情熱と結果は比例しない。
それでも貴方に努力という才能が有るのならば結果は如何であれ、人は成長する───
第七話 天使と天使?
───『“ヒトリニサセネーヨ!”』
───『“お前゛の人生は真っ暗闇だ!”』
───『“それでも光はあるから…っ!”』
暗い部屋の中、千世子は『今日あま』の最終回を視聴していた。無意識に千世子は「アクア君、やる気になったんだ」と、ポツリと呟いた。その声が聞こえたのだろう。この部屋の主、五反田が千世子に話かけた。
「今週の『今日あま』観てるのか?」
スマホの画面に映る動画を止め、千世子は五反田に顔を向け「うん」と、一言呟くとまた動画を再生し始めた。そんな千世子にお構いなしに五反田は口を開いた。
「早熟のやつ、最近まで役者なんかやんねーよとか言っていたんだがな───
五反田が話を継続させる気だと察した千世子はもう一度動画を止め、五反田の話を聞く体勢をとった。
───くくっ。…一体何があったんだかな」
「嬉しそうだね。カントク」
「まぁな。
早熟が役者やってくれねーとアイツとの映画撮れねーからな」
五反田が発した“アイツとの映画”と言う言葉に千世子はピクリと反応した。
「アイツとの映画?」
「ああ」
「へぇ…ねぇ、今度はどんな映画撮るのカントク?」
千世子は不敵な笑みを浮かべながら五反田を見据えた。そんな千世子を見ながら五反田は答えた。
「ソレはまだ言えねーが、百城…お前も出すつもりだからな。
それまでトップの地位……守れよ?」
「誰に言ってるの?当たり前だよ」
五反田の挑発的な言葉に千世子は不適な笑みを浮かべながらそう返答した。そんな千世子を満足そうに五反田は見据えながら、とある人物を思い浮かべ口を開いた。
「…ソレはそうと、まずは早熟を早く成長させねぇとな」
「急いでも意味ないと思うけどね」
「そうも言ってられねぇんだよ」
「ふぅん… カントクらしくないよ。変な焦り方してる」
「うるせぇ。
時間がないから仕方ないんだよ」
すると噂をするとなんとやら───
──ガチャ。
今まさに話の中心人物であった星野アクアマリンが姿を現したのである。そして何を思ったのか、千世子と五反田はアクアを見つめながら目を細めた。
「…………なんだよ」
「「なんでも?」」
「気になるだろ。言えよ」
「「いや」」
「……」
見事なまでにシンクロする千世子と五反田を見ながらアクアは不思議と殺意がみなぎるのを感じた。だがその殺意を向けるものなどなく、ただ一言「なんなんだよ」と、呟く事しか出来ないアクアであった。
▼
あれから少し時が経ち、ここ陽東高校に無事に入学を果たした星野兄妹は正門の前に立っていた。
「お兄ちゃん!」
「どうした?」
「ふふっ!なんでもない!」
「……は?」
元気なルビーと気だるそうなアクア。
そんな二人に近づく影が一つ。
「無事に入学できたみたいね」
そう星野兄妹に話しかけたのは赤みがかった黒髪、あどけない童顔、華奢な体格の少女、有馬かなである。いつにも増してドヤ顔が決まって憎たらしいが、もし星野兄妹が有馬かなのファンだったのなら、とてもチャーミングに見えたのだろう。だが現実は悲しいかな、アクアとルビーにとって今の有馬かなは、その辺に落ちている石ころと同一であった。
「ルビー。あんまりはしゃぐなよ」
「ちょ──「お兄ちゃん!私ももう高校生だよ!
そんな幼稚園児じゃないんだからはしゃいだりなんかしないよ!」…」
「どうだかな」
有馬かななど眼中に無いほど二人は二人だけの世界に入っていた。
「無視すんな!コラー!」
有馬かなの大声でやっと気づいたのだろう。アクアは「ん?ああ…居たのか。有馬」と、声を洩らした。その声に有馬かなは嬉しそうに反応したのは言うまでも無い。
「全く…!あんた達、仲が良いのは良いけど此処だとかなり目立つわよ」
「知ってる」
「じゃあ、尚更──「俺がルビーと一緒に居て話してれば、ルビーに変な虫がつかないだろ?」…」
「シスコン…キモ!!!」
有馬かなのアクアへの罵倒が迸る。だがそんな有馬の攻撃はアクアに通用することはなかった。
「ところで…」
「なんだ?」
「百城千世子はどうしたのよ」
「千世子?ああ……、千世子なら別の高校だぞ」
「え…?」
「知らなかったのか?てっきり有馬と千世子は同じ歳だし、お互い知ってると思ってた。千世子、思いの外有馬こと気にしてるしな」
「それマジ?」とアクアに有馬は告げる。有馬の質問にアクアは頷いた。その頃、アクアと有馬かなの会話を聞きながらルビーは、そこらかしこにいる美男美女に目を向けていた。
そんなルビーの姿が印象的に見えたのだろう。艶のある長い黒髪を手で押さえ、近づいてくる少女が一人。
「こんにちは?」
声をかけられたルビーはその瞬間、固まってしまった。いつも騒がしいはずのルビーが微動だにしない事に疑問を抱いたアクアは振り返る。
そこに居たのは今や百城千世子と並ぶ程のマルチタレント、不知火フリルであった。最近巷では百城千世子と不知火フリルのどちらが天使として相応しいかと言う謎の論争が起こっているらしい。
不知火フリルを見た瞬間、有馬かなは「げっ…!」と、声を洩らした。それもそのはず、普段のフリルならこのような場所に居て良い人材でないのだから。
「あ、あんた。なんでこんなとこにいるのよ!」
「居てはダメだった?」
「いや…別に……」
「それに私…新入生なんですけど」
「あ、……そうなの」
また二人、気まずい空気に包まれたのであった。そんな雰囲気の中、元気な声が響き渡った。
「ホンモノだ〜!!!」
その声を発したのは、つい先ほどまでフリルに声をかけられて固まっていた張本人、星野ルビーであった。こんな時でさえただ純粋にキラキラと目を輝かせられるところもルビーの長所である。
そんなルビーの様子をみてアクアは一つの答えに辿りついた。思いついたら即行動。
「あの不知火さん」
「何かしら」
「ウチの妹があんたと仲良くなりたいみたいなんだ。良かったら仲良くしてくれないか?」
「別に構わないわ。
…あ、貴方『今日あま』に出てた人」
「知ってるのか?」
「ええ、それに貴方… 千世子ちゃんと同じ事務所だしね」
「それ、関係あるか?」
「ある。私は千世子ちゃんと同じ空気、同じ景色、同じ空間に存在できるだけで満足」
その瞬間、フリルの発言にとある事察したアクアであった。
朝の出来事である。いつものように朝を迎えたアクアはスマホに手を伸ばし時間を確認すると千世子から連絡が来ていた。連絡の内容には可愛いスタンプと共に〈多分、面白い女の子が一人居ると思うからよろしくね。アクアちゃん〉と、書かれていた。
その時は意味が分からなかったアクアだったが、今この瞬間に“不知火フリル”と言う狂人に出会って確信した。間違いない… 千世子が言っていた面白い女の子は間違いなく“こいつ”だ、と。
「そう言う訳だから、千世子ちゃんはどこ?」
「不知火さん…」
「何?」
「千世子から何も聞いてないのか?」
「何を?」
「言いにくいんだが……、千世子の通ってる高校此処じゃないぞ」
ピシリと音が聞こえるのではないかと思う程、石のように固まるフリル。今のフリルは誰がどう見ても“天使”とは程遠かった。
「おーい。大丈夫か?」
アクアの呼びかけに微動だにしない不知火フリル。
「ダメね。完全にショートしてるわ」
「だな。行くぞルビー」
「えー!もうちょっと不知火フリルとお話したい!」
「やめとけ。今は何話しても聞こえないからな。
それにそろそろ自分たちの教室に向かった方がいいだろ」
「それもそっか」
※おまけ
フリル「ねぇ、千世子ちゃん」
千世子「うん?どうしたの不知火さん」
フリル「千世子ちゃんって呼んで良い?」
千世子「もう呼んでるね」
フリル「ねぇ、千世子ちゃん」
千世子「……、どうしたの不知火さん」
フリル「千世子ちゃんは何処の高校に通ってるの?」
千世子「…あs」
フリル「?」
千世子「よ、ヨウトウコウコウだよ…」
フリル「そう…!
これからが楽しみね。千世子ちゃん」
千世子「……そうだね」
────────────────────────
納得のいく文を作り出すって難しい。ただそう思います。もし宜しければ、感想や評価を頂けると励みになりますので、どうぞよろしくお願いします。