別れ   作:主義

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『伝えたい想い』


さくらみこ編

半世紀に一度だけ奇跡が起こる。これはただの御伽噺のようなこと。

 

これはある街に伝わる御伽噺。

 

その日の決まった時間にお願い事をするとその望みを叶えてくれる。ずっと昔からの言い伝え。知らない人が聞けば、そんなわけないと一蹴してしまうようなこと。

 

でもこの言い伝えは長い年月が経ってもずっと語り継がれている。

 

 

 

これは人や人ならずるものが奇跡に願う。

 

 

 

―――――――――――――

 

 

みこは今日もいつも通り…巫女として頑張った。

 

 

 

普段だったらもう寝る時間なのに今日はある町へと足を運んでいた。みこがこの街に来たのはある『伝承』があるから。その伝承というのは半世紀に一度、ある時間に『祈ったことは叶えられる』というもの。

 

 

 

こんなことはみこがいくら世間知らずだとしても…信じなかった。でも、最近神社にお参りにきた、おばあちゃんが60年前に願ってかなったという話を本人から聞いた。嘘を言っているようには見えない。

 

 

 

だからそのおばあちゃんから色々と聞いて、いつ、どこでお祈りをすれば叶うのかという詳細を聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその場所に願いが叶う日にみこはやってきた。

 

 

 

 

「神様、お願いします。みこをあの人に会わせてください」

 

あの人が居なくてなってから、みこにとってキミがどれだけ大切な存在なのかを気付いたんだ。毎日お参りに来てくれるキミのことをみこは……

 

 

『あれ、巫女さん』

 

それは聞こえて欲しいと願った声。

 

もう一度、聞くことが叶わないのに必死に願った声。

 

 

 

 

恐る恐る、視線を床から上げていくと…みこが会いたいと望んだ人が立っていた。本人はとても不思議そうに首を傾げているけど、みこは会えない人に会えた嬉しさで今にも泣いちゃいそう。

 

 

「あ、あいたかった…」

 

 

「巫女さんですよね?どうされたんですか…」

 

 

「あいたかったの……」

 

 

「今にも泣いちゃいそうな顔ですね」

 

 

「だ、だって…きみとあえたんだもん…」

 

 

「僕もまさかもう一度、巫女さんと会えるとは思っていませんでした。僕は死んじゃったので」

 

 

「…よがった…あえて…」

 

 

「はい、僕も巫女さんと会えて嬉しいです。しっかりとお別れを告げられずに死んじゃいましたし」

 

キミは変わらぬ笑顔でみこのことを見てくれてる。それがとっても嬉しくて…でもちょっと悲しくて……涙が止まらない。だって聞いた話通りだったら、みこがこんな風に話せるのは限られている。

 

 

今は泣いて…時間を無駄にしちゃダメだ。みこは心を落ち着かせて、しっかりと想いを伝えないと…。

 

 

 

「今から言うことはみこの気持ちだから」

 

 

「はい」

 

 

「みこはキミのことが好きだった。キミはお参りをするために来てくれているのは分かっていたけど、それでもみこのところに訪ねてくれるみたいで嬉しかったのを今でも覚えてる」

 

いつから…みこがキミのことを意識し始めたのかは分からない。でも、気付いた時にはもう好きになっちゃってた。

 

 

「キミとお話が出来るだけでよかった。でも、キミは死んじゃった。キミが来なくなってから、みこはやっとわかったの。みこはキミとお話することが大好きで、キミのことも異性として大好きだってことに」

 

これは本当の気持ち。みこはすき。たぶん、この気持ちにキミが生きていた頃に気付いていたとしても、告げることは絶対にできなかったと思う。だってキミがみこのことを異性的な目で見ていられていないのを知っているから。

 

 

「…そうだったんですね」

 

 

「今更、こんなことを言われてもキミが迷惑しちゃうのはみこも分かってる。それでもしっかりと伝えておきたかった…」

 

 

「想いを告げてくれてありがとうございます」

 

キミは生きていた頃と変わらないような笑顔をみこに見せてくれていた。

 

 

 

その笑顔を見て、みこはやっぱりキミのことが大好きなんだって再確認した。だってさっきから鼓動の音が収まらない。この時間が長く続かないのは分かっているはずなのに……。

 

 

「巫女さんがそんな風に想ってくれているのに気付けませんでした。僕にとっての巫女さんは太陽みたいな人でしたよ」

 

 

「太陽?」

 

 

「はい、いつも笑顔で迎えてくれり、たまにはちょっとボサついた髪を必死に直しながら笑顔で迎えてくれたり、落ち込んでいるのを必死に隠しながら笑顔で迎えてくれたり、ご飯粒を付けたまんま笑顔で迎えてくれたりしたこともありますね」

 

 

「や、やめて…はずかしいにぇ……///」

 

 

「僕をどんな時でも出迎えてくれている時の巫女さんの笑顔は『太陽』みたいに明るかったです。その明るさがあったからこそ、僕は毎日お参りにすることが楽しかった。お百度参りとかは辛いだけだと分かっていたんですけど、巫女さんと出会えて辛さよりも楽しさが上回ってくれたんです」

 

ちょっと恥ずかしいけど、キミからそんな風に思われていたんだ。でも、みこがそんな風に毎日笑顔だったのは……キミだからなんだ。キミは巫女の笑顔が『太陽』みたいだって言ってたけど、みこから見たらキミの方こそ『太陽』だ。キミが居たからこそ、みこはお仕事頑張ろうと思えた。

 

 

キミと出会うよりも前はお寝坊することもすごく多かったけど、キミと会ってからはしっかりと朝起きようと頑張ったり、巫女らしく頑張って見たりと本当に色々とやった。

 

 

 

「だから、僕の方こそ巫女さんに会えてよかったです」

 

 

「……なぁんでそんなこというの…」

 

また涙がどんどん零れちゃうのを必死に止めようとしても溢れ出て来る。

 

 

 

「これからも巫女さんらしく頑張ってください。僕も少し遠いですが、しっかりと見守っているので」

 

 

「…うん!見守ってて。みこ、ちゃんと頑張るから!」

 

 

「はい、頑張ってくださいね」

 

そして次の瞬間にはキミは消えていた。まるで元々そこにいなかったかのように…。

 

 

 

 

 

 

「みこ、がんばるよ」

 

キミが『太陽』って呼んでくれたみこの笑顔でたくさんの人を…幸せにしてみせるから…。

 

 




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