特異体質・『魅了の黒子』   作:底なしの呪力って無限ってこと?

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渋谷事変 後

 

 

「……ふざけろ」

 

 

 結城の視界には、更地となった『渋谷』があった。

 

 宿儺の領域展開、それはたった12秒ほどの出来事だった。

 その僅かな時間だけで、結城の簡易領域は消し飛び致命傷を負い、『かあさん』もまだ動けないほどの手傷を与えられた。

 

 これは結城の感覚の話だが、結城には宿儺が自分に手加減をしたような気がした。真実は分からない。

 

 しかし、結城は生きている。今はこの事実だけで十分過ぎるだろう。

 

 結城は反転術式で傷を治癒し、動けるようになった『かあさん』から呪力を貰い受け、完全回復する。

 

 

「……虎杖、吐くなとは言わないが立て。まだ問題は山積みなんだ」

「ごめんッ……結城も、みんな……俺のせいで………ッ」

「………」

 

 

 虎杖の天秤は傾いた。

 

 ヒトを助けろという遺言(呪い)と、ヒトを殺した自分が死ねという自死(呪い)。後者にゆっくり、ゆっくりと天秤は傾き続ける。

 

 

「………」

 

 

 何人も、虎杖のように立てなくなった人間を見てきた結城は、普段ならば絶対に無視をしていた。

 

 しかし、あまりにも今の虎杖の姿に既視感があった。

 

 ―――お前は、俺に似ている。他人の人生を壊したから、償いがしたいんだろう? 罰が欲しいんだろう?

 

 結城は知っている。理由があれば、“呪い”は乗り越えられることを。

 

 その人生がたとえ自罰で、自己満足で、不幸なものだとしても、結城は―――

 

 

「……お前は償わなきゃならない」

「え」

「……他人の人生を滅茶苦茶にしたお前は、これからそれよりも多くの人を救わなきゃならない……今も、お前の助けを待っている奴がいるかもしれない」

 

 

 虎杖は顔を上げる。

 

 その瞳に、先ほどまでの涙はもうない。

 

 

「……死ぬな、虎杖悠仁。ヒトの命を奪ったお前が、その命の使い方をお前が決めるな」

 

 

 ―――最低だな、俺は。

 

 虎杖に行った言葉に自己嫌悪が走る。

 

 結城の中で、いつだって自分自身の命の価値は最底辺にあった。何故なら、数えきれないヒトの人生を壊してきたから。

 

 幸せになってはいけないという強迫観念。今までそれに突き動かされてきた。

 

 

 

 そしてそこに、最底辺の位置に今日、ある意味で対等な者が出来た。それが虎杖だ。

 

 結城も正しく認識できていない、心の情動。

 

 それ故の発言が、先ほどのものだ。

 

 

「ごめん……俺、逃げようとしてた」

「……そうか」

「俺は渋谷駅地下に行って、五条先生の封印を解く。結城はどうする?」

「……あぁ、俺も―――今度は何だ……?」

 

 

 突如湧き上がる、異質な呪力。それを受けて虎杖は冷や汗を流す。見えなくとも分かるのだろう、強者の気配が。

 

 結城は今日何度目かの異常事態(イレギュラー)に少し呆れている。人は慣れてくると驚きが薄くなるのだ。

 

 

「……予定変更だ。虎杖、お前は先に行け」

「分かった、お前はあっちの対処だな」

「……そうだ」

 

 

 じゃあな、と淡白に別れを告げる虎杖。

 

 結城は走って原因の場所まで向かう。そこまで距離が離れていなかったのも相まり、すぐ現場に到着した。

 

 ―――伏黒と、呪詛師か……? そして、あの式神は確か……

 

 

「……伏黒の奥の手か」

「え……なんで俺まで?」

「……勘違いするな、お前が死ぬと伏黒まで死ぬから助けただけだ」

 

 

 結城の考えは正しい。

 

 調伏の儀に強制参加させられた呪詛師―――重面春太が死ねば、現在仮死状態の伏黒も死ぬ。あまり得意ではない座学のおかげで、結城は正しい判断ができた。

 

 伏黒に反転術式を使い、最低限の治癒を施す。

 

 

「……伏黒に聞いておけばよかったな。コイツの弱点」

 

 

 十種影法術、その最強の式神―――八握剣異戒神将摩虎羅の完全顕現。その脅威度は間違いなく、漏瑚と同じ特級かそれ以上だろう。

 

