特異体質・『魅了の黒子』 作:底なしの呪力って無限ってこと?
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摩虎羅を撃破した結城は、まずは負傷者である伏黒を家入の元まで運び、呪詛師である重面の拘束を頼んだ。
「結城、君は休まないのか?」
「……いいです」
結城は言葉短く、無愛想とも取れる表情で言い、すぐにその場を離れた。
(――あれは私が『魅了の黒子』に堕ちるのを警戒しているのか……私のミスだな)
家入は内心苦々しく思う。
実は、家入は高専で結城と仲が良い女性だった。
まだ反転術式を使えず、しかし『特級術師』という存在であったこともあり、単独の任務で怪我をした結城を治療することで触れ合うことが多々あった。
最初はよかった。
結城の女性恐怖症が治ったのは、家入のおかげと言っても過言ではないほどに親密で、悩みも話せる関係だった。
しかし、親しくなり、長く結城と触れ合っていることで『魅了の黒子』に
それだけ、結城にとってもショックな出来事だったのだろう。
「何が『魅了の黒子』……あれはそんなものじゃない、愛を強制的に植え付ける――“呪い”だ」
「家入さん! 急患です!」
「ふぅ……わかった」
「……休んで、早く体力を回復しないと―――」
連続で特級相当との戦闘。
疲れ果てていた結城は、瓦礫の上で短時間での回復を試みる。
寝にくい場所であるにもかかわらず、結城は泥のように眠った。
虎杖達は窮地に陥っていた。
夏油傑、または加茂憲紀でもある謎の存在と裏梅から獄門疆を取り返すため戦闘。
しかし、それは戦闘ですらない蹂躙だった。
「
「氷凝呪法・『直瀑』!」
裏梅の術式。
広範囲に渡り、大質量の氷を直撃させるその技で、呪術師を一掃する。
(あ、
「……漏瑚」
「他愛無い」
直前、地面に現れた火口から噴出される火炎により氷は即座に溶けた。
虎杖達の眼前に現れたのは―――
「結城大翔!」
「……お前が五条先生を封印した奴か?」
形勢乱す、特級術師・結城大翔参戦。
夏油は結城を見据え、その残り少ない呪力とボロボロの姿に嗤う。
「随分とボロボロだね。宿儺と戦って生きているのは驚いたけど、そんな状態で私たちと戦えるのかい?」
「………」
結城は夏油の言葉に耳を貸さず、どちらが獄門疆を持っているのか呪力を探知して判断し、どうすればいいか思考していた。
―――獄門疆を持っているのは、間違いなく縫い目の男。そしてこの場で何よりも優先すべきは……
「いけ、あの白髪小僧は儂が足止めする」
「それは私のことか? 式神」
「……頼んだ、漏瑚」
(――漏瑚が呪霊ではなく式神になっている、それに呪力量も随分少ない。術式で不完全な召喚でもしたのかな?)
「惜しいね。漏瑚は私が欲しかったんだが……横取りしないで欲しいな。まぁ、本命の真人は取り込めたから十分だけれどね」
「……お前も、宿儺も、お喋りが好きなんだな」
「君は嫌いかい?」
「……“呪い”と喋るのは疲れる」
「残念♪」
結城は疾駆する。
予想以上の速さに裏梅が驚くが、冷静に対処、そして術式を当てようとし―――
「貴様の相手は儂だ!」
「チッ、あまり私を煩わせるな!」
それを漏瑚の炎で邪魔される。
夏油は結城の情報の少なさを危険視して、近づかれないよう手始めに準一級以上の呪霊を20体ほど出す。
―――ダラダラ決着を遅らせるのはナシ。……勝負は今、ここで決める!
「はッ」
結城自身は、足止め用の漏瑚を不完全な状態で召喚するのに手一杯な、心許ない呪力しかない。
切り札である『かあさん』はまだ戦闘が出来ないほど消耗している。
現在の結城に対して、『特級術師』と言うのは憚られるだろう。
(――ただの呪力強化、それであそこまでの速さを出せるのか!!)
しかし、そんな看板など糞食らえ!
初めて黒閃を出したことでボルテージが上がり、『かあさん』から与えられた最後の呪力出力、ダメ押しに同格や格上との連続の戦闘経験!
結城は今、かつてないほどの成長―――否ッ、飛躍をしている!
