思いつき呪術廻戦   作:名無しの呪詛師

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プロローグ 京都姉妹校交流会編2

「何その大荷物」

「何って、京都で姉妹校交流会でしょ? アンタはなんで手ぶらなの?」

「……?」

「?」

「京都の、姉妹校と、交流会だ。東京で」

「うそでしょ~」

 

 己の勘違いを理解して叫ぶ野薔薇。

 前年の勝者側の学校で行われるという事実を知ってその勝因となった乙骨憂太に不満を叫びながら膝を突く。

 

「来たぜ」

 

 項垂れる野薔薇に構っていた鉄貴は真希のその言葉に反応して彼女の見る方向に眼を向けた。

 

「あらお出迎え? 気色悪い」

「乙骨いねぇじゃん」

「何アレ、箒が武器なの?」

「うるせぇ、早く菓子折り出せコラ。八ツ橋くずきりそばぼうろ」

「しゃけ」

「腹減ってんのか?」

 

 現れた京都校の面々。

 各々が敵意を持った発言をして雰囲気が荒れる中、それを諫めるように京都校引率の庵歌姫が現れる。

 

「わぁ美人。うちのクソ白髪と交代してくれないかな?」

「五条先生が嫌なのはわかるけど京都校の教師よ? 性格悪いに決まってるわ、美人なら私と真希さんで我慢しなさい」

「へ~い」

「てことで美人鑑賞税だ、コレ持ってろ」

「うぃ」

 

 そういって渡されたキャリーバッグを術式で縮小して呪骸を持つノリで胸に抱える鉄貴。

 

「てかこれ伏黒の影――」

「お前の術式重さは変わんねえだろ」

「だよねー。流石にキャリーの重量分体重増えんのはヤーよねー」

 

 しゃーないと手渡しかけていたキャリーバッグを抱え直す。

 そんな姿に視線が注がれていた。

 

「面白い術式ね」

 

 遅い時期に加入したこと、東堂葵と禪院真依が東京校に訪れた際に出かけていたことなどがあって未だ情報がほとんどない鉄貴の術式を目にしたことで視線が集中していた。

 

「で、あの馬鹿は?」

「悟は遅刻だ」

(バカ)が時間通りに来るわけねーだろ」

「誰もバカが五条先生のこととは言ってませんよ」

「アイツ他の学校の先生にも馬鹿扱いなんだ、ウケる」

 

 歌姫の問いに答えるパンダと真希に突っ込む恵と一人マイペースに笑う鉄貴。

 するとガラガラと大きな音が響き、それと共に当の本人が現れる。

 

「おまたー!!」

「うーッス!!」

「あは! 相変わらず元気だね鉄貴は」

「ちっ、まだ届かねーや」

 

 再会一番問答無用で顔目掛けて回し蹴りをしかけ、何事もなかったかのように無限の壁に防がれる。

 

「五条悟!!」

「やぁやぁ、皆さんおそろいで。私出張で海外に行ってましてね」

「急に語り始めたぞ」

「はい、お土産。京都の皆にはとある部族のお守りを。歌姫のはないよ」

「いらねぇよ!」

「そして東京都の皆にはコチラ!!」

「ハイテンションな大人って不気味ね」

 

 一撃を防がれて悟に興味を失った鉄貴は悟が運んで来た台車に載った大きな箱に興味を向けていた。

 

「故人の虎杖悠仁君でぇーっす!!」

「はい!! おっぱっぴー!!」

 

 箱の中から現れたはずの悠仁。

 一連を見た東京校の者たちは形容し難い表情でそれを見つめる。

 

「……」

 

 再会を喜んでもらえると思っていた悠仁は嬉しそうではない恵と野薔薇の二人の表情に驚き、悟は登場のポーズのままフリーズした悠仁を載せた台車を何故かガラガラガラと動かし、鉄貴は静かに失笑していた。

 

「おい」

「あ、はい」

「何か言うことあんだろ」

「え」

 

 不機嫌な野薔薇とそれに気圧される恵。

 

「黙っててすんませんでした……生きてること…」

 

―――――

 

「改めてよろしくね虎杖君。君の復活で三人目から四人目になった翡葉鉄貴で~す、好きに呼んでね~」

「おう! 知ってるみたいだけど俺は虎杖悠仁。宿儺の器で一度死んだんだけど生き返った!」

「宿儺?」

「俺もよくは知らないんだけど昔のヤベー奴で死んだあと死体が呪物になって消滅しないんだってさ」

「なるほど、クマムシか」

「くまむし? 強そうな名前だな」

 

 復活するという要素からクマムシを連想した鉄貴は宿儺に聞かれているとも知らずにゲラゲラと笑う。

 

