外伝編はオリジナルの過去話のようなものです。
なので外伝を見る前にそれぞれのオリジナルのお話を読んでからの方がいいと思います。
『自慢の彼女に』
今日はすいちゃんもお仕事がお休みでキミもお休みなのでお家で寛いでいる。
「ねぇ…すいちゃんはキミの自慢の彼女になれてる?」
「なれてますよ」
「ほんと?」
「本当ですよ」
「どうしてそんなことを聞くんですか?」
「心配になっちゃうの」
「最近は前よりも一緒に居られる時間が少なくなっているし、場合によっては一日会話をしないってこともあるよね」
「それはそうですね。お互いに仕事が忙しいですからね」
すいちゃんは昼頃に出て、夜遅く帰って来ることも増えてきた。逆にキミは朝早い内に家を出ちゃって、早いうちに帰って来る。たまにキミがすいちゃんを寝ずに待ってくれることはあるけど、それは止めてとしっかりと言った。すいちゃんはキミに負担を掛けたくない。キミだって仕事に忙しいのにすいちゃんの所為で寝不足にさせるのは嫌だ。
生活リズムが真反対とかではないけど、上手く会わない。
「最初は仕事を頑張ればキミの自慢になれると思っていた。でも、最近は本当にこのままでいいのかって思うようになってきちゃったの。キミとの時間を取れないことも多いし、言葉を交わさない日だってある。そんな日を続けていて…」
「そんなことは気にしなくて大丈夫ですよ。すいせいさんはもう僕の自慢の彼女ですから」
「そうかな?」
「そうですよ。僕はすいせいさんと付き合えていることを本当に感謝しているんです」
「すいちゃんの方が感謝してるし!」
「いや、僕の方が感謝してますよ」」
「絶対にすいちゃんの方だもん!すいちゃんみたいな我儘な彼女を嫌がらずにずっと支えてくれるのはキミぐらいだよ。その優しさは私にはないもので本当にすごい」
「それを言ったら、すいせいさんの才能の方がすごいですよ。歌唱力を取っても、僕程度がどれだけ努力しても届かないようなところにすいせいさんはいますからね」
その後もすいちゃんとキミはお互いに感謝しているのが自分方だという言い合いを続けた。
ある程度落ち着いてきたところですいちゃんは話すことにした。
「今度さ…やっと大きなライブがあるんだ。今までキミに支えてもらっていた分を返せるとは思ってないけど、少しでも恩返しできるように頑張るから」
「うん。頑張ってね」
「だから…見に来てよ」
今まで一度もすいちゃんの口から見に来てとお願いしたことはなかった。キミが「見に行きたい」と言って、来てくれたことはあったけど。
「え…珍しいね。すいせいさんがそんなことを言うなんて」
「そうだね。でも、今回のライブは一番近くでキミに見て欲しい」
このライブのためにかなりの時間を費やしてきた。ライブを成功させるために出来ることは何でもやったつもりだ。今までのライブよりも気合を入れて作って来た。
「見に来て欲しい。もちろん、キミも色々と忙しいのは理解しているつもりだけど、どうしてもキミに来て欲しい」
「わかりました。日付さえ教えてもらえれば、色々と予定の確認もできるので」
「…ごめんね。私の我儘で」
「これぐらいのこと我儘に入りませんよ。それに僕がすいせいさんのライブを見たいから行くだけなので」
「本当にキミは優しいね」
「これぐらい当たり前じゃないですか。やっぱり好きな人が輝く姿は見たいので」
さり気なく、好きな人って言われた。キミはそんなこと意識してなさそうに見えるけど、そう言われた瞬間に口角が上がってしまった。
それからの日々はライブの追い込みでキミと会える期間も減った。前だったら一カ月に一度はデートしていたのに最近じゃ一カ月に一度、ゆっくり話が出来るかってレベルにまでなってしまった。寂しいという気持ちはあるものの、キミにすいちゃんが彼女で後悔させないようにと……自慢の彼女になれるようにと……頑張らなくちゃいけない。
その日は訪れた。前日は久し振りに緊張し過ぎて眠ることはできなかったぐらい。
なので今日はちょっと寝不足気味。それでも最高のパフォーマンスを発揮できると確信できてる。
キミには関係者席に招待をした。キミは普通にチケットを取るよと言っていたけど、さすがにそんなことはさせない。キミには最高の席で私のパフォーマンスを見て欲しい。どの会場に居てもキミのことを見つけられる自信がある。だって私のダーリンだから。ダーリンの場所を見つけられないなんてことがあるわけない。
「それじゃあ…頑張りますか」
いつものようにキミとのツーショットの写真を眺めながら頑張ることを決意する。キミのことを見ていると…頑張らなくちゃいけないという気持ちが溢れ出て来る。
「今日は皆のために…そしてキミのために」
そして私は舞台へと立つ。
舞台に立つと全てが見える。
それはキミの姿も。
キミに見てもらえていると思うと嬉しくて自然と笑みがこぼれちゃう。今までのステージだって全力で頑張って、立ってきたつもりだけど、やっぱりキミが見てくれるステージは特別なもの。
その日のステージを見た者たちは後に『過去最高のライブ』と語り継ぐほどのものになることをまだ彼女は知らないのだった。