───視え方。
画面に映る兄と思わしき人物。いつもの気だるげな雰囲気と打って変わって、キラキラとした爽やかな笑顔振りまく兄。誰だよ、お前!と叫びたい感情を抑え画面を見つめるルビーと有馬。そんな2人の後ろではアイがニコニコと笑顔で画面を見つめていた。
「結局お兄ちゃんもオスなんだね」
「アイツ!私には一回しか可愛いとか言わなかった癖にッ!」
「(アクアも大きくなったな〜)」
三者三様。それぞれ思う事は違うがアクアの事を思ってのことだろう。そんな中、また1人新しい人物が現れた。
誰もが息を呑む程の輝きをばら撒きながら可憐に颯爽と登場した千世子。出演とはいえ、明らかにどの出演者よりも目立っていた。それ程までに百城千世子と言う女優の人気は凄まじかったのだ。それ故に、誰もがこの番組の主役は百城千世子だと確信した瞬間だった。
「嫌ね。千世子が出るだけでここまで差を見せつけられるのは」
「それって先輩のこと?」
「違うわよ!あんたねマジで引っ叩くわよ!」
「そう言ってやらないでしょ先輩は。
で、先輩のことじゃないならどう言う意味なの?」
「たくッ!でもそうね。
千世子は元々演出家いらずの役者って言われてるのよ。そう言われてるだけ合って演出家がイメージする以上のクオリティーでやってのけるからめちゃくちゃ目立つの。だから他の演者達との差が出来て、観る者は「ああ、この子が主役か」って感じるわけ」
「ふーん、でもそれっておかしくない?
だってさ、始まってからじゃ分かんないじゃん。誰が主役とか。それにこれ、恋リアだよ?主役とかあるの?」
「そうね。ルビーが言ってる事もそうなんだけど。私が言いたいのはあくまでそのシーンでの主役の事よ」
「シーン毎に主役とかあるんだ。
私気にした事ないや」
「気にせずとも無意識に人は感じるものよ」
「へー、そう言うもんなんだ」
「そう言うもんよ。
それに千世子は今、本当に恋をする為に来た女の子になりきってるし」
「何それ、他の子もそうじゃないの?」
「違うに決まってるでしょ。キャスト全員役者ならまだしも、演技すらまともにやった事のない子達だらけよ。あんただってあんな環境に放り込まれて「はい、今から恋します」なんて出来る?出来ないでしょ」
「……言われてみれば…そうだけど」
「でしょ?でも………」
「でも?」
「違和感があるのよね」
「違和感?」
「そう。違和感…… 恋する女の子になりきってるように見えるんだけど… なんか違うと言うか…なんて言うか……」
「流石に考えすぎじゃない?」
「それもそうね。でも千世子が目立ってるとなんか悔しいわね」
「やっぱり先輩のことじゃん」
「うるさいわね!」
〈恋愛リアリティショー 撮影現場〉
「なあ、千世子」
「何?」
「さっきから黒川さんが俺のこと睨んでるだが」
「…………気のせいだよ」
「おい。なんだ今の間」
アクアは黒川あかねに視線を向ける。こちらを恨み怨み見つめる黒川と目が合い、アクアは視線を逸らした。
なんなんだよ。俺が一体何をしたって言うんだ……
まぁ、いい。考えるだけ無駄だ。
それにしても千世子のやつ、さっきの登場の仕方はなんなんだ。挨拶は普通だった。でもアレは俺達を駒としかみていないようにも感じた。もしアレが芝居なら本当に喰えないやつだ。
アクアが千世子にそう思うのも仕方のない事だった。
その場にいた者にしか感じることの出来ない雰囲気、そして威圧感。怖くはない。ただ優しく自分達を動かそうとするナニカがそこにはあったのだ。ただ一言「よろしくお願いします」と言う言葉だけで、出演者、カメラマン、監督、視聴者までもを皆が思い描く百城千世子と言う“天使”としてのイメージを崩さないように千世子は自分の動きやすい環境を作り上げようとしていた。醜い現実の中に非現実的な虚像が輝くようにする為に。
「それにしてもさっきはえらい登場の仕方だったな」
「それ、アクア君が言う?」
「俺は別にキャラ作っただけだし」
「私だってそうだよ。それにこの
「
「あと、アクア君」
「なんだ」
「ずっと私と一緒に行動してないで、他の子のとこにも行ったほうがいいよ?」
「……、それもそうか」
「決まりだね。じゃあ、私も他の子と話してくるよ。
お互い頑張ろうね。アクア君」
お互いか…… 相変わらず嘘つきなやつだ。
本当は自分の事しか考えていない癖によく言えるもんだ。
それからアクアは順当に他のキャスト陣と交流を深めるために行動した。
1人目、鷲見ゆき。
黒髪セミロングの清楚な容姿が魅力的な少女。ファッションモデルなだけ合ってスタイルは抜群。そして清楚な見た目とは裏腹に小悪魔的な性格をしている。年齢は高校一年生の15歳。
2人目、MEMちょ。
人気ユーチューバーとして活躍し、自称“バズりのプロ”を名乗る少女(?)。常に悪魔の角の形をしたカチューシャを身に付け、あざとい身の振る舞いをする。年齢は高校三年生の18歳(?)
