あれからというもの人間はひっきりなしに攻め込んできた。まあ鬼人の助けもあってすぐに殲滅させるが………そして数か月経ったある日…
「にしても…」
「ああ、」
「「これはひどい」」
いま目の前にあるのは焼死体や串刺しの死体や原型のない死体などたくさんある。彼らは人間に襲われた妖怪達のなれの果てだ。といってもこの妖怪たちのほとんどは人間には害意はない存在……なぜここにいるかというとこいつらの仲間の一人が私たちのところにやってきて「我々を食ってくれ」と一言言ってきたのだ。そいつはそれを言ってここへ道案内をして絶命したが私はその一言ですべてを理解した。この時代の妖怪は死ぬときはたいてい誰かの糧になることを望む傾向がある。要はそのまま死ぬのが嫌いなのだ。私も最初はよくわからなかったが今ではよくわかる。自分が培ってきた力を終わらせたくないのだ。我々妖怪は繁殖機能が低い……そのかわり何かを食っていけばそれこそほぼ無限に生きてゆける存在だ。これは私個人の『能力』ではなく妖怪という種族そのものが持つ『機能』だ。故に繁殖する必要性はほぼ皆無そのかわり食う食われることを至高とする生命体なのだ。故に強い妖怪を食らえばソイツの力を得る輩もいれば能力が強くなるもしくは進化することもある。だからこそこういう死に方を嫌う。強い妖怪が人間を襲わない理由はここに起因している。私の場合はこれが特に顕著だ。私は元々人間だから人間の特性を兼ね備えているしよく知っている。なので、人間を食おうとしない。
「さて……食うのは当然としてどうするのだ?」
「無難に半分ずつ分けて食べるのが一番じゃない?」
「そうだな、しかし人間の奴め……」
「今怒っても仕方がないよ…人間の持つ『アレ』はなかなかに厄介だから」
「わかっている……」
「もし私たち妖怪が勝つには食いまくって力を蓄えるかそれとも……」
「それとも?」
「妖怪達で団結するしかないね。」
「団結………か」
「やっぱり嫌だよね」
「いやそうではない…………なるほど団結か……」
私は疑問に思ったがとりあえずこの死体を食うことにした。
死体は私たちが美味しくいただきました。
「さて………唐突だけどさ…」
「なんだ?」
「ちょっと下へ降りてくる」
「な!?……お前正気か?」
「正気だよ~」
「以前あそこに攻め入った奴らみんな死んでるんだぞ」
「大丈夫、私は元人間よ。加えてこの容姿ならそう簡単にはばれない。あの集落からここへ来た人間は一人残らず潰しているわけだから顔も知られてないし」
「……お前がどうしても行くなら我は止めぬが…」
「ありがと、じゃあ言ってくる。」
元人間移動中…
「到着!!じゃあ早速情報収集と行こう!」
旅人ということで自分を偽ってわかったこと。
この集落は予想以上に大きく、さらに「名家」という支配者層が存在する。ここでの「名家」はただの伝統ある家系というだけでなく、各技術の専門的な側面も持っていた。
やはり開発された銃火器、服飾、建築、医療のどれかを得意とする名家がある。そしてそのなかに近年『天才』もしくは『神童』と呼ばれる子が生まれその子の知恵によって短期間でここまで発展したらしい。…………………天才マジパネェ
にしても支配層ね……ここに来てから思ったのだが、いや別にいいんだけどさ…ここの人間はどうしてなにかと上下関係を決めようとするのかね。強い弱いだけならいいけど、偉い偉くないだ金やらなんやら……私も元人間だがこれがいまいちよくわからない(もうこの時点でかなり妖怪側ね……私。)。そんなものに意味はないのに…最後にものをいうのは純粋な力だ。力と言っても様々だが……必要とするのは腕力や知力そして妖力のようなもので十分だ。能力なしでも不意を討てば倒せるし純粋な腕力で殴り倒すこともできる。それ以外の権力や金力なんて実際には意味はない。同族の人間には通じても私たち妖怪には通じないのだから。
「しかし案外、大したことないわね人間も、この程度の擬態も見抜けないだなんて…………しかし問題は…」
この国の上層部は今、最高戦力を用いて私の住む山とその近辺に総攻撃を仕掛けようとしているらしい。
(これは帰って鬼真達と対策を練る必要があるわね……いくら個人が強くても数で押し切られてしまいかねない。…………にしてもうすうす感じてはいたけどまさかここまで溝があるとはね…前まではそんなことはなかったのに…住みにくい土地になったものね。)
人妖問題。
困った事に人と妖怪の不仲は、突如訪れた別の人間がここに移り住んでからたった数週間で、不倫が見つかった夫婦間の問題くらいにドロドロの関係になっていた。
特に最近は私達が住む妖山(人間命名)以外のところにある妖地(人間(ry)も伐採が進み、住家を追われて街に出た小妖怪が撃ち殺される事件が多発していた。
なので、私たちも最近はあの約束はもう反故になっていた。あんな手の平返したように高圧的な態度をとる人間なんて守る必要性なんてない。
「さて………と、じゃあある程度情報も集まったし長居は無用か……」
不意に角を曲がったところで何かとぶつかった。
「きゃあ!?」
「わ!?」
私はちょっと体制が崩れたがまあそれだけで目の前を見てみると銀髪で三つ編みの少女が倒れていた。
普通なら無視するがここは人間の集落……そういう態度をとったら不信がられる。なので、声をかけた
「君……大丈夫?」
「いたた……だ、大丈夫…あなたは?」
「私も大丈夫」
「そう、ならよかった……」
「立てる?」
子ども扱いされたことにムカついたのか、ぷうと頬を膨らませていた
「立てるわよ。馬鹿にしないでちょうだい!」
「そ、そう(かわいいわねこの子)じゃあね、今度からちゃんと前見て歩くのよ」
「あ、待って」
「ん?」
「あの……よかったら私の家でお茶でも…」
「私もあいにくと忙しいのよ。子供の相手なんかしてられないわ」
子ども扱いされたのが気に入らないのか、また頬を膨らませている。
「むぅ~~、じゃあせめて名前だけでも………」
とここで数人の男たちが少女の元へ来た
「永琳様……そろそろ会議のお時間です」
「……そう………あれ?」
「どうかなさいましたか?」
「いやさっきまでそこに人が……」
「はて……そんなのはいませんが…それよりも…」
「分かっているわよ(それにしてもはじめてね。私を子ども扱いしてくれたのは柄にもなく怒ちゃった……大抵の人間は私を人として見てくれないし、ただの頭脳としてしか見てくれない…………)」
永琳は名残惜しそうに後ろを見ながら去って行った。
ふう……危ない危ない。
あのまま彼女の家に拉致られていたら、私が妖怪だとバレていたかもしれないわね。
それにしてもさっきの黒服の言葉を聞くあたり彼女が『神童』とか呼ばれている『八意永琳』ね。見た感じ只の子供みたいだったけど。あんな子供に頼り切っていて恥ずかしいとか何か思わないのだろうか?少なくともあそこまで高圧的な態度をとる人間なら黙っていないと思うのだが……そういえば私、名前無いわね。まあ困らないけど。私たち妖怪に種族名はあれど、個体名なんてないし必要ないし、「お前」や「おい」で通じてしまうからね。(笑