ホロライブのスタッフを辞めて、にじさんじのスタッフになるお話 作:主義
誕生日は一年に一度しか訪れない大切な行事。そして自分の誕生日とかは別に気にしたことはなかったですがタレントさんや同僚の誕生日に関しては覚えておかなくちゃいけないのでスケジュール帳に書き込んでいる。さすがに一緒に仕事をしている人たちの誕生日ぐらいはしっかりと覚えておかないといけないですし。
そして特にタレントさんの人数は多いので毎日誕生日という月もある。それでも一応欠かさずにメッセージなどは送っていたりする。
それだけだったら問題はないんですが少し前に特によくお酒を飲みに行ったりするライバーさんに誕生日プレゼントを贈ってしまった。
これが全ての始まり。
どういう訳か、その情報が他のライバーさんに知れ渡ってしまって特に笹木さんと椎名さんが自分たちの時には何もなかったという感じのことを言われてしまった。そしてこれも僕が不用意に誕生日プレゼントなどを渡してしまったことで招いてしまったことなのでその批判は甘んじて受け入れるつもり。
一応そのお詫びとして遅れてしまいましたが誕生日プレゼントを渡すことにした。でもさすがに全員というわけにもいかないのである程度交流が会って話す人に限定させてしまう。これは申し訳ないけど、さすがに全員となると僕の貯金が吹き飛ぶようなことになりかねないので。
笹木さんと椎名さんは確実としてそれ以外にも数人をピックアップした。
でも、やっぱり異性の欲しいものとかも分からないですし、同性だとしても完全に把握しているわけでもない。
だから前にロケでご一緒になった『エデン組』の方々に貰って嬉しいものとかを聞いたんですよね。レインさんからは女性ものを他の四人からは男性が喜びそうなものを。そしてそれを参考にして誕生日プレゼントを買った。
今日は運がいい事に渡そうと思っている人たちは収録とか打ち合わせで事務所に来るらしい。なので家から全員分のプレゼントを渡そうと思っている。なるべくお帰りになる時に荷物じゃないようにしたい。だけどどうしても大きくなってしまっているものもある。その場合は袋に詰めて梱包をした。
まずはリゼさん。彼女には色々と迷惑を掛けてしまったこともあったので買うことにした。
「あ、リゼさん」
「社員さん、どうしたんですか?」
「あのこれをどうぞ」
僕はカバンからラッピングされた袋を取り出してリゼさんに渡した。
「…これは?」
「かなり遅くなってしまいましたが誕生日プレゼントです」
「わたしに?」
「はい。リゼさんに。リゼさんの望むようなものかは分かりませんが」
人にプレゼントを渡すのってこんなに悩むんだと改めて感じた。いらないものを渡したとしてもライバーさんは優しいので受け入れてくれるとは思うんですがどうせなら喜んで使ってくれるようなものをプレゼントとして渡したいですし。
「…あ、ありがとうございます!!」
「そこまで喜ばれるとちょっと心配になっちゃいますね」
「心配?」
「リゼさんが欲しいものか」
「それは何でもいいんです。私はスタッフさんが私のために選んでくれたということが嬉しいんです。このプレゼントを選ぶ時に私のことを少しでも思って選んでくれたものならどんなものでも私にとっては大切なものなんです」
「…ありがとうございます」
「いやいや、ありがとうございますは私のセリフですよ。本当にありがとうございます!」
リゼさんはやっぱり優しい人。僕が考えていたよりも優しくて…プレゼントをしたこっちの方が『ありがとうございます』と言ってしまった。
「スタッフさんって今日の夜って空いてますか?」
「夜ですか…?」
「はい」
「空いてはいますね。今日は仕事を終わったらそのまま自宅に直行するつもりだったので」
「じゃあ…その時間を私にくれませんか?」
「ど、どういうことですか?」
「こんなプレゼントを貰ったのに私はスタッフさんに何も出来ていないので」
「いや別に大丈夫ですよ。これは僕がただ上げただけなので」
「そういうわけにはいきません。なので今日二人でご飯いきませんか!?」
本当であれば断るべき。男性との飲み会と違うわけだし、ライバーの相談とかで男女どちらとも二人きりで食事に行ったりすることもありますが、それぐらいでプライベートでは異性とはいかないようにしている。
でも今のリゼさんは神様にお願いするように両手を合わせている。その必死さを見てしまうと断れないですね。
「いいですよ」
「私が迎えに来るのでスタッフさんは仕事が終わったら連絡してください」
「はい、分かりました」
そこで僕はリゼと別れた。僕は自分の収録現場に向かうことにした。
今回は運が良くて…自分がいる収録現場に誕生日プレゼントを渡したい人が多い。あとは昼休みを削って私に行けば全部私切るはず。
二人目は加賀美さん。加賀美さんとは社さん、花畑さんを入れた四人で飲みに行ったりと色々とお世話になった。それに加賀美さんに関してはちょうど今日が誕生日。
「加賀美さん、ちょっといいですか?」
「はい。大丈夫ですよ」
「あまり時間は取らせないので」
