『拒んだ者と看取った者』
吸血鬼には寿命という寿命はない。だから…寿命はいつまでも生きられる。そして吸血鬼には眷属を増やす手段というものがある。それをすれば人間を吸血鬼にすることだって無理な話じゃない。
―――――
ある病院の一部屋に…メルとキミはいた。でも、キミは病室のベッドに寝ていて、メルはそれを眺めている。
キミは少し前から入退院を繰り返している。どうやら…体に悪いものが入ってしまったみたいでいつ……キミの命が尽きてもおかしくないと医者は言っていた。
「メルの眷属になってよ!!!」
「…それは聞けないよ」
「なんで!メルの眷属になってくれればこれからもずっと一緒に居られるんだよ!!」
メルは…ずっとキミと一緒がいい。
「いくらメルさんの頼みでもそれだけは聞けないんだ」
「なんで!!」
「…僕は自分の死を受け入れているんです。人間ですから…いつかは寿命が来るのは分かっていた事ですし。ただそれがほんの少しだけ早かっただけで」
「そんなのメルはいやだよ!」
これからもっと二人で一緒に。やりたいことだってたくさんあるし……メルはキミが隣に居てくれるだけでいいの。キミと出会って一緒に過ごしてメルはそれに気付いた。何をするかじゃなくて重要なのは『誰と』だって。キミとやればどんなことでも楽しかった。嫌なことでもキミが隣に居てくれるだけでチャレンジできたし。ここまでメルが生きてきて、初めてずっと一緒に居たいと思った人なの。
「メルさんは大丈夫です。僕が居なくなったとしても」
「そ、そんな訳ないじゃん!メルはキミが居たから心の支えになったし、幸せだったの。キミと一緒じゃないのにこの世界が楽しいわけないじゃん!」
「……大丈夫だよ…」
もっと言い返したいけど…キミの笑顔を見ちゃったら何も言えなくなっちゃう。だってその笑顔はメルがキミの表情の中で一番好きだから。
「…どうしても眷属になってくれないの?」
眷属にさえなってくれれば…メルとキミは一生どんなことがあっても離れることなく、ずっと一緒に居られる。
「ごめん、それだけは」
「どうしても?」
「どうしてもです。メルさんには申し訳ないですけど」
「そ、そっかぁ…」
これ以上、キミに何を言ってもキミの意見は変わらないのをメルは知ってる。だってずっと一緒に居たから。キミのことは世界で一番メルが理解している自身があるもん。
「本当にごめんね」
「キミが決めたことだもんね。仕方ないよ。本当に無理矢理にでもメルの眷属にしちゃいたいけど、それをしたらキミに嫌われちゃいそうだもん」
「そうですね。それをしたらメルさんのこと嫌っちゃいますかもしれませんね」
「じゃあ…メルはやらない。でも、最後の時までメルはキミの近くで見守るよ」
「ありがとうございます」
そしてそれから…数時間後に急に容体は急変してそのまま帰らぬ人となっちゃった。でも、最後までキミはメルに笑いかけてくれていた。
感想があれば