ホロライブのスタッフを辞めて、にじさんじのスタッフになるお話 作:主義
しぐれ先生がうちに来てから、前にも増して連絡が来るようになった。先生もかなり忙しいはずなのによく連絡して来れるなぁとちょっと感心してしまう。
『しぐれうい』という人は今やイラストレーターというだけではなく、歌手としてライブをしたり、ゲーム配信をしたりと本当に多岐に渡す活動をしている。ここまで色んなことが出来るのも一つの才能だ…。やっぱり僕が彼女と初めて会った時と思ったのは正しかったのかもしれない……『天才』だと。
そして今日はそんなしぐれ先生から一緒に食事に行こうと誘われていたのだ。
にじFesも終わったのでやっと自由な時間が取れたので肯定的な返事を返した。
待ち合わせの場所の近辺に付くと…しぐれ先生が防寒着を着込んで立っていた。
「やっぱりあの頃と変わってないですね」
そして彼女を待たせるのも悪いので少し小走りで彼女の元へとかけていった。
「お待たせしてしまってすいません」
「あ、ほんとうですよ~こういうのは男の人が先に来ているものじゃないですか~~」
「それに関してはごめんなさい。ちょっと連絡はしましたけど、お仕事が長引いてしまって」
「まぁ~知ってましたけど」
「キミのスーツ姿って初めて見たかも」
「…そうかもしれませんね」
「すっごく似合ってるよ!」
「そ、それはありがとうございます」
スーツを誰かに褒められるのは本当に久し振りの感覚。成人式とかに両親から褒められて以来かも。
「普段は男の人を書くのって苦手なんですけど、あなただったら書ける気がしますね」
「そうですか…?」
「はい、やっぱりあなたのことはいつでも頭の中で考えているので」
「…それはありがとうございますと言った方がいいんですかね」
「はい!!私はいつでもスタッフさんのことを考えて、思い浮かべているんです。そんな人が他にいますか!?」
「まぁ…いないでしょうね。両親も今はそれぞれのことで忙しいでしょうから」
「え、ご両親に何かあったんですか?」
「離婚したらしいんです」
「え…すみません」
「いや、これは人に聞かれて困るような話ではないので」
しぐれ先生と両親は一度か二度会ったことがあったと思う。高校生時代に僕がしぐれ先生を連れてきた。そこで挨拶程度のことはしたというところまでは記憶している。
「ここで話すのもいいですけど、どこかのお店に入りましょうか」
「そうですね。お互いに話したいことはたくさんありますし」
そして僕としぐれ先生は近くの個室があるお店へと入って行くことにした。しぐれ先生もライバーさん並に人気な人なので、あんまり一目に付くようなところは避けるべきですし。
注文を済ませてからしぐれ先生の方に視線を移すとなぜか…笑顔だった。
「何かいいことでもあったんですか?」
「うん!」
「どんなことですか?」
「今です」
「今?」
「キミと面と向かってお話できるのはとっても楽しいですよ。昔に戻ったみたいで」
「しぐれ先生がそう感じてくれるのなら嬉しいです」
「あ、前に言ったよね。呼び方は?」
「しぐれさんですね」
「よろしい!本当は前みたいに『うい』って呼んで欲しいけど、譲歩してあげましょう」
「…すいませんね。仕事柄、あんまり砕けた口調になるといざという時にその呼び方をしてしまう可能性があるので」
あくまで僕としぐれさんは取引先なのだ。
「それは分かってるよ。私もあの時とは違ってイラストレーターとしてお金を貰っているしさ。でも、少しぐらいは昔に戻っても良いじゃん」
「それは僕に昔の口調に戻せと言っているんですか?」
「そう!前に会った時は断られちゃったけど、私は諦めてないよ」
「高校の頃の話し方はもう十年以上してませんよ。高校を卒業したと同時に今のような話し方に変わったので」
昔はもっと砕けてフランクだった。いや、これは良い言い方をし過ぎかな。もっと生意気な感じで中学生と高校生は本当に荒れてて、学校でも他の学校の生徒ともよく揉め事を起こしていた。
今の僕だけを知っているような人がそれを知ったら本当に驚くようなことばっかりしていた。今思い返してもあの頃の自分は『バカ』だと思うけど、当時はあれが一番カッコよくて、自分には才能があったと思っていたような時期。
「じゃあ、十年振りに戻そうよ~」
「それはだめです」