僕はスタジオの外に出てから加賀美さんにプレゼントを渡した。
「これは?」
「今日は加賀美さんの誕生日なのでプレゼントです」
「え、まじですか!?」
「まじです。加賀美さんとはいつも一緒に飲みに行ったりもしますし、色々と迷惑を掛けてしまっているので」
「いやそれを言ったら私の方がかなり迷惑を掛けてしまっていると思いますよ。かなり酔っ払って介抱してもらったことだってありますし」
そう言えばそんなこともありましたね。すごい時は僕以外の三人が酔っ払って歩行不能になってしまったので僕が車でそれぞれを送り届けた時もあった。本当にあの時は三人が車の中で吐かないかだけがずっと心配だった。新車ではないものの、さすがに吐かれたら後始末を含めて面倒なことになるので。
確かにそういうこともありました。でも加賀美さんには相談にのってもらっていることも多い。僕とほぼ同い年ぐらいなのに加賀美さんはしっかりしていてアドバイスを求めるといつも適切な答えを教えてくれる。
「そういうのも良い思い出ですよ。あと、これからもよろしくお願いしますの意味を込めてです」
「ありがとうございます!」
「一応、加賀美さんが喜びそうなものを選んだつもりですがあんまり期待しないでくださいね」
「何でも嬉しいですよ。もうこの年になってくると誕生日も少しずつ虚しくなってくるもんですが、今日は良い日になりそうです」
「それは良かったです」
そしてスタジオの中に戻った。
僕は午前中の仕事をこなして…次の人を探しに行く。
もうそろそろ打ち合わせが終わってもいい時間なんだけど。一応次の人に連絡をして食堂に来てもらうようにお願いした。肯定的な返事を帰って来たので待っていれば来てくれると思うんだけどな。
それから10分が経ってもその人が来てくれる感じはないし、連絡もない。もしかしたら忙しくて来れなくなったのかも。そろそろ昼休みが終わるので仕事に戻らないといけない。これ以上待っていても来てくれるか分かりませんし…帰るか。
そう思って立ち上がろうとしたタイミングで「ごめん~」という声が聞こえてきた。声の方に振り向くと全力疾走でこっちに走って来るパンダ服の少女の姿があった。
「ぜぇ…ぜぇ……お、おくれて…ごめん」
「大丈夫ですよ。それにしても笹木さんの方こそ大丈夫ですか?」
「う、うちはだいじょうぶやよ…」
「全然大丈夫そうに見えないですよ」
それから笹木さんが息を整えるまで待ってから誕生日プレゼントを渡した。
「くれるん?」
「はい。笹木さんへのプレゼントも渡してなかったので。いらなければ捨ててもらっても大丈夫ですよ」
「捨てるわけないやん。スタッフさんからプレゼントを貰えるような機会はそんなに多くないし。貴重なんよ!」
なんかさっきの疲れていた笹木さんとは思えないぐらいの熱量で話してくる。僕のプレゼントにそこまでに価値がないよ。
「そんなに期待しないでください。笹木さんの喜びそうなものを選びましたが、それでも女性のものはやっぱり難しいので」
「なんでもええんよ。どんなプレゼントをもらうよりも誰からプレゼントを貰う方が大事やから。ちょっと極端に言えば、スタッフさんからのものやったら駄菓子屋のお菓子でも折り紙の鶴でも嬉しいんよ。だってどんなものでもそれはスタッフさんから貰ったものやねんから」
いや僕の贈り物に価値はないですって。それは僕自身が一番よく分かっていますし。
「そうですか」
あと笹木さんに一つお願いをしてみることにした。
「あとこれを椎名さんに渡しておいてもらえませんか?」
「椎名に?」
「はい、僕はこの後仕事に戻らなくてはならないですし、椎名さんは打ち合わせが終わるとそのまんま帰っちゃうと思いますから」
別に生ものとかじゃないので今日中に渡さなくちゃいけないということはない。でもやっぱり笹木さんと同じ日に渡しておいた方が何も揉め事がおきないら。僕ごときのプレゼントで喧嘩をするようなことはないと思いますが、この二人だとそれもあり得ないことではないですから。
「そら止めておいた方がええとウチは思うで」
「え、なんでですか?」
「だって絶対に椎名が怒るに決まっとるもん」
「怒りますかね…」
「やっぱりスタッフさんからプレゼントを貰いたいやろ。だからウチがスタッフさんの代わりに渡しても不満そうな顔をするだけやと思いますよ」
「でも椎名さんの帰りは早いので僕が終わるまで待っていてもらうのは悪いですし」
「言えば絶対に椎名は待ってくれるとウチは思うけど」
「そうですかね」
「うん。ウチの方からスタッフさんが「仕事終わったら待合室で待って欲しい」って言うてたよと言うとくからさ」
「わかりました。でも、もし椎名さんが帰りたそうだったら無理に待ってもらわなくても大丈夫ですからね」
「はいはい」
そこで笹木さんは去っていこうとしたところで振り返って「プレゼントありがとうやで~」と言ってくれた。
笹木さんと別れてから僕は急いで仕事に向かった。ギリギリ間に合った。そこからは仕事をこなしていき、しばらくはプレゼントのことを考えることなく仕事に熱中していた。