 邪魔者が入った摩虎羅が、その邪魔者を排除しようと動く。

 

 対して、結城は化け物には化け物をぶつけるように、『かあさん』を向かわせる。

 

 摩虎羅の剣の振り下ろし、『かあさん』はそれに合わせるように拳打を叩き込もうとし、摩虎羅と衝突。

 

 

「い゛やぁ゛ーッ!!」

「……!! 『かあさん』、戻れ!」

 

 

 僅かな拮抗も許さず、『かあさん』の右半身が消し飛んだ。

 

 結城の声に応じて、『かあさん』はすぐ様戻る。

 

 ―――あの剣、呪霊特攻なのか!? 一撃で『かあさん』をここまで消耗させるやつに、『かあさん』は使えない!

 

 結城が『扉』を開くと、『かあさん』はそこに逃げ込むようにして入っていった。その時に、結城はありったけの呪力と出力を渡される。

 

 そして『扉』を閉める時、結城はそこからある呪具を取り出した。

 

 

「……さて、これまで使わせるんだ。しっかり消さないとな」

 

 

 それは見た目、どこにでもある安そうな普通のナイフだった。しかし、その効果は普通ではない。

 

 

()ッッ」

 

 

 重面には、結城が消えたようにしか見えなかった。

 

 しかし、摩虎羅にはしっかりと見えていた。接近された瞬間、『かあさん』を一撃で半殺しにした剣を振るう。

 

 摩虎羅は、それを避けた結城のナイフの反撃を喰らってしまう。

 

 そのまま近接戦となり、摩虎羅よりも出力が上がりスピードが上の結城が翻弄し、ナイフで次々と傷をつけていく。

 

 しかし、その程度は摩虎羅にとって傷ですらない。

 

 

 

 ―――本来ならば。

 

 

「ッ?」

「……気づいたか? どんどん自分の動きが鈍くなっていくことに」

 

 

 このナイフに名前はない。

 

 しかし、結城の知識が正しければ特級相当の呪具である。

 その効果は、『斬りつけた相手の身体機能の低下』である。斬れば斬るほどその低下も大きくなり、いずれは亀のような鈍さ、虫も殺せないほどの腕力になるだろう。

 

 これが結城の隠し玉である。出来るだけ呪力を温存して、最低労力で勝つための切り札。

 

 ガゴン! 摩虎羅の方陣が回転する。

 

 結城は何らかの術が発動されたのを感じた。

 

 ―――摩虎羅に関する情報は少ない。さて……一体どんな能力を隠している?

 

 

 

 摩虎羅が走る。

 

 そのスピードは―――ナイフで斬りつける前と同じものだった。

 

 

「……なにッ」

 

 

 予期していたスピードよりも速かったため、攻撃を避けきることができなかった結城はビルを何棟も貫通するほどの衝撃に吹き飛ぶ。

 

 ―――能力が無効化された? いや、それなら初めに動きが鈍くなるはずがない。だとしたら摩虎羅の能力は……

 

 

「……適応、か。参ったな」

 

 

 摩虎羅。

 その驚異の能力は一度食らった攻撃、阻まれた防御に対する耐性を獲得し、相手の状態・性質に合わせて、より有効な攻撃を見舞えるように変化するというもの。

 

 これで、結城は呪力を温存することが出来なくなった。

 

 この後のことを考えて戦えば結城といえども、『かあさん』がいない今は殺されるだろう。

 

 

「……呪力は、漏瑚を出すには充分か」

 

 

 亜音速に匹敵するほどの速度で摩虎羅が迫る。結城は即座に判断する。

 

 ―――コイツを殺すには、初見の攻撃で殺すしかない。なら……アレでいくしかない。

 

 

「……やれ、漏瑚」

 

 

 血と膨大な呪力を代償に呼び出すは大地の呪い、漏瑚。 

 

 既に摩虎羅はすぐそこまで近づいている。

 

 摩虎羅の拳を、結城が死に物狂いで受け止める。その間に、漏瑚は掌印を結ぶ。

 

 

「領域展開」

 

 

 知性ある式神、摩虎羅はその脅威に気づいた。結城を一旦無視し、漏瑚に突貫する。

 

 その隙だらけの姿に、結城は足を曲げ力を溜める。一度、黒閃を放ったことで得た結城の集中状態(ゾーン)は途切れていない。

 

