊を調伏し式神化しなければならない。その調伏にも面倒な手順がいくつも存在し、結城は調伏に成功したことが一度しかない(※漏瑚以外)。そして、数多の条件をクリアしたその式神は術者と
とある双子の女性は“二人で一人”だった。二人で一つ、二人でやっと一人前、そんな評価を受けてきたからか双子はお互いが他人ではなく、あの子もまたもう一人の“自分”であると錯覚していた。その双子の在り方が死後、術式となった。
術式・『有耶無耶』
通常、人間は認知→思考→意思決定というプロセスがあるが、この意思決定が出鱈目になる術式。それは術式を発動している当人にも予想できない。
とある老女は悩んでいた。歳を追う毎に、日々が過ぎる毎に、自分の行動が奇天烈なものに変化していく。しかし、思考は明瞭だ。だからこそ、自分が何をやっているのか理解に苦しみ、介護をさせている子どもに心底申し訳がない。そんな老女の苦しみが死後、術式となった。