ホロライブのスタッフを辞めて、にじさんじのスタッフになるお話   作:主義

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【過去編】社員さんの一日『後編』

さくらさんとの話を終える頃には昼食タイムに突入していた。

 

 

 

僕はいつもコンビニで買ってきたものを食べるのでほとんどデスクにいる。それは今日も同じ。人によっては社員食堂や外に食べに行っている人もいる。

 

だけど、居はいつもと違うことがある。それは僕の右隣に天音さん、左隣に宝鐘さんという形で挟まれているということ。身動きが本当に取れない。

 

 

そして二人は僕のデスクの上にそれぞれのお弁当を広げている。

 

 

「ボク、社員さんのためにお弁当を作って来たんです!」

 

 

「それは態々、ありがとうございます」

 

 

「マリンもたくさんの時間を掛けて、社員さんのために作って来ました」

 

 

「本当にありがとうございます」

 

自分のためにお弁当を作ってきてくれたのは本当に有難い。

 

だが、普通に考えてただの社員にここまでするのかと思ってしまう。タレントさんたちの間でお弁当を作ってきたりすることは別に問題はないけど、それを僕に渡そうとするのは本当になぜなんだ。

 

 

作ってくれたものを無碍に扱うわけにもいかない。でも、これはちょっと距離感が近いのではないかと考えてしまう。自分も学生の頃は好きな人のためにお弁当を作っていったこともあったけど、それは相手に対して好意を抱いていていたからだ。好意を抱いているからこそ、お弁当を一緒に食べたりして楽しかったが…。

 

 

 

彼女たちが自分に対して恋愛的な感情を持っていることは百パーセント否定できるが、ある程度の信頼を得ていることは実感しているところもある。

 

そして信頼を得るようになれば一緒食事を取ることも別にないわけではないと思うし。

 

 

「ボクのお弁当を食べて」

 

 

「そう言ってくださるのであれば少しいただきましょうか」

 

 

「マリンのお弁当も食べてよ」

 

 

「はい、宝鐘さんがよろしいのであれば」

 

それから僕は天音さんと宝鐘さんの作ってくれたお弁当をどんどん食べていく。二人は僕が食べている姿をずっと見ているので、妙に緊張してしまって食べた気がしない。

 

 

「ボクのお弁当、美味しい?」

 

 

「美味しいですよ」

 

 

「マリンの弁当の方が美味しいよね?」

 

 

「宝鐘さんの弁当も美味しいですよ」

 

ここまで気まずい空気というのもそんなに体験できるようなものではない。

 

 

「天音さんは料理とかよくするんですか?」

 

 

「したりはするかな」

 

 

「そうなんですね」

 

すると宝鐘さんが僕に質問を投げかけてきた。

 

 

「社員さんはお料理ができる女性の方がいいですか?」

 

 

「…僕は別にお料理が出来るか、出来ないかをそこまで気にしませんね」

 

人には得意、不得意というものがあるもの。料理が得意じゃない人も得意な人もそれはその人の魅力の一つだと僕は考えている。

 

 

今度は天音さんが僕に質問を投げかけてきた。

 

 

「じゃあ、もし彼女を作るとしたらどっちがいいとかありますか?」

 

 

「う~ん。別にどちらでもいいですかね」

 

 

「作れる方じゃないの?」

 

 

「そうとも言えないですね。もし彼女を作るとしたら、僕はその人のことが大好きなので料理が出来る、出来ないは全然関係ないですね。その人のことが大好きなら料理は全然気にならないと思います」

 

 

「そっか。好きなった人がタイプみたいな話?」

 

 

「そうですね。そんな感じかもしれませんね」

 

料理ができる、できないで人を好きになったりすることはないですしね。

 

 

「ボク、もっと自分磨きがんばる!」

 

 

「マリンも振り向いてもらえるようにもっと頑張らないと!」

 

なぜかお二人はとても気合を入れているようだった。

 

そんな二人を横目に僕は二人が作ってくれたお弁当を食するのであった。

 

 

 

 

 

昼食タイムも終わって僕を含めて多くの人が仕事場に戻ることになった。仕事の進み具合としてはとても順調で予想以上にはかどっていて、このペースでいけば今日分の仕事は予想よりも早く終わるかな。

 

「社員さん」

 

 

「えーちゃんさん、どうしたんですか?」

 

 

「今のお仕事の進み具合ってどうですか?」

 

 

「かなり順調ですよ。なのでお手伝いであれば手伝えると思いますよ」

 

 

「いや、手伝いをお願いしたいわけではなくて」

 

え、てっきりお仕事を割り振られるのかと思っていた。

 

 

「では?」

 

 

「この後って予定ありますか?」

 

 

「ないですけど」

 

さくらさんの通話はあるけど…そんなに早く掛かってくることはないと思いますし。

 

 

「だったら今日は私たちとパーっと飲みに行きませんか?」

 

 

「飲みにですか?」

 

 

「はい!今まで私とのどかと社員さんで飲むことってなかったですよね」

 

 

「確かになかったですけど、春先さんはいいんですか?」

 

 

「のどかはOKって言ってましたよ。それに社員さんを誘おうって言いだしたのは彼女なんですよ」

 

もしかして、僕が孤立しないように誘ってくれたのかな。一応同僚の方たちとはそれなりに飲みに行ったりしているし、後輩に心配されるようなほどじゃないと思っていた。

 

だけど、春先さんの目から見たら…なんか一人に見えたのかも。

 

 

「そうなんですか。折角のお誘いですし、行きますよ」

 

 

「そうですか、それはよかった~」

 

えーちゃんさんは安堵すると春先さんのデスクのところまで行った。

 

 

「のどか、社員さん来てくれるって」

 

 

「ほ、ほんとですか!?」

 

なぜか春先さんは椅子を立ちあがって、こっちに小走りで来た。

 

 

「あ、はい。誘っていただいたので」

 

 

「め、めいわくじゃないですか?」

 

 

「全然です。逆に僕としては誘ってもらって嬉しいですよ」

 

同僚と飲む機会はあるけど、えーちゃんさんや春先さんみたいな人と飲むことはない。ほとんど同性と飲むだけで異性と飲むこともないし、無理に誘うとも思わないし。

 

 

「社員さんはなにか食べたいものとかありますか?」

 

 

「食べたいものは…ないですね。えーちゃんさんや春先さんが食べたいところでいいですよ」

 

 

 

それからも春先さんは僕が思っていたよりも積極的に質問をしてきた。僕はそれに答えつつ、えーちゃんさんはそんな春先さんはを優しい眼差しで見守っていた。




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