ホロライブのスタッフを辞めて、にじさんじのスタッフになるお話   作:主義

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スタッフに見下されたい人

 

月ノ美兎は考えていた。どうやればスタッフさんに『見下して』もらえるのかということを。普通に過ごしていれば考えることもないようなこと。だけど月ノ美兎がそんなことになってしまったのは…数週間前に遡る。数週間前にある企画があった。それは緑仙と鈴木勝が企画したクイズ大会。別に特段変わったことはなかったのだがこれの優勝賞品であるものがあった。それはただのUSB。そのUSBにはスタッフが収録させられた罵倒ボイスが入っていて月ノ美兎は見事クイズ大会で優勝を収めて手に入れてしまった。そして聞いたらハマってしまって今に至るということ。

 

「さすがにスタッフさんに直接罵倒して欲しいって言っても難しいだろうしな~」

 

緑仙さんに話を聞いた限りだとかなりお願いして取ってもらったって言ってたし。簡単にやってくれるとは思わない。だけど私の諦めの悪さは随一。それに手に入らないものこそ手に入った時の喜びが何倍にもなるんだし。

 

それから私は頭をひねる。どんなことをすればスタッフさんは罵倒をしてくれるのか。これは予想以上に難しくてどれだけ頭を絞っても答えが出ない。

 

 

「美兎ちゃん~」

 

その声が聞こえてきたのと同時に視線を上げるとそこにはひまちゃんがいた。

 

 

「なんか考え事?」

 

 

「うん。ちょっと…」

 

このまま一人で考えていても答えに至るとは限らない。それならひまちゃんに相談して少しでも可能性を上げた方がいいかもしれない。

 

 

「ひまちゃんってスタッフさんのこと知ってる?」

 

 

「もちろん知ってるよ。ちょっと前に皆で後を付けたもん」

 

 

「後を付けた?」

 

 

「うん!」

 

ひまちゃんが何を言っているのか分からないけど知っているなら好都合だ。

 

 

「引かないで欲しいんだけど私はスタッフさんに罵倒されたい!」

 

私がそう宣言するとひまちゃんはすぐに混乱してしまった。まあその反応は予想通り。逆に簡単に受け入れられてもそれはそれでちょっと怖いし。もしかしたら同じ趣味を持っている奴なのかと。

 

 

「…みとちゃん…」

 

 

「ちょっと少しずつ後ずらないで!」

 

 

「ひまは美兎ちゃんがそういう趣味を持っていても大丈夫だよ…」

 

 

「い、いや違うんだけど違くないけど。ちょっと待って」

 

それから後ずさるひまちゃんの腕を掴んで必死に引き留める。そして詳細についてなるべく詳しく話す。なんで私がこんなことを言っているのか、そして今の私の望みを。

 

一通り聞き終わるとひまちゃんは少し考えるような素振りを見せた。

 

 

「スタッフさんに罵倒されるってそんなにいいの?ただ嫌な事をずっと言われているだけだよ」

 

 

「それがいいんですよ。ひまちゃんもあれを聞いてみれば分かると思いますよ。普段のスタッフさんはもちろん罵倒をしたりするタイプに見えないじゃないですか」

 

 

「そうだね。スタッフさんって言ったらやっぱり優しくて何でも聞いてくれるっていうイメージだもん」

 

 

「そのスタッフさんが私のために罵倒してくれるんですよ。とってもいいの」

 

 

「そ、そっかぁ…」

 

ひまちゃんの顔が全てを物語っている気がする。今にも引きつりそうな顔。何でも受け入れてくれるひまちゃんがこんな風になるのは本当に珍しい気がする。

 

 

「でも…美兎ちゃんがそこまで言うならひまも聞いてみたいかも」

 

 

「お、乗り気ですね」

 

 

「ただ誰かに嫌な事を言われるだけなのに、美兎ちゃんはとっても言って欲しそうだし」

 

 

「そうですよ。ひまちゃんもスタッフさんに言ってもらえれば私の気持ちが分かると思いますよ」

 

