ホロライブのスタッフを辞めて、にじさんじのスタッフになるお話 作:主義
お客さんのことを見守ることやトラブルが起こっていないかを確認するためにお客さんに混ざって、歩いている。お客さんの中にはにじさんじのグッズを持っている人など様々な人がいる。
「それにしても賑わっているなぁ…」
ガーデンステージで開会式が行われているだけ。これから少しずつ色んな場所で企画だったり、ライブだったりが行われる予定になっているのだ。にじさんじ好きの人たちであれば必ず楽しんで貰えるようなものになっていると断言できる。
そんなことを考えながらステージなどを歩いて回って、また裏方の人が多くいる場所に戻って来ると目の前から剣持さんが歩いてきた。
「あれ…社員さんってレッドクラスだったんですか?」
「あ、これには深い事情がありまして」
僕はこれまでのことをなるべく手短にして剣持さんに伝えた。
「相変わらず、スタッフさんは色々と苦労してますね」
「…なにか打開策とかあったりしますか?」
「ないですね。それにこれはライバーに気に入られ過ぎているスタッフさんの使命と言ってもいいかもしれない」
「使命だなんて…」
「それでは僕からもスタッフさんに一つ贈呈しましょう」
「贈呈…?」
一瞬、最悪なものが頭によぎったが、そんなことはないと頭に言い聞かせた。
「はい、これをどうぞ」
剣持さんは満面の笑みで取り出したのはブルーのフェス用Tシャツ。今、一番貰いたくないものと言ってもいいかもしれない。
「…ま、まじですか…」
「まじです。そして僕もスタッフさんにブルーTシャツを着て欲しいのでよろしくお願いしますね」
「…剣持さんっていじわるじゃないですか?」
「そんなことないですよ。僕はただスタッフさんにはブルーのTシャツの方が似合うんじゃないかと思って、渡しただけで決して困っているスタッフさんを見たいとかそういうのじゃないですよ」
もう答え言ってるし、僕のことを困らせても何もないというのに…。
それにしてもこれで三つのTシャツですか。
「…そ、そうです…か…。剣持さんって僕が違う色のTシャツとかを見たら嫌ですか?」
「まぁ、真面目に答えると嫌ではないですよ。でも、ただ僕の想いは届かなかったんだって思うだけです」
「……」
それはもう嫌だって言っているようなもんですよ。それにそんなことを言われた後でブルーのTシャツを着ていなかったら完全に僕は…悪者じゃないですか。
「はぁ…ありがたく頂きます」
ここで受け取らないのもさすがに失礼だし。
「ありがとうございます」
剣持さんの笑顔って……本当に狂気じみていると思ってしまった。
その後、剣持さんから貰ったブルーTシャツを手に展示を見て回ったりしていると…知らない二人組に話し掛けられた。
「ちょっといいですか?」
「はい、大丈夫ですよ」
「お兄さんもお客さん?」
「いえ…「そうに決まってるじゃん!」」
僕が答えるよりも前にもう一人の女性が答えてしまった。それの所為で僕の声が完全にかき消された。
「お兄さんっていま一人?」
「今は一人です。ちょっと見舞っているところですので」
「なにお兄さんの喋り方って変じゃね」
「そうですかね?元々こういう喋り方なのであんまり疑問はなかったのですが」
でも、口調というのは家族からもおかしいと言われる。敬語を使うのに慣れ過ぎて、日常生活でも敬語を使うようになってしまった。その方が自分としても楽だから。
「ねぇ…暇なら私たちと一緒に回らない?ちょうど連れが来れなくなっちゃってさ」
「…さすがにご遠慮させてもらいます。お誘い頂いたのは本当に有難いのですが、今はやらなくてはならないこともありまして」
一応、あんまり仕事はないと言っても仕事中にお客さんと展示をぐるぐる回っているのは絶対にアウトだろう。
「え~いいじゃん~~」
「一緒に回ろうよ~」
この二人の誘いをどう断ろうかと頭を抱えていると…聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「お~い…そこの男女~」
「スタッフさんに手を出しちゃだめよ~」
また聞き覚えのある声が。
「アンちゃん……の…スタッフさんが……」
そこでどこか聞こえて来るのかがやっとわかった。それはカフェステージの会場からだ。
でも…自分に呼びかけられているはずだがないと信じたい。
「そこの男女だよ~」
僕は自分のことかという意味を込めて人差し指で自分をさした。
「そうよ。あんたよ」
なんでこの人たちはステージで僕に言及しているのだろうか。それともお話していたのが、とてもうるさすぎたのかも。
「その人はスタッフさんやから、誘っちゃダメよ」
そして僕は二人に対して謝罪してから別れた。あの二人には本当に申し訳ない。僕の所為で晒上げられるような形になってしまったのが…。
Fesから帰る時に警備員に僕の名前を言ってくれたら…対応するとだけ伝えておいた。どこまで対応できるか分からないけど、僕と話していなかったらあんな風な感じではならなかったと思うし。