「今だけでいいよ。私とプライベートと話す時だけでいいから!おねがい!!!」
しぐれさんはなぜかそんなことで両手を合わせてお願いをしてくる。
「なんでそんなに昔の喋り方がいいんですか?」
「良いとかじゃないんだけど…久し振りに聞きたいなぁと思って」
今まで頑なに否定してきたけど、ここは個室で誰かに聞かれるようなことはない。それにしぐれさんにそこまでお願いされたら断るのも申し訳なくなってくるし。
「それじゃあ…いいですよ。少しだけですから」
「え、まじで!?」
「はい、ちょっとだけですよ」
「う、うん!!おねがい!!」
僕は一度深呼吸をしてからしぐれさんのことを見つめる。
「久しぶり、うい」
「す、すご!」
「なにがだ?」
「う、ううん。なんでもないよ。本当に久し振りだね」
「ああ、あの時は色々とお前に無理させて悪かったな」
「いいんだよ。私はあなたと一緒にいれただけで幸せでしたから」
「そう言ってくれるとこっちとしても有難いな。それにしてもお前はあんまり変わってねぇな」
「な、なにを~~」
「変わっているように見えねぇもん」
「変わってるでしょ!」
「いや、どう見ても変わっていないような気がするがな」
「はぁ?このセクシーなレディーになったのに気付かないとはあなたの目も節穴ですね?」
「いやいや、そうは見えないが。お前はあの頃と変わらずだ」
「そっちなんてただ身長が伸びただけの癖に…」
「伸びたな。もうういが小人に見えるぜ」
「あんまり私のことをバカにしていると後でキミのことを主人公にしたR18を書いてやるぞ!」
「それは別に脅しになってないと思うが……ってこんな感じですね」
久し振りにこの話し方をしたので少し疲れた。でも、目の前のしぐれさんは目を輝かせてくれているので、どうやら期待には添えたようでよかったかな。
「昔のあなたと話しているみたいで楽しかった」
「それは良かったです。今の僕を知っている人がこの話し方を聞いたら驚くんでしょうね」
「まぁ…そうだよね。あなたって最近は本当に丁寧な口調で話すことが多いもんね」
それからも久し振りにしぐれさんと僕は食事をしながら話をした。
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にじさんじのある日
「戌亥さんってお好きな食べ物とかありますか?」
「お芋系かな…」
「お芋系ですか…。分かりました!」
「どうしたん、そんなこと聞いて?」
「いや、戌亥さんの誕生日がそろそろなので贈り物の何か参考になればとお聞きしたんです」
「別に気とか遣わんくていいよ」
「気を遣っているわけではありませんよ。戌亥さんには僕がにじさんじに入社して間もない頃に色々と助けてもらいましたから」
「助けた覚えはないけど」
「それは戌亥さんが当たり前のように助けてくれたからです。だから覚えていないんです。でも、してもらった側は案外覚えているもんなので、しっかりと戌亥さんのお誕生日には感謝を伝えられるようなものを贈りたいんです」
「あたしはスタッフさんのその気持ちだけで十分嬉しいけど」
「しっかりと贈らせてもらうので…」
ある日のにじさんじの事務所ではこんな会話が繰り広げられていた。
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ホロライブにいた頃のお話③
「ラプラスさんは子ども扱いをして欲しいんですか?」
「な…なにを言っている?」
「え、子ども扱いをして欲しいと伺ったんですか?」
「それは誰が言っていた?」
「え…っと博衣さんと沙花叉さんですね」
「博士とインターンか、後であいつらにはしっかりと指導しておかないといけないな」
「あ、違ったんですか?」
「違うに決まっているだろ!どこに子ども扱いをして欲しい奴がいるんだよ!」
「え、そうなんですか。前に紫咲さんを子ども扱いをして欲しいと言われたことがあるんですけど」
「あの人ってそんな趣味あったの…」
ここでまた変な誤解を生まれたのだった。
感想があれば
主人公は誰かと結ばれて欲しいですか?
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結ばれて欲しい
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結ばれないで欲しい