「笑うな、不愉快だ小僧」

「虎杖君声域広いね」

「俺じゃねーよ、宿儺だ宿儺」

「ほほぉ、これがそのスッ君ですか。……頬っぺたに目と口ついてんの?! 神経とか声帯とか諸々どうなってんの!?」

 

 眼球があるのは事実として認めるとして、そこで得た光情報をどう処理するのか。

 神経がなければそもそも脳も繋がっていない。

 口も同様で、その空間が開いていたとしても声帯もないし肺にも繋がっていない。

 パッと見たところ悠仁の口から宿儺の口内部で繋がっているようには見えない。

 

「いや、俺に聞かれても。俺の身体なんだけどね?!」

「は~、君面白い身体してんねぇ……。これ例えば魂だけ破壊する術式があってそれで宿儺の魂が破壊されたとして虎杖君の肉体どうなるワケ? 目と口そのまま? それとも消える?」

「だからわかんないって!」

「あ、ごめん、独り言」

「お、おう」

 

 奇妙奇天烈な光景に好奇心をそそられる鉄貴はブツブツと一人で妄想を捗らせて笑みを浮かべる。

 

「この目と口って虎杖君は感覚ある? こっちで喋れたり見れたりは?」

「宿儺が表に出ないように封じることはできっけど目と口を使うのは無理だよ」

「ん~、それが出来たら目を増やして死角を減らせたり一個の口で呪詞唱えつつ残った口で味方と連携とかできると思――って、そもそも術式ないんだっけ?」

「元々一般人だからなぁ」

「俺も俺も」

「良いよなぁ翡葉は術式あって」

 

 作戦会議が終わったからと緩くなる鉄貴とそれに付き合って死亡扱いだった時期のことを開示しようと思える範囲で開示する悠仁に周囲から呆れの眼が飛ぶ。

 

「鉄貴、お前空気読めないだろ」

「はい? はい」

「こういう時ゃ普通空気読んで会話相手は恵と野薔薇にさせるだろ」

「なるほど。そういうことを禪院先輩も中々空気読めない人っすね!」

「うるせえ!」

「ぐぇ」

 

 普通そういう具体的なことは言わないっすよねと笑う首を絞め、体勢が崩れたところで逆エビ固めを掛ける真希。

 降参(タップ)しても技は解かれず、パンダが止めに入るまでのしばらくの間呻き声を発し続ける。

 

―――――

 

「開始1分前でーす。ではここで歌姫先生にありがたーい激励のお言葉を頂きます」

「はぁ!? え…えーっと」

 

 開始直前、スピーカーから悟の無茶振りが響き渡りそれを聞いた者たちの一部が呆れ顔を晒す。

 

「あー…ある程度怪我は仕方ないですが…そのぉ…時々は助け合い的なアレが…――」

「時間でーす」

「ちょっ、五条!! アンタねぇ」

「それでは姉妹校交流会――スタァートォ!!!」

「先輩を敬え!!」

 

 二人の異なる叫びによってスピーカーが悲鳴を上げる。

 

「アホくさ……って、アンタなんで泣いてるワケ?」

「歌姫先生が可哀想で……あんなクソ野郎に振り回されるなんて……うぅっ――さてやりますか」

「お前の情緒こえーよ」

「そっすか?」

「ともかく、例のタイミングで索敵に長けたパンダ班と恵班に三3で分かれる、後は頼んだぞ悠仁」

「オッス!!」

「ガンバレー」

「バウッ」

「!!」

 

 玉犬の吠えに反応し、そして呪霊を見つける。

 

「どごいグのぉ~?」

3級(ザコ)だな」

「ゴーギャン?」

「先輩ストップ!!」

 

 玉犬の雰囲気を察知した恵が攻撃に入ろうとしていた真希を制止する。

 直後、大樹を破壊して筋骨隆々の男東堂葵が現れた。

 

「ぃよぉーし! 全員いるな!!」

「パイナップルの呪霊!」

「まとめてかかってこい!!」

 

 ノータイムで悠仁の飛び膝蹴りが炸裂。

 

「散れ!!」

 

 同時に真希の指示で悠仁を残して全員が散開。

 恵、真希、鉄貴。

 パンダ、棘、野薔薇の二班に分かれた。

 

―――――

 

「変です」

 

 違和感を察知した恵が予想を真希に話す。

 

京都校(アイツら)、虎杖殺すつもりじゃないですか?」

「へ~。呪詛師だっけ、そういうの」

「多分思考(メンタル)が違うな。鉄貴お前は知らないからそうじゃなかったけどな、宿儺の器なんて恐怖の対象でしかねーんだよ。つまり呪い祓うのと感覚は変わんねーってことだ。戻るぞお前ら」

