ホロライブのスタッフを辞めて、にじさんじのスタッフになるお話   作:主義

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兄と呼ばれたくないスタッフと呼びたい霊能力者

僕には兄妹はいない。一人っ子なので兄妹がいる人はとても羨ましいと感じるのはないものねだりなんだと思う。

 

 

でも…最近僕のことを『兄さん』と呼んでくる人がいる。

 

 

「兄さん」

 

 

「…本当にそう呼ぶのは勘弁して欲しい」

 

 

「え~え~ええやん。あたしからすればスタッフさんは兄さんみたいやで」

 

 

「いやいや、全然違いますって。僕と椎名さんの関係はスタッフとタレントっていう関係ですよ」

 

最近の椎名さんの中で僕のを『兄さん』と呼ぶのが流行っているようだ。でも、それはさすがにマズイ。

 

本当の兄でもなければ血縁関係者でもないのに、そんな風に呼ばれていると僕が呼ばせているように他の人に映ってしまう。

 

 

「あたしにとっては…スタッフさんなんてもう家族と同じよ」

 

 

「そんなことはないと思いますけど…」

 

 

「それにそれぐらい信頼しとるってことよ」

 

タレントさんに信頼してもらっているんであれば悪い気はしないですね。

 

 

「そう思ってくださっているんであれば嬉しいです」

 

 

「まじで兄さんが来て、半年しか経ってへんのが不思議やで」

 

 

「不思議?」

 

 

「うん、もっと前からおるような感じやし。あたしはもちろん、他のライバーからもめっちゃの信頼されてるやん」

 

 

「そんなことは…」

 

他のスタッフさんと同じ位の信用度だと思う。でも、この半年という短い期間でそれだけ信頼を勝ち取れたんだとすれば十分な気がする。人との信頼関係は一朝一夕ですぐに出来るものではない。

 

 

それは前のホロライブでも同じようなことを感じた。やっぱり一緒に仕事をしていく上で信頼は少しずつ生まれてくるもの。そして少しずつ積み重ねていって最終的に『この人なら信用できる』と思って頂けたんであれば十分。

 

 

そんなことを考えていると…リリムさんがきた。

 

「おはようございます、リリムさん」

 

 

「おはようございます」

 

もっと眠そうかと思ったけど、予想以上に意識ははっきりしていた。

 

 

「え、しいしいのお兄さんだったの!?」

 

 

「ちが「そうなんよ。皆に隠しとったけど、本当はうちの兄なんよ」」

 

椎名さんは勝手に僕を兄ということにして話をした。リリムさんは目を丸くして驚きながら、僕と椎名さんのことを交互に見ている。

 

 

「そ、そうなの…。全然知らなかった」

 

 

「違いますからね。リリムさん、信じないでください」

 

 

「…え、う、うそなの?」

 

 

「椎名さんの嘘ですよ。僕たちが兄妹って言うにしては似てなさすぎですし」

 

それに誰がどう見ても僕と椎名さんが兄妹だったらもっと早く言ってますよ。別に隠す必要もないですし。

 

 

「バラすの早ない?」

 

 

「ですがここでリリムさんに誤解をされたまま訂正が出来なかったら、リリムさんがその情報を誰かに広がってしまって色々と面倒なことになるのは目に見えているじゃないですか。だから、そういうことが起きないように早いうちにバラしたんです」

 

 

「別にあたしとスタッフさんが兄妹って広まっても問題なくない?」

 

 

「いや問題しかありませんよ。本当は兄妹じゃないのに」

 

適当なことを言いふらされるとこれからの僕にも椎名さんにも影響が出かねない。さすがに信じるような人はいないとは思いますが。

 

 

「そう言えば…今日は早いですね」

 

 

「リリムだって本当はもうちょっと家でのんびりしてたかったよ」

 

 

「じゃあなんでですか?」

 

 

「それをスタッフさんがいいますか……」

 

リリムさんは一度ため息を付いた。

 

 

「昨日、スタッフさんがリリムに何て言ったか覚えていますか?」

 

 

「覚えてますよ。たしか「明日の収録は朝早いので遅刻しないように気を付けてくださいね。もし、遅れちゃったらちょっとだけ怒るかもしれないですよ」だったと思いますよ」

 

 

「…怖いじゃん。いつも優しいスタッフさんに怒られたらちょっと立ち直れない気がするからさ。さすがに今日は遅れないようにいつもより早く来たんですよ」

 

