吾輩のために……生きて。
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吾輩には理解者がいなかった。いつも一人で生きてきた。それを苦しいと感じたこともなければ…寂しいと感じたこともなかった。
だが、そんな吾輩にも初めて吾輩のことを認めてくれて、包み込んでくれる奴が現れた。吾輩はそんな奴を望んでいた訳でもないが、そいつといる時は吾輩は本当の意味で笑えた。近くに居て、あいつが笑っている姿を見るだけでも幸せになったのは初めての経験ですごく気持ち悪かったのを今でも覚えている。でも、そんな奴が近くいてくれて吾輩はとても助かったんだ。
吾輩にも帰る場所があるというだけでも…吾輩はとても嬉しいと感じた。どんなに苦しくても、吾輩のことを一番理解してくれている人が居てくれる。
そして吾輩は配信をするようになった。心に余裕が出来てきたこともあった。そして今ではホロライブという事務所に所属している。
前までは考えられなかったが、吾輩もあいつのお陰で助かった。だから、吾輩も誰かのそんな風になれたらいいと思って。
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「吾輩の誕生日!」
「そうだね。欲しい物とかあったりする?」
「う~~ん…ないな!」
「え、なにかないですか?ゲームとかでもいいですし、少しぐらい値が張る物であっても大丈夫ですよ」
「ない!」
「え…そうですか」
正直、吾輩はもう今の生活だけでいい。こんな風にお前と笑って過ごせるだけで『幸せ』なんだ……と言いたいんだが、言えるわけにもない。自分の気持ちを正直に伝えられたらもっと…吾輩のことをお前も可愛がってくれるかもしれないが、それをプライドが邪魔してどうしても無理だがな。
そんなに近くに居たのに吾輩はお前の異変に気付けなかった。お前は吾輩に心配させないように必死に隠していた。吾輩はお前のことなら何でも知っているという自負もあった。誰よりも近くで暮らしていて、誰よりも近くでお前のことを見ていたから。でも、吾輩はだめだ。お前の変化にも気付けず。
ある日、お前は倒れた。それまでも何か予兆のようなものはあったのかもしれないが、少なくとも吾輩の瞳にはいつものお前に映っていた。
すぐに病院で精密検査をすることになって、入院することになった。それからは忙しくて洋服などの用意や、勤めている会社に連絡をしたりと本当に目まぐるしく忙しかった。でも、それのお陰で色々と考えずに済んだ。
吾輩は依存していたのだと改めて感じた。自分で生活するようになって思った。あの人は仕事をしながらも家事をして、吾輩のことまで考えてくれていた。吾輩が真夜中まで配信をしていてもいつも何も言わずにいてくれて、吾輩のために色々とやってくれていた。
「吾輩が来てやったぞ~」
「…ありがとう」
「大丈夫か~?」
日に日に弱っている姿を見るのを辛いとは感じるが、それでも一番苦しんでいるのは吾輩じゃなくて…あなただから。だから、吾輩はどんなことがあったとしても笑顔なんだ。吾輩が辛い顔をしちゃったり、声色を変えたりすれば気を遣わせてしまうからな。
どんな時でも吾輩はいつも通り。
「吾輩がお見舞いに来てやっているんだから早く元気になれよ」
「うん。そうだね。あんまり心配を掛けるのは悪いしね。家のこともやってくれているらしいし」
「な、なんでそれを!?」
「看護婦さんが教えてくれたんですよ。「洗濯って大変すぎないか!」「どうやればクーラーのフィルターって掃除できるんだよ!」とかね」
「…別にただお前が居なくなってやる人がいないからやっているだけだし!」
「だから、ありがとう。元々、そんなにやるようなタイプじゃないし、家事だって苦手なタイプなのにそこまで頑張ってくれているんですから」
そう話している、お前はとても優しい笑みを浮かべている。
「そうだな!早く戻ってこないとお前の秘密の箱をあげるぞ!」
「い、いや、それだけは勘弁してくれませんかね」
「それなら早く退院しろよな!」
本当は「お前のことが心配だ」と言えればいいのかもしれないが、そんなことを言えるわけもない。変なプライドを持ってしまっているからな。
少しずつ悪化していく中でも退院することになった。それはあいつなりの決断だった。あいつが決断を下す、数日前に医者から吾輩に「もうそんなに長くない。もって一ヶ月」と言われた。だが、自然と信じられた。一番近くで見てきたからこそ病状が悪いのはすぐに分かった。それでもあいつが自宅で暮らすと言い出した時は驚かなかったと言えば嘘になる。
そして家での暮らしが始まって、いつもより笑顔を見せるようになった。ベッドから動くことはできなくて、ほぼ寝たきり状態。それでもこんな風に二人で家に居られるというのが嬉しかった。前のようには戻らないとしても……そう思えるから。
ついに来た。前の日は驚くぐらいに元気だった。もちろん、歩けたりするわけじゃなかったけど、それでも今までに比べれば格段と元気になっていた。だから、吾輩ももしかしたら大丈夫なんじゃないかという淡い期待のようなものを抱いてしまった。いつものように「お休み」と言って…吾輩はベッドに潜った。そして次の日に目覚めて…『おはよう』と言った時には息を引き取っていた。
とても安らかで目覚めるんじゃないかと思ってしまうほど。それぐらいに綺麗だった。
それからはお葬式のこととか遺品の整理とか忙しくて悲しむ暇がなかった。前と同じでそれが幸いして、吾輩はどうにか大丈夫だった。悲しみに浸っている時間がなかったことが。
でも、全てが終わるとやっぱり考える。それにあいつと一緒に住んでいた、この部屋がとても広く感じる。あいつと暮らしている時は全然そんなこと感じなかったのに。
「…ひろ」
思っていたことが口から言葉となって出てしまった。その声に反応してくれるような人はいないからひとり言。
「なんか…はぁ……めんど…」
それから、ラプラス・ダークネスは二度と配信をすることも…姿を現すこともなくなったという。
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