「直に叩くしかないな、これは」
夏油は構える。
残り数秒もしないうちに、結城は夏油の元までたどり着くだろう。
耐久に優れた呪霊が、拳の一撃で祓われる。
幻惑を見せる術式に少しも乱されず、呪力感知で呪霊を見つけ蹴り祓う。
次々に祓われる呪霊。
遂に、呪霊の壁を超えて対面する結城と夏油。
「同じ特級同士、存分に戦り合おうじゃないか!」
「……間抜け」
結城の背後―――そこから、虎視眈々と隙を窺っていた脹相の『穿血』が夏油に向かって繰り出される。
顔も合わせていないが、まるで二人は阿吽の呼吸、ベストなタイミングでの援護射撃。
「君が気づいているものに、私が気づかないとでも?」
しかし、それも夏油にはお見通し。余裕の表情で躱される。
結城と夏油の距離が、手を伸ばせば届くほどになった。
(――術式は警戒しないでいい。ならば呪具を持っていない彼に出来るのは徒手空拳による攻め、と私に思わせて本命は獄門疆を奪うつもりだろう? させないよ、獄門疆は渡さない。ならば私は距離を取らせてもらおう……跳ぶか)
夏油はそこから『上に』跳び上がった。
(は、なぜ? 私はバックステップで距離をとるつもりだった)
結城は既に、術式を切り替えている。
脹相の『穿血』の一瞬の隙、あの時
夏油の家一軒ほどの高さを飛び越える跳躍は、結城に足首を掴まれることにより中途半端なものとなった。
「ふんッ」
まるで夏油を武器のように見立て、地面に振り下ろす。
(まずい! 何らかの術式を受けている! ここはまず呪霊でガードしなければ)
そうやって、夏油は少し離れた意味のない場所に呪霊を出現させた。
夏油自身は何の防御も出来ないまま、強かに地面に打ち付けられた。
結城のあまりの威力にコンクリートが深く陥没する。
「がはッ」
「……確かに奪ったぞ」
脳の揺れ、予期していなかった衝撃に夏油の身体が硬直してしまった。
その一瞬の隙をつき、袖口にあった獄門疆を奪取した。
「……誰か、これを高専へ持っていけ」
「あぁ、わかった!」
第一優先事項は果たせた。
黒幕は倒せなかったが、五条さえ復活すれば大した問題ではないだろう。
結城はそう考えていた。
「くっくっく……!」
不気味に、いや無邪気に笑う夏油。
その姿を見なければ、結城も安心できていただろう。
「……何が可笑しい?」
「いや、一矢報いられたことが嬉しくてね。現代の術師も中々やるじゃないか」
「……この状況でまだ余裕そうなのは、お前が馬鹿だからか?」
「うーん、どちらかというと……馬鹿は君の方だね」
夏油は余裕の表情を崩さない。
「ここは
「……?」
「術式の抽出は済ませてある」
「“無為転変”」
―――これは術式? いや、結界術? 遠隔で術式を発動させた……?
何のために?
結城は疑問に思うと同時になぜか、本日二度目の嫌な予感がした。
何か、大いなる災いがこの国で起きようとしている……!
「さっきのはね、
「………」
「そして―――」
結城はここで邪魔をしても、どうせいつか同じ事をやられると考え静観することにした。いや、結城が静観せざるを得ない状態にさせられた、と言った方が正しい。
夏油は呪物達との契約の証を取り出すと、その紐を解いた。
「今、呪物達の封印を解いた」
「彼らにはこれから、呪力への理解を深めるため殺し合ってもらう」
「分かりやすいように言うと、千人の悪意を持った虎杖悠仁が解き放たれたとでも思ってくれ」
夏油の話、それについていけるものはこの中にいなかった。あまりのスケールの大きさに混乱するもの、まず話が理解できないものと2種類に分かれた。
結城は呻くように言葉を話す。
「……なぜ、そんな事をする」
「うーん、そうだね……興味があるから」
「……なに?」
「私の手から離れた混沌、そこから何が生まれ、何が起きるのかは誰にも予測不能。だからこそ見てみたい、人間の可能性を」
夏油傑―――この男、予測不能。理解不要。
結城には何一つ、目的も手段も意思も価値観も、夏油を理解することができなかった。ついこぼれてしまう本心。
「……気持ち
「ひっど! この肉体の面は良いと思うんだけどな〜」
圧倒的な邪悪、それは宿儺や呪霊のことだと結城は思っていた。
しかし違う。本当の邪悪とは、常人には理解することさえ不可能な思想を持つ者。
「冗談は置いといて……見えているかい? これが、これからの世界だよ」
―――ズババババババババッ!!
夏油の背後から、または呪術師達、結城のそばにも何体もの呪霊が現れた。
呪霊操術、その真価は中・遠距離戦でこそ力を発揮する。
ーーーアイツを追いかける前に、まずはこの辺り一体の呪霊を祓わないと危険だ! 人命優先で動く!
「あ、それと勘違いしているようだけど、獄門疆は私が持っているよ」
「……は?」
「奪われたあれはただの擬態さ、そういう呪霊でね」
「………」
「くっくっ、あれだけ見せびらかして……わざとらしいと思わなかったのかい? 獄門疆は、私が数体保有している格納呪霊の中にある。君たちが奪うことはできないよ」
「……まて」
「じゃあね、呪術師諸君」
「また会おう」
その日、呪術師は完全なる敗北を喫した。
はい、ストックが無くなりました。次の更新は未定です。
ここまで拙作を読んでいただきありがとうございました!
次回、死滅回遊!? メロンパン VS じょうご!!
デュエルスタンバイッ!