別れ   作:主義

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『いつもの隣に』


大神ミオ編

ウチは好き。

ウチは大好き。

 

―――――――

 

ウチとマネージャーはお互いに向かい合っている。ウチは真剣な目でマネージャーのことを見ているけど、マネージャーはどこかバツが悪そうな感じ。

 

 

「ねぇ…だめ?」

 

 

「だめです」

 

 

「ウチは覚悟できてるよ」

 

そう…覚悟はできている。

 

この選択肢が間違っていたとしてもウチが後悔することはないと断言できる。

 

 

「それがダメ。自分には大神さんの全てを背負うことは出来ない」

 

 

「大丈夫。ウチがキミのことを支えてあげる。それぐらいの覚悟は出来てるよ。これからどれだけ苦しいことがあってもキミが一緒だったらウチは生きていける」

 

キミもウチの目を見て、本気だと分かったと思う。

 

 

「やっぱりだめですよ。僕とミオさんの関係はタレントとマネージャーです。それ以上でもそれ以下の関係でもないですよ」

 

ウチはマネージャーのことが大好き。

 

それは仲間としてではなくて一人の男として。これから先の人生を一緒に過ごしたいと思ってるし、もちろん結婚したいと思ってる。

 

 

「ウチのことを受け入れてくれないってこと?」

 

 

「そうです。僕は今のミオさんとの関係を超えることはないですよ。ミオさんが僕のことを好いてくれているのは素直に嬉しいです。誰かに好かれて悪い気はしませんからね。それでも僕とミオさんの間には絶対に超えちゃいけないものがあるし、僕はまだ活躍しているミオさんのことを見ていたいので」

 

マネージャーはウチのことを考えて言ってくれているのも分かってる。それでも今のうちに…キミの心を仕留めたい。もしかしたら、あと1年や2年後に言っても良かったのかもしれない。だけど今を逃したらキミがどこか遠くに行っちゃうんじゃないかと思っちゃった。そう思ったら行動に移していた。

 

 

「ウチのこと好きじゃないってこと?」

 

 

「それはズルいですよ」

 

ウチはズルい。

 

それも分かってる。マネージャーがウチに対してそれなりに好印象を抱いてくれているのは分かってるんだもん。もちろんそれが一人の女性としてではないのは分かっているつもりだ。

 

 

「どうなの、好きじゃないの?」

 

 

「もちろん好きですよ。でも、それは女性としてではなく、一人のタレントとして好きなんです」

 

この答えも分かっていた。

 

 

「今はそれでもいいよ。だけど、絶対にウチのことだけを好きにさせてみせるから」

 

 

――――――――――

 

 

ミオさんは引退を発表した。

 

その日からはとても目まぐるしい日々の始まりで大変だったのを今でも覚えている。

 

 

 

 

 

「ミオさんは後悔とかないんですか?」

 

 

「ないよ。だってキミがウチの近くに居てくれるから」

 

本当にどうしてここまでミオさんに好かれることになったのかは未だに分からない。前に一度だけミオさんになんで自分のことを好きになったのかを聞いたら「え、そんなの分からないよ。気付いたらキミのことが大好きになってたの」と言われたので

 

 

 

 

それから僕とミオさんが結ばれるまでは2年掛かった。お互いに理解を深めて一人の男性、女性として愛した。

 

 

「僕でよかったんですか?」

 

 

「ウチはキミがいいの」

 

 

「そうですか。ミオさんにそう言ってもらえて安心できました」

 

やっぱりどこかで自分がミオさんの相手でいいのかと考えることもあった。誰よりも近くでミオさんを見てきたからこそ、ミオさんの魅力は誰よりも分かっているという自負すらある。

 

ミオさんはとても魅力的で誰よりも愛してくれて、僕のことを気遣ってくれて、側で寄り添ってくれる。

 

 

本当に勿体無いぐらいの良い人。

 

 

「ウチはずっとキミの側に居るし、キミのためにウチはどんなことでもするよ。ウチがキミのことを幸せにしてみせる」

 

最後の言葉は男性の方が言うべき言葉な気もするけど…。こういうところも本当にミオさんは頼もしい。

 

 

 

 

 

ミオさんとの結婚生活は楽しいものだった。今まで見えなかったところが見えたりして、お互いに理解を深められた。そしていつの日か、一緒にいるのが当たり前になった。

 

「やっぱりキミの隣って安心できる」

 

 

「それはよかった」

 

 

「どんなことがあってもキミと一緒ならこれからも生きていけるよ」

 

 

「僕もです。ミオさんと一緒に居られるならどんなに難しいことでも絶対に乗り越えてみせるよ」

 

 

「そうだね。ウチたちはこれからも一緒だよ」

 

 

 

 

 

―――――――――

その朝は今でも鮮明に覚えている。

 

 

キミがこの世を去った日。

 

 

生きていればいつかは別れがくる。そんなことはウチだって分かってた。でも、それはもっと先のことで身近なことだとは考えられなかった。

 

 

 

その日、ウチが目を覚ますといつも隣で寝ているはずのキミがいなかった。

 

 

 

キミは朝が強い方ではなくて、いつもウチの方が先に起きて朝食を作ってから起こしていたのに。

 

 

 

 

 

 

妙な胸騒ぎがしてリビングに移動するとそこには倒れている、キミの姿があった。最初はこんなところで寝ちゃったのかなと思って近付くと彼が息をしていないことに気付いた。

 

 

 

 

 

その後はすぐに救急車を呼んだりして、付き添って……色々とあり過ぎてあんまり覚えていないな。でも一つだけ明確に覚えているのはキミの手を握った時に……『冷たかった』こと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お医者さんは「救えなくてすまない」と謝ってきた。

 

 

 

なんで謝るの。

 

 

謝らないでよ。

 

 

謝られたらキミが死んじゃったって認めなくちゃいけない。

 

 

 

 

ウチはどうしても認めたくない。

 

 

隣にいるのが当たり前だった人が急にいなくなる。ウチは隣に居てくれればよかった。もし、キミが働かなくてもいい。ウチがその分、しっかりと稼いでくるのでキミはウチの隣に居てくれればそれだけで…。

 

 

「そ、それだけの望みも敵わないの…」

 

 

なんでウチの好きな人を神様は勝手に連れて行っちゃうの。ウチはまだキミと一緒に生きたかった。

 

 




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