3人目、熊野ノブユキ。
明るくポジティブな性格でノリが軽く、何処かリーダーシップのある雰囲気が特徴的な青年。職業はダンサーと言う事もあり、運動神経が良くスタイルも良い。年齢は高校二年生の17歳。
4人目、森本ケンゴ。
3人目の熊野ノブユキとは違い、真面目な性格。職業はバンドマン。その為、高いプロ意識を持ち合わせている。だが、カメラの前ではどうしても身構えてしまい戸惑う様子が見受けられる。年齢は高校3年生の17歳。
5人目、黒川あかね。
職業は女優。劇団ララライに所属しており、数年前に一度だけ公演された“銀河鉄道の夜”にも出演していた。今では、劇団ララライの若きエースと言われる程の演技力があり、多くの役者達から「天才役者」と認められる程。真面目で努力家であるが、自己評価が低く消極的な性格をしている。そして恋愛リアリティショーが始まる前から何故かアクアに対して当たりが強い。年齢は高校二年生の17歳。
6人目、鳴嶋メルト
イケメン。職業は俳優、モデルと幅広く活躍している。最近では「今日あま」に出演したが、あまりの演技の下手さに一部の視聴者に大根役者と言われている。その為か「今日あま」の収録が終わってからは自分なりに努力をしているのだとか。年齢は高校一年生16歳。
ある程度キャスト達の情報を吸収したアクアは撮影が終わるまで大人しくするつもりだったのだが、世の中そんなに甘くはなかった。理由は単純明快、アクアに黒川あかねが近づいてきたのである。
「すみません… 隣…良いですか?」
「………ああ」
「…ありがとうございます」
座ったは良いもののそこからの会話はなく、ただ時間だけが一刻と過ぎていった。アクアも黒川も基本的に自分から話を切り出すタイプではないため尚更だろう。
深呼吸を一つ。
黒川は決心したようにアクアに振り向く。
「あ…あの!」
「ん、どうしたんだ」
「千世子ちゃんとは!どんな関係なんですか!」
「は?」
黒川の質問にアクアは首を傾げた。
次の瞬間、アクアの脳内に溢れ出す撮影前の黒川あかねの表情。羨ましげにそして恨めしそうにこちらを睨む黒川を。
「いや、関係って言われてもな」
「どうなんですか!」
「なんか勘違いしてないか。
言っとくが俺と千世子は同じ事務所で幼馴染ってだけだぞ」
「え…あ…そう…なんですか… よかったぁ……」
アクアの目の前で胸を撫で下ろす黒川。その様子にアクアは自身が思考していたことが正解だったと悟った。
それにしても最後なんて言ったんだ?
「なあ、黒川さん」
「あ、あかねでいいですよ。
千世子ちゃんとそう言う関係じゃないなら敵じゃないので」
何処か嬉しそうに狂気すら感じる黒川の笑顔に苦笑いを浮かべるアクア。
「そ…そうか。じゃあ、あかね。
あかねにとって千世子ってなんなんだ?」
「……私にとって千世子ちゃんは“天使”です。いつも輝いて…キラキラしてて、どこか遠くを見てて、それにどんな人よりも優しくて…あと、役者としての楽しさを教えてくれた大切な人でもありますが」
「ふーん、そうか」
「聞いた割には反応薄いですね」
「………そんなことない」
「じゃあ、私からも一つ質問良いですか」
「なんだ?」
「アクアさんにとって千世子ちゃんはどんな人ですか」
「……負けず嫌いでストイック… 意外とからかい好きでお茶目なやつ… それでいて良く分からない奴…」
「よく知ってるんですね……」
「そうでもないぞ。千世子やつ、人前だと仮面被るからな。正直何を考えてるか分から「やっぱりアクアさんは敵です」…」
「は?」
撮影も終了間際になった頃、いきなり敵扱いを受けたアクア。ベンチから黒川は腰を上げ、千世子の方へ走り出した。そんな様子をただぼーっと見つめるアクアは、この先の撮影への不安を募らせたのである。
「はぁ、本当に俺が何しったって言うんだよ」
自然と出た言葉。
声色は悲しそうにそして酷く疲労が伺えた。
※おまけ
千世子「どうしたのアクアちゃん?
疲れきってるみたいだけど」
アクア「ちゃん呼びやめろ。
疲れきってるのは千世子…お前のせいだ」
千世子「やだなー。
私はアクア君に酷いこと何もしてないよ?」
アクア「…はぁ。ちょっと1人にしてくれ」
千世子「あーあ。拗ねちゃった」
アクア「は?拗ねてねーし」
千世子「ふふっ、と言う訳で次回予告」
アクア「おい、話聞け」
千世子「次回、キューピッド」
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びっくりするほど話が進まない。分かってはいたんですけどね。あと、これからあかねちゃんの活躍が!───とはいかないんですけど、どんどん沼にハマっていくあかねちゃんは完成しそうです。