スバルは大好き。初めて先輩と出会った時から…スバルは先輩に全てを奪われた。視線も心も…。たぶん、これが属にいう『一目惚れ』ってやつだったんだ。
初めての経験過ぎてスバルはどうすれば分からなかった。
でもこのまま自分の気持ちを秘めているのもキツイから…先輩に自分の気持ちを伝えた。
「せんぱい…」
先輩は不思議そうな顔をしてスバルのことを見ている。
「す、すばる、せんぱいのこと…すきっす!!!」
今の先輩はどんな顔をしているのか分からない。だってスバルは地面しか見れない。今のスバルの顔はリンゴのように真っ赤で、爆発しちゃいそうだもん。
「ずっとせんぱいのことがすきっす!!せんぱいのことばっかりかんがえちゃってなにもできないんです…。それぐらいにすき」
こんなに誰かの事を考えるのは…初めての経験。それぐらいにスバルは先輩のことを好きになっちゃった。最初から好きだったけど、先輩について知っていくうちにどんどん先輩の沼に入っちゃった。先輩が一晩中、頭の中に居て眠れない日もあるぐらい。
「ありがとう。僕もスバルのことが好きだよ」
最初は先輩が答えてくれた言葉の意味が分からず、固まってしまった。
「え…ほんと…?」
「本当。僕もスバルのことが好きだよ」
「…まじ?」
「まじです」
そしてスバルと先輩は付き合うようになった。それからは毎日がカラフルで見える景色が変わった。今まで何とも思わなかったことも先輩が隣にいるだけで色鮮やかで楽しかった。
人って誰かのことを好きになるだけでこんなに変わるんだなと思った。
先輩は卒業すると大学に向かった。
それでも週に一度は必ず会ってデートをした。本当は毎日会いたいぐらいだけど、さすがにスバルはまだ高校生。
一年経ってスバルが学校を卒業すると同時に同棲することになった。最初は先輩と同じ部屋に住んでいることになればくて、ぎこちない感じだったけど慣れて来ると少しずつ幸せを実感してくる。大好きな人と同じ部屋に住んでて、同じ料理を食べて、同じお風呂に入る。一緒に住んでいれば当たり前のこと…でも、スバルにはどれもこれも初めてのことで嬉しかった。先輩と共有していること自体が嬉くて、笑みがこぼれる。
―――――――――
ある日、スバルは買い物に出た。
その時に見てしまった。先輩が女の人と一緒にいるところ。
先輩は「友達と遊んでくる」と言っていた。だからあの人は先輩の友達…。
だけどそれからはずっと先輩とあの女の人ばっかり考えちゃう。先輩が浮気なんかするわけないと何度も自分に言い聞かせる。先輩はスバルのことを愛してくれてる。
家に帰ると料理を作り初めて、先輩が帰って来る時間帯に出来上がるようにした。料理を作っている間もずっと先輩とあの人のことばっかり。浮気だとは思いたくない。
スバルのことをずっと愛してくれていると信じたい。
そんなことを考えていると鍵が開く音が聞こえて、玄関へと向かう。
「ただいま」
「…おかえり」
先輩はちょっとだけ香水の香りがしていた。やっぱりあの人と…。
「スバル、なにかあった?」
なるべくいつものスバルを演じていたつもり。だけどやっぱり分かられちゃう。
「先輩ってスバルのこと好き?」
「好きだよ」
「ほんとに?」
「本当ですよ。ボクはスバルさんのことが世界で一番好きだよ」
前までのスバルだったらその言葉を信じてあげられた。先輩はスバルのことだと思えた。でも、あれを見てしまってから先輩のことを疑ってしまう。
「じゃあ…今日ってなにしてたの?」
「今日は友達とちょっと出掛けてきたよ」
「それって…綺麗なロングヘアの女の人?」
そう聞くと先輩は明らかに動揺した。先輩はその時の感情が顔に出やすい性格なので…本当に分かりやすい。
「…スバル、見ちゃった。先輩がロングヘア―の女の人と一緒に買い物をしているのを」
「い、いや、あれは違くて「なにが違うの!先輩はスバルのことなんてもう好きじゃないんでしょ!?」
「そ、そんなことはないよ。僕は本当にスバルのことが好きだよ」
「…もう信じられないよ。先輩はスバルのことをもう好きじゃないんだね」
このままここにいても…きついだけ。今も泣いちゃいそう。
「ち、ちがうんだ。あれは…」
私は先輩の言い分を聞くこともなく、急いで家を出た。
外は寒かった。防寒具無しでいるには…少しキツイぐらいの寒さ。
「はぁ…せんぱい…」
今も先輩のことを考えちゃう。それぐらいにスバルは先輩のことが好き。
だけど…先輩は浮気をした。
スバルはなにも考えずに…走った。もう先輩のことを考えないでいいように…。これ以上、スバルの頭の中が先輩で埋め尽くされないように。
走った。
走った。
走った。
そしてそのまま交差点に出てしまった。
スバルの目に入って来たのは大型トラックがこっちに向かってくるところだった。
このままだったら…死んじゃう。
でも…もういいのかも。
先輩はスバルのことを好きじゃないんだ。
スバルに生きている意味なんて…もう…。
「スバル!!!!」
誰かの声が聞こえて来るのと同時に後ろから押されてスバルは前に倒れ込みそうになった。
でも後ろからけたたましいぐらいの音と共に鈍い音が聞こえてきた。
後ろを向くとそこには…血だまりが出来ていた。そしてその横に……先輩が倒れていた。
「え…せんぱい…」
すぐに駆け寄って揺らしても先輩は反応してくれない。なにも話さないし、微動だにしない。
「どうしたの、せんぱい、なんでうごかないの」
「な、なんで…すばるのために…」
それから少しして救急車に先輩は運ばれて行った。
その後、先輩の友達から先輩がスバルの誕生日プレゼントを必死に考えてくれたことを知った。
そしてスバルが見た、あの人も先輩の友達で女子の意見を聞きたくて、来てもらったらしい。
「あいつはいつもさ「スバルさんは可愛いんだよ。僕の彼女になってくれたのが不思議なくらいの良い子でさ、だから僕は彼女のことを失望させないように頑張るよ」って言ってたんだ」
その言葉を聞いた時に目から涙が出るのを止めることは出来なかった。スバルは子供のように泣いた。
スバルが全て悪い。
先輩が浮気なんかするわけないのに勘違いして…。
先輩を殺してしまった。
スバルが交差点に出なければ、先輩がスバルの代わりになることもなかった。
スバルが……ころしたんだ…。
―――――――――
「先輩、なに食べますか?」
「オムライスかぁ…」
「でも今、卵を切らしているんすよね」
「え…どうしてもオムライスが食べたいんすか?」
「仕方ないな。じゃあ…スバルが買ってくるから待ってて」
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