俺は狩人の夢で目を覚ます。あぁ、これで死んだのは三回目か? 自分は死んでも生き返る。
死ぬ直前は壮絶な痛みがあっても、死んで終わりじゃないという感覚は死の恐怖を鈍らせてしまう物なのだろうか……?
三回目にして狩人の夢で目覚めることに俺は、どこか既に慣れを感じていた。
もちろん死んでもいい。なんて考えまでには腐っていないが、この先狩りを進めて行くには必要な心意気なのだろうか……。
ならば、人を殺すことに罪悪感を持つことは残しておかないといけない気がする。
自分の死に対する価値観が薄れても、命を奪う価値観が消えた時は、もう俺は戻れなくなってしまいそうだからだ。
獣は殺す。でも人間相手にはしっかり殺すことに殺意もあるが、罪悪感はいつまでも持つことにしよう。
俺は、そんないつ消えるかも分からない弱々しい決意をしてから、墓石に触れてヤーナム市街へ戻った。
スタート地点はまたギルバートさんの家の前だ。
またここからかとため息を吐く。
そんな物さっき殺した住人の死体の道を通り抜ければ良い話じゃないかと思うだろう。
だがどうやらこの世界では、殺したはずの獣や人間が、自分が殺されたという過去も知らずに、のうのうと生きているようだ。
俺は夢の中で目覚めるという不思議な体験をしている。
しかしこの地獄のような狩りもまた悪夢なんじゃないかと心の奥で現実を否定していた。
夢もまた悪夢であり、俺が殺してきた人々は実際に死んでいる訳では無いんじゃないかって。
俺はそれから大橋まで至る住人の集団を斬りながら駆け抜け、途中の大男は通り過ぎて辿り着いた。
さて、デカイ獣との二戦目だ。死ぬ覚悟で行くぞ……。
大橋の中間支柱をくぐり抜ければ、また獣とも人とも思えない悲痛とも感じる咆哮を上げる獣が俺を迎える。
「クアアアァァアッ!!」
俺は一戦目では獣から距離をとりながら、腕の薙ぎ払いや叩きつけを回避することに精一杯だったが、あの一戦目で作戦を思いついていた。
それは怖けることなく、懐に潜り込み、獣の脇を通り抜けること。
あれほどの巨体で、大振りの薙ぎ払いならいくら動きが機敏でも、獣にとっての小さな生き物を殴るのに多少のタイムラグみたいなものを要する。
だから俺は獣の足元、もしくは尻に張り付くように動けば、あとは叩きつけさえ避ければ問題無いという訳だ。
「行くぞ! うおおぉ!」
俺は即座に獣の足元に潜り込むと、空かさず足をとにかく斧で切りつける。
常に頭上から来る攻撃に警戒しながら、獣の両足を軸に回り込むように叩きつけ攻撃を回避する。
「行ける……行けるぞ!」
あとどれくらい切りつければ獣が死ぬのかなどさっぱり分からないが、獣にダメージを与えていることは確か。
この獣の骨はどうなっているのか分からないが、流石に骨を切断することは無理なようだ。
切るたびに血飛沫が上がる。俺はとにかく必死に斧を振り回す。
途中に気付きを得て、叩きつけた直後の腕を切り付け、たまにくる地面グーパンチの直後には下がって来た喉仏を掻っ切る機会が見える。
「キェァァァァァッ!!」
頭を切りつければ流石に獣も痛みが直接伝わるのか。叫び声を上げてから頭を垂れるので、その隙に脳天を斧でかち割る。
「このやろおおおぉ!」
この世界の獣や人間は頭をかち割った所で死なないことを大男から学んだので、この獣の脳天に斧で深く抉り刺した直後は、頭を土台にして勢いよく斧を引き抜く。
「いい加減ぶっ倒れろおおおおぉ」
頭をかち割った回数は何回目なのだろうか。戦いの中で受身の取り方も独自に考え、吹き飛ばされてもなんとか立ち上がれる程度に自分へのダメージを抑えることで、かなりの長期戦に持ち込めた。
そして俺が雄叫びを上げる脳天かち割り攻撃に追加して、斧を頭から引き抜いた直後に斧を下斜めからフルスイングすることで、獣の両眼を叩き潰すことに成功する。
「ギェア゛ア゛ア゛ァァァ゛ッ!!」
そうすればついに獣は、断末魔のような叫び声を上げながら、そこらの死体と同じではなく、青白い霧を上げながらその場から消え去った。
「やった……やったぞ! うおあああああッ!!」
俺もまた勝利の雄叫びを上げた。