別れ   作:主義

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『かけがえのない時間』


さくらみこ編

みこの側には…キミがいてくれないと…

 

――――――――

 

みこには…大切な人がいる。その人は名前も知らないような人で。一つだけ…本当なのはとっても優しいってこと。みこがどんなドジをしちゃっても笑ってくれるような人。

 

 

その人はいつも神社に通ってきている人。

 

 

「あ、やっぱり来てくれたんだねぇ!」

 

 

「はい、毎日これは欠かしてませんからね」

 

この人はもう覚えてくれないぐらい前からずっと神社に通い詰めている。みこは巫女さんだから知り合いになった。

 

 

「それにしても、巫女さんは寝坊ですか?」

 

 

「え、な、なぁんで…?」

 

 

「だって髪がボサボサですし、急いで身支度を整えたみたいな感じがしますしね。間違えていたら申し訳ないですけど」

 

 

「……ね、ねぼうしちゃった」

 

 

「いいんじゃないですか。それぐらいお疲れなんだと思いますよ」

 

 

「そ、そうだよね!」

 

この人が来てくれるだけでなんか落ち着けるんだよねぇ。みこは巫女だから…神様と人間の駆け足となるような存在であんまり人間とはお話しちゃダメなんだけど、この人とはお話したいと思っちゃう。別にお話がとっても面白いとかじゃなくて、この人という存在はいい。

 

 

「ぞれじゃあ…参拝させてもらいますね」

 

 

「うん!」

 

そして本殿に向かっていく姿をみこは見送る。

 

 

 

「お願い事なにしてるのかな」

 

前に一度だけ気になってそれを聞いた時があったけど、はぐらかされてしまって教えてもらえなかった。みこはとっても気になるんだけど…。さすがに無理矢理、聞くわけにはいかないし…。

 

 

 

 

数十分するとキミは戻ってきた。

 

「また明日も来てくれる?」

 

 

「来ますよ。このまま願いが叶うまでは欠かさず来るつもりなので」

 

 

「…そ、その…お願いは教えてくれないかなぁ~なんて」

 

 

「それは巫女さんのお願いでも難しいですね」

 

 

「そっかぁ…」

 

 

「でも、願いが叶ったら巫女さんにも言うのでそれまで待っていてください」

 

 

「わ、わかった!!みこもキミのお願いが叶うことをねがってる!」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

それからは有言実行でキミはずっとお参りにきてくれた。みこの方が寝坊しちゃって会えない人かあったりしたぐらい…。

 

 

 

 

 

だけど、ある日突然…来なくなった。最後に来た日もいつもと変わらない感じだったし、「明日も来ますね」と言っていたのに。

 

 

 

もしかしたら、お願い事が叶ってもう来なくなっただけかもしれない。それだとしたら巫女としては嬉しいけど、ちょっと寂しい。いつもお話をしてくれる人がいなくなっちゃうのは。みこは巫女だから、ここから離れられないんだよね。

 

時間はどんどん経っていって、キミが来なくなって1年が経っちゃった。それでも、みこはまだキミのことを忘れられなくて来ないかなぁと思ったりしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなある日にちょっと眠たくてうとうとしていると…誰かに肩を掴まれた。

 

「あ、はい!な、なぁんでぇすか!?」

 

 

「これを渡して欲しいと」

 

女性が取り出したのは茶封筒だった。

 

 

「こ、これは?」

 

問いかけても女性はなにも答えることがなく、ただ遠くを見つめているだけ。

 

 

 

 

 

開けるとそこには…『ありがとうございました。巫女さんのお陰で神社に行くのがとても楽しかったです。これからもお元気でいてください』と書かれていた。最初に読んだ時は誰だかすぐに分からなかったけど…だんだんその相手が分かって来た。

 

「これは…?」

 

 

「たぶん、あなたの考えている人がね、どうしてもあなたに渡して欲しいって言われてね」

 

 

「あの人は…?」

 

 

「死んじゃったよ。一カ月前にね。もう一年近くずっと病院暮らしでここ半年ぐらいは体も自由に動かせないぐらいだったんだけどね」

 

その言葉は……とても重くてみこには耐えられないぐらい。どこかで彼に何かあったんじゃないかと考える時はあった。でも、ただ仕事が忙しかったり、幸せになったから来なくなっただけだと考えるようにしていた。

 

 

 

 

 

それから巫女は子供みたいに泣いちゃって色々な人に迷惑を掛けちゃった。名前も知らないし、彼のことをすべて知っているわけでもない。でも、みこにとって彼はとっても素敵な人で…好きな人だった。みこなんかが好きになったって別に何もないし、結ばれないのは分かっていた。それでもこの想いにだけは嘘が付けなかった。

 

いつも笑顔でみこに話し掛けてくれる、キミが好きだった。

笑った時に口元を覆う素振りをする、キミが好きだった。

 

 

全てが好きだった。

 

 




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