「……すみません」

「何謝ってんだバカ」

「仲間が死んだら交流会も勝ち負けもねーだろ」

「そうそう。それにそれ以前の常識の話だって、人間社会で生きるなら人を殺すな、ってな。ボケ爺の暴走に従うしか能のない奴らを止めるだけの話よぉ」

 

 知り合って数時間も経っていない間柄。

 鉄貴にとって悠仁は友人なりたてほやほやでしかない。

 が、自分たちの関係性は関係なく、社会としての常識として対処は当然だと笑う。

 

「――落とせ」

「ヤバ」

 

 恵の式神【鵺】によって空を飛び索敵を行っていた京都校三年の西宮桃が落とされる。

 

「真依、メカ丸。西宮のカバー」

「御意」

「まぁ、あの人いないと困るしね」

 

 纏まって移動していた京都校の四人が二手に分かれる。

 そして木の陰から現れた真希が京都校二年の水色の髪の少女三輪霞に襲い掛かった。

 すぐ後に恵が京都校三年の加茂憲紀と打ち合う。

 

(わぁい、ボッチだぁ! ……連携の訓練なんてしてないよ?)

 

 一緒に任務に行った経験など現状ではないに等しく、下手に参戦すれば形勢が不利になる可能性が十分にある。

 桃と、分かれた二人のうち一人であるメカ丸は遠くでパンダ、野薔薇とぶつかっている。

 残っているのは真依だが、姿は見えず鉄貴には索敵能力がない。

 

(隠密からの形成次第で援護というなのサボりと決め込みますか)

 

 自身の出方を決めた鉄貴は静かに気配を消して隠れ、同時に持ち込んだ大鋸屑(おがくず)に呪力を込めつつ周囲に散布する。

 距離を開けると込めた呪力は消失するが、術式範囲内であればその防止は可能だ。

 サボりと言いつつ距離を開けすぎるのは駄目。

 戦闘が行われている付近で隠れ潜み、そのためには戦闘の観察と周囲の警戒を同時に行わなければならないという状況に鉄貴は内心で溜め息を吐く。

 

―――――

 

 戦闘は加速し、恵対憲紀と真希対霞の二戦距離は離れる。

 両方の戦闘を見ることは術式範囲的にも物理的にも不可能になり、一瞬の思考ののち鉄貴は呪力がないということだけは知っている真希の戦闘を選んだ。

 

(……刀使うっぽいしあぶねーなと思ったんだけど、刀取って終わっちゃったよ)

 

 真希は圧倒的身体能力で別の場所へ行き、鉄貴は隠密中のため気づいてもらえずそのまま放置され。

 やることのなくなった結果、武器を失ったとはいえまだ人数には含まれている霞を監視することにした。

 

「はい。役立たず三輪です」

「眠れ」

 

 が、棘の電話越しの呪言によって意識を失う。

 

「えぇ……」

 

 結局行動の全てが無意味になった鉄貴は本当に眠ったのか確認したのち、その場で項垂れてから空を仰ぐ。

 

「こんなのありぃ?」

 

 どうするかと悩み、対戦上敵であり悠仁を殺そうとする奴らとはいえ呪霊のいる森に眠っている女の子を放置はできないと目覚めるまで近くにいようと考えた。

 

(てか呪言で眠るってどういう感じなんだろ。無理矢理意識を消された感じだよねぇ。それってシャットダウンせずに電源コードぶち抜く感じ? ……この子大丈夫かなぁ、脳にダメージとか入ってないと良いけど。その辺りは反転術式で治せるのかなぁ、一応やっておくかぁ……)

 

 少し心配になって霞に反転術式を掛ける。

 呪術で眠った以上しばらくは起きないだろうことから交流会終了まで何もできないだろうと溜め息を吐きかけた時、濃密な気配が全身を叩き、少しして遠方から爆発の如き大樹の津波が起こった。

 

「ふぅッふぅ! 何やらアクシデントの気配ぃ!?」

 

 大樹の津波、その近くに棘の姿を確認。

 同時に下に向かって何かを叫んでいるのを理解する。

 状況と大きく開けられた口の形から『逃げろ』と言っているのだと察した鉄貴は霞の意識を強制的に起こすことを目論み、その頬をワリと強めに往復ビンタした。

 

「起きないねぇ――帳? なして?」

 

 天元の結界を知らない鉄貴としてはさっきまでは呪霊の新規参入だった。

 可能性として考えていたのは悠仁から聞いていた特級呪霊。

 だが帳が下りたということは呪術師あるいは呪詛師の仕業であり、呪術を用いた交流会をするため一般人がいないという条件上前者はありえない。

 つまり明確な敵意、そして秘匿した行為という殺意。

 

