ホロライブのスタッフを辞めて、にじさんじのスタッフになるお話   作:主義

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ライバーからの相談

僕はただのスタッフであってそれ以上でもそれ以下でもない。そして僕の仕事は色々と回っているので一つの固定の仕事という感じではない。

 

 

 

そして僕の仕事の中には普通のスタッフが絶対にしないであろうことまで含まれている。その一つとして挙げられるのが『タレントのメンタルを保つ』こと。これはマネージャーさんとかのお仕事じゃないのかなぁと思いつつも言われた仕事はやるしかないですけどね。

でも急にそんなことを言われてもどうすればいいのか分からず、まずは全体のメッセージを送れるところに『悩み事やメンタル的に弱っている時は話し相手になるのでここに連絡してください』と送ることにした。そこには僕の仕事用のメールアドレスを貼っておくことにした。

 

 

仕事が終わる数分前に一件のメールが送られてきた。それはあるライバーさんからで今から会えるか?という感じの連絡だった。ちょっと見たい番組があったんだけどさすがにタレントさんから連絡が来ているのに断る訳にもいかないので肯定的な返事を送ることにした。

 

 

 

 

 

僕は仕事を終わらせて外に出ると…昼間とは比べ物にならないぐらいに寒くなってきていた。もう時期的にはクリスマスまで一か月を切っているし。これからはもっと寒くなるのかなぁなんて考えながら待ち合わせの場所まで足を進める。

 

待ち合わせの場所に着くとそこにはもういた。

 

「お待たせしてすいません」

 

 

「あ、大丈夫ですよ。鏑木の方こそ急に呼び出しちゃってすいません」

 

 

「いえこれも僕のお仕事ですから。ライバーさんの精神を支えるのも」

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

「さすがに外は寒いのでどこかのお店に入りますか?」

 

 

「そうですね」

 

僕と鏑木さんは近くの個室があるお店に入ることにした。ライバーさんと会う時はやっぱり個室がないと怖い。変なところを取られたりするとライバーさんのこれからの活動に大きな影響を与えかねない。それだけはスタッフとしてしっかりと配慮していないといけない。

 

 

 

 

お店に入って注文を済ませて改めて鏑木さんと向かい合う。鏑木さんと話すのだって二回目ぐらい。一回目は挨拶程度だったから話すのはほぼ初めてに近い。僕だって少し緊張するんだから鏑木さんの方はもっと緊張しているに違いない。ここは上手く緊張を緩和させるようなトークをしないと。

 

「鏑木さんって好きなゲームとかあるんですか?」

 

鏑木さんは少し考える素振りを見せた後に答えてくれた。

 

 

「あんまりこれといって得意なゲームはないかもしれないです」

 

 

「そうなんですね」

 

この話題は続きそうにないので次の話題に変えることにした。

 

 

「Idiosの皆さんはとても仲が良さそうですよね」

 

全員と関わりはないんですが、前に現場でIdiosの皆さんで話しているところを見掛けたことはあるんです。その時の印象としてはとても仲の良さそうだった。

 

 

「そうですね。仲はいいです」

 

 

「じゃあ特に仲の良い方ってどなたなんですか?」

 

 

「…特にと言われる難しいですけど。今回、スタッフさんに連絡したのは石神が言っていたからなんです」

 

 

「え、石神さんですか?」

 

 

「うん。ちょっと悩んでいることがあるみたいな話を石神にしたら「スタッフさんだったらどんな悩みも解決してくれる」って言ってたんです。だから鏑木も連絡したんです」

 

石神さんはなんでそんなに過大評価しているんですか。数週間前に石神さんも鏑木さんと同じように悩みがあるようで相談にのったことがあった。僕としてはあんまり解決の糸口のようなことしか言えなかった気がする。でも鏑木さんの話を聞く限りはそれなりに好評のようだ。それならよかったかもしれない。

 

 

「石神さんがそんなことを…」

 

 

「石神があんな風に褒めるのを初めて聞いたんです。だからスタッフさんなら鏑木の悩みも解決してくれるかなと思ったんです!」

 

まあ同期の人がそんな風に言っていたら信じちゃうよね。現実はそんなに大したことは出来ないのに。

 

 

「なるべく期待に添えるように頑張りますけどあんまり期待しないで待っていてくださいね」

 

絶対に解決できるぐらいの意気込みだとさすがに困りますし。僕は別にカウンセラーというわけでもないので。

 

 

「それで鏑木さんのお話を聞いてもいいですか?」

 

 

「うん」

 

 

「鏑木はどんな風にこれからのライバー生活をやっていけばいいですか!?」

 

