初めて会ったのはいつだったかな。でもその日がとっても寒い日だったのは今でも覚えている。
事務所からの家までの帰り道に公園があって、そこにある自動販売機で飲み物を買っているのを見たのが初めてみた時。ロボ子はその時のキミの横顔に一目惚れした。
一目惚れってこんな風にするんだと初めて知った。
それからはキミと会うためにあの公園に行ったりと色んなことをした。名前も知らないような相手を特定したりするのは本当に難しかったけど、ロボ子が頑張った。名前とどこに住んでいるのかは分かった。
その後はもちろんどうにか偶然装ってキミに会ったりした。
その努力も相まって、ロボ子とキミは一緒に。初めて家に招待する日は本当は緊張した。ロボ子は汚い部屋をキレイにするために必死に掃除をした。だってあの人は綺麗好きだって聞いたから。少しでもロボ子に対して好印象を抱いてもらえるように。
そんな風にロボ子の生活はキミと関わったことで少しずつ変わっていった。今までだったらそんなに気にしなかったことも、気にするようになっちゃったのはキミの所為。
そしていつの間にか、ロボ子たちは恋人になった。お互いに告白することもなく、当たり前のように恋人。近くにいることが当たり前の存在。
「キミにとってロボ子はどんな存在?」
「大切な存在です。絶対に手放せない人です」
「そっかぁ…本当にロボ子のことを大切に想ってくれているんだね」
「想ってますよ。ロボ子さんなしじゃ考えられないぐらいです」
「ありがとう、ロボ子もキミなしじゃ生きられないよ」
そして抱き合い、お互いの体温を確認し合う。
人生が充実しているとこういうことを言うんだと思う。大好きな人が側で支えてくれて、その大切な人の笑顔を見れたりすることを。
ロボ子は知れた。
―――――――――――
急に付き合って1年ぐらいが経ったある日にこう言った。
「ロボ子さん、海にでも行きましょうか」
「え、今から!?」
「はい。行きましょう」
キミはとても計画的な人で遊びの予定なども一週間前に決めるような人。そんな人が突発的に海に行こうと言い出した時点でおかしかったのだ。
そして急いで準備をしてボクとキミは海へと向かった。
久し振りの海はとっても楽しくて時間を忘れてしまうほど。こんなに誰かと来て楽しかったのは初めての経験だった。
帰りは疲れちゃってキミに迷惑を掛けるようになっちゃった。
それから数日後
「ロボ子さん」
「どうしたの?」
「ロボ子さんに伝えなくちゃいけないことがあります」
そしてそこでキミが打ち明けてくれたことは…信じられるようなものじゃなかった。
だってキミの寿命があと1ヶ月なんて…。
「ウソ…だよね」
「ごめんなさい」
「ウソって言ってよ…」
たった一言の『ウソ』って言葉でロボ子は安心できる。キミがそういうウソを付かないこともロボ子は知ってる。それでもウソって言ってくれないかと期待してしまう。
どうしても信じられないようなことだからこそ…。
「本当にすみません」
「…あやまらないでよ」
キミの所為じゃないのにキミが謝る必要はないのに…。
そこからはくよくよしている時間などなかった。キミの寿命が1ヶ月だと分かった以上はその思い出が一生分に変わるぐらいの日々にしなくちゃいけない。
なので、ロボ子も配信をすることを止めて、キミのために全ての時間を使った。
怖くてチャレンジしなかったことや、キミがやりたいと言っていた料理作り、お互いの時間が合わなくて出来てなかった海外旅行とかできることは何でもやった。思い付いたら次の日には行動をした。
それもこれもキミが「あんまり後悔したくないんです。なので何でもやってみたいんです」と言っていたから。
「僕の我満に付き合ってくれてありがとうございます」
「キミがお礼を言うことなんてないの。これはロボ子が好きと一緒にいるだけなんだからさ」
自分の命があと少しだと言われた後もキミは変わらなかった。普通、急にこんな状況になったらもっと焦ったり、取り乱したりしても仕方ないと思うのにキミはいつもと変わらなかった。
「…ちょっと聞いてもいい?」
「なんですか?」
