切符を拝見します。
行き先は───
とあるドラマの撮影後の帰り。
いつもならばマネージャーが少女を自宅まで送り届けるのだが、今日は大事な予定があるため少女は一人で帰ることにした。
この選択が後程後悔することをまだ少女は知らない。
日も落ち、辺りが暗くなった道を歩く。
街灯が生み出すコントラストが些か不気味で、街の暗い雰囲気を加速させていた。
そんな少女はとある人物を思い浮かべ、口角を上げ笑顔を浮かべていた。思い浮かべる人物は最近大河ドラマの撮影で忙しいらしくあまり会えていないのだとか。だがこの日は違った。そんな忙しい友達と少女は久しぶりに会うのだという。その為、これから会う友人のことだけを思考しながら少女は一歩一歩着実に歩を進めて行った。
人通りが少なくなった頃、喉が渇き、近くの自動販売機に立ち寄った。そこでドリンクを一本購入し、近くにあるベンチに腰掛けた。少女はゆっくりと息を吐き、深く被った帽子を取り、着けていたマスクも少しずらし、ドリンクを開けて喉の渇きを潤す。休憩がてら自身のエゴサをし、息整える。キリの良いとこでエゴサを止め、そして立ち上がり歩き出した───
───その刹那。
「──ッ!」
腹部に強烈な痛みが走った。その衝撃で少女は地面に倒れ込み咄嗟に腹部を手で抑え、自身の手を見る。自動販売機の照らす光で映っていたのは赤黒い真っ赤な血の付いた手。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い!
痛みに思考が支配される。
少女には一体何が起こったのかが分からなかった。
少しずつ身体から力が抜ける。抑えても止まらない腹部からの血。
意識が朦朧としてきた所で、一つの疑問が浮かんだ。
一体誰がこんなことを…?それに人の近づく音と気配なんて感じなかった……
こんな状況だからだろう。ただ冷静にそう思ったのは。
最後の力と言わんばかりに、少女は力のない体に喝を入れる。どうにか上を見上げると、そこに居たのは二十歳ぐらいの青年であった。
少女は驚くように目を見開いた。
その青年はニヤニヤと気色の悪い笑顔を浮かべながら、地面に倒れ込む少女を一心に見つめ話しかけた。
「これで…これで、やっと一緒になれるね…
千世子ちゃん」
対策は打っていたはずだった。事務所などに相談してストーカーなどの行為をしている者が居ないか調査するなど、徹底的にそのような行為に及ぶ者を潰してきた。そのため、今の今までそのような人物は一切出して来なかった。その為か、少女は少し気を許してしまっていたのだ。だが…
少女は、まさか自身を刺した人物がいつも送り迎えをしてくれるマネージャーだとは思いもしなかった。
(何にも分かってなかった…)
男は少女に近づき、気色の悪い笑顔で言葉を発した。
「じゃあね、千世子ちゃん…
俺もすぐそっちに行くからね…!!!」
───その瞬間。
少女……いや、百城千世子の視界はブラックアウトした。
▼
百城千世子は気を失う前にストーカー…基マネージャーに襲われて腹部を刺された。目が覚めると不思議と痛みがなく、それどころか身体の感覚も感じないでいた。それどころか視界に入る景色を見た所いつか見た舞台の列車の中だったのだ。
しばらくすると遠くから、微かに足音が聞こえてきた。
その足音は真っ直ぐ千世子の近くまで近づいき、目の前の席に座った。その人物の正体は小柄の少女。背中まで伸びる綺麗な髪に、肩に止まる一匹のカラスが特徴的だ。
座ってから5分程経過しただろうか…
するとそんな独特の雰囲気を纏った少女がどことなく嬉しそうに話始めたのである。
“君、死んじゃったんだね”
“わたしが死んだ?
本当なら笑えないんだけど”
“本当だよ。ねぇ、一つ私と賭けをしない?”
“賭け?”
“そう。簡単な賭け、今から貴方を生き返らせてあげる。それでね…そこで星の子達と出会って導いてあげて、もしちゃんと導いてあげられたら貴方の勝ち。どう?やる?”
千世子は話の内容を聞き、疑問に思ったことを口に出した。
“ねぇ、それってどう導けばいいのかな?
あと…導けなかったらどうなるの?”
“さぁ?導き方は貴方次第だよ。
それに導けなくて負けた場合は…そうだな、う〜ん…内緒!”
“内緒か…
まぁ、もう死んじゃってるしね…いいよ。やる”
───いい返事だね。
───期待してるよ。
その声が聞こえると同時に、千世子の視界はこの度2度目のブラックアウトをするのだった。
少しずつ更新していきます。