別れ   作:主義

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『キミを教えて…』


ときのそら編

私には代えがきかないような人。どんな人よりも私のことを見てくれて、私のことを理解してくれる人。

 

だから私もキミのことを理解している……つもりだった。

 

 

キミのことだったらどんなことでも知っていて、キミの気持ちなんてお見通しだと。

 

 

 

さすがにそれはちょっと言い過ぎな気もするけど、それぐらいキミのことを知っていると思ってた。

 

 

 

 

―――――――――――

 

私はカーテンの隙間から漏れ出て来る太陽の光で…起こされた。でもまだ目覚めてなくて目をこすりながら布団を出て、リビングへと向かう。

 

テーブルにはサランラップに包まれている朝食とメモ用紙にメッセージが書かれていた。

 

 

『温めて食べてください。今日も一日頑張ってくださいね』

 

 

 

 

 

「そっかぁ…。今日は早いって言ってたもんね」

 

キミがいないということに少し残念な気もするけど、これはお仕事だから仕方ない。いつも朝食だけは一緒に食べていた。もし、私の方が早く家を出る時はいつもより早く起きてキミは食事を作ってくれていた。

 

 

本当は私も今日は早く起きる気だった。でも昨日、寝る時に「そらさんは無理をしないでくださいね」と言われてしまった。たぶん、キミには私が無理をしていることがバレちゃったんだと思う。

 

 

その後は朝食を温めてから食べる。本当にキミのご飯は美味しくて、ずっと食べていても飽きない。キミのご飯を食べられると一日の活力が湧いて来て、頑張ろうと思えるんだよね。

 

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

お仕事から帰るとキミが出迎えてくれた。

 

 

「おかえりなさい」

 

 

「ただいま」

 

 

「今日もお疲れですね」

 

 

「ちょっとね…」

 

今日の収録は色々と慣れないことが多くて、気を張っていたから疲れてしまった。

 

 

「そらさんは頑張りましたよ」

 

 

「そうかな?」

 

 

「うん。だから今ぐらいはしっかりと休んでください」

 

キミは私の頭を優しく撫でてくれる。それだけで私の心は落ち着いて、さっきまでの疲れが一瞬で吹き飛ぶ。キミにはなんか特殊な力があるんじゃないかと思っちゃうぐらいに…疲れが一瞬で吹き飛んでいく。

 

 

「本当にキミは優しいね」

 

 

「そうですか?」

 

 

「うん。優しい。私がキミのことを好きになった理由の一人だし。キミは誰に対しても優しい。本当に優し過ぎて、私の方が嫉妬しちゃうぐらいに」

 

本当は私だけにその『優しさ』を向けて欲しいとか思っちゃうのは…強欲なんだと思う。キミの全てを私に向けて欲しい。前まで誰かに対してこんな風に思ったことはなかったのになぁ。

 

キミにはそうあって欲しいと思っちゃう。

 

 

「僕はそんなに優しくないと思いますよ。ただ…僕はそれしか出来ないから」

 

 

「それが出来るってすごいと思うな。皆、誰かに優しくあろうと思っても全員がキミみたいに出来るわけじゃないしさ」

 

人に親切に出来るってだけですごいよ。キミは私に出来ないことができるんだ。

 

 

 

 

そしてそんなキミの隣に居ると私はとても心地が良かった。キミの優しさに包み込まれているように感じて…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜に…一本の電話がきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それはキミの親戚の方で『ご両親が亡くなった』という話だった。もちろん、その日のうちにキミは実家の方に向かった。本当は私もキミに付いて行こうと思った。

 

今のキミはとても不安定だ。そんなキミの事を一人にしてしまうのはダメな気がしたから。

 

 

 

でも、キミは「今は一人にしてください。あんまり情けないところをそらさんに見せたくないですし」と言って、一人で行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからは心配でお仕事にも身が入らなかった。

 

 

 

 

 

 

あれからキミからは毎日しっかりと連絡が来ていた。それは唯一、私がお願いをした。そうじゃないと私が心配で寝付けなかったから。

 

 

 

そしてキミが行ってから数日後して急に電話が掛かってきた。

 

 

 

「な、なにかあったの?」

 

 

「ううん。ただそらさんの声を聞きたいなと思って」

 

そう話しているキミはとっても…落ち着いていた。元々落ち着いて人で取り乱したりしないような人だけど、あの電話が来てからずっと焦っているように感じた。

 

 

でも今のキミはいつものキミ…。いや、もしかしたらいつものキミよりも落ち着いている口調。

 

 

「そっか…、もう大丈夫なの?」

 

 

「大丈夫です。あの時は本当に取り乱しちゃってすいませんでした」

 

 

「ううん。あんなことを急に言われたら取り乱すのも仕方ないよ」

 

自分の両親が死んだって聞かされても取り乱さない人なんていない。

 

 

「なんかこんな時じゃないと思うんだけど、やっぱり僕はそらさんのことが好きです」

 

 

「え、ど、どうしたの!?」

 

 

「しっかりと言葉で伝えておきたいなと思って」

 

 

「…私もキミのことが好きだよ。キミのお陰で私はやっていけてるし、これからも一緒に生きていきたいと思ってる」

 

 

「そっか。僕のことを愛してくれてありがとね、そらさん」

 

 

「こっちの方こそだよ。私のことを好きになってくれてありがとう」

 

そして最後に『愛している』とお互いに言いあって電話を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数分後に彼は事故にあって死んだ。

 

 

 

 

その連絡を受けた時はもうなに言ってるのか理解できなかった。

 

 

 

 

 

 

 

だってさっきまで普通に話していた人が…死んだって。それに大好きな人が…『事故』で…。

 

 

 

 

その後は色々と忙しかったけど…全てが終わって家に戻ると本当にキミが死んじゃったんだと改めて再確認させられた。

 

「なんで…」

 

これから一緒に生きていけると思った。辛いキミのことを今度は私がしっかりと支えてあげようと……。

 

 

 

どれだけ辛くてもキミの側にはしっかりと私がいるよって…伝えたかった。

 

 

 

「私はキミのことを支えられなかった。支えられてるばかりで……」

 

 

キミからもらってばかりで終わった。

 

 

「ご、ごめんね……」

 

 

 

 




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