 故に放たれる―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒 閃
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 摩虎羅が苦しむように膝をつく。

 

 そして、その一瞬で完成した。

 

 

「蓋棺鉄囲山」

 

 

 漏瑚の領域展開。それに閉じ込められるは摩虎羅のみ。

 

 

 

 漏瑚は結城の中から状況と相手の能力、そして自分に求められている事を正確に理解(わか)っていた。

 

 摩虎羅といえども、領域に適応するまでは時間がかかるだろう。そして、その領域に適応するまでの間に大技でトドメを刺す。

 

 

「獄ノ番・“隕”!」

 

 

 降りてくるは、必中必殺の攻撃。領域で強化されたそれを、適応できていない摩虎羅は避けることが出来ない。

 

 

 

 

 

 ―――ドゴオオオオォォォォンッ!!

 

 

 

 

 

 それが命中した瞬間、漏瑚は結城の指示通り領域を解いた。

 

 そして摩虎羅は―――生きていた。

 

 

「……分かってたさ」

 

 

 結城は走り出していた。ボロボロになり、大ダメージであるのは間違いないはずの摩虎羅に対して、拳を振り上げていた。

 

 摩虎羅が避けることは不可能。

 

 呪力が 黒く光る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒 閃
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本日三度目の黒閃。

 

 それは適応が追いついてない摩虎羅に大ダメージを与える。しかし、それでも摩虎羅は消えない。

 

 理不尽なまでのタフネス。もう少し時間をおけば、適応が追いつき、傷も修復され今度こそ手がつけられなくなるだろう。

 

 結城は手を翳す。

 

 

「……消えろ」

 

 

 高出力指向性呪力放出。

 

 出力が上がったそれは、即席の“縛り”も相まり漏瑚の獄ノ番に勝るとも劣らない破壊力を生む。

 

 ―――呪力がもう残り少ない。これ以上は……

 

 

 

 結城は内心弱音を吐く。

 

 その弱みにつけ込むように、いつも絶望はやってくる。

 

 

「オ、ォオオ」

「……くそ」

 

 

 摩虎羅は結城の予想を裏切り、生きていた。

 

 その身体はボロボロであるにも関わらず、結城には摩虎羅が絶望の化身のように見えた。

 

 

 

 ―――ここが俺の墓標か?

 

 

 ―――やっと、死ねるのか?

 

 

 

 ―――嗚呼(あぁ)、ここで終われるのか……

 

 

 

 

 

 結城の脳内に溢れる、罪の結晶(走馬灯)

 

 それは、結城の自罰を思い出させる(心を奮い立たせる)

 

 

 ―――死ねない!

 

 

『なんで、なんで私はあなたを愛せないの!』

 

 

 ―――死ぬわけにはいかない!

 

 

『私の可愛い大翔、大好きよ! 愛してる!』

 

 

 ―――まだ、贖罪は終わっていない(道の途中なんだ)

 

 

『ぜんぶ、母さんの全部をあげるぅ゛う゛!!』

 

 

 結城は術式を切り替えた。

 

 

「おぉおおおおおおおおおおおッッ!!」

 

 

 吼えながら全速力(フルスロットル)で摩虎羅に向かう。

 

 その隙だらけの姿を認知し、知性ある摩虎羅は思考し、真正面から殴るという選択をする。

 

 摩虎羅は―――真下に向けて脚を振り下ろしていた。

 

 あまりの威力に地面が破壊される。

 

 

「!?」

 

 

 黒い火花は 母の無償の愛に報いる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒 閃
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全力の黒閃によって頭部が破壊された摩虎羅は、遂にその姿を消した。

 

 

「はぁッ……はぁッ……」

 

 

 渋谷での戦績。

 

 

 

 特級術師・結城大翔。

 22:02分、渋谷到着。特級呪霊・漏瑚と戦闘の末、勝利。その後間をおかず、呪いの王・両面宿儺と戦闘し、術師の被害を最小限に留める。最後に、伏黒恵の召喚した摩虎羅と戦闘し、これを単独で撃破。

 

 





 書くことないのでなんちゃってスキルグラフ?


 10段階評価

 結城大翔(『かあさん』無しの場合)

 呪術センス:9
 座学:7
 運動神経:10

 結城の呪術センスは、生得術式がないため絶対に10にはなりません。
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