「はぁ……これで雑魚とか言うなよ? こんなにワクワクしてるんだからよォ」

 

 霞を抱えて大樹の下へと向かう。

 何が起こったのかの確認、重傷者が居れば確保するためにも隠れつつ近づいた。

 

「わぁお」

 

 そして目にする暴風のような戦闘。

 恵、棘、憲紀の三人の連携から始まり、呪言の発動による棘の戦力低下を起因として憲紀がやられ、棘が限界を超えた呪言の発動で戦線離脱、そして真希の参戦。

 

「鉄貴! 二人の回収任せた!」

「――うッス!」

 

 近接戦闘を仕掛けても現状の自分の眼では負いきれない。

 戦闘の光景からそう判断した鉄貴は真希の指示に従って二人の回収に入る。

 

(あっぶねーなぁッ!)

 

 飛び散る瓦礫。

 降る礫。

 制服を脱いで広く振るうことで霞に降るモノ全てを振り払い、サイズが邪魔だと判断して爪先で霞に降れてその肉体を縮小。木の裏に隠す。

 が、木にも耐久値はあり戦闘で大きな瓦礫が吹き飛べば霞は押し潰されて死にかねない。

 

(どうすれば――)

 

 腕を伸ばしても術式範囲からは少し遠い。

 それほどに距離があれば走って駆け付けるのも難しい。

 

(――――そうだ……眼と口)

 

 脳内で悠仁の姿が思い浮かぶ。

 その顔。

 頬の、眼と口。

 

(眼は動いてた、口の中には歯も舌もあった。けど虎杖君自身の口から見ても何もなかった。アレは――そう。頬を境界として眼や口をその扉にした一種の異空間の出入り口なんだ。つまり虎杖君の身体に宿った宿儺の目や口は内部に現実空間とは別の領域――仮想的な空間が広がっている)

 

 受肉による特異な状態。

 知識のない鉄貴はそういった先入観すらなく、しかし自分の思考という先入観の中で独自の呪術思考を発展させる。

 

(呪術は現実に囚われる必要がないんだ。そして――呪術には縛り。つまり対価と恩恵がある!)

 

 思考が呪術と噛み合う。

 思考が一般人から、呪術師へと完全に移行した。

 

「――【縛り――呪力及び指向性】【縮尺法・(ひずみ)】」

 

 通常以上の呪力消費。

 そして方向を一方に制限することでの術式範囲の拡張。

 それによって動かずに術式を届かせる。

 

 呪術・縮尺法を用いた縮小。

 縮めたモノは『距離』。

 呪術は概念にすら干渉可能であると理解した鉄貴は空間に手を伸ばした。

 開かれた本の両端が閉じれば一点に収束するように、この時だけ鉄貴と二人の距離は近づいていた。

 

「よしッ!」

 

 術式で腕を伸ばすまでもなく、手を出せば届くほどに歪んだ距離。

 繋がった数瞬で二人を回収し、縛りが解ける。

 

「東京の一年? 半分貸して!」

 

 そこに空を飛ぶ桃が現れる。

 

「――いや、三人は俺が連れて行く! お前は上から索敵して安全な方向に全力で進んでくれ! 俺はそれについていく!」

「わかった! ――私三年なんだけど!?」

「そっすか! あと急勾配とかあったら教えてください。てことで、おチビ先輩ゴーッ!」

「ッー! あとでぶっ叩くから!」

 

 掛け合いののち、桃が空を疾走する。

 鉄貴は等身大の二人を縮小し、男女左右に分けて掴んだ。

 そして地に片膝を立て、視線は空駆ける桃へ。

 通常の術式範囲の限界まで縮小と戻しの繰り返しで転移を繰り返した。




元ネタ
「ゴーギャン?」
 三級呪霊の「どこいくの?」という問いに対して[我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか]というタイトルの絵画に発想が飛び、そう返した
 なんでそこに思考リソース割いてんだ、集中しろバカ



 実際、術式で眠らせるってどうなんですかね?
 意識を数瞬だけ肉体から剥がして肉体を空白状態にして眠らせ、そこに意識を戻すことで意識を肉体に引っ張らせたのか
 それとも単純に意識を改竄して眠らせたのか
 どっちにしろ危なそうだなぁ、と
 まだ「潰れろ」とかだけなら肉体に外的負荷をかけるってのでわかるけど
 意識面に強烈な負荷をかけるって、そりゃ語彙をおにぎりの具オンリーにしますわってレベルの危険さですわな


追記:2023/10/18/20:28
 稀有な反転術式の外部出力が可能な理由は次回明かします。続きは途中まで書いてるんですけど未完
 読みたかったらコメントヨロ。励みになりまっせ
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