『幸せ』
船長とキミの旅がこんな形で終わるなんて。でも、いつかはこの旅にも終わりが来るのは…心のどこかでは覚悟をしていたつもり。
「大丈夫ですか?」
「は…はい」
「それはよかった。今日も船長はずっと側に居るので何か欲しいものがあったら言ってくださいね」
キミは…不治の病に侵されてしまった。その日からキミは寝たままの生活になった。お医者さんに見せたけど、あと一ヶ月の命と言われた。
でも、船長はそんなこと信じない。だってこれからも船長とキミの旅は続いていくんだもん。こんなところで終わるなんて絶対に嫌だ。
「…ご、ごめんなさい…船長」
「なんで謝るんですか?船長がキミのお世話をするのは当たり前じゃないですか!だって船長とキミは将来を誓いあった仲なんですから」
船長は出会った瞬間からこの人だと思ったもん。だから必死に説得して船長と一緒に旅をしてしまった。海賊なのに強引に奪うんじゃなくて…必死に説得したところが本当に海賊に向いていないんだなぁと思っちゃった。
船長の目は正しかった。だってこんなにも優しくて船長のことを愛してくれるような人、他に絶対にいない。
「キミは何も心配しなくて大丈夫ですよ。マリンがちゃんとキミのお世話をしますから」
「…ありがとうございます」
「うん!マリンはキミのことが大好きなので!!だから絶対に元気になってくださいよ!」
そして最初の頃はマリンから見ている感じ、順調に回復しているように見えた。このまま行けばそんなに時間が経たないうちに…体が元に戻ると思っていた。
でも、現実は厳しくて…最近はかなり体調も悪くなってお医者さんが言うにはもう長くないと言っていた。それでもマリンは希望を捨てない。だってマリンが諦めちゃったら…誰も奇跡を信じていないことになっちゃうから。どんなに不可能なことでも奇跡は起こる…と信じることが重要。
「ご、ごめん…ね」
「大丈夫だよ。キミは自分のことだけ考えていればいいの。マリンはキミのことを一生支えるって決めてるんだから」
どんなことになったとしてもマリンはキミのことが大好きだし、最後の最後までずっと一緒。
「…本当にありがとう」
どんどん体調は悪くなっていって口を利くことすらも難しくなってきちゃった。大丈夫だと信じながらもこの日が来てしまう覚悟もしていた。もう会話はできない。でも、意思疎通はマリンが話し掛けてそれに対して『はい』であれば手を握って、『いいえ』だったら手を握らない。これでお互いの意思疎通をするようにしている。
「マリンは最後まで一緒にいるから安心してくださいね」
マリンは両手でキミの片手を優しく握る。キミの手は少し冷たいけど、マリンがしっかり温めてあげるから。
ついにこの日が来た。いつかは来るかもしれないと覚悟をしてはずなのに……いざその時が来てしまったら泣きそうになっちゃう。でも、今は我慢。キミの前で泣いて不安にさせたくない。
まず、キミの傍らに座って優しく、キミの手を握った。
「ごめんね…」
マリンの口から自然と出てしまった。
もっとキミのために出来ることはたくさんあったかもしれない。そう考えると自分のことを責めてしまう。あの時、もっと違う選択をしていたら……。
もし、マリンが無理矢理誘わなければキミはこんなことにならなかったのかもしれない。
そんな時に…急にキミは握ってきた。もう力がないのか手を重ねる感じだった。キミの顔の方に視線を移すとそこには……優しい笑顔を浮かべたキミの姿があった。
キミが喋った訳ではないけど…なんかマリンは『幸せだった』と言われた感じがした。もしかしたら、マリンの勝手な妄想で本当はもっと違うことを伝えたかったのかもしれない。
でも、マリンにはそう感じた。
そしてそれから間もなく、キミは息を引き取った。その後はもう子供のように泣きじゃくった。マリンにとって…代えのきかない大切な存在だったんだと改めて感じさせられた。
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