――――――――――――――
そしてそれから少し経って僕は鏑木さんと会った。
「鏑木は知りました。スタッフさんってモテるんです」
「なんで急にそんなことを?」
「さっき…アンジュ先輩たちが「スタッフさんが可愛い女の子と話してたぁ~」って泣きそうな声で言ってましたよ」
「そ、それは誤解ですって。普通に話し掛けられたので少し話していただけですって」
「え~ほんとですか?」
「疑わないでくださいよ。さすがにこんな一目の付くようなところでナンパみたいなことはしませんよ」
「じゃあ、一目がないところだったらスタッフさんはナンパとかするんですか?」
「しませんよ。少なくとも僕はそういうのが得意なタイプには見えないと思いますよ」
「たしかに鏑木が思うにスタッフさんはそういうことをするような人ではないと思いますけど…」
「そうです」
そんな話を鏑木さんとしているとイブラヒムさんがやってきた。
「本当にすごいっすね」
そのすごいが何を指しているのかはすぐに分かってしまった。
「…すごくないですよ。まだイベントは始まったばかりなのに…」
「でも、それもスタッフさんらしいですよ。どうせお客さんからナンパみたいなことをされたんすよね」
「ナンパかどうかは分かりませんが、一緒に回ってみたいみたいなお誘いはありましたよ」
「それは誰が聞いてもナンパっすよ」
「あ、あれが…そうなんですね」
「逆に今までなんだと思っていたんですか?」
「ただコミュニケーションン能力の高い人が適当に誘ってくれた感じですかね」
「それをナンパって言うんですよ」
「鏑木はここまで鈍感っていうか、何も知らない人を初めて見たかもしれない」
「そうだよね、スタッフさんの無知さは心配になるレベルだよ」
「そうですかね?」
一応、今まで普通に生きて来れるから大丈夫だとは思いますけど。そんなに心配されるようなことなのかなと個人的には疑問に感じる。
「僕ってかなり世間知らずですか?」
「どうだろう~俺的には別にそこまで世間知らずって感じはしないっすけど、なんというか人を疑ったことないんかなとは思いますね」
「イブラヒムさん、それ分かります。なんだろう、ずっと籠庭で過ごしてきたのかなぁって思っちゃす」
「…籠庭…」
久し振りにその言葉を聞いたかもしれない。昔はよく聞いたその単語も今では全然聞くことが無くなった。それは自分が少しは変われたということなのかも。
「まぁ…スタッフさんはもう少し人を疑うことを覚えた方がいいっすよ。人が良すぎるんよ」
「鏑木も同じことを思います」
「そ、そうですかね」
鏑木さんとイブラヒムさんからの忠告のようなものを聞いてから別れた。
本当に仕事という仕事はないんだよ。逆に僕がいることで邪魔になっていないかが本当に心配なぐらいに。
そんなことを考えながら歩いていると携帯に同僚から連絡が来た。
『今、会場に来てるん?』
「来てますよ」
「じゃあ、ちょっとSYMPHONIAの方手伝って欲しいんですけど」
「分かりました」
そして集合場所を聞いてから電話を切って、そこに向かおうと踵を返したタイミングで聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「あ、いたで!」」
「や、やっとみつけた…」
声のした方向に視線を向けるとそこにはリゼさんとアンジュさんがこちらに駆けてきていた。
「ど、どうされたんですか?アンュさんにリゼさん」
「な、なんで女の子と話していたの!?」
「あれは話し掛けられたので少し話していただけですよ」
リゼさんの問いに対して答えたものの、二人は僕の答えに納得していないようだった。
「ほんとに?」
「アンちゃんは怒らないから正直なことを言ってよ」
「正直に言ってますよ。ちょっとお話をしていただけです」
「…女の子とデートとかしていたんじゃ?」
「しませんって。プライベートで来ているなら未だしも仕事で来ているのにデートとかしませんよ」
「…で、でも…女の子と一緒に居たじゃん」
「いましたけど、それはただお話していただけですって」
そんなに親しく話しているように映ったのかな。僕としてはただ話していただけなんだけど…。
「ほんとに…ただ話していただけなんだよね。アンちゃんはスタッフさんのことを信じたい…」
「信じてくださいよ。本当にただ話していただけですから」
「わ、わかった。私も信じています」
僕ってそこまで信用なかったのかとちょっとがっかりしてしまった。仕事中にデートをするような人だと思われていたこと自体がかなしいし。
そしてリゼアンのお二人と別れると次の仕事場へと向かった。
感想があれば
主人公は誰かと結ばれて欲しいですか?
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結ばれて欲しい
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結ばれないで欲しい