 

「あ、すいません。別に焦らせるつもりはなかったんですが、リリムさんに遅刻して欲しくなくて」

 

僕としてはそんなに強い言葉を言っているつもりはなかったんですが、リリムさんが少しでも『怖い』と感じたんであればこれからは色々と気を付けないといけない。やっぱり受け取り手がどんな風に感じるかが重要ですし。

 

 

「うん、スタッフさんがいいむのことを考えてくれているのは分かってるよ」

 

リリムさんは笑顔でそう言ってくれたので僕としてはよかった。

 

 

「それでなんでしいしいはスタッフさんの妹を名乗ってるの?」

 

 

「だって妹っていいやん」

 

 

「そうかな?」

 

 

「うん。だってスタッフさんが兄さんよ。どんなことをしても絶対に許してくれそうだし、どんなものも絶対に買ってくれそうだもん」

 

 

「え…そういう理由でスタッフさんの妹になりたかったの!?」

 

 

「まぁ…それもあるけど、やっぱり落ち着くからかなぁ」

 

 

「落ち着く?」

 

 

「うん、スタッフさんといると心が落ち着くんよ。近くにいるだけでこんな風になるのは初めての経験であたしもちょっと驚いてんけどさ。もし、お兄ちゃんが出来るとしたらスタッフさんがいいなぁって思ったから『兄さん』って呼んでるんよ」

 

 

「へぇ~でも、しいしいの気持ちも理解できるかも」

 

 

「リリムも?」

 

 

「いいむもたまにスタッフさんのことを『お兄ちゃん』って呼んじゃうことあるもん」

 

本当にあれに関してはすぐに直して欲しい。元々リリムさんがたまに『お兄ちゃん』と呼んできていることは知っていたけど、それがまさか案件先との打ち合わせで出るとは思わなかった。あの時は必至に弁明したけど、このままだともっとヤバいところで『お兄ちゃん』と呼ばれることになってしまうかもしれないからしっかりと直させないと。

 

 

「それに関しては本当に直して欲しいです」

 

 

「え、でも、なんか突発に出ちゃうんだもん」

 

 

「いや、出ないようにしてくださいよ。それに僕はリリムさんのお兄ちゃんでもなければ、兄みたいなことはしてませんよ」

 

 

「面倒見とかいいし、優しいし……あとはなんか存在が『お兄ちゃん』なの」

 

存在とは……。

 

 

「それわかるわ!!なんかもう生きているだけで『お兄ちゃん』なんよ!」

 

この二人は一体なにを言いたいのだろうか。

 

 

それからも二人はずっと僕が『お兄ちゃん』にしか見えないという話を全員が揃うまでしていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――

 

ホロライブ事務所のオフィス

 

 

 

 

 

定時を過ぎて、夜が更けていくにつれて少しずつ席を立って帰っていく。私も今日は早く仕事が終わったし、すぐにでも帰ろうかなと思っていると自然と……あるところに目が入った。

 

 

そこでは…『彼女』が仕事をしていた。その目にはクマのようなものがあって、寝不足だということを教えてくれる。

 

 

このままほっとくわけにもいかないので私は話し掛けに行くことにした。

 

 

「のどか」

 

 

「あ、えーちゃんさん」

 

 

「あんまり根を詰めすぎると体調を崩しちゃうよ」

 

 

「分かってます。でも今は何かをしてないと先輩のことを考えちゃいそうで」

 

 

「そっかぁ…」

 

先輩こと社員さん。社員さんがホロライブを辞めてから本当に色々とあった。元々人徳のある人で好かれやすい人なのは分かってたけど、まさかここまでとは思ってもいなかった。

 

 

「今は何かに夢中じゃないと…ずっと先輩のことを考えてしまうんです」

 

のどかは特に先輩のことを慕っていた。のどかが入社した時、最初に声を掛けてくれたのが先輩らしくて、仕事も手取り足取り教えたのも先輩。そうなるとやっぱり…特別な感情を抱いてしまっても仕方ない。慣れない環境で優しくされて、自分のために親身になってくれる人に惚れるなという方が難しいかもしれない。

 

 

「そっか。でも社員さんの所在は分からないんだよね」

 

 

「はい。ホロメンの皆さんも探しているようですが、まだ見つかったという話は聞いたことがないです」

 

正直、早く社員さんに戻ってきてもらわないと…のどかは持たないよ。

 

 

 

 




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