目に映る、その綺麗な横顔。
けれどその顔の反対側は見てはいけない。
見たら最後、もうその綺麗な顔は見えなくなってしまうから。
「悪いな、千世子。いきなり来て」
「いいよ、気にしないで。
…それに、私の家からの方が明日のドーム近いんだよね?」
「まあ、そうだな」
幼い男女2人が話し合う。側から見ればとても仲良さげに見えるだろう。だが男の子の方は少し、申し訳なさそうな声色であった。それには理由がある。
遡ること約3時間前。
──
───夕食。
「アクア、ルビー…幼稚園は楽しい?」
紫がかった綺麗な黒髪をお団子に結った華奢な体格をした端正な顔立ちの女性、星野アイが男女の双子にそう話かけた。それに対し、先に反応したのは女の子の方のルビーであった。
「うん!めっちゃくちゃ楽しいよ!ママ!」
(相変わらず元気が良いなコイツ…、まあそこが可愛いんだけどな。それにしてもアイ…いつもならこんな事聞かないが…一体どうしたんだ?)
「アクアはどう?楽しい?」
アクアが思考の海に沈み質問に答えない為、不安そうな顔をするアイ。するとその顔つきを見て気付いたのだろう。アクアは質問に慌てて答えた。
「た、楽しいよ!」
「お兄ちゃん嘘ついてる」
(おい!そこは空気読めよ‼︎)
「アクア…、楽しくないの?」
「うっ…、楽しくない訳じゃないけど…」
妹であるルビーの些細な一言がきっかけになり、アイからの質問に言葉を詰まらせたアクアであった。そんな兄の反応を見て何処か思うところがあったのだろう。ルビーはアクアにとっての爆弾発言をするのだった。
「ねえ、ママ」
「どうしたの?ルビー」
「お兄ちゃんね、幼稚園じゃ楽しくなさそうだけど…
帰ってきた後に、誰かと電話してる時は楽しそうだよ。誰だか分からないけどね」
そう言い放ったルビーはハンバーグを口に運んだ。そんなルビーを見ながらアイは思考した。
(誰と話してるんだろう…、なんか凄く心配なってきた)
「アイ、そんなに見つめられると食べにくいんだけど…」
「ねぇ、アクア…、電話の相手は誰?」
「いや、それh「誰?」…それは───
▼
「それでアクア君はゲロった訳だ」
「悪い…」
かくして星野家一行は楽しい楽しい千世子の家にお邪魔する事になったのだった。
「気にしないで、私もアイさんとは会ってみたかったから」
そう言う千世子の目は少しばかり輝いていた。その様子を見ながらアクアは思考した。
(何で、会ったことないんだろうな。社長の仕業か?だとしても会わせない意味が分からないし…、同じ事務所同士、仲は良くしておいた方が都合良いと思うけどな。まあ、俺が気にすることでもないか…)
そんな事を考えながら、とある部屋を通り過ぎようとした瞬間。
「…おい、この部屋」
少し、震えた声色で千世子に話しかけるアクアに非常に嬉しそうに千世子が勢いよく、ぐるっと振り向いた。
「うん!夜行性の子たちの部屋だよ」
「そ、そうか…」
「会う?会いたい?」
今まで一番の笑顔を見せる千世子に、アクアは引き気味で返答した。
「いや…けっこうです」
(マジで何飼ってるんだ…)
些か気になる部屋があったアクアだったが、先ほど話していた話に戻すことにした。
「…それはそうと意外だな。てっきりもうアイとはお互い合ってると思ってた」
「不思議だよね。事務所同じなのに会えなかったの」
すると何を思ったのか、アクアは自慢のするかのように身を乗り出して千世子に質問した。
「で、どうだ。生アイは!」
「可愛いと思うよ…だk「でしょ!やっぱり千代子もそう思うだろ!