それからひまちゃんと色々と話した。会話内容なはどうすればスタッフさんに言ってもらえるか。これが最初で最後の一番難関。これをクリアするにはどうすればいいんだろうか…。

 

 

最終的な結果として『やっぱり必死に頼めばどうにかなるんじゃね』ということになった。これが一番単純で可能性が高い。変に計画して色々と試してもスタッフさん辺りだとたぶん成功するのは難しい。それなら普通にお願いした方がいいはず。

 

 

 

―――――――――――――

 

 

「スタッフさん」

 

 

「はい、なんですか?」

 

 

「罵倒してください!!」

 

ここで回りくどく言うよりも直球で言った方がいい。スタッフさんはこの人なに言っているだろうという顔をしている。人がキョトンとしている時の顔ってこんな感じなんだ。

 

 

「ど、どういうことですか?」

 

 

「罵倒してください!!」

 

 

「…どういうことですか?」

 

 

「私は罵倒して欲しいんです!!そしてひまちゃんも!」

 

ずっとスタッフさんはキョトンとしているのでさすがに少し説明することにした。スタッフさんの罵倒ボイスを聞いてしまってその虜になってしまったことを。

 

 

「…あ、あのボイスを聞いたんですか?」

 

 

「はい。もちろん!あの優勝賞品はとってもよくてずっと聞いてました!!」

 

私の答えを聞いたスタッフさんは少しずつ顔が赤くなっていく。そんなスタッフさんの様子はとっても可愛い。

 

 

「…そ、そうですか……。それは見苦しいものを聞かせてしまいましたね」

 

 

「いえ、私としてはとっても堪能できました!」

 

 

「…元々、緑仙さんにお願いをされた時に断るつもりだったのですがどうしてもやってもらわないといけないと粘られるので最終的に首を縦に振ってしまったんですよね。後で自分でも聞きましたが本当に拙くて酷いものでしたよ」

 

たぶん、それは自分のボイスを自分で聞くからだからだと思う。私だってたまにボイスを販売するから自分でも聞くこともあるけど…最初の頃はちょっときつかった。でもリスナーさんとかに「良かった」とか言ってもらえて少しずつ自信が付いて来たんだもん。

 

 

「スタッフさんは上手いですよ。だから自身を持ってください」

 

 

「そんなことないと思いますけど」

 

スタッフさんに対していかにあなたのボイスが良いのかをどんどん力説していく。

 

 

「じゃあ…月ノさんはあのボイスを聞いて罵倒にハマってしまったということですか?」

 

 

「はい」

 

 

「それで本間さんはそんな月ノさんに聞いて罵倒を聞きたいと」

 

 

「うん!」

 

さすがに困っている感じだけど……スタッフさんは押せばどうにかなるともう分かってる。

 

 

「お願いします!!」

 

 

「…で、でも…タレントさんに罵倒するなんて…」

 

 

「私がいいと言っていますし。あくまで個人的にお願いするだけですから大丈夫ですよ!」

 

それから私は長くスタッフさんと交渉を重ねて最終的に了解を得ることに成功した。かなり渋々な感じだったけどスタッフさんの性格からして粘れば絶対にOKしてくれるとは思っていた。まあさすがに面と向かっての罵倒に関してはOKは出なくて、後でデータで送ると言われてしまった。

 

 

それから数日後にデータが送られてきた。今回のはすっごく興奮するぐらいの出来でスタッフさんはこれで生きてけるんじゃないかと思っちゃうほど。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――

 

 

 

事務所の待合室

 

 

 

「わためぇもあいたい」

 

 

「わためまでそんなことを言いだすの?」

 

 

「会えたら会いたいよ」

 

 

「…もうたくさん。少し前はすいちゃんに付き合わされて、最近はかなたんに付き合わされてもう社員さんのことはお腹一杯」

 

 

「トワ、少し休んだ方がいいと思うよ」

 

 

「…できならそうしたいよ。すいちゃんの方は大丈夫なんだけど他の子たちがね。早く社員さんが見つかってくれないともう本当にヤバいかも」

 

 

「…本当にどこにいるんだろう」

 

 

「早く出てきて欲しい…」

 

 

 




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