「ロボ子はキミの寿命があと1ヶ月なんて信じたくないけど、そういうことを言われてキミは怖くないの?」
「怖いですよ」
すぐに答えてくれたけど、数秒して彼は話しを続けた。
「でも、近くにロボ子さんが居てくれるのでそんなに怖くないです。一番近くに自分を愛してくれて、想ってくれる人がいるのにカッコ悪いところは見せられないですし。ロボ子さんの近くにいると安心できるので」
「ロボ子はただキミと一緒にいることしかできないよ」
「それが嬉しいんです。僕の人生において、今やロボ子さんなしの人生なんて考えられない。それぐらいに僕にとってロボ子さんは大切な人なので」
こんな時に言われた言葉じゃなければロボ子は飛び跳ねていたと思う。
「いつでもロボ子はキミの側に居るよ」
その後もキミのしたいことをやった。キミの体調も悪くならなくて寿命の話なんてウソなんじゃないかと思っちゃうぐらいに。体も普通に動くし、キミに大きな変化というものも見られなかった。
でも、運命の日は突然訪れるもの。
その日は寿命を言われたから32日目の朝だった。
朝食を食べている時にキミは倒れた。すぐに救急車を呼んで病院に運ばれた。
いつか来るかもしれないと思っていたその日が来てしまった。
ロボ子はお医者さんに対して必死にお願いした。
『助けてください!!お願いします!!』
だけど見る見るうちにキミの体調は悪くなっていった。とても苦しそうで…体が悲鳴を上げているようだとロボ子は思った。変れるものなら変わってあげたい…。
こんなに苦しんでいるキミのことを見るのはキツイ…。
それでも今、キミは病と闘っているんだからそれをロボ子が目を背けるのは一番ダメだと言い聞かせた。
1時間が過ぎるとキミの容態は…最悪だった。
お医者さんも本人も諦めているのが空気間だけでも伝わった。
ロボ子がキミのに寄り添うように近付くと…キミもそれが分かったようで「ごめんなさい」とだけ呟いた。
なんでキミは謝るの。
キミが謝ることなんて一つもない。
認めたくはないけど、伝えておきたい気持ちがある。
「キミはロボ子のことを大切な人で、ロボ子なしの人生なんて考えられないとか言ってたよね。それはボクも同じなんだよ」
「それなら…よかったかな」
いや、たぶんロボ子の方がキミに依存していた。いつも側でロボ子をことを支えてくれる存在がどれだけ助けになってくれていたか。自分にいつも愛を囁いてくれるような存在がいるだけでこんなに嬉しかったんだと知れた。
人に愛されるのってこんなに幸せな気持ちになれるんだと知った。
ロボ子のことを尊重してくれて、いつもロボ子を第一に考えてくれる人がいることの幸せ。
「だから…ロボ子はキミと一緒の場所に行くよ。だってキミのいない世界に生きる理由を見つけられそうにないんだ、ロボ子は」
「そ、それはだめだよ」
「キミがどれだけロボ子のことを説得しようとしても無駄だよ。ロボ子は自分の意思でもう決めちゃったんだ。これから先もキミと一緒にいるだめにはこの方法しかないんだ」
「…僕が死んじゃってもこの世界はまだ…」
「意味がないんだ。ロボ子の存在する意味は『キミ』だから」
キミはとても悲しそうな顔でロボ子のことを見つめている。たぶん、ロボ子の決意を聞いてもう何を言ってもダメだと悟ってしまったからかな。
「ごめんね、ボクはキミと一緒がいいの。だから…ボクはキミと一緒にいくよ」
それにこれはずっと考えていた。キミが持病に苦しめられてて、お医者さんからいつ死んじゃうか分からないって言われた時からずっと。もちろん、どうにか生きられる方法を考えながらも頭の片隅でこのままキミが死んじゃったらボクはどうするんだろうと…。
そして出した結論が…ボクも一緒に旅立つことだった。
「本当にごめんなさい…」
最後にキミはそれだけ呟いて静かに眠りに落ちた。
その日、一人の女性が屋上から飛び降りたとニュースが報じた。遺体はかなり損傷が激しく、原型はほとんど留めていないが、顔の表情などがギリギリ読み取れた。
女性は笑顔だったという。
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