ホロライブのスタッフを辞めて、にじさんじのスタッフになるお話   作:主義

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ついに?

「相羽さんってすごいですね」

 

 

「そ、そんなことないよ…」

 

 

「いや、凄すぎますよ。相羽さんの身体能力がすごいことは分かっていたつもりなんですが、まさかここまですごいとは思っていなかったです」

 

 

「そんなに褒めてもなにもでないよ~」

 

相羽さんと収録をご一緒する機会は何度かありましたが、今まではトークメインのもので相羽さんの身体能力を見る機会というのがなかったんですよね。だから、相羽さんの身体能力をこの目で目にするのは今回が初めてだった。

 

 

「こんなに身体能力がすごい人って世の中にいるんですね」

 

 

「も~~スタッフさんってば褒めすぎですよ。私はただ出来ることをしただけですし、結果的に全て出来なかったです」

 

 

「いや、全て出来ちゃったらおかしいんですって」

 

今回の企画は相羽さんの身体能力を測るようなもので常人というか、普通のサラリーマンではクリアできないようなものを用意した。僕も最初にこの企画会議に参加した時は「下手したら全てクリアできないってこともあり得るなぁ」とか思っていたんですけどね。

 

結果は八割できてた。この人って本当に同じ人間かなぁとちょっと疑問に思ってしまったぐらい。

 

 

「やっぱり相羽さんはすごくて、憧れますね」

 

 

「え~私はスタッフさんの方がすごいと思いますよ」

 

 

「全然ですよ。相羽さんに比べたら」

 

 

「だめですよ、スタッフさん!」

 

 

「え、なにがですか?」

 

 

「そうやって自分を卑下してしまうのはダメです。スタッフさんはすごいですし、私に出来ないことをやっているところは尊敬します。だからそうやって自分を卑下しないでください」

 

確かに言われてみれば、自分のことを卑下することはある。でも、やっぱりそれはこの仕事に就くようになって周りのすごさに圧倒されるようになったから。自分に出来ないことを軽々にやっている姿がすごすぎて、自分なんて本当にちっぽけだと思うようになってしまった。

 

 

でも、相羽さんが言うようにこれは止めた方がいいですね。あんまり自分を落とし過ぎると相手が気を遣ってしまうでしょうし。

 

 

「そうですね。これから気を付けます」

 

 

「そうです!!スタッフさんがすごいんですから、もっと自分に自信を持ってください!」

 

 

「…そうですかね…」

 

 

「そうです!!スタッフさんが自分のことをどう想っているのか分かりませんが、少なくとも私はスタッフさんのことを素敵な人だと思ってますよ。このにじさんじの重要な人ですし」

 

 

「あ、ありがとうございます」

 

誰かにここまで直接的な言葉で言われるのは…初めてかもしれない。やっぱり自分ってだめな人間なのかなぁって思ったりもしますけど、やっぱりお世辞でも自分はここに居ていいと言われるのは嬉しい。

 

 

 

そして相羽さんとちょっとお話をしてから僕たちは別れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

事務所の廊下を歩きながらあることを思い出した。

 

「そう言えば、今日は戌亥さんがライブをするみたいな話をしていましたね」

 

あんまり詳細については知らないんですが、ゲストを呼ぶような話は聞いた。戌亥さんだと『さんばか』の方とか『Nornis』の方とかな。

 

もう仕事は終わりますし、ちょっと見に行っても大丈夫ですよね。

 

 

 

 

 

そして僕は戌亥さんのライブが行われるであろう、スタジオに行く。そしてライブが近くなっていることもあって慌ただしい。スタッフさんが慌ただしく、あちらへこちらへと歩き回っている。

 

「さすがにちょっと迷惑になりたくないですし、退散しましょうか」

 

立ち去ろうと踵を返したのと同時に…僕は脳がショートしてしまいそうになった。だって僕の目の前には…綺麗な青髪で透き通るような瞳の星街すいせいさんが立っていた。

 

 

「え…ほ、ほしまちすいせいさん…?」

 

 

「…………」

 

星街さんも僕がこんなところにいるとは思っていなかったのでかなり驚いている様子。

 

 

「…お、おひさしぶりですね」

 

すると急に星街さんは僕へと抱き着いて来て、体勢を崩して僕は床に倒れた。背中がすごい痛いし、星街さんの体重も重なってそれなりに重い。でも、こんなことを口に出したら星街さんに刺されるかもしれない。

 

 

「ほ、ほしまちさん…どうしたんですか?」

 

 

「…なぁんで!」

 

 

「え?」

 

 

「なんですいちゃんのことを置いてどっかに行っちゃうの!?」

 

星街さんは僕の胸板にうずめいていた顔を上げてくれたお陰でやっと……星街さんの顔が露わになった。でも、その星街さんの顔は目に涙を浮かべて、今まで見たこともないような顔をしていた。

 