うへへ…やっぱアイ可愛すぎ‼︎」……」
急にテンションのボルテージを上げたアクアを些か冷ややかな目で見つめる千世子。だが流石は役者、目が冷たくとも表情筋までは変える事なく千世子の顔は真顔であった。
千世子は棚の上にある時計の時刻を見る…23時32分。この年の子供なら本来起きてはいけない時間帯である。ゆっくりとアクアの方に顔を向けると未だに身体をクネクネと、気持ち悪い動きをしながらアクアが悶えていたのだ。千世子は少しその様子にため息を吐き、アクアに話しかけた。
「アクア君、変な妄想に浸るのも良いけど。そろそろ寝ないと明日に響くよ?ドームで倒れたら応援どころじゃないよ」
千世子の声が届いたのだろう。アクアは気味の悪い動きをやめ、素に戻った。そして口を開き、言葉を発した。
「たしかに……それもそうだな。
まだまだ、アイの事を語りたいけど…時間も時間だしな。
千世子も早めに寝ろよ。おやすみ」
「うん、おやすみ。アクア君」
▼
星野家一行が千世子の家に来て、零時をとうに回った頃。
不意に幼女が映画が映る液晶から目を離し、後ろに振り向き廊下の角を睨みつけて言葉を発した。
「先程から私のこと見てて楽しいですか。アイさん?」
そう幼女が言い放つと、廊下の角からアイが姿を現した。
「あちゃー、バレちゃったか」
アイはウィンクをしながら幼女の元に近づくそして口を開こうとした瞬間。アイよりも先に幼女が口を開いた。
「偽らなくても良いよ。
私も貴方と同じだから」
「あはは…一体どこが同じなのかな?」
幼女の言葉に少しアイは動揺を見せた。だがその動揺もすぐ引っ込み、今度はアイが質問を投げかけるのだった。その問いに幼女が答える。
「どこが同じか…そうだね。
簡単に言うなら『仮面』」
「仮面?」
「うん、仮面。
自分を偽るための仮面」
幼女は一息ついて続けて語り出した。
「アイさん、その下にあるかおはどんな顔なの?」
アイは自身を見つめる幼い女児の目に尋常じゃない恐怖を感じた。それは自身を喰らい尽くそうと言わんばかりの化け物。纏う雰囲気からは、今から殺されるのではないかと思わせる程。
「あはは、ごめんね。
私、明日早いからもう寝なきゃ。
お部屋貸してくれてありがとね」
早口で言い終え一歩後ろに下がり、今日はもう寝て、明日に備えようと思考し、貸してもらった部屋に戻ろうとした。薄暗い廊下を抜けて、扉に手をかけたその刹那。
───ああ、腹が立つ
───ああ、この怒り、
どうしてくれよう
幼女の声に振り返ったアイは自身の目を疑った。その理由はこの年の女の子がしていい顔ではなかったからである。
目が離せない。無意識に息を殺してまで、呼吸一つ、瞬き一つができない。何が原因で
まさに神に命を握られている感覚。
全ての怒りを凝縮したそれ表情にアイは戦慄した。
そんな様子のアイのことなどお構いなしに、幼女はアイに質問を投げかけた。
「ねえ、アイさん。
貴方は何でそんなに怒って…いや、悲しんでいるの?」
※おまけ
アイ「アクア、ルビー起こしてあげて。そろそろ着くから」
ルビー「ぴ〜す〜」
アクア「無理。もう何したって起きないよコイツ。それより、いつ免許取ったの?」
アイ「気になる?でも内緒!」
アクア「内緒かー…なら仕方ないか」
ルビー「す〜ぴ〜」
千世子の家兼、斉藤ご夫婦の仮の家に無事着いた星野家であった。
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全く話が進まない。だけど次の話からかなり話を進める予定。それとここだけの話、次の話はアイ視点から始まります。
多分、明日の21時には投稿すると思います。
していなかったら察して下さい。先に謝っておきます…すみません。