キミがすいちゃんの隣からいなくなってからは…ずっと歌を歌い続けた。
歌って気を紛らわせてないとやってられなかった。
何もしてないと思考の中にずっとキミのことで埋まっちゃうから。
本当にすいちゃんはキミに依存していたんだと実感させられる。
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そして今日はライブ。
いつものように私は楽屋で自分の携帯にある、彼とのツーショットの写真を眺める。
「今日もすいちゃんに力を分けて」
いつも肌に離さず、彼の写真は持っている。それはライブの時でも。逆に持っていないと不安になってしまうぐらい。
「天国にいるキミにまで私の歌声が響くように頑張るから!」
いつものようにライブを進ませているタイミングで私は違和感に気付いた。
その違和感の正体はすぐに分かってしまった。
でも、にわかには信じられないようなこと。
だって関係者席に…亡くなったはずのキミが座っていた。
すいちゃんはキミが死んじゃった後も関係者席をいつも一つ多くしている。それはいつかキミが天国から見に来てくれるかもしれないからと思って。
動揺はしたけど、さすがにこのまま沿道を止めたりするわけにはいかない。それにキミもすいちゃんの歌声を聞きに来てくれたんだと思うし。
歌いきった。
そして全てが終わって関係者席に目を移すとそこにはお姉ちゃんとかはいたけど、キミの姿はもうなくなっていた。
ライブが終わって楽屋に戻って一休みをしていると外からスタッフさんたちの声が聞こえて来る。
「こんなの誰が置いていったんだろう…」
「さぁ、でもまあ捨てるしかないだろ」
なんか気になって外に出て聞いてみることにした。
「あの…どうしたんですか?」
「あ、星街さん。ちょっと観客席に誰かのメモ…というかメッセージというものがあって」
「へぇ…ちょっと見せてよ」
「まぁ、星街さんに当てたようなメッセージなので」
「私に当てた?」
「はい、たぶん…」
そしてスタッフさんからそれを受け取った。それはメモ帳を千切ったような紙でそこには『素晴らしい歌でした。とても練習したんですね、すいせいさん』と書かれていた。
普通であればファンの人が書いたのだと考えるのが普通だけど…私にはこの字に見覚えがあった。
「え……いたの…」
すいちゃんが愛してやまない人の字の書き方にそっくりなのだ。
「もしかしてあの時に見えてたキミは本当に…」
すぐに私はお姉ちゃんに連絡を取ることにした。
「あ、お姉ちゃん」
「うん、どうしたの?」
「今日、関係者席に空席が一つあった?」
「ううん、なかったよ。全員埋まってたよ」
埋まっているってことはお姉ちゃんにもあの人は見えていたってこと…。
「お、お姉ちゃんの隣に座ってたのって男の人?」
「あ、そうだったね。とても優しそうな人だった」
「そっか……ありがとう」
その後もお姉ちゃんは色々と言っていた気がするけど、私は電話を切った。
「来てくれてたのかな」
私がライブ中に関係席で見たキミは幻じゃなくて…本物だったのかな。
もしかして、すいちゃんの歌が気になって帰ってきてくれたのかも。
「そういうのとかキミならありそうだな…」
これが幻だったのか、ただの見間違いだったのかは分からないし。あんまり詮索はしたくない。私の目にはいつもの笑顔ですいちゃんの歌を聞いてくれているキミが見えてから。
「ありがとう。すいちゃんの歌を聞きに来てくれてさ」
キミが死んじゃった日は全てを捨てて、キミの後を追うことも考えた。そうした方が幸せになれるんじゃないかって…。でも、そんなことをしたら天国にいるキミに「だめですよ、すいせいさん」と嫌われちゃう気がしたので止めることにした。
それからはは痛みを忘れるためにずっと歌い続けた。
だけど…やっとキミが聞きに来てくれてすいちゃんが今までやってきたことって無駄じゃなかったって思えた。すいちゃんが歌で頑張ろうと思ったのはキミと並びたてるぐらいの人になりたかった。
それなのにキミは先に死んじゃうし…目的がなくなりかけていた。
でも、もう一つ目標が出来たよ。
「今回は天国から来てもらったけど…次はすいちゃんの歌声を天国に届けるよ」
すいちゃんの声も人気も全てが天国に伝わるように頑張るんだ。
「あと、やっぱり天国のキミが皆に自慢できるような彼女になるから…」
感想があれば