 

「…もうちょっと小刻みにお願いします」

 

でも鏑木さんのような相談はないわけではない。やっぱりライバーの方々は自分の方向性について迷うことも多い。自分がやりたい方向性と視聴者が望んでいるものが違うと余計にその狭間で苦しむことになる。自分はライバーではないのでそういう悩みを完全に理解するのは難しいけど相談にのることはできる。そしてなるべく本人が納得できるようなことをアドバイスはするものの、やっぱり人は誰かに悩みを聞いて欲しいという気持ちも大きいから聞いてもらうだけで心が軽くなってどうにかなったライバーの方もいた。

 

 

 

それから鏑木さんに詳細のことを聞くと…今の自分は本当になりたかった自分なのかという悩みだった。最初に目指してこうなろうと思った自分と今の自分の矛盾。たぶんそこで鏑木さんは苦しんでいるんだと思う。

 

「鏑木さんはどうなりたいんですか?」

 

 

「…たくさん企画とかやったり、あっと驚くようなことをして、皆のことを楽しませたい!」

 

 

「そうですか。鏑木さんは思う通りにしてみるのもいいかもしれないですね」

 

今の鏑木さんも企画とかもやっているし、皆のことを楽しませているとは思うんですけど。でも鏑木さんの心の中には不安が大半を占めてしまっている。

 

 

「鏑木さんのリスナーの方はとても優しい方ですし、鏑木さんのことが大好きだと思うのでどんな風な鏑木さんも受け入れてくれると思いますよ」

 

 

「そ、そうですかね?」

 

 

「そうですよ。それに鏑木さんはとても魅力的な方ですから自信を持ってください」

 

 

「…そうかな」

 

こういう時は自身を取り戻させてあげればそこまで問題にならない。それに人間が生きていれば何度かネガティブな気分に落ちる時はあるし、そういう時は自信を取り戻させてあげるようなことを言ってあげることが大切。

 

 

「まだ鏑木さんの全てを知っているとは言えませんし、こんな風に二人で食事をするのは初めてです。でも一つだけ確信していることはあるんです」

 

 

「確信?」

 

 

「はい。鏑木さんはとても良い方で人を魅了できることもできると」

 

どのライバーさんもやっぱりその人の人間性に触れる度に全然違うと思わされる。それぞれ似たところもありながらやっぱり本質のところでは違う。同じ優しい人間でも根本が違うし、笑いのセンスに溢れた人でもやっぱり違う。

 

 

「鏑木さんは鏑木さんにしか出せないものです。他の誰が鏑木さんの真似をしたとしても鏑木さんにはなれません。だから自分自身にもっと自信をもって頑張ってみてください」

 

僕の言葉なんかがどれだけ鏑木さんに届くかは分からないけど僕は鏑木さんにしっかりと伝えないといけない。

 

 

「なんか不思議。スタッフさんに言われるとなんか不思議な力が湧くような感覚があるんだよな」

 

 

「僕にそんな特別な力はないです。ただ鏑木さんに伝えたいだけで」

 

 

「…スタッフさんがたくさんのライバーさんに好かれる理由が分かった気がします!」

 

 

「好かれていませんよ。ただちょっと信用されているぐらいです」

 

 

「謙遜しなくてもいいのに」

 

 

「謙遜じゃありませんよ。事実を話しただけです」

 

 

「そんなことないと思いますけど」

 

でも今回の目的の鏑木さんの悩みを少しでも解決するのは達成できたかな。少しでも前を向いてライバー活動が出来るようになってくれれば僕が相談にのった意味もありますしね。

それにライバー活動だけが全てではないですから。他の道だってありますし。

 

 

「鏑木、頑張ってみます!」

 

 

「その意気です。頑張ってください」

 

そしてその後は二人で食事を楽しんでライバーさんのお話などで盛り上がった。

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

事務所

 

「あくあ様はスバルと一緒に行かなくて良かったの?」

 

 

「う、うん」

 

 

「でもあくあ様はスタッフ様のことをとっても好いていた印象があるのだけど」

 

 

「もちろんスタッフさんのことは大好き!この気持ちは変わらないけど…もしかしたら、あてぃしとかの所為でスタッフさんがどこかに行っちゃったのかもしれないし」

 

 

「そんなことはないと思うけど」

 

 

「そうじゃなきゃ、あのスタッフさんが急に仕事を辞めるなんて考えられないもん」

 

 

「…でもあくあ様の言う通りであのスタッフ様が辞めるなんて…よっぽどのことがあったのかも」

 

 

「うん…」

 

 

 




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