ふっと気付いて時計を見た時には定時を指していた。もうちょっと仕事は余っているからやっていこうとは思うけど、もし椎名さんが待ってくれていたら申し訳ないでプレゼントを持って待合室に行くことにした。
待合室に行くと静かにソファーに座って待っている椎名さんの姿があった。僕としてはほとんどいないと思っていたのでまさかいるとは思いもしなかった。
「椎名さん」
「あ…スタッフさん!」
「待ってくれていたんですね。本当にありがとうございます」
「そりゃ待ちますよ」
「ありがとうございます。あの…どれくらい待っていてくれたんですか?」
「3時間ぐらいかな。もう2時ぐらいには打ち合わせは終わってたし」
「そんなに……。先に帰ってしまっても良かったのに」
「スタッフさんからプレゼントもらいたいから。そのためやったらこれぐらいの時間は待てる」
やっぱり笹木さんが『やっぱりスタッフさんからプレゼントを貰いたいやろ』って言ってたのは信じて良かった。人づてでもらうよりも面と向かって渡した方がいいみたい。
「それは有難いですけど、椎名さんは明日も朝から収録ですよね」
「あ、そうっすね」
「そうですよね。こんな時間まで待たせてしまってすいません」
「ええっすよ。あたしがただ待っとっただけやから。スタッフさんが気にする必要はない」
それから少し話して僕は椎名さんにプレゼントを渡した。僕が思っていたよりも椎名さんはとても喜んでくれて、こっちの方もちょっと気分が高揚してしまった。
「こっちこそ、そんなに喜んでくれてありがとうごさいます!」
「なんでプレゼントを渡した方が礼を言うてんの?」
「いや、僕もそんなに喜んでもらえると思っていなかったので」
「やっぱりスタッフさんにプレゼントを貰えると嬉しいから」
「それは良かったです」
僕のプレゼントで椎名さんが笑顔になってくれるならそれは有難いこと。
「それにしさ、あたし嬉しいんすよ」
「なにがですか?」
「はい。前に笹木と三人でお出掛けした時もそうやったけどスタッフさんがプレゼントを選ぶ時はむっちゃ悩んでくれとるのを知っとるんよ。このプレゼントを選ぶ時にあたしのことを考えてくれてんなぁ?」
「まあ、そうですね。それぞれに似合うものとかも全然違いますしね」
「それが嬉しいわ」
さすがに全員に同じプレゼントを渡す訳にもいかない。ライバーそれぞれに個性があるわけで性格も全然違う。なるべくそれぞれが欲しがりそうなものを選んだつもりではある…。
あんまり椎名さんのことを引き留めてしまうのも悪いのでここら辺に切り上げることにした。
「それじゃあ…今日は待たせてしまってすいませんでした!まあ明日!」
椎名さんに頭を下げて僕が立ち去ろうと踵を返したところで……袖を掴まれた。
「どうしたんですか?」
「スタッフさんってまだ仕事あるん?」
「ちょっとだけですけどありますね」
「どれくらいで終わりそう?」
「終わりそうではあるので三十分もすれば終わると思います」
「それぐらいの時間なら待つ」
「…いや、明日早い椎名さんをこれ以上足止めするのは悪いですし」
「それぐらい大丈夫。あたしは早起きが得意やねんから!こういう時ぐらいスタッフさんと一緒に帰ってみたいし!」
「でも、もし明日椎名さんが遅刻でもしたら僕はその収録の関係者に何と言えば……」
「大丈夫だって安心しぃ!それぐらいで何かが変わることはないって。遅刻する時は遅刻するもん!」
最終的に僕は椎名さんに押し切られる形で一緒に帰ることになってしまったのだった。
他の人たちは明日以降に渡すことにした。
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侍と掃除屋
風真は社員さんの見かけた。あの姿はたぶん…社員さんだったと思う。断言とまではいかないけどかなり可能性は高いでござる。すぐに尾行に開始した。でも混雑していたこともあって社員さんのことを見失ってしまったでござる。
普通であればここで『Holox』の皆に報告するでござるが…今日の風真は悩んでいた。
するとそんなところに――――――――――
「ばあ!」
「ひゃ……さ、さかまた…」
「いろはちゃん、ひゃって…」
「も~~驚かせるのは止めるでござる!」
「まぁまぁ…それでいろはちゃんはどんな考え事をしていたの?」
「か、かんがえ事なんかしていないでござるよ。ただ社員さんが居なかったからアジトに帰ろうと思っていただけで」
「はいはい、嘘は付かなくていいからね~」
沙花叉は子供をあやすときに使うような声で話してくる。
「べつにウソなんかついていないもん~~」
「は~い、そうですね。いろはちゃんは正しいですよ」
それから風真は必至に頑張って隠し通そうとするものの、沙花叉にそれを通じず話してしまったのだった。
感想があれば。
主人公は誰かと結ばれて欲しいですか?
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結ばれて欲しい
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結ばれないで欲しい