別れ   作:主義

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『たくさんのものをもらった』


風真いろは編

 

風真は侍だ。侍には…何としてでも通さなくちゃいけないものがある。一回決めたことは死んでも曲げられない。

 

そしてそれを教えてくれたのは師匠。風真のことをここまで育ててくれて、風真に生きるための全てを叩き込んでくれた人。誰よりも…風真のことを想ってくれた人。

 

 

「師匠!!」

 

 

「どうしたの?」

 

 

「風真ね!さっき困っているお祖母ちゃんを助けたでござるよ!!」

 

 

「えらいなぁ。風真は本当に良い子だな」

 

 

「えへへ…///」

 

師匠に撫でられるのは誰に撫でられるよりも嬉しく感じるのは何ででござるか。それをずっと考えているでござるが、未だに答えは見つけられないでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

師匠は病にむしばまれるようになって…目が見えなくなってしまった。どんどん病が悪化していく過程を風真は一番近くで見ていた。どうにか出来ることは施したけど、それでも師匠の病が治ることは出来なかった。お医者さんが言うには……もう長くないらしい。

 

だから今日は…師匠と二人でお出掛けすることにした。ずっと家の中に籠っていては良くなるものも全然良くならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だけど、今の風真は後悔している。

 

風真が目を離さなければこんなことには…ならなかったはず。風真が道を調べるために…師匠の隣を離れたから…。

 

 

 

 

 

 

風真にとって師匠は誰にも代えられない人。この人がいたから風真は生きていける。だから…風真の目で起きた光景に…風真は信じられない。

 

だってそこには…血だらけで倒れている、師匠の姿があった。

それを引き起こした…山賊の男を風真はずっと静かに見る。

 

 

「…許さない!」

 

 

すぐに山賊の首を切り落として…風真は師匠をおんぶして手当が出来るところまで向かう。なるべく傷に響かないように動かさずに…走る。

 

 

「大きくなったなぁ…。僕の知らない間にこんなに…背中が大きくなっていたんだな」

 

 

「ま、まだ…っ…な、にも…できて…い、ないで…ござ…る」

 

 

「ううん。僕はいろはに色々と貰ったよ…っ…。いろはが初めて僕に「剣を教えて欲しい」と門を叩いた日のことを今でも覚えていますよ。それから、いろはは色々と修行に耐えて本当に立派な侍になった」

 

いつもこの優しい声のことが好きなのに…今だけは涙が止まらない。

 

 

「僕は嬉しいんだ。いろはがこんな立派に育ってくれて…」

 

 

「………っ…」

 

 

「…これが最後の言葉になるかもしれないから言いたいことは言おうかな」

 

 

「さ、さいごなんていわないでほしいでござる!!!だいじょうぶ!!」

 

 

「いろは」

 

 

「………」

 

 

「僕の弟子になってくれてありがとう。いろはが弟子で本当に良かった」

 

 

「…っ……」

 

 

「だから、これは師匠の我儘として聞いて欲しいんだけど……『幸せ』になって。いろははとてもいい子だし、家庭的だし、こんなに良い子は滅多に居ない。そんな子だから…幸せになって欲しいんだ。いろはの花嫁姿をこの目で見れないのはちょっと悲しいけど、いい旦那さんを選んで幸せにね」

 

 

「そ、そんなこと言わないで!!ま、まだ…師匠に恩返しを何もしてないでござるよ」

 

風真を育ててくれて…生きる術を教えてくれた、師匠には返しても返せないほどの恩があるでござる。これから、風真がどんなことをしても返しきれるとは思っていないけど、少しでも返していきたい。それなのに…。

 

 

「そんなことは気にしないで。僕は風真にたくさんのものをもらったからさ」

 

 

 

 

 

そしてそれから…師匠は何も発しなくなった。必死に呼びかけても何も答えてくれない。

 

 

「し、ししょう!!だいじょうぶでござるか!!!」

 

風真はおんぶしていた、師匠は優しく下ろして草むらに寝かせた。

 

 

「か、かざまはここにいるでござるよ!!!」

 

 

「…そ…そうか…」

 

 

「だいじょうぶ…でござるよ…」

 

 

「…ご…ごめん」

 

風真は師匠の事を優しく抱きしめて…離さない。

 

 

「ど、どこにも…いかせないでござるよ。ずっと…かざまのとなりで」

 

それから…数分して師匠は息を引き取った。

 

 




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