それだけでも星街さんが本気で僕のことを心配してくれていたんだと思う。もちろん、辞表を出しておいたけど、お別れの挨拶もしてなかったですし、星街さんからすれば勝手に居なくなった人と思ってもおかしくない。

 

 

「ごめんなさい。ちょっと事情がありまして…」

 

 

「…ごめんじゃすまないよ。すいちゃんがどれだけキミのことを心配していたんだと思う?」

 

 

「本当にすいません。でも、僕もさすがに命の危険を感じたので」

 

こんなことを言ったら言い訳になってしまうかもしれないけど、僕もホロライブにすっとスタッフとして勤める気ではいた。でも、それがどうしても困難な状況になってしまった。だから僕はホロライブを辞めて、にじさんじに入った。

 

 

「え、そんな奴がいるんだったらすいちゃんがやるよ。教えて」

 

もう星街さんの目が今にも人を殺してしまいそうなほどに冷たい。

 

 

「教えませんし、そんな怖い目をしちゃったら星街さんの可愛い顔がもったいないですよ」

 

 

「教えてよ。絶対、社員さんに迷惑が掛からないようにやってくるからさ」

 

 

「だめですよ。僕は星街さんには普通にアイドルをして欲しいので」

 

それにそう簡単に収まるような話でもないんですよね。僕がホロライブを辞めたのは。

 

 

そしてそれから星街さんが立ち上がるまでずっとこの状態が続いた。心配になって見に来てくれた、戌亥さんから「なにこれ?」と言われてしまったが、戌亥さんのお陰でこちらとしては助かった。このままだとずっと星街さんは僕の上からどいてくれる感じがなかったですし。

 

 

「それにしてもすいちゃんが探しとる相手がスタッフはんだとは思わなかった」

 

 

「うん。私もとこちゃんが話している人が社員さんだとは思わなかったよ」

 

どうやらお二人共、僕のお話をしていたようだ。僕ってそんな話題になるようなことを起こしたこともないんですけどね。

 

 

「あの、星街さんはなんで僕の腕を抱きしめているの?」

 

 

「だって折角、会えたんだもん。どこかに行かれたらやだもん」

 

 

「いや、行かないですって」

 

 

「信じられない」

 

どうたら星街さんの中で僕の信用は地にまで落ちた感じかな。

 

 

「じゃあ…手を繋ぐぐらいで許してくれませんか?」

 

さすがにこのまま腕に抱き着かれていると歩きずら過ぎますし。

 

 

 

星街さんは数秒だけ考える素振りを見せて納得してくれたようで、手を繋ぐことになった。

 

「社員さんの手ってあったかいね」

 

 

「そうですかね?」

 

 

「うん!!あったかい」

 

どうやら星街さんは満足してくれているようだ。それからしばらくは放してくれなかったが、やっと他のスタッフの方に呼ばれて離れてくれた。

 

 

「それにしてもホンマに愛されとるね」

 

 

「…そうですね。あれだけ僕のことを必要にしてくれるのはとても嬉しいですね」

 

 

「まあ、それもこれもスタッフはんの人柄やな。あそこまで、すいちゃんが心酔しとるのはスタッフはんだけやろし」

 

そこまで星街さんに信用されるようなことをした覚えはないんですけどね。事務所でも普通に話していたぐらいですし。

 

 

「あそこまで人を魅了する力を持っとるとホストでもやったらぼろ儲けでけるんやない?」

 

戌亥さんは普通の顔ですごい提案してきますね。

 

 

「僕にホストなんて無理ですね。天変地異が起こったとしてもね」

 

 

「そうかな?やってみなくちゃ分かれへん気がするけど」

 

 

「いや、無理ですって」

 

そんな話をその後も繰り広げて…星街さんが帰って来るまでずっとしていた。

 

 

 

それからは星街さんと手を繋ぎながら開演の時間まで待った。

 

 

 

 

――――――――――――――

 

 

僕は星街さんと戌亥さんが舞台へと向かっていく姿を見送ってから喫煙室に行った。タバコを一服しながら、あの時のことを思い出す。

 

 

 

僕がホロライブにまだ勤めていた頃。家に一枚の手紙が送られてきた。そしてその中には『お前を許さない。オレのアイドルを奪い取ったお前を許さない』とだけ書かれていた。差出人は分からないものの、この内容からしてホロライブのファンの方が一番可能性が高い。

 

 

別にこれがホロライブを辞める理由になったわけではないんです。これも一つの原因の一つだった。

 

それ以外にもある方が僕から離れなくなってしまって、そのタレントさんのお仕事にまで影響が出てしまったり。案件で僕の話をして盛り上がってしまったりと本当に数えれば色々とある。

 

 

 

そして最終的に僕は辞めるという決断をした。たぶん、僕がこのホロライブにいたら悪くなる。そして一番損害なく問題を除去する方法は僕が辞めることだと思